週末大冒険

週末大冒険

ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No.124【青森県】2019年に爆誕した名所「とまりのトトロ」!そのアプローチ方法を公開だ!

「とりのトトロ」。

 

決して「とりのトトロ」ではない。

なぜなら隣(となり)にはいないからだ。泊(とまり)にいるからだ。

 

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2019年、トトロのシルエットが浮き上がる洞門が発見された。

場所は下北半島の泊という小さな集落。

SNSでは結構なバズりっぷりだったらしい。

 

僕もそこを訪問した。

なかなかのマイナースポットであり、そこに到達するには少々骨が折れた。

実際にとまりのトトロを訪問した人はまだまだ稀であり、Webを探しても詳細なアプローチ方法を紹介しているサイトがほとんどないのだ。

 

…では!

僕がつたない文章と共に紹介してみようか。

 

「ほんとだもん! 本当にトトロいたんだもん! ウソじゃないもん!」

 

 

トトロに出会いました

 

少し手前に愛車の日産パオを停めた。

 

ここに至るまで、このスポットを示す案内板などは一切ない。

まだ観光地として成り立っていないのだ。発見されたてのホヤホヤなのだ。

 

初めてだが、僕は確信している。

この先にトトロがいることを。

そして予想通り、僕の前に洞門が姿を現した。

 

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トトロの洞門1

はい、あった。

 

次に、洞門のかたちがトトロに見えるように、立ち位置を整える。

上の写真の通り、洞門から10mちょっと離れ、道の左端に立つ。

あとはセンチ単位で調整していこう。

 

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トトロの洞門2

 

トトロが現れた。


わかっているとはいえ、このシルエットが見えたときの感動は、ちょっと言葉ではいい表せない。

「知っている」のと「やってできる」のとは違うのだ。

何事も経験と実践、大事。

 

サツキやメイと同じように、浮かれて「夢だけどー!夢じゃなかった!」とハシャギまくりたい衝動に駆られた。

 

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トトロの洞門3

浮かれたついでに、ヘタクソなトトロを描いてみた。

洞門のかたちとピッタリだ。奇跡の融合。

この洞門、「宮崎駿監督」の怨念が宿っているとしか思えない。

 

ちなみに、どうやらベストな撮影をするにはもう少しだけ立ち位置を変え、耳を細くするのが良いみたいだ。

Web検索で出てくる画像も、大概僕の撮影時よりも耳が細い。

耳太めなトトロになってしまい、すまない。

 

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トトロの洞門4

一緒に記念撮影しようとすると、こうなる。

 

まぁ工夫すればお腹にしがみついたり、傘をさして一緒に並んだりすることもできるかもしれないが、それはあなたが勝手にやってほしい。

他の人も見ていたので、メンタル的に僕はこの程度が限界だった。

 

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トトロの洞門5

洞門を抜けた先は、海である。

漁業関連の小屋などがいくつか立ち並んでいる。

 

もう少し進んだ先には「滝の尻大滝」という滝がある。

最初と最後に"滝"がつくという不思議なネーミングだ。

 

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トトロの洞門6

洞門を振り返ると、こうなる。

反対側から見ると、トトロではない。まぁ当然だ。

 

ちなみに、この洞門の正式名称は「弥次郎穴」である。これが古来からの呼び名。

風や波で削られて自然にできた、いわゆる海蝕洞なのだそうだ。

 

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トトロの洞門7

洞門の向こう側から軽トラが現れて、「うわっ!」ってなった。

地元の漁師さんなどが使用することもある道路なのだ。要注意だ。

 

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トトロの洞門8

ギリギリだ。ワイルドだ。

 

随分前からこうして生活道路に使われていたのだろうが、とまりのトトロが発見されたのは、冒頭の通り2019年。

やっぱトトロは近くにいるけど、なかなか気付かれない存在なのだな。映画の通りだ。

 

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トトロの洞門9

内部をご覧に入れよう。

見よ、ゴッツゴツのワイルドな岩盤が剥き出しである。

海蝕洞の迫力、すっごい。

 

こうして洞門を一往復し、最後にトトロのシルエットを振り返るのだ。

トトロ、ホントにいたんだね。感動した。

 

 

トトロに会う方法

 

とまりのトトロはどこにあるのか。

 

少なくとも2021年現在は、非常にアプローチしづらい。

観光客向けの案内は皆無なのだ。…というより、まともな道すらない。

Web上の情報も非常に少ない。

 

ちょっと僕と一緒に確かめてみようか?

 

 

①:クライミングルート

 

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アプローチ1

まずはGoogleマップを出してみよう。

検索すればとまりのトトロは出てくる。

 

下北半島の主要国道である、国道338号・394号の重複区間から直線で200mも離れていない。

しかも上の地図を見ての通り、道路のすぐ脇にとまりのトトロがあるようだ。

Googleマップでナビ検索しても、上の図のような赤い矢印のルートが表示される。

 

でもこれ、行けなくはないけどオススメはしたくない。

 

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アプローチ2

衛星写真でお見せしよう。

とまりのトトロの目の前まで行っているように思える道が、実際は存在しない

 

なんというホラーな展開だよ。

僕も現地で「どういうことだよ…」って混乱したさ。

 

かわりに、青枠の通り駐車場があった。

衛星写真では存在しないんだけど、実際にはあった。

 

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アプローチ3

こんな感じの駐車場だ。

そこから1分歩く。車道は行き止まりでどこにも行けないように思えるが、実は遊歩道が存在する。
 

 

パッと見ではわからないだろうが、実は軽自動車の目の前に遊歩道がある。

覗いてみたら、なかなかの急斜面だ。ロープが設置されているレベルの斜面だ。 

 

僕が元気で気候も良ければ崖を下って行ってもいいかもしれない。

しかし今は真夏である。暑いので体力が心配だし汗をかきたくない。

しかも、この下にとまりのトトロがあるとの確証もない状態であった。

 

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アプローチ4

地図に記載するとこんな感じだ。

僕は使用しなかったが、もしあなたが興味があるなら行ってみてほしい。

 

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アプローチ5

海岸沿いから見た、クライミングルートの出口だ。

 

ここはとまりのトトロのすぐ脇。

おめでとう、到着だ。

 

 

②:フラットルート

 

僕が実際に使用したのは、なるべくトトロの近くまで車で行く方法だ。

先ほど洞門を通過する軽トラックの写真を掲載した。

その軽トラックが使ったであろうルートだ。

 

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アプローチ6

結論から言うと、こういうルートだ。

途中から道なんてなく、ご覧いただいてもワケわからないであろう。

 

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アプローチ7

僕個人としては、特にこのあたりの軌跡が秀逸だと思っている。

衛星写真でお見せしよう。

 

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アプローチ8

こうだ。

左から右へとやってくる舗装路。

赤い線の通り真横に行っても、道に沿って右下にカーブして行っても、前ブレもなく道がブツリと途切れるのだ。

この消失点が衛星から見てても笑える。

 

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アプローチ9

先ほどの赤い矢印の通り、左から右へと来た道の突き当りにて、上を向いた瞬間の写真である。

陸橋に沿って少しの区間だけ舗装路があるが、もう目の前で砂利ダートが始まろうとしている。

 

で、砂利ダートだけならまだいいんだけど、道なのかなんなのかわからない広大な空間が広がって戸惑う。

とりあえず陸橋をくぐり、そのまま海沿いに進行方向に進む。

 

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アプローチ10

すると少し道幅が狭くなり、そして前方にボロッボロのガードレールが現れる。

写真では道をふさぐようにガードレールがあるが、実はこれは急な左カーブである。

それにそって左にハンドルを切るのだ。

 

砂利が不得意な車であれば、ここいらで駐車してもいい。

とまりのトトロまでは、もう徒歩で3分もかからない平坦な道だから。

 

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アプローチ11

ガードレールに沿って左に曲がると、このような道になる。

 

PCから見ないとわかりづらいと思うが、進行方向に小さく神社の社が見えている。

社のすぐ手前に駐車した写真を次に掲載しよう。

 

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アプローチ10

ここがとまりのトトロの50mほど手前の地点である。

赤く見えていた社は、写真には写っていないが車の左側にある。

 

洞門を通過して海に出ようとか思わない限り、つまりはとまりのトトロが目的でここまで来た場合、ここが最後の駐車しやすいスポットになると判断する。

 

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アプローチ11

ご覧の通り、岩の裂け目に鳥居がある。

神様がいる。

トトロも森の主だもんな。ここ一体、神聖な場所なのかもしれない。

お参りをした。 

 

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アプローチ12

同じ場所を車の頭方向から見ると、こうなる。

 

僕が来たのは写真左奥の方向である。

…が、右奥から来るルートもあるようだ。

陸橋をくぐった先のフリーダムなエリアで選択したコースによっては、右奥から出てくるのだろう。

ま、ただしこちらは深い水たまりがあった。左奥から出てきて正解だったと振り返る。

 

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アプローチ13

鳥居からとまりのトトロが見える場所まで、徒歩30秒だ。

もう少しだ。

 

写真に写っている男性は、とまりのトトロを撮影している。

あのあたりか、もう少し左の道路が濡れている部分がベストな立ち位置である。

 

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アプローチ14


こうして、冒頭の写真に繋がるわけだ。

道路の濡れている部分が、もう僕の目の前1mのところにある。

 

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とまりのトトロ

こんにちは、トトロ。

 

 

*-*-*-*-*-*-*-*

 

青森県下北半島

秘境が多く存在するその地の、見過ごしてしまいそうな小さな集落の中に、トトロは確かにいる。

 

僕が訪問した際、他に2・3組の観光客がいたが、撮影に気付くと道を開けてくれたり撮影を譲り合ったりと、とても良い関係を築けた。

 

静かにそっと訪ねてみてほしい。

雲のかたちや岩のかたちが何か他の物に見えて、それだけでハシャいだ子供時代。

 

そのときの気持ちが残っているならば、きっとトトロはあなたの前に姿を現してくれると思うのだ。

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: とまりのトトロ
  • 住所: 青森県上北郡六ヶ所村泊焼山
  • 料金: 無料
  • 駐車場: 数10m~100mほど離れたところにスペースあり
  • 時間: 特になし

 

No.123【長崎県】佐世保バーガー最古の店!?夜のみ営業・店内狭い・バーガー逆さまだぞ!

妖しく光る、夜のネオン。

それを見上げて僕は覚悟を決めた。

 

今夜、僕はこの扉を開ける。

10年以上止まっていた時計の針が、今動き出す。

 

いや、別にオトナの階段を昇ろうとかそういうのではないのだ。

ハンバーガーを食べに来ただけよ。

 

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その店の名は、「ブルースカイ」。

 

佐世保で一番の老舗と言われている店だ。

そして、夜しか営業していない。 

 

 

ハンバーガーの町、佐世保

 

ハンバーガーの町、佐世保

義務教育のごとく、みんな知っている。

駅前にも巨大なハンバーガーのハリボテがあった。

 

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佐世保バーガーの巨大さに驚き、ブレる

どうやらマクドナルドなどが日本に上陸し、ハンバーガーが日本人にとってメジャーな食べ物となる前から、佐世保の人々はパンとパンの間に肉を挟んでいたらしい。

偉大な人々である。

 

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出会った人にどこがオススメか聞いたら「BigMan」と言われた

佐世保アメリカの海軍基地がある町。

 

ほら、アメリカ人って三食ハンバーガーかピザじゃないですか。

だから海軍の人を通じて、早い時期に日本にハンバーガー文化が入っていたというわけなのだ。

 

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これでBigな男になれると信じていた時代

佐世保の人たちは空気のようにハンバーガーに慣れ親しんでいたので、「あれ?もしらして自分らってハンバーガーへの依存度が著しい??」って気付いたのが1999年ごろ。

 

2003年に「佐世保バーガー」というブランドを立ち上げ、日本中に佐世保ハンバーガーの町であるとアピールした。

 

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「LOG KIT」には2回行った

ちょうどその頃、ご当地グルメブームも来ていて、佐世保バーガー知名度は一気に全国区となった。

 

もちろん、僕もホイホイ釣られた。

佐世保に通い、パンとパンの間に肉を挟んでもらうことを至上の喜びと感じた。

 

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巨大さと重さに圧倒された

いや、マクドナルドさんも安定して美味しいよ。僕の期待のジャストなところを的確に突いてくれるよ。

 

しかし佐世保バーガーは違うのだ。

スケールがアメリカン。1店舗ごとに全然テイストが違う。

なのにどこも美味しい。

 

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最古の店の1つ「ヒカリ」。隣は「LOG KIT」

何店舗か回って僕はわかった。

「これが文化ということなんだな」と。

 

いろいろあって、それが全部正しくって、それらが町のアイデンティティになっている。それこそが文化。

すごいぞ佐世保。すごいぞハンバーガー。

 

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ハンバーガーを通して町の歴史を学ぶ

その中で1店舗、10年も気になりつつもアプローチできていない店があった。

 

それがブルースカイ。

今回ご紹介するお店だ。

 

 

前哨戦:「Sasebo C&B Burgers」


日没後。

クッタクタに疲れた僕が佐世保の町にやってきた。

 

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前哨戦1

大分県の国東半島から、一般道で海岸沿いにここまで観光しながら走ってきたのだ。

1日でこれは結構疲れる。

 

しかも、明日以降の旅路で悩ましい問題がたくさんあるのだ。

まぁ、これは今話すことではなかったな。やめよう。

※ヒント:以下の記事の夜のことである。

 

drive-ns.hatenablog.com

 

コインパーキングに車を停めた僕は、日本一の長さの商店街という「さるくシティ4〇3アーケード」に入る。

全長960mだ。なかなかに長い。

 

この商店街から脇道に反れたところにブルースカイがある。

何度も前を歩いているので場所は知っている。

 

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前哨戦2

しかし、すぐにはブルースカイには行かない。

なぜなら、ブルースカイの営業時間は21:00~深夜2:00である。

そこが今までなかなかそのお店に訪問できなかった理由の1つでもある。

 

※Webサイトによっては「20:00~」と記載されているものもあります。

どちらが本当かはわからないが、当時の僕自身の認識として表記します。

 

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前哨戦3

ちなみに今の時間は19:50。

開店予想時刻まで1時間だ。

 

じゃあ何をして時間を潰すか。

佐世保バーガー食べながら時間を潰そう。

 

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前哨戦4

この近辺では、歩いていれば佐世保バーガーの店が目に入る。

今回選んだのは、ここ「Sasebo C&B Burgers(佐世保・シーアンドビー・バーガーズ)」というお店である。

 

「艦これ」はさておき、アメリカンな店構えが期待をUPさせてくれる。

 

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前哨戦5

「なんでオメェ、ハンバーガーを食べる前にハンバーガーを食べているんだよ」と突っ込まれるかもしれないが、思惑がある。

 

1つに、次に佐世保を訪問できるのがいつになるかわからないからだ。

やれることはやれるうちにやっておきたい。

 

もう2つは、巨大なことがアイデンティティになりつつある佐世保バーガーではあるが、ブルースカイのものは小ぶりなのである。

腹ペコな今の僕は、小ぶりバーガーであれば2つ食べられるくらいの獰猛さを持っている。

 

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前哨戦6

メインディッシュがハンバーガーなのであれば、オードブルもハンバーガーだ。

そういう世界線からやってきたのだ、僕は。

 

そんな意気込みで店内に飛び込んだ。

わーお、オシャレ。

 

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前哨戦7

ベーコンバーガーに、ポテト・ドリンクセットとした。

ちょっと調子に乗りすぎたかもしれないが、今の僕のテンションはこうであった。

欲望の赴くままだ。

1時間後の未来については、1時間後のYAMAさんがどうにかしろ。

 

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前哨戦8

はい、これを絶対正義と呼びます。

「美味しさ」が具現化した姿だ。

レタス・トマト・ベーコン、全部ワイルドに「コンニチハ」している。

 

佐世保バーガーの定義は、地元食材を使い、注文を受けて作り始めるこだわりハンバーガらしい。

ちまたではどんどん巨大化している佐世保バーガーだが、大きさは関係ないのだ。

 

ここも特にすごく大きくはない。

野菜のみずみずしさの効果ですごく食べやすく、ペロリであった。

 

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前哨戦9

ちなみに、店内には日本地図と世界地図が貼ってあった。

来た人は、「どこから来たのか」をここにピンで示せるのだ。

 

日本は見事に関東から九州北部にかけて、横一直線にピンが密集している。

これさ、小学校の社会の時間で習った「工業地帯の太平洋ベルト」だ。一緒。

東北と北海道の空白が物悲しいね。

全国から持ってくればいい。コロナが明けたら。

 

それでは、ごちそうさまでした!


 

本戦:「ブルースカイ」突撃!

 

20:30。まだ開店予想時刻よりも30分早いが、僕はお店の前にフラリとやってきた。

何か嗅覚が反応したのだ。

 

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ブルースカイ1

お店、やってた。

妖しげなネオンがついている。

こういうお店って、気まぐれで開店・閉店時間が前後することがあるので、念のため見に来てよかった。

 

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ブルースカイ2

10年ほど前に存在を知ったお店。 

最初の項でご紹介した「ヒカリ」と並ぶ、佐世保ハンバーガー店の最古であり元祖である。

 

何度か店の前まで来たこともあるが、営業していなくって入店の機会が無かった。

あと、「なんか小さくて入りづらいお店だな」って思って、そこまで熱心にアプローチしようとも思っていなかった。

 

だけども、やっぱ入ってみたい。

月日が経って思い直した僕は、スケジュールを合わせて、こうして夜の時間帯に佐世保にやってきたのだ。

 

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ブルースカイ3

だからこそ、この見上げる昭和レトロな看板が尊い

 

僕はそっと合掌したさ。

あ、この場合の合掌は仏教的なものではないぞ。

ハンバーガー教の合掌は、パンとパンが重なる様を表現しているのだ。知らんけど。

 

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ブルースカイ4

ちょっと勇気を出して、扉を開けた。

カウンターのみの6席ほどの、狭い店内であった。

 

先客が1人だけいた。

どうやら持ち帰りでハンバーガー10数個をオーダーしているようだった。

店主のおばちゃんが、カウンターの上にバンズを並べ、黙々とハンバーガーを作っていた。

 

カウンターのすぐ横で、僕はその様子を眺めていた。

慣れた手つきで大量のハンバーガーが完成し、先客は手さげバッグいっぱいのハンバーガーを持ち帰った。

今夜はハンバーガーパーティーか?なんか想像しただけでワクワクする。

 

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ブルースカイ5

さて、僕の番だ。

ここで初めて、寡黙なおばちゃんが僕にオーダーを聞く。

僕はベーコンチーズエッグバーガーをオーダーした。

 

おばちゃんは「はい」とだけ言って作り始めた。

食べログとか見ると、「おばちゃんすごく無愛想」・「戸惑う」などのコメントで満ち溢れている。

 

まぁ、これマジであろう。おばちゃんはクールだ。

しかし、ちゃんとこちらとの距離感を取ってくれている、とも表現できる。

おばちゃんはハンバーガー職人なのだ。

僕らはハンバーガーをオーダーし、それが完成するのを待てばよい。

 

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ブルースカイ6

ハンバーガーが運ばれた。

「はい」と無表情で僕の目の前に置かれた。

 

さぁ、試練の時だ。

 

緊張で写真がブレた。それはなぜか。

ここからハンバーガーをひとくち食べるところまでが、この店で一番緊張すべきタイミングだからだ。

 

そんなことを書くと、あなたは下記の記事を思い出すかもしれない。

 

drive-ns.hatenablog.com

 

最初のひとくちで客が次から次へと退場宣言になったと言われる伝説のラーメン屋。

まぁ今日の昼ごはんがそこだったんだけど、夜も夜でなかなかの緊張だ。

 

しかし、僕はWebで予習してきている。

おばちゃんが無愛想ながらも僕の所作を注意深く観察しているであろうことを、僕は視界の隅で捉えている。

 

いいか、あなたに言っておく。大事なことだ。

このハンバーガーは、裏返しだ。逆さまなのだ。

 

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ブルースカイ7

それを知らないと、このあと大惨事間違いなしだから、ちゃんと知っておこう。

 

そして次に、このハンバーガーの持ち方だ。

これもお店のルールがあるからちゃんと守らなければならない。

 

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ブルースカイ8

 

まず、あなたはハンバーガーとお皿との隙間に、両手の人差し指から小指までをゆっくりと滑り込ませるのだ。

ポイントは小指だ。小指までしっかりとバンズに触れるように差し込まなければならない。

 

なんかカウンターの向こうでおばちゃんも「小指もよ」とエールを送って来た。無愛想なエール来た。

ありがたい。がんばれ、僕の小指。

 

そして、残った親指をバンズの上に軽く乗せるのだ。

上の図のようになったハズだ。いいぞいいぞ…。

 

そしたらな、そのままゆっくりとハンバーガーを上昇させる。

落ち着け。ゆっくりとだ。

 

ハンバーガーが顔の近くに近づいてきた。

もうかぶりつきだろう。しかしちょっと待て。最後のアクションだ。

直前で手首返しだ。クルッとハンバーガーを逆さまにしてくれ。

 

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ブルースカイ9

 

つまり、かぶりつく一瞬だけ、ハンバーガーが本来の上下となる。

再びお皿に置くのなら、またハンバーガーを天地返しして、逆さまの状態でお皿においてくれ。

 

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ブルースカイ10

ふぅー…。

最初のミッションを終えた。

ようやく心も平穏になり、ブレない写真を撮れた。

 

カウンターの向こうのおばちゃんも、表情は変えないながらも、心なしか肩の力が抜けたように見える。

 

このイニシエーション(通過儀礼)が大事なのだ。

一見さんだと、ここで食べ方を間違って、おばちゃんに厳しめに指導を受ける人が多いと聞く。

某ラーメン屋のように退店騒ぎにはならないものの、緊張走る儀式である。

 

ちょっと面倒かもしれないが、「このように食べるとハンバーガーが崩れにくい」ということから、これを徹底するのがこのお店のルールなのだ。

 

…しかし、ここは不器用なO型の僕である。

後半になるにつれてハンバーガーが崩れてくる。

それでもとりあえず頑なに持ち方は順守する僕。

 

手首返しの動作のせいで、なんか具材が落ちたりズレたり、大変な惨事だ。

もうこうなると、おばちゃんも飽きれて指摘はできない。

「ほら、ティッシュ使って」と無愛想なフォローをいただいたのみだ。

 

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ブルースカイ11

無事に食べきり、退店。

入れ違いで4名ほどのメンバーがお店に入ってきて、 店内はなかなかにギュウギュウになった。

 

ちなみに肝心のハンバーガーの味であるが、確かにおいしかった。

…なんだろう?

ひとくち食べて感動するようなインパクトのあるおいしさではなかった。

しかしおいしいのだ。

 

バンズはフニフニの白パンみたいな感じだし、ソースも塩コショウとマヨネーズがべースでかなりシンプルなのだ。

具材の質がいいのか、それともすべての食材が合わさったことで奏でるハーモニーなのか。

 

伊達に夜だけの営業で50年続いているわけではない。

確かな実力がそこにあるのだ。きっと。

 

 

佐世保最古のこだわり

 

僕は、ブルースカイを「佐世保バーガーの店」とは表記しないように注意してきた。

また、店内でもそのような発言をしないように注意した。

おばちゃんはそう言われるのを嫌うという話を、Web情報から事前に仕入れていたからだ。

 

これは推測だが、広島の人が「広島焼き」と呼ばずに「お好み焼き」と呼んでいること、そして明石の人が「明石焼き」と呼ばずに「玉子焼き」と呼んでいることと同義なのだろう。

 

自分たちにとっては、日常のものなのだ。

地域名を冠して呼んでほしくない、って思っているのかもしれない。

地域の人にとっては佐世保バーガーではなく、ハンバーガーなのだ。

 

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佐世保バーガーボーイ

佐世保バーガー認定店というのがある。

冒頭の項目で紹介したお店らは、全て認定店だ。

 

上記のようなキャラクターが店の前に立っている。

佐世保バーガーボーイ」という名前で、アンパンマンの作者である「やなせたかしさん」がデザインしたキャラクターだ。

 

ブルースカイにはこのキャラクターは立っていない。

店主のおばちゃんの意思は不明だが、 この企画に乗っからないこだわりがあるのかもしれない。

 

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夜の佐世保

食後、お店の外観の写真を撮っていたら、1人の女性から声をかけられた。

 

「中で食べてきたの?」・「いいわねぇ。私はいつもタイミングを外していて開店していなくって。あなたラッキーよ」・「今日は開店しているけど、混雑しているようでどうしようかしら」・「あなた九州一周しているのすごい!」などといろいろ言われた。

 

たぶんまだ1・2席の空きがあるから、がんばって突撃してみてはどうかと勧めてみた。

 

僕は入店できずに10年過ごし、今回ようやく入れた。

でも、もたもたしているうちに閉店してしまったお店もたくさん知っている。お店はいつもそこにあるとは限らない。

後悔しないためにも、行けるときに行くのが賢いのだ。

*-*-*-*-*-*-*-*

 

…2021年現在、コロナ禍の中で、改めてそう思う。

 

コロナが世に出る数ヶ月前の旅の物語。

 

早くまた、あのときのようなワクワクする旅ができますように。

僕の佐世保バーガー巡りの旅は、まだまだ途中なのだから。

 

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またいつか

…青空が見えない時間帯の営業なのに、店名が"青空"なお店を訪問した物語。

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: ブルースカイ
  • 住所: 長崎県佐世保市栄町4-3
  • 料金: ハンバーガー¥430他
  • 駐車場: なし。近くのコインパーキングを使用のこと。
  • 時間: 21:00頃~翌2:00(日曜定休)

 

No.122【大阪府】知名度トップクラス!?日本一低い「天保山」は、山かどうかすら謎だ!

もしあなたが、町ゆく人1万人ほどに「日本一低い山はどこか?」と尋ねたとしよう。

都道府県、まんべんなくこの質問をしたとしよう。

 

たぶんだけど、回答結果で最多となるのは大阪の「天保山」だ。

自称日本一低い山というのは日本で7つほどはあり、その概念も様々なので一概に正解不正解はない。

なんだったら標高だけなら天保山より低い山も複数ある。3つある。

 

しかし、やっぱここは天保山なのだ。

残念ながらソースは無いが、旅人として多くのスポットを巡り、いろんな情報を見聞きしてきた僕は、そう判断する。

 

標高わずか4.53mにして大阪の誇る名峰を、今回ご紹介したい。

 

 

遊園地の喧騒の片隅で

 

さて、先ほどはいきなり『自称日本一低い山というのは日本で7つほど』と書くことで、あなたを混乱させてしまったことを反省している。

ちょっとここからご説明したい。

 

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これが、僕の知る限りの日本一低い山である。

 

日本一低い山とは、様々な定義から複数存在している。

だから低ければいいものでもなく、どれもがいずれかのジャンルでナンバー1を獲得していると認識いただければと思う。

 

詳しくは、僕の書いた以下の【特集】をご参照いただきたい。

 

drive-ns.hatenablog.com

 

ちなみに件の天保山であるが、僕は3回ほど登山はしているのであるが、残念なことに一度も快晴の中の登山には至っていない。

言い訳だが、山の天候は変わりやすいのだ。

 

従い、「映え」という点ではガッカリさせてしまうかと思い、あらかじめそれを謝罪しておく。

 

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天保山ハーバービレッジ1

年の瀬である。寒いのである。

「は?7月だし。梅雨明け直後で危険な暑さじゃないか。これから東京オリンピックもやるんだよ!」と怒りのお言葉をいただきそうだが、年の瀬である

 

なぜだか知らないが、僕が天保山に向かった3回とも、全てえらく寒い時期なのである。

イルミネーションに彩られた公園を、僕は歩いていた。

 

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天保山ハーバービレッジ2

ここは「天保山ハーバービレッジ」というらしい。

 

その中でも有名な施設は、「海遊館」だろうか。

世界最大級の水槽を持つ水族館であり、魚類最大のジンベエザメだっているのだ。

ワクワクしかない。

 

他にも、ショッピングモールとかフードコートとか、遊覧船とかなんでもある。

ユニバーサルスタジオジャパン」と抱き合わせで、2日間遊びまくることができる。

 

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天保山ハーバービレッジ3

あと、ひときわ目を引くのは「天保山大観覧車」だ。

 

直径100mもある、文字通りの大観覧車だ。

夜になるとこの巨大な円をすべて使い、独創的なイラストが浮かび上がったりするぞ。その演出は僕は直接この目では見たことは無いのだが、世界で初の試みだったのだとか。すごい。

 

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天保山ハーバービレッジ4

年末の夜を花火のように彩っている。

 

きっと浮かれたカップルが、僕を見下ろしている。見下している。

いや、違うか。きっと眼中にすらなのであろう。

 

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天保山ハーバービレッジ5

…大丈夫。

それはお互い様なのだ。

僕も観覧車にはそれほど興味はない。一瞥しただけだ。

 

実は女性と共に来たことだってあるけど、そういうロマンチシズムは今は不要。

即座にきびすを返すと、隣接する暗がりの公園へと入っていった。

 

目的はこっちだ。

天保山への登山だ。

 

 

天保山に登ってみよう

 

写真だけではわかりづらいので、まずは天保山周辺のMAPをご覧いただきたい。

 

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不思議な登山1

ここを「天保山公園」という。

展望台を中心に、緩い丘状となっている公園だ。

 

あなたは「よーし、確かに低い丘だが、展望台に登ろうぜ!」と息巻くと思う。

間違いだ。

 

天保山はそこではない。MAPの左隅なのだ。

公園全体の中でも、特に高くはない場所だ。だけども山なのだ。

脳がバグるかもしれないが、とりあえず今は「そういうことで手を打ってくれ」としか言えずに申し訳ない。

 

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不思議な登山2

僕は今、公園の中を天保山山頂に向けてテクテク歩いている。

傍から見たらそうは見えないかもしれないが、れっきとした登山だ。

 

あなたは「これから右側の階段を上るのかな?」と思われるかもしれない。

いやいや、何言ってんだ。階段を上るだって?

天保山に登るのに、そんな疲れることするわけないじゃないか。

そんな高いところに登ってどうしよってんだよ。

 

現在地を見てくれ。

 

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不思議な登山3

ほら、山頂は正面なのだよ。

右の階段なんて登る必要はないのだ。

 

あなたはキョトンとしてしまっているかもしれないが、実は山頂は既に見えているのだ。

先ほどの写真の突き当りに。

 

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不思議な登山4

立派な塔が立っているのが山頂の目印だと思われるかもしれないが、これもまた違う。

それは「明治天皇観艦之所碑」だ。

明治天皇が、昔ここから軍艦を眺めた記念碑なのだ。

 

では、山頂はどこか。

ちょっと写真を拡大してみよう。

 

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不思議な登山5

 

あそこが山頂だ。

マジか。

 

ゆるーいスロープを登って行く。

 

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不思議な登山6

はい、山頂だ。

足元をご覧いただきたい。

ちゃんと二等三角点が埋め込まれている。まさにこの場所が山頂の証。

 

正直に言おう。

山頂に立っているという実感が皆無だ。

キツネに化かされているかのような気分だ。

 

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不思議な登山7

別アングルからの写真である。

 

山頂より高いものがドッサリとある。

明治天皇観艦之所碑・その台座・頭上を通る阪神高速…。なんだったら、山頂のすぐ後ろにある植え込みの花壇も山頂より少し高いし。

 

そして前述の通り、この公園の展望台は山頂よりもはるかに高い。

今この写真を撮っている僕も、その展望台へと続く遊歩道から撮影しているので、山頂を見下ろしている。

 

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不思議な登山8

備え付けのプレートを撮影してみた。

 

天保山の形状とはちょっと乖離の大きめのゆるキャラが、「この広場が山頂だよ」と、注意喚起をしている。

その言葉の裏には、「間違って丘を登って展望台まで行くんじゃねーぜ」っていう意思が込められているに違いない。

 

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不思議な登山9

さらに昔に、夜間に登山したときの写真である。

 

簡素な木の看板で山頂を示してある。

「マジかよ…」と思った。真っ暗な中で、フラッシュを焚いて撮影し、ようやく山頂を確認できた。

 

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不思議な登山10

一応山頂到達記念の撮影をしたが、しょっぱい表情になった。


ハーバービレッジ方面の灯りと喧騒がうらやましいと感じてしまった。

先ほどは強がって「そういうロマンチシズムは今は不要」とか書いたが、アレはどうやら強がりだったらしい。

 

なんだこの登山…。

 

 

天保山って、なんなんだ?

 

天保山、わけのわからないことだらけである。

そもそもなぜこんなに低い山なのか、なぜ隣の丘のより低いのに山頂なのか、天保山より低い山はあるのになぜ日本一低いと名乗っているのか…。

 

山の成り立ち

 

1831年天保2年)のことだ。

大阪の物資輸送の要である、「安志川」の航路。

これのおかげで大阪の町はギャンギャンに栄えるんだけど、ひとつ困ったことがあった。


この川は上流から大量の土砂を海に向かって運んでくる。

みんな「土砂、マジでジャマ」って思っていたそうだ。


なので、これらの土砂を河口の横にどけて小山にしてしまおうと。

なんだったら、土砂をこんもり積むことで川の入り口の目印にもなって良い感じになるんじゃないかと、ポジティブなリユース案も飛び出した。それ、採用。

 

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天保山を語る1

こうしてできたのが、天保山だ。

今も、天保山の目の前は安志川だ。川の向こうにUSJが見えている。

 

ちなみに当初は文字通り「目印山」と呼ばれていたそうだ。

標高20mほどだったそうだが、いい目印になったのだね。

 

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天保山を語る2

頭上を通る阪神高速も、この斜張橋で安志川を渡っているのだ。

 

幕末には砲台を設置するために山を随分削り取られたらしい。

ゴソッと標高が低くなった。

その後は公園として整備されたり、さらに地盤沈下で標高が低くなったりして、現在に至った。

いろいろあったのだ。

 

 

日本一低い山とは


前項でご説明した通り、天保山は人工の山だったのだ。

これを築山(きずきやま)と呼ぶ。

 

「人工の山を"山"と認めていいの?」と思われるかもしれないが、結論人工の山も山と呼んでいい。

国土地理院という国の組織も「いいよ」と言っている。

ま、なんでもかんでもOKしているワケではないが、ちゃんと山としての歴史があったり、地域の人に親しまれていれば山だと認めてくれるのだ。

 

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天保山を語る3

色々な遍歴をたどった天保山であるが、一時期国土地理院国に認められた地形図に掲載された山としては日本で一番低い時期があった

これが、日本一低い山と言われる由縁である。

 

現在、国土地理院に登録されている日本一低い山は宮城県にある「日和山」である。

この日和山もドラマチックな ストーリーを歩んでいる。

気になる方は以下の記事を読んでみてほしい。

 

drive-ns.hatenablog.com

 

そして、天保山日和山の歩んだ日本一争奪戦のデッドヒートを以下に記そう。

見づらかったら拡大して見てほしい。

 

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天保山を語る4

 

つい数年前まで確かに天保山は日本一低い山だったのだ。

東日本大震災日和山が大きく削り取られ、日本一低い山の地位を明け渡すこととなったのだ。

 

今は残念ながら日和山には劣っている。

国土地理院登録の山としては、日本で2番目に低い山だ。

国土地理院登録以外の山も含めたら、もっと負けてしまう。

 

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天保山を語る5

でもね、人気で言えば低い山の中で1番かもしれない。

 

かつて、土砂を積み上げて日和山を作るとき、人々はそりゃもうテンションが高く、連日お祭り騒ぎのようにエンジョイしながら作ったそうだ。

そんな稀有な土木工事。

 

なんだそれを聞いて、大阪の良さが詰まった山だなって感じた。

だからこそ、今も大阪の人々に愛されているのだろう。

 

いや、実際カップルたちはハーバービレッジ側に行くよ。

こんな夜の公園とかを歩く人は少ないよ。

 

それでも、人々は天保山が日本一低い山だと知っているのだ。

それ、すごく大事だしステキなことなんだと思う。 

 今後も大阪湾で輝け、天保山

 

 以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

 

No.121【新潟県】市街地のビルの隙間を練り歩く巨大な弘法大師像!!踏み潰されるなよ!

あれは、新潟市内をドライブしていたときのことだった。

 

ビルの隙間を、「弘法大師」が練り歩いていたのだ。 

 

日本仏教の祖と言ってもいい立ち位置の、弘法大師

その彼が、電線の張り巡らされた雑居ビルの間で穏やかな顔で立っている。

なんというミスマッチだよ。

 

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「こんなシーンをどっかで見たな」って思った。

 

たぶん「ゴーストバスターズ2」だ。

ビル群の間を自由の女神が歩くのだ。そのシーンがフラッシュバックした。

 

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いかんせん昔の映画だし、そもそも僕はゴーストバスターズ2を見たことすらない。

なぜゆえ記憶の奥底からサルベージできたのかは謎だが、仮にそれが明確であったにしてもあなたの興味を得られるとは思えないので、本題に行こう。

 

 

弘法大師を探せ

 

僕はこの日、「人情横丁」を歩いていた。

新潟の中心地に終戦直後に造られたという商店街だ。

 

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人情横丁1

およそ160mの長さの、ギザギザ屋根の長屋のような商店街。

現在も38店舗ほどが営業中だという。

 

…が、行った日が悪かったのかな?シャッターが目立つ。

新しいカフェもあるし、アメリカンな雑貨屋もある。

チラホラ興味をそそられるが、いかんせん人が少ないな、と感じてしまった。

 

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人情横丁2

これも新型コロナウイルスの影響なのだろうか?

 

何事においても「もしコロナが無かったら…」と考えたいところだが、もうこの地球はウイルスに汚染されている。どうしたものだろうか?

少なくとも、人情だけは失いたくは無いものだが。

 

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人情横丁3

閑話休題

 

僕はこの商店街も見たくて来ているのだが、もう1つ大きな目的がある。

この近くにデッカい弘法大師像が聳えている、というものだ。

 

場所は…、あんまりよくわからないや。

なんとなくの方向はわかるので、歩いて探す。

 

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古町

「ふるまちモール7」だ。

名前の通り古い歴史を持つ、新潟の繁華街だ。

 

歩いているうちにお腹が減ってきたので、レンガ調のクラシックなカフェで美味しいグラタンを食べたりしたのだが、その話は関係ないので割愛しよう。

 

とりあえず、なかなか弘法大師が見つからずに、「こっち方向のはずなんだけど、全然そんな雰囲気無いじゃないか」・「あの坊さん、どこほっつき歩いている?」 と、若干言動も荒くなりつつあるとき、発見した

 

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弘法大師1

 

イエロー・ビッグガイ

 

ようやく会えたぞ、弘法大師

ビルの背後にその姿が見えたとき、思わず「おぉぉぉ!!」って叫んだ。

 

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弘法大師2

たぶんだけど、大昔は仏教とかお坊さんってのは、幸せに暮らす上でなくてはならないものだし、なんなら死後の運命まで左右するような大事なものだった。

だけども現代においては、そこまで崇める対象ではなくなってしまっている。

 

そんな現代だが、弘法大師像をようやく見つけて「うおぉぉ!」とか叫んでいる僕は、まさに古代人の感覚なのかもしれない。

このカタルシスよ。迷って逆に良かったかもしれぬ。

 

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弘法大師3

よーし、常にビルがジャマだなー。

そして電線の本数もえげつないなー。

 

生活感モリモリのビルから我々を見下ろす黄色い弘法大師

どういう感性であればこれを造れるのか、ちょっとナゾすぎる。僕には無理だ。

 

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弘法大師4

角度を変えて見上げてみた。

 

レーザートラップか。

セキュリティガッチガチの美術館に深夜に忍び込む弘法大師か。

…失礼。

弘法大師はそんなことしない」というテレパシーを受信した。
 

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弘法大師4

「手編みのマフラーを作ろうとしたけど、糸がグッチャグチャに絡まって、手元に出来上がったのはゴリゴリのダークマター(電柱)」、…みたいな角度の撮影もできた。

 

もうね、どこから見てもビルの電線に包囲されているのだ。

実に庶民的だ。親しみしか感じない。

弘法大師が開いた、真言宗の総本山の「高野山」とか何度も歩いているが、あそこのキリッと張り詰めたような荘厳な空気と真逆だ。

 

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弘法大師5

ビルに登ったりしない限り、このくらいが一番全身が見える角度であろう。

 

いろいろ調整し、コインパーキングに足を踏み入れながら撮影などし、付近を歩く人からは奇異の目で見られた。

いやいやいや。あなたが奇異の目で見るのは僕ではない。あのとんでもない弘法大師であろう。…そう力説したかった。

 

 

弘願寺の謎

 

では、弘法大師の足元に注目してみよう。

するとあなたは気付くはずだ。

弘法大師は地に足をつけているわけではない。建物の上に立っているのだと。

 

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弘願寺1

写真中央の「道後温泉本館」みたいなビジュアルの建物、あれが弘法大師の足場になっているのだ。

ちょっと近づいてみよう。

 

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弘願寺2

ビルとビルの間にミチッと建てられている。

 

この建物の名は、弘願寺。そう、お寺なのだ。

建蔽率とかすごいことになっていそうなお寺だ。今まであまり見たことのないタイプ。

 

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弘願寺3

しかし貼り紙を見ると、ちゃんと「真言宗 新潟山 弘願寺」の文字。

弘法大師の開いた真言宗の文字がある。

 

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弘願寺4

左右にはちゃんと仁王像も立っているぞ。なかなかの迫力なのだ。

 

しかしお寺の拝殿(?)そのものは、ゴッチリした石造りで要塞や蔵のようであり、異様な雰囲気である。

 


kokontouzai.jp

 

…で、ちょっと僕個人の調査力では解明に及ばないので、こちらのWebサイトや、その他いくつかのサイトを参考にさせていただいた。

 

どうやらこの建物は元からのお寺ではない。

「オリオン座」というストリップ劇場&キャバレー施設だったそうなのだ。

うおぉ、いっきに香ばしくなってきたぞ。

 

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弘願寺5

そういう先入観で建物を改めて見ると、不思議とそれっぽく見えてしまう。

 

しかし、なぜにストリップ劇場などという煩悩の塊みたいな施設が、いきなりお寺になったのか。

その理由は、管理者が同一人物だったかららしい。

「ストリップ劇場のオーナー」=「弘願寺の住職」。

 

なんとも奇妙な転職だ。

…って思ったけど、ストリップ劇場のオーナーが病気で死にかけたとき、夢枕で「お寺を作りなさい」みたいに言われて、こんな感じにドデカい弘法大師を造っちゃったらしい。1955年ごろのお話だそうだ。

 

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弘願寺6

財を成した人間も、最終的には病になるし、そうなったら神にすがるのだ。

法大師に健康をうのだ。

だから弘願寺っていうのかな。うまい。

 

弘法大師の高さは約9mほど。

仁王像は人間国宝の「松久朋琳」の策と言われている。

これらの総費用は1億2500万円だったが、寄付等には一切頼らなかったそうだ。

 

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弘願寺7

そして、先ほどもご紹介した貼り紙の通り、不動明王毘沙門天の命日である毎月28日には護摩供養をしているのだ。

いたって真面目なのである。

 

最初から煩悩の入り込む隙間の一切ない、神聖な神社仏閣もいいだろう。心が真から清められる。

 

しかし、一度煩悩にドップリと使った人間の造ったお寺もよいかもしれない。

少なくとも僕はね、人間的にこっちのほうが近いかもしれない。

(しかも、まだ煩悩を捨て去るつもりはさらさらない)

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 弘願寺の弘法大師
  • 住所: 新潟県新潟市中央区西堀前通六番町
  • 料金: 無料
  • 駐車場: 付近のコインパーキングを使用のこと
  • 時間: 見上げるだけなら、特になし

 

No.120【三重県】究極の卵かけご飯を求め…!「コケコッコー共和国」で、いざ卵食べ放題!

TKG(卵かけご飯)。

 

これは、その最高峰を目指した二人の男たちの物語である。

 

その絶品卵かけご飯を提供してくれるのは、「コケコッコー共和国」。

なんというグローバルな響きよ。

その国の国民食が、卵かけご飯なのだ(と推測)。

 

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それを我々に提供してくれるのだから、これは一大国家プロジェクトに違いない。

胸が高鳴るぜ、国際コミュニケーション!

 

 

コケコッコー共和国、入国へ…!


残暑の厳しい初秋のある日であった。

琵琶湖を巡る旅をしていた僕は、かねてからの旅友であるふじふじと合流することとなった。

 

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プロローグ1

このときから遡ること6年ほど前、僕は日本最北の有人島である「礼文島」にてふじふじと出会った。

その後、京都や大阪でふじふじと再会し、一緒に観光したり酒を飲んだり、鴨川に飛び込んだりしている。

11月の鴨川の水は冷たいが、僕らはアツい魂を持っているのでそこそこ大丈夫だ。

 

ふじふじは、原付で分割日本一周をしている旅人である。
この度は、ちょうど伊勢エリアでふじふじと会えそうな日程であるため、「じゃあ会おうか」となった次第だ。

 

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プロローグ2

伊勢のとある温泉施設でふじふじと合流すると、二人でひとっ風呂浴びた。

 

暑くて汗だくだったので気持ちがいい。

全部割愛するが、実は本日僕がここにやってくるまでの間も、いろいろ冒険があったのだ。人生冒険だらけなのだ。

 

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プロローグ3

ふじふじのバイクを見せてもらった。

各地のステッカーが貼られたり剝がれたりしていた。

 

これで分割日本一周か、すごいな。

日本一周を始めたのはかつての僕の影響だと言っていた。申し訳ない。

 

このあとも一緒に観光したりするのだが、ひとまずその話も割愛だ。

 

そして昼飯を食べようという話になった。

そこでふじふじの口から出たスポットが、コケコッコー共和国であった。

 

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プロローグ4

僕はパスポートとか持っていないので少し心配になったが、どうやらそういうものは不要らしい。

ふじふじは「卵かけご飯を食べるのだ」と、力強く言っていた。

こぶし、握りしめていた。たぶん。

 

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プロローグ5

ブンブン唸るふじふじの原付に僕のHUMMER_H3がついて行くという異様な光景が実現した。

 

ほどなくして国境付近に来たようだ。

卵かけご飯、卵食べ放題390円の看板が、入国者の心を躍らせる。

 

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プロローグ6

そして、無事に入国。

入国審査とかもなかった。全人類ウェルカムな文化だ。

 

 

卵、それは命!

 

こんにちは、コケコッコー共和国。

 

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国内視察1

2台並べて駐車した。

丘の上の、緑あふれる山々が見渡せるロケーションの国だ。

 

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国内視察2

伊勢自動車道の勢和多気ICがすぐ目の前に見える。

 

実際に高速道路に乗るにあたっては、迂回しながら行く必要があるが、それでも相当に近い立地だぞ。

高速ドライブ中でも気軽に立ち寄れる。

 

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国内視察3

コケコッコー共和国は、ニワトリが飼育され、そして有精卵・卵や鶏肉の加工食品などが販売されている施設と、食堂とがある。

あとはアスレチックエリアなどがあるらしい。

 

 

Googleマップさんからの衛星写真を添付する。

勢和多岐ICとコケコッコー共和国の位置関係がわかりやすい。

そして、おそらく長屋のようにズラリと並んでいるのが鶏舎だ。すんごい規模。

 

ひとまず、僕らの目当てはランチだ。

「山の駅よって亭」という名の食堂にめがけて突進する。

鶏肉も食べられるそうだぞ、イェイイェイ!!

 

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国内視察4

…が、食堂は満席だったそうだ!

 

どうやら席数はそんなに多くは無いらしい。

まぁそれ以上に、卵かけご飯や鶏肉が魅力的すぎるからだろう。そりゃそうだ。みんな食べたいに決まっている。

 

受付に名前を書いておき、その間にまずはお土産屋を見て回ることとした。

 

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国内視察5

一日一個の元気 健康を保つ 

全国有数の平飼い有精卵を扱っています

太陽の光を十分に浴びて育った平飼い有精卵

 

ちょっと写真のフレームから文字が切れてしまって、全文読めない部分もあり恐縮だが、このような文言が読み取れる。

「なんかスゲーんだな」ってことが伝わればいいんじゃないかと思う。

 

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国内視察6

卵は鶏の大事な一つの命なのです。

産み立てだからかたいけど、これが昔の味なんです。 

 

もうね、これらってコケコッコー共和国での必修科目である、「道徳」の授業だよね。

僕らはこれから卵をいただくのだ。有精卵だ。

それすなわち命である。

 

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国内視察7

危なかった。

 

待ち時間なく食堂に入っていたら、普通に「卵うめー!」みたいに喜ぶだけだったであろう。

命の尊さ、これ大事。事前に改めて学習できて感謝。

 

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国内視察8

思わず空を見上げたよね。

秋のうろこ雲が綺麗であった。

うろこの1つ1つが純白の卵にも見えた。

 

そして、それは命の価値を知っている人が大事に育てた鶏の卵なのだ。

これは生命の宝石と言っても過言ではないだろう。

卵かけご飯への期待も爆上がりする。 

 

 

絶品の卵と鶏肉のランチ!

 

30分ほど待機していたであろうか。僕らの名前が呼ばれた。

いよいよランチの時間である。 

 

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鶏と卵の競演1

そのとき僕とふじふじは、「八ッ場ダム」に沈んだ群馬県の「川原湯温泉」の話で盛り上がっていた。

あと、「竹田城」の雲海を薦められた僕が「よーし、行ってやる!なんだったら来週にでも行ってやる!」と豪語していた矢先であったが、とりあえず食堂に移動することとする。

 

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鶏と卵の競演2

30人ほど入れると思われる食事スペースだ。

ワイワイ気さくにランチを楽しめるような、ハードル低めの空間だ。ステキ。

 

まずは卵かけご飯だ。

390円である。当然それをそれぞれオーダーする。

 

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鶏と卵の競演3

鶏肉も2人で1つオーダーしよう。

かためとやわらかめがあり、どちらも410円だ。

 

かなり迷ったが、ここはやわらかめだ。

通ならかためにするのかもしれないが、通じゃないのでわかりやすい方を選んだのだ。

いいのか悪いのか、平成時代以降は「やわらかさが正義」みたいになっているので、しょうがない。

 

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鶏と卵の競演4

卵がやって来た。

テーブルの上にドンと卵いっぱいのカゴが置かれたのだ。

ここから自由に取って食べるシステム。

 

8個ほど入っているように見えるが、足りなければまたお替り頼めるのだ。

まぁご飯はおかわり自由ではないので、ご飯と卵の比率を考えるとそんなに何個もは使いづらいだろう。

 

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鶏と卵の競演5

卵。

黄身の黄色がすごく鮮やかで、そして白身はしっかりと立体を保とうとしている。

これが生命力というヤツなのだろう。そう僕は思った。

 

卵の味、濃厚だ。小宇宙だと思った。

ご飯に軽く纏わせて食べれば、ただただ至福よ。

 

本能にまかせるのであれば、このまま「ガガッ」と汚く掻き込みたい。そんな衝動に駆られる。

しかしここはパブリックスペースだし、ご飯のお替りはできない。

上品に丁寧に、卵を味わった。

 

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鶏と卵の競演6

そして鶏肉である。

約400円とは思えないほどのボリュームに僕らは驚いた。

一家族のおかずになるわ、これ。

 

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鶏と卵の競演7

焼く前にこのお皿の上の味噌だれとよく絡め、そして炭火で焼くのだ。

おいしくないはずがない。

ちょっとした暴力だ。味の暴力。

 

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鶏と卵の競演8

この写真を見れば、たった一皿の鶏肉がどれだけボリューミーかわかるだろう。

かためとやわらかめの2皿をオーダーしなくてよかった。

危なく2皿頼みそうであったが、1皿で充分であった。

 

もし2皿オーダーしたなら、これ中ジョッキ絶対必要ですもん。

そしたら僕ら、もう今夜はここで車中泊せざるをえないですもん。

 

顔をお見せできなくって残念だが、ふじふじはすっごい悪い顔して笑っている。

わかる。

楽しみ過ぎるのだ。炭火で肉を焼き始め、香ばしい匂いが漂っているのだ。
 

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鶏と卵の競演9

 

はい、うまーい!!

 

 

鶏肉ね、やわらかい方にしたけども、やっぱ身の引き締まり方が違うのよ。

噛んでいて程よく「ギュッギュッ」ってなる。

ずっと噛んでいたいと思う。

 

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鶏と卵の競演10

そして卵かけご飯だ。

「卵→鶏→卵→鶏」 のデリシャス・ルーティーンだ。

 

卵、マジでうまい。

いい親鳥から産まれた卵なんだろうなぁ。

親の顔を見てみたい。

 

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鶏と卵の競演11

正直、結構腹いっぱいになった。

あとはゆっくり鶏肉を焼くのだ。

 

まるで焚火を囲んで語り合うかのように、僕らは炭火で焼けていく鶏肉を見ながら語り合ったさ。

 

礼文島が大きな災害に見舞われた話、そこにある日本一クレイジーな宿「桃岩荘」もいろいろ大変だった話など、ふじふじが島の情報をいろいろくれた。

桃岩荘には、日本9周目でまた訪れたいと考えている。

「ただいま!」と言って帰るのだ。それまで元気に営業してほしい。

 

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鶏と卵の競演12

ごちそうさまでした。

卵は1人3つずつ食べた。

 

1人あたり600円でこのパラダイス。

満足しかない。


 

そして僕らの旅路は分岐する! 

 

では、ここでさよならだ。

ここから先はまた、それぞれの旅路だ。

 

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それぞれの旅路1

僕はふじふじに声をかける。

 

「今回はありがとう。手段もスタンスも違うけど、この先もお互いが日本国内を走っていれば、またいつかどこかで再会することもあるだろう。

そのときはまた、礼文島の話で盛り上がろう。」

 

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それぞれの旅路2

最後に記念撮影をした。

そして僕は、ふじふじを見送ってから出発することとする。

 

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それぞれの旅路3

…このときから少し時間は流れた。

 

僕はこのとき以来、2021年現在に至るまでふじふじとは会えていない。

一度、ふじふじが「あとは鳥取県の海岸沿いを走れば日本一周達成!」って言いながら鳥取を走っているとき、僕も近くを旅していたのだ。

 

連絡を取り合ったが、ニアミスであった。

それぞれの旅路を優先させたので、惜しくも出会えなかったのだ。

それでもいい。

きっとまたどこかで会えるから。

 

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それぞれの旅路4

 

…さぁ、あなたも三重県を旅することがあるのであれば、コケコッコー共和国に立ち寄ってみてはどうだろうか?

 

コケコッコー共和国の公式Webサイトを開くと、こんな表示も出てくるぞ。

 

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『三重 ツーリング中の休憩に』

この国は、ツーリングライダーの訪問を待っている。

旅人の訪問を待っている。

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。 

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: コケコッコー共和国
  • 住所: 三重県多気多気町丹生4409
  • 料金: 卵かけご飯¥390他
  • 駐車場: あり
  • 時間: 10:00~17:00(毎月第2火曜日定休)

 

No.119【北海道】日の出は朝の4時台!!早起きして霧の「摩周湖」から絶景朝日を見よう!

僕は写真を撮るのがヘタだ。

 

少なくとも、プロの写真家と対比すれば、とんでもなく低い場所に位置する。

腕も悪いしカメラも安物だし、時間をかけて延々何10枚もの写真を撮ろうとも思っていない。

 

なぜかっていうと、僕は写真を撮るために旅をしているわけではないからだ。

そりゃ写真も好きだけど、さまざまな要素を自分好みにブレンドして、自分の求める旅を作り出している。

 

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ここに1枚の写真がある。

摩周湖」からの朝日だ。

"霧の摩周湖"の異名があるので、霧の中から太陽が出ている。

 

プロの写真家であれば、同じシチュエーションから撮影した1枚の写真で、閲覧者を充分に魅せられるであろう。

しかし、僕にはそれは困難だ。

 

でも、この1枚の写真を撮るに至ったドラマであれば、語れる。

だって旅人だもん。

 

同じ時間に同じ場所で写真を撮っていた人もいた。

たぶんその人の方が写真が上手だ。三脚とか使っていたし。

その人にもその人の物語があるだろうが、僕にだって僕だけの物語がある。

 

旅人として、今回の記事を書く。

 

 

旅人は朝日に思いを馳せる

 

道東、弟子屈の町。

未舗装の砂利道を進んだ森の中に、一軒の旅人宿があった。

 

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ひとつぶの野望1

そこで僕は久々に、ライダーのkatsu君と再会した。

以前に道東で出会い、一緒に走ったり・東京で飲んだり・山梨でキャンプをしたりした仲だ。

 

今回同時期にお互い北海道を1人旅しており、北海道半周分くらいを追いかけて、旅の終盤にようやく合流したのだ。

 

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ひとつぶの野望2

宿は簡素な男女別の相部屋だ。

何もないけど、この空間は旅人たちが輪になって地図を広げ、これまでの行程を共有したりオススメスポットを紹介するのにうってつけなのだ。

 

明日は稚内以外は大体くもりだという。

僕は日本3周目の残りの海岸線が道南に少し残っているので、明日のうちに函館近辺まで走るつもりだ。

katsu君は「層雲峡」に行くと言っていた。

 

他のライダーさんも交え、こんな話をする。

それぞれが旅人。またどこかで会うこともあるかもしれないが、基本的には一期一会だ。

 

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ひとつぶの野望3

ちなみにこの宿、1泊2食で3000円。大変にありがたい価格だ。

以前ここに泊まったときはもっとすごくて、2000円台の上にお寿司食べ放題だった。

 

夕食を食べ、そして飲み会タイムだ。

お酒もオツマミも無料。あとはお土産を買ってきた人、カンパがある人はそれを振舞ったりと、自由だ。

 

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ひとつぶの野望4

僕は今日は早々に飲酒を制限し、「明日は早起きして朝食前にドライブしようかな」と言い出した。

明日は道南に向けて一気に走る。観光よりも走行を重視する日なのだ。

 

だから朝のうちに「摩周湖」とか「硫黄山」とか見ておこうかなって思っている。

摩周湖の第一展望台は普段有料だけど、早朝だったら料金所も閉まっていて無料なのだ。早起きは三文以上のお得なのだ。

 

そしたらkatsu君が、「どうせなら摩周湖で一緒に朝日見ましょう。」って提案してき
た。

「いいぜ」って言いながら弟子屈の日の出時間を調べたら、4:30だった。ヤベェ。

 

ちなみに夏至だと3:40くらいの日の出だ。ハンパねぇ。

 

 

未明の弟子屈は霧の中

 

3:45に起きた。当然部屋の中は真っ暗だ。

横に寝ているkatsu君を起こす。

そして、他の人を起こさないように静かに窓辺まで行き、天気をチェックする。

 

窓の外は真っ暗で何も見えないんだけど、なんだかポツポツと雨が降っているよう
な音がする。

えっ!?まさか雨っすか!?

 

一瞬固まる。これは朝日を見に摩周湖まで行ったところで無駄足になるんじゃな
かろうか。


katsu君と話し合う。そして結論が出た。

行こう。せっかくこんな時間に起きたんだから。

 

そして、例え朝日が見れなかったとしても、それはそれで旅の思い出。

笑い話のネタくらいにはなるだろう。

笑えるなら、それでいいのだ。旅なんて、そんなもんだ。

 

ジャージのまま、最低限の所持品だけで外に出た。

 

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未明の冒険1

外に出ると、モヤの中に薄っすらと月が見えた。

ちょっと安心。

分厚い雲が出ているわけではなさそうだ。

 

そして雨も降っていなかった。

さっき聞こえたのは夜露の音だったのだろうか?ナゾだ。

 

愛車の助手席にkatsu君を乗せ、摩周湖を目指して出発した。

周囲は全ての有無だった。

街中に出たが、当然のごとく町は静まり返っていた。


弟子屈の町の中心地の自販機で、缶コーヒーを買った。

8月とは言え道東の未明はとても寒いので温かいのを飲みたかったんだけど、冷たいのしかなかった。

濃霧の中、我慢して飲む。体はさらに冷えたが、目は覚めた。

2人でワハハと笑う。

 

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未明の冒険2

市街地を抜け、道道52号を摩周湖に向かって北上していると、早くも空が明るくなってきた。

 

弟子屈の町の中はずっと深い霧だったけど、「摩周湖」への峠道はちょっと霧が晴れている。

これはもしかしたら日の出を見れるかもしれない!

テンション上がる!

 

…と思いきや、またすぐに深い霧の中に突入してしまった。

絶望しかない。

 

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未明の冒険3

霧の中を慎重に走っていると、右手に摩周湖の第一展望台が見えてくる。

霧で駐車場自体がよく見えないくらいな状態。

ダメだ、今回の人生…。

 

しかし、僕にはまだわずかながらも希望があった。

希望の火は、まだ消えてはいない。

 

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未明の冒険4

これが、摩周湖の西岸にある2つの展望台の位置関係だ。

 

あなたは第2展望台がないことに首をかしげるかもしれない。

昔は、第1と第3の間にあったそうなのだが、遊歩道を歩いて出ないと行けない上、現在は完全に閉鎖されて歴史の深淵に沈んでいる。

 

まぁそれは置いておいて、重要なのは標高差だ。

現在地である第1展望台よりも、3㎞ほど北にある第3展望台の方が、標高が120mも高い。

 

もしかしたら、第3展望台は霧の上かもしれない。

 

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未明の冒険5

 

霧を突き抜けた。

 

 

第3展望台のわずか300mほど手前で、一気に視界が晴れたのだ。

そして頭上には再び月が輝く。

katsu君と共に「うおぉぉぉーー!!」って咆哮したよね。

 

さぁ、間もなく空が焼けるぞ。

 

 

雲上の幻想世界にて

 

4:24、僕らは摩周湖第3展望台に到着した。

空はボンヤリと明るくなってきてはいるが、まだ太陽が昇る気配はない。

 

日の出は4:30であり、海が見える立地であればもう空は真っ赤であろう。

しかし、ここは山間部だし下界はスッポリと霧で覆われている。

まだ時間はかかるだろう。

 

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雲海の上で1

…「硫黄山」だ。

かろうじて雲海の上に顔を覗かせている。

 

こんなにおとなしい硫黄山は初めてだ。 

小さいながらもカッカしている硫黄山、今は白いお布団を掛けてスヤスヤ寝ている…。

 

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黄山

ちなみにこれが、快晴のときに下から見上げた硫黄山だ。

ボコンボコン噴火して、すごい迫力なのよ、これ。

 

では、摩周湖側を眺めてみよう。

反対側の硫黄山ばかり見ていたら、後ろでkatsu君が「湖が朝焼けに染まってきたー!」と僕を呼んでいるので。

 

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雲海の上で2

あ、すっごいこれ。

雲の大海原だ。雲海とはよく言ったものだ。

 

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雲海の上で3

呑みこまれそうだ。

信じられるかい?この下は一面の湖なんだぜ。

その湖面を分厚い霧がしっかり覆っている。

 

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雲海の上で4

本当に、ギリッギリで雲の上にいるのだ。

あと10mも下だったら、全く何も見えなかったかもしれない。

 

霧の町釧路の海で発生した大量の海霧が、地形に沿って80㎞も内陸の摩周湖までやってくる。

そして、この摩周湖のすり鉢のような窪みにカポッとハマるのだ。

 

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雲海の上で5

僕は、日本3周目に至るまでに何度か摩周湖は見ている。

しかし、スッキリ晴れ渡っているシーンが多かった。霧の摩周湖は久しぶりだ。

 

尚、晴れている日の摩周湖の話は、機会があれば別記事としてご紹介したい。

それはそれですんごいから。

 

普通であれば湖面が見えないとガッカリするのだろうが、今はこれが嬉しい。

湖に雲海だもんよ。

こんなシチュエーション、他にあまり知らない。

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雲海の上で6

何枚だって写真を撮るさ。

今日はこの後、曇り予報なのだから。

今のうちに絶景を堪能しておかねばならない。

 

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雲海の上で7

さらに言うと、僕はこの旅で日本3周目が終わる。

てゆーか、明日の夕方のフェリーで北海道を離れるので、本当にクライマックスなのだ。

 

旅が終わったら、日本3周目の後半を担当してくれた愛車のトヨタbBとも別れる。

何もかもが終わるを迎えるのだ。

だからこそ、今日のこの朝が感慨深い。

 

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雲海の上で8

僕ら以外にはカメラを構えたおじさんが1人いるのみだったが、空が明るくなるころには7・8人に増えた。

みんな頑張って早起きしてきたのだな。霧の中、ここまで車を走らせてきたのだな。

仲間よ。

 

「日が昇りますよ…!」

katsu君が山の稜線を指さした。


摩周に金色の朝日射す

 

4:45。

 

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朝日1

静かに朝日が昇った。

映画のワンシーンかな。…って思うほどのドラマティックなシーンだ。

 

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朝日2

かすかに風が吹き、雲海がうねる。

寒すぎない程度のそよ風が、向こうから朝日を運んでくる。

 

僕らは、ただ無言であった。

 

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朝日3

katsu君が朝日の方を向いたまま、口を開いた。

「正直、あの天気で朝日は見れないと思っていた…。YAMAさんが『行く』と言わなければ1人でここまでは来なかった。だからこそ、感動です。」

 

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朝日4

僕も、1人だったら来なかったかもしれないな。

いずれにしても、旅先で誰かと一緒に朝日を見れるってのは貴重だ。

 

マジ、ありがとうだぜ…。

 

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朝日5

湖とは思えない、まるで深い山脈にいつかのようなこの絶景。

僕の人生の中でも有数の朝日だ。

 

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朝日6

これで日本3周目が終わる。

僕はこれを機にドライブ人生を引退しようかと思っているが、もしかしたらまだ続けるかもしれない。

 

だけども、これを超える朝日を見れるだろうか?

少なくとも、今日のこの日のことはずっと思い出に残したい。

 

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朝日7

摩周湖が真っ赤に焼けた。

一発逆転だ。

 

これにてミッション終了!

 

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朝日8

帰り際に見た、道路の反対側の硫黄山は、さっきよりも少しだけ頭が出ているように思えた。

なんだか天空の城の「竹田城」みたいな構図だな、これ。

 

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朝日9

宿に戻ろう。

車を走らせるとすぐに、また霧に包まれた。

 

摩周湖第1展望台もまだ霧の中だった。

僕らは本当にラッキーだったのだ。

宿に戻ってからも、興奮でなかなか寝付けなかった。

 

*-*-*-*-*-*-*-

 

そしてチェックアウトのとき。

層雲峡に向かうkatsu君と、函館を目指す僕とは途中までは同じルートだが、別々のタイミングでの出発だ。

 

僕らそれぞれに自分だけの旅がある。

自分のタイミング、自分のペースで走るのだ。

「また会えたら会おう」と握手をして、バイクで走り去るkatsu君を見送った。

 

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「阿寒湖」や「オンネトー」を観光しつつ足寄の町まで来たら、偶然バイクを走らせるkatsu君を見かけたりしたんだけどね。

一瞬であったが、お互いピースを交わした。

 

バイバイ。

君の行き先に栄光があることを祈る。

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

 

No.118【大阪府】一等三角点を有する日本一低い山「蘇鉄山」!標高7m弱のエリート山だ!

一等三角点。

これを有するものにどれだけの価値を見出すかは、人それぞれであろう。

 

しかし、多かれ少なかれ、重みをもつキーワードであることは確かだ。

「有名国立大学の出身である」くらいのパワーはあるのかもしれない。

その肩書をその後に生かせるかどうかは本人次第だが、1つのステータスの指標にはなるだろう。

 

今回は、「蘇鉄山」の話をしたい。

一等三角点を持つ山としては、日本一低い山である。

その標高は、わずか6.97m

 

まずは、山と呼んでいいのかどうかすら疑わしいスケールだ。

 

 

大浜公園にその山はある

 

日本一低い山。

オンリーワンを特定するかのような表現ではあるが、実は日本一低い山はたくさんある。

7つくらいある。

 

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これが僕が今まで訪問した「日本一低い山」だ。

何がホンモノで何がウソだ、とかではなく、いろいろあって全部正しいと僕は思っている。


詳しくは、僕の書いた以下の【特集】をご参照いただきたい。

 

drive-ns.hatenablog.com

 

上記に列挙した中では、蘇鉄山は2番目に高い。

…とはいっても標高6.97mなのだから、山の概念を覆すほどの低さではあるが。

 

2番目に高いというステータスを持ちつつも「日本一」を名乗る理由は何か。

それは、「一等三角点を有する山としては日本一低い」からである。

 

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大浜公園へ1

まぁこの概念が成り立ってしまうと、「山小屋がある山としては…」とか「山頂に松が生えている山としては…」とか「冬季に冠雪する山としては…」みたいに、概念が無限にできてしまって危険ではある。

 

だが、僕は「日本一低い山」と自称しており、それがある程度世間一般に認知されている山というところから、上記のリストを作成した。 

 

本記事はあくまで、日本一低い山を名乗る山はたくさんある、というご紹介が目的があるとご認識いただきたい。

 

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大浜公園へ2

さて、前置きが長くなったが、僕は今堺市の「大浜公園」に来ている。

この公園内に蘇鉄山があるのだ。

 

ヤベー、ナメていた。

もっと庶民向けののほほんとした公園かなって思ていたら、割とガチだ。

プール・相撲場・体育館・テニスコートサル飼育場…。

アスリートの聖地みたいな複合施設だな。サル以外は。

 

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大浜公園へ3

そんな中に目指す蘇鉄山があるのだ。

なるほどなるほど。アスリートの表彰台みたいな感じで、あそこに立ちたい。

 

ちなみに、最初に僕が蘇鉄山を目指したのは、年末の日没後であった。 

本来であればこの公園には広い駐車場があるのだが、閉鎖されていた。

年末だからか夜だからかは知らないが、ちょっと困った。

 

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大浜公園へ4

園内は街灯がついているし、すごく綺麗に整備されている。

しかし寒いし人がいなくて寂しい。

散歩している人が1人2人いたりしたが、それはそれで怖い。

 

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大浜公園へ5

園内の立て札だ。

いろいろ気になる表記もおありかと思うが、とりあえず蘇鉄山に登ることだけを考えよう。

 

冬山でかつ夜間の登山である。

普通の山だったら絶対に遭難するパターンである。

小雨も降っているし、僕は蘇鉄山は初めてだ。山をナメている。こんな記事を書いて、炎上しかねやしないかとヒヤヒヤだ。

 

標高が7mでよかったという話だ。

 

 

蘇鉄の生える丘へ

 

僕は蘇鉄山の登山口に立った。

 

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蘇鉄山登山1

「日本一低い一等三角点 そてつ山 登り口」と書かれている。

 この時点ではまだソテツは見えない。

なだらかな山の斜面にポツンポツンと松が映えているのが印象的である。

 

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蘇鉄山登山2

ちなみに、蘇鉄山への登山ルートは複数ある。

バラエティルート豊富な山だ。

 

僕も登りと下りは別々のルートを楽しむようにしている。

あなたも機会あってこの山を登るのであれば、ぜひいろんな道を辿り、この山のいろんな顔を楽しんでいただきたい。

 

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蘇鉄山登山3

では、登山スタートだ。

 

登山道には階段が設置されている。しかし綺麗にされすぎてはおらず、適度にナチュラルな山の装いを見せてくれている。

早い話が、ハイキングとしてちょうどいいロケーションだ。

 

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蘇鉄山登山4

周囲の展望はイマイチではあるが、松林の中を踏みしめながら着実に山を登っていく過程が楽しいのだ。

僕はこの山が好きだ、と感じた。

 

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蘇鉄山登山5

ちなみに前述の通り、真冬の日没後の小雨の中を登ったことがある。

しかも1人だ。

このときは「怖い。オバケが出そうだ。」と怯えっぱなしだった。それでも登ったけどな。好奇心と恐怖心がずっと戦っていた。

 

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蘇鉄山登山6

それでも、山頂に近くなると不思議と周囲が明るくなるのだ。

月夜でもないのに。

その幻想的な光景に、僕は心を打たれた。

 

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蘇鉄山登山7

例えば、ですね。

あのモーゼさんは「シナイ山」の山頂で神から十戒を授かったというではないか。

 

山頂にはね、そういう神々しさがあるんじゃないかと思うのだ。 

「さてさて、僕は神から何戒を授かるのかな?ワクワク。」とかするではないか。

 

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蘇鉄山登山8

ま、普通に山頂に街灯があるだけなんだけどね。

 

しかし考えて見てほしい。

山頂に街灯があり、煌々と照っているのだ。そんなにありがたい山、あまりないぞ。

ありがとう、神よ。

 

 

山頂と一等三角点

 

山頂だ。

ここまで長々と書いたが、一度ダッシュしてその時間を計測したら9.5秒だった。

他の日本一低い山よりはずいぶん時間を要したが、それでも人類の歴史からしたら一瞬だ。

 

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山頂にて1

ソテツの木、見えるよね? 

このソテツがあるから蘇鉄山というのだよ。

 

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山頂にて2

だから「小さい」とか「他の木の方が大きい」とか、「小さなハンバーグが片隅にあるだけで"ハンバーグ弁当"と名乗っているのを見たことがある」とか、言わないでおくれよね。

 

そういう心無い言葉を投げかけると、ソテツ枯れるから。

 

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山頂にて3

石碑もあるので記念撮影しよう。

漢字ばかりで中国語のようで意味が分からないが、裏にはちゃんと日本語もある。

 

『旅人の 宿りせむ野に 霜降らば
あが子はくくめ 天の鶴群』 

 

…と書いてある。

うん、僕は学が無いのでこれでもよくわからない。残念だったな。

 

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山頂にて4

ここが山頂オブ山頂だ。

説明板が設置されており、その横にはマスコットキャラのようなこんもりしたソテツが鎮座しており、写真の下ギリギリのところに三角点が見えている。 

 

日本一低い一等三角点がこの山のアイデンティティであるが、そもそも三角点ってなんなのだよって話。

…ということで、僕のつたない知識からご説明する。

 

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山頂にて5

三角点とは、明治時代に日本にやってきた測量法で使う、マストアイテムである。

これを三角測量法というのだが、かなり便利なのだ。

 

なにしろ、遠くに見えている地点までの距離とかわかっちゃう。

なんだったら、目の前の木の高さとかもわかっちゃう。

ではでは、僕が致命的に苦手な算数のお時間だ。

 

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基準となる線が地上にある。

この長さはもうわかっている。

だとすれば、点ABから点Cへと向かう角度さえわかれば、AやBからCへの距離もわかるよね。

 

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応用すれば、基準線の上に立ち、そして自分からCが何時何分の角度にあるのかわかれば、自分からCへの距離もわかるよね。

これ、すごい。

 

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つまり、こんなものを造って、 分度器同士の距離さえ測っておけば、気になる対象物(ポスト)までの距離も計算できるのだ。

 実はこれ、僕は小学6年生のときの夏休みの自由研究で作ってみた。懐かしい。

 

www.gsi.go.jp

 

この仕組みに気付いちゃった明治政府は、「日本全土をこの三角で覆っちゃおうぜ!」って勢いづいたのだ。

 

まずは40km間隔で一等三角点を全国に1,000個設置。

もうちょっと細かく二等三角点を5,000個設置。

さらに詳細に位置情報を確定させるため、三等三角点を32,000個設置した。 

 

映画にもなった、「劒岳 点の記」ってご存知ですか?

明治政府が日本地図最後の空白地帯を埋めたいと思い、前人未到の「剣岳」に三角点を設置するアドベンチャーよ。

どれだけ本気だったか、わかるよね。

 

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山頂にて6

そんな、全国に1000個しかないエリート三角点の1つがこれなのだ。

 

「なんで高い山に設置しないの?」と思われるかもしれないが、思い返して見てほしい。
あくまでC点を観測することで、距離を求めるのだ。

 

C点があまりに高い山だと、天候が悪かったり雲の中に入っちゃたりして思うように観測できない。

だから本当は高い山に一等三角点などは置きたくない。止むを得ない場合だけ置いている。

 

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山頂にて7

説明板を読んでみよう。

 

蘇鉄山は大阪湾(ちぬの海)に面し、幕末には黒船来航に備えてお台場(砲台)が築かれた場所を明治12年(1879年)に大浜公園として開放され、展望の良い築山として整備されたところです。

この付近は明治・大正・昭和初期にた関西有数の海浜リゾート地として海水浴・潮湯・少女演劇・水族館や料理旅館街などで賑わいました。

 

この蘇鉄山の300m東南にあった御蔭山の頂に近代地図作成のための基準点となる一等三角点が明治18年(1885年)に設定されました。

その後、御蔭山が削られ、昭和14年(1939年)にこの蘇鉄山の標高6.84mのところに移設されたものです。

現在、一等三角点の設置されている山としては日本一低い位置になります。

かつてここから大阪城天守閣昭和6年廃点)・生駒山葛城山・俎石山・六甲山などが展望できました。

 

一等三角点が元あった御蔭山は天保年間に港と水路浚渫により造られた山で、同時期に川浚えの土砂を積み上げてできた大阪の天保山とは兄弟にあたります。

 

ぶっちゃけ標高は低い。

そして元をたどれば自然の山ではなく、築山という人工の山である。

 

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山頂にて8

だけども、歴史があり、そして見晴らしがよくて一等三角点を設置するのにふさわしい場所であった…ってことがおわかりいただけたのではないかと思う。

 

 

こんな山でも遭難するよ

 

ちなみに、先ほど僕は「蘇鉄山で遭難なんてするはずない」というニュアンスの文を書いた。

重ね重ね、山をナメている発言だ。

だからか、バチが当たったこともある。

 

あれは確か、3回目の登山のときであった。

僕は余裕であった。

 

「3回目だし昼間だし、迷うはずなどない」と豪語しながら大浜公園内を歩いていた。

悪い役人のようにガハハと高笑いしながら、肩で風を切って歩いていた。

 

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遭難1

そして「この辺であろう。小高いし階段あるしな。」と独り言をいい、適当な園内の丘に登った。

 

はい、遭難した。


「ここ、どこですか?」と、途端に捨て犬のように切ない顔になった。

 

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遭難2

歩いても歩いても頂上が出てこないのだ。ずっと山の稜線を歩いている。

あれ?蘇鉄山って山脈だっけ??

 

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遭難3

山の麓を見下ろすと遠くに遊具が見え、子供の歓声がわずかに聞こえた。

切ない。

真冬に公園のはじっこ登った丘に登って1人でキョロキョロして、いったい僕は何者なのだろう。

 

まぁそんなこんなで、一旦丘を降りてから蘇鉄山に改めて登ったんだけどね。

標識くらいは確認しような、僕。

 

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遭難4

今は人工衛星もあるし、測量技術もすごく発展した。

1980年代くらいから、三角点を使った測量機会は劇的に減ってしまったらしい。

 

しかし、今も全国に三角点はある。

100年以上前、日本が近代化に乗り出した際に埋め込んだ、歴史の足跡だ。
 

その最上級である一等三角点を気軽に踏める、蘇鉄山。

かっこいいではないか。

 

これからも、大阪の歴史を見守ってほしい。

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 蘇鉄山 
  • 住所: 大阪府堺市堺区大浜北町4・5(大浜公園内)
  • 料金: 無料
  • 駐車場: あり
  • 時間: 特になし

 

No.117【栃木県】その名も「ピラミッド温泉」!!B級テイスト溢れる温泉宿に泊ってみた!

秘湯マニアよ、刮目せよ!

あなたが「いや、秘湯って…、そういうことを言いたいんじゃないんだけどな…」とモゴモゴしてしまいそうな物件を、今回ご用意させていただいた!

 

那須にある「ピラミッド元氣温泉」!!

もう宿に対峙した時点での最大瞬間風速がハンパない!

 

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試合開始のゴングがなると共に、いい感じの右ストレートが顔面に炸裂した気分だよな、これ。

 

那須の温泉宿。

そこにスフィンクスとピラミッドを持ってきやがった。

2文字で表現するなら「暴挙」である。

温泉にもエジプトにも失礼だ。食べ合わせとか考えないタイプの宿だ。

 

こんな宿に泊まる人なんているのか。

僕だ。

 

では、ご紹介しよう。

 

 

那須のエジプトへようこそ

 

那須の温泉宿でゆっくりお風呂に浸かり、そしてお酒を飲んで眠りたい。

いいじゃないか。

極めて健康で文化的な旅行イメージである。

 

僕だって人の子だ。

たまにはそういう平和な旅行をしてみたい。車中泊もいいけど、温泉宿もいい。

 

ただ、それを実現するプロセスに甘さがあった。

旅行を企画したのが直前すぎて、「那須塩原温泉」だとかの有名どころの宿は全部満室であったのだ。

 

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不穏の道中

梅雨真っ盛りの7月の19:00。

この空気の重さは、梅雨の湿気によるものか、それとも夕闇によるものか、はたまた人里をどんどん遠ざかる不安によるものか…。

 

実は、那須エリアに2箇所だけ宿の空きがあったのだ。

1つはどこにでもありそうなビジネスホテルだ。

もう1つはピラミッド温泉だ。

 

せっかくの旅行であれば、忘れられない思い出にしたいじゃない。

じゃあ、どっちだ。

うん、そうだね、ピラミッド温泉だ。

 

その選択はある意味正しいが、ある意味で身を滅ぼしかねない諸刃の剣だ。

 

薄暗く人家も車の通りも無い木立の中をひたすら走って行く。

本当にこっちでいいのか心配になる。

そんな道をしばらく走ったところで、前方に奇怪な建造物を発見した。


…うん、間違いない。あそこが今回の宿だ…。

うわぁ…。

 

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前哨戦1

温泉宿の外観で「うわぁ…↓↓」ってなったのは、初めてかもしれない。

 

スフィンクスの後ろに連なる2つのピラミッド。

それが今夜の宿だ。

 

いや、ある意味すごいんだけど。

僕の中には5歳男児くらいの人格もあるから、その彼は手放しにはしゃいでいるんだけど、同時に社会の多くの人と接するサラリーマンとかの人格もあって、その彼は「このあとどういう顔をしてスフィンクス股間をくぐればいいのか」と思案しているのだ。

 

ちょっと周辺を見渡して、心を落ち着けよう。

中和できるものをくれ。

 

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前哨戦2

倉庫。異国情緒。

スフィンクスがここにもいる。

背後にはピラミッドを思わせる四角推が、無駄に遠近感を以て描かれている。

 

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前哨戦3

 薄っすらと、ラクダと旅人だ。

何と形容したらいいのかうまい言葉が思いつかないが、なんだか心がザワザワする絵柄だ。

 

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前哨戦4

身も心も活性化!

世界初のピラミッド温泉

 

入苑料 … 平日¥550 土日祝¥650

宿泊料 … 2食付 湯治 一般 ¥5,100~

    素泊まり …  ¥2,500~  安い

 

すごいね。

"世界初の"ピラミッド温泉。そうであろう。

てゆーか、改めてピラミッド温泉ってなんなんだ。

 

そして、書いてある通り安さがほとばしっている。

今回は素泊まりなのだ。2500円だ。

 

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前哨戦5

いらっしゃいませ

大浴場・露天風呂

ピラミッドパワールーム

 奇木・奇石・美術館

 休憩室・個室・集会室・食堂・釣り堀・野外バーベキュー

 

息もつかさないのキラーフレーズのラッシュで、宿に入るのが3倍怖くなった。

ピラミッドパワーか。

彼が出てくるってことは、今宵は荒れるぞ。

 

しかし、僕もかつては考古学者を夢見た身。

冒険なくして発見はない。

 

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前哨戦6

そんな感じでカクゴを決めた。

 

では、突撃だ。

スフィンクスの脇はガラ空きだが、ここは神社の鳥居と同じように、スフィンクス股間を通っていくのが礼儀だろうか?

知らんけど、足の間の通路を通って宿に入った。

 

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前哨戦7

…ただ、スフィンクスは上半身だけで、下半身はなかったけどね…。

 

ちなみに、そのスフィンクスの後ろには2体のミニスフィンクスがいた。

宿のエントランスの左右を、まるで狛犬のように守っていた。

なるほど、意味不明だ。

 

ガラガラとスーツケースを転がす音が静かな那須の大地に響き、その音が周囲に僕の存在をアピールしているようで恥ずかしかった。

 

 

めくるめく黄金郷

 

薄暗くて神秘的なロビーの受付。

そこで、チェックインの手続きをする。

対応してくれたのは、オーナーの「伊藤雄次郎さん」ご自身である。

 

伊藤さんにご案内され、長い長い廊下を歩いて部屋へと向かう。

途中、話のネタに「ここは何年くらいやっているんですか?」って聞いてみた。

なかなかに昭和な雰囲気だったので、40~50年くらいの回答が来るものと期待をした。

 

しかし、意外なことに平成の建物だった。

1994年(平成6年)に伊藤さんが作ったらしい。

研修施設として建築し始めたけど、途中で温泉が湧いたので温泉旅館にしたそうだ。

 

エジプト要素がどこで入り込んだのか聞き忘れたが、アクロバティックな路線変更をものともしない伊藤さんの柔軟な思考であれば、いつどこでエジプトが現れようとも柔軟に取り込めるのだろう。1人で納得した。

 

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エルドラド1

部屋の鍵の開け方にはコツがいる。

 

昔ながらの、鍵穴が押しボタンを兼ねているヤツだ。

ちょっと古いと、鍵と共に鍵穴も回ってしまい、一生入れないヤツだ。

 

伊藤さんと共にガチャガチャやり、ようやく開いた。

ついでにコツも伝授してもらった。

 

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エルドラド2

 

部屋が金色。

 

 

部屋も柱も、ブラインドまでゴールドなのですが。

畳やちゃぶ台の茶色まで、ゴールドと脳が判断してしまうような黄金郷が広がっていた。

この衝撃は「中尊寺」の金色堂以来である。

こんな部屋で安眠できるのか、僕は?

 

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エルドラド3

金色部屋のわけ?

本館ピラミッド塔から発する「氣のエネルギー」を多量に受け取るために金色にしております。

 

短くて簡潔な文章だ。

でも5箇所くらいわからない。まぁいいけど。 

早速温泉に入りに行こう。

 

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エルドラド4

休憩ロビーを通って大浴場へと向かう。

 

人の気配はゼロだ。

ここまでの周囲の喧騒からして、どうやら宿泊しているお客さんは少なめな模様。

 

僕の宿泊した部屋の並びには部屋が10部屋くらいあるけど、確実に人がいると分かったのは、他に1部屋だけだったし。

那須塩原温泉の他のホテルはあらかた満室だったのだが、ここは相当な穴場なのだ。

 

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エルドラド5

大浴場に繋がる通路の前にいるのは、ピラミッドのマスコットである「レオちゃん」だそうだ。

ひたすらスフィンクスを推してくる。

 

あと、「大浴場 パワースペース」のプレートが気になる。

パワースペースに行きたいんだっけか、僕?

 

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エルドラド6

傍らのガラスケースには、様々な宝石や水晶などが展示してある。

右隅の暗がりには、気になる人物が見えているな。

 

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エルドラド7


ファラオ、風呂への通路に座っている。

 

マスクのデザインからして、「ツタンカーメン」をイメージしたものだろうか?

その足元にはアヌビスがいる。

 

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エルドラド8

さらにその奥には信楽焼のたぬきがいる。

暗闇から控えめに、こちらを覗いている。最高過ぎる。

 

drive-ns.hatenablog.com

 

以前に執筆した、信楽焼の記事へのリンクを貼っておく。

これを踏まえて上の写真を見ると、たまらなく愛おしい気持ちになった。

 

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エルドラド9

その奥には、黄金の展示物がきらめくショーウィンドウだ。目がチカチカする。

「奇木」と書かれたコーナーではあるが、どちらかというと木彫りだ。

 

あと、ショーウィンドウ上部のキラキラしたライティングが、小学生のころに自宅に飾っていたクリスマスツリーに巻き付けていたヤツみたいで、懐かしかった。

 

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エルドラド10

その奥に壁画。

 

もう、いろいろとヤバすぎる。

このショーウィンドウや壁画の前を、僕は浴衣姿でお風呂セットを持って歩いているのだよ。

場違い感が甚だしい気もするが、温泉なのだからしょうがない。

 

 

ピラミッド温泉入浴

 

この温泉には、チェックイン直後と翌朝の2回、入浴した。

今回ご紹介する写真は、翌朝に撮影させていただいたものである。

 

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温泉1

お風呂の中は、外の雰囲気と比べるとまだ普通だと感じた。

不思議な像が立っていたりするけど、もうそういうのを気にしているような次元は突破している。

 

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温泉2

「水辺で舞う天女」という作品名通り、僕が湯舟に使っている横で天女が躍っているが、もう気にはならないのだ。

 

お湯はいい感じだった。

源泉かけ流しの天然温泉なのだ。それはありがたい限りだ。

 

pyramid-onsen.com

 

ピラミッド温泉の公式Webサイトを見ると、このように書かれている。

 

ピラミッドで集めた宇宙エネルギーと、1.2km深層水の地殻エネルギーをコラボした、生命力強化出来る次世代型温泉です。

心の安らぎを得られ、体の治癒の強化がはかれる環境を整えたモールです。

 

宇宙のエネルギーと、地下のエネルギーのコラボレーションだ。

それをつなぐのが、このピラミッドなのだ。

なんだかよくわからないけど、ここに来てから心の安らぎはあまりない。ドキドキしっぱなしだ。初恋かってくらいだ。

 

 

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温泉3

朝のことなんだけどね、シャワーを浴びようとして蛇口をひねると水が出てきた。

冷たかった。他の蛇口も全部水だった。

 

「なんなんすか、これ。ボイラー壊れたんすか?」って思った。

でも相談する人もいないので、水で体を洗った。

真夏とは言え、少し寒かった。

しかしお蔭で目が覚めたし、湯舟の暖かさをありがたく感じることができた。

 

ちなみに女湯は普通にお湯が出たらしい。

 

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温泉4

浴室内には、気柱という柱がある。

触るとピラミッドパワーを受け取れると書かれていた。

 

「普通にこれ、ピラミッド型の建物を支える大黒柱だろ?」とかツッコみそうになった。

しかし、前述の宇宙と地下をつなぐ媒介となっているのがこの柱だ。

めちゃくちゃすごい氣がこの中を取っているのかもしれない。

 

だが、別にそういうパワーはいらないし、って思った。

僕は意外にドライであった。すみません。きっと早死にする。

 

 

さよならワンダーランド

 

夜の入浴後は金ピカの部屋の中でコンビニ弁当を食い、そして缶ビールをしこたま飲んださ。

旅先でのお酒は、酔いが回るのが早い。普段の3倍酔う。

キラキラした部屋が、なおさらそれを加速させてくれた。

 

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チェックアウト1


では、チェックアウトである。お世話になりました。

 

建物を出て、振り返ったその世界観はやはり異世界である。

ここに泊まった自分自身の勇気をたたえたい。

 

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チェックアウト2

この施設は、伊藤さんの思いがこもっている。

伊藤さんは若いころからエジプトを訪問し、ピラミッドを実際に目視し、さらにピラミッドパワーの勉強などをしたそうだ。

 

さらに、この背後のピラミッドは「クフ王のピラミッド」を正確に10分の1にしたサイズ感なのだそうだ。

ピラミッドの屋根の直下には瞑想室もあり、有料ではあるが一番ピラミッドパワーを受け取れる空間で過ごすこともできるらしい。

 

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チェックアウト3

僕は、それらを根っから信じるほどの心の余裕はないタイプの人間だ。

しかし、そうした信条の元で突き進む人間を応援したり、その人の想いを感じる余裕だったらある。

 

不思議な世界ではあるが、とても楽しめたと思う。

 

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チェックアウト4

敷地内の小屋にはクジャクもいる。

僕個人の勝手な統計ではあるが、不思議スポットではクジャク率が高い。

不思議な人に好かれる鳥、クジャク。神秘的な容姿だしな。

 

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チェックアウト5

別棟である「いやしの和楽座」。

女将がこのシャッターの絵に描いてあるような衣装で舞踊ショーを見せてくれたり、カラオケ大会を開催したりもするそうだ。

楽しそうだな。

 

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チェックアウト6

あまり大声で名前を呼べないネズミも2体いる。

これ以上のことを書いてしまうと、僕も深夜の来訪者に連れていかれて、以降のブログ更新が出来なくなってしまうので、ここまでとさせてほしい。

 

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チェックアウト7

これも別棟の、「太陽の船」と書かれた施設。

 

Webサイトによると「Solar boat・とり専」という鶏肉料理のレストランだそうだ。

しかし、コロナ禍のためか2021年現在は営業を見合わせているらしい。

早くコロナが収まり、また観光業界が活性化してくれることを心から願う。

 

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チェックアウト8

宿泊客や来訪者のため、さまざまなエネルギーを集結させて楽しんでほしいし癒されてほしい。

そういう思いが根底にあることは、しっかりと受け止めた。

 

しかし、僕の主観を言わせてもらおう。

珍スポットである。

ごちゃ混ぜのカオスな世界観である。

万人受けは決してしない。

 

だからこそ、楽しめた!

だからこそ、ありがとな!

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チェックアウト9

車に乗り込んでアクセルを踏むと、あっというまに異空間は見えなくなった。

 

広がるのは、那須ののどかな緑である。

一夜限りのアラビアンナイトのような体験談。

今となっては、それは夢か幻か…。


以上、 日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: ピラミッド元氣温泉
  • 住所:  栃木県那須塩原市接骨木493-4
  • 料金: 素泊まり¥2900~
  • 駐車場: あり
  • 時間: 日帰り入浴は10:30~21:00

 

No.116【奈良県】超山奥の廃村で、郵便局だけが営業していた伝説!その跡地を訪ねよう!

あなたの暮らしの身近にある、郵便局。

 

「JP」の公式Webサイトから確認したら、2021年5月末時点で23,797局が存在するそうだ。

こんなにありがたい組織、他にちょっと思い浮かばないレベルだ。

 

もはや全国どこにでもある、といっても過言ではないだろう。

「人の住まうところに郵便局あり」という格言を作ったっていいだろう。

 

しかし、僕は知っている。

廃村でただ1軒、営業していた郵便局がかつて存在していたことを。

「日本一訪問の難しい郵便局」と言われたり、郵便局巡りを趣味とする人が「聖地」と崇めた郵便局があることを。

 

その名は、「東の川簡易郵便局」。

2005年の4月1日に閉鎖された。僕は営業している姿を見たことはない。

しかし、どんなところに存在していたかは知っている。

 

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なぜなら、跡地を訪問したことがあるからだ。

 

さぁ、今回は郵便局のお話だ。

あなたはハガキ1枚郵便局に出しに行くのに、命を懸けられますか?

 

 

酷道425号(死にGo)

 

まずは紀伊半島のイメージMAPをご覧いただきたい。

 

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死にGo1

紀伊半島を横断する国道425号は、いわゆる酷道である。

「死にGo」というありがたくないゴロ合わせが存在する。
 

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死にGo2

確かに結構ドキドキするような山間部のクネクネ道が永久に続く。

 

しかし、生命の危機を感じるようなレベルの道ではない。落石に当たったら死ぬかもしれないけど、確率は低いし。

それに、対向車もゼロなので擦れ違いを心配する必要もない。

 

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死にGo3

なぜ僕が、「対向車がゼロ」と言い切ったのか。

それには理由がある。

 

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死にGo4

酷道425号、現時点で紀伊半島を横断できないのだ。

この少し前に、かなり世間を騒がせた集中豪雨で、紀伊半島はかなりの被害を被ったのだ。

 

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死にGo5

先ほどのMAPをもう一度ご覧いただきたい。

 

僕の目指す「東の川集落跡」と三重県尾鷲市を結ぶ国道は崩壊している。

この3ヶ月前に、試しに尾鷲から行けるかチャレンジしたのだが、実際に失敗した。

だから今回は、三重県の深部から延々アプローチしているのだ。

そして東の川集落跡を訪問後、また来た道を延々戻る所存。

 

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死にGo6

ちなみに、僕が今いるところから東の川集落跡までは車で1時間ほどかあるかと思うが、途中に集落は1つもない。

 

従い、僕と同様に東の川集落という廃村を目指すか、それとも通行止めを知らずに尾鷲方面に向かって絶望してUターンする車くらいしか、対向車の理由は考えられない。

なので、対向車は実質ゼロと僕は判断している。

 

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死にGo7

災害時連絡先とか、掲示されている。

ふと、自分の携帯電話を取り出してみた。あまりの山奥につき、圏外だった。

なかなか死亡フラグが整って来たな、なんだこれ。

 

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死にGo8

そのうち、道沿いに「坂本貯水池」が見えてきた。

秘境感バリバリの濃い緑色の水をたたえている。

 

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死にGo8

そして僕は、さらに道を分岐し県道228号に入る。

この道は、もうマジに何もない。深い山に突き当たって消えるのみだ。

その直前に、廃村東の川集落があるのだ。

 

なんというワンダーランド…。

 

 

廃村はどこだ

 

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絶望の淵1

道はさらに細くなるし、荒れてきた。

当たり前だ。この道を使う人はほとんどいないのだから。

 

林業の人だとか、ダムや河川工事の関係者の人は使うのかも知れないが、この先に人が滞在できるような設備は全くないのだ。

 

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絶望の淵2

2kmほど走ったところで、右手にボロボロの廃校が見えてきた。

上北山村東ノ川小中学校」だ。

 

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絶望の淵3

これについて語り出したら、それだけで記事1つ書けてしまう。

従い、ここの見学内容はまた機会があったらとさせていただきたい。

 

さて、僕はさらに山奥へとアクセルを踏む。

 

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絶望の淵4

結論から言うと、このエリアへの往復3時間ほど車も人も全く見なかったが、シカだけは見た。野生の王国となっていた。

 

僕はシカを見て「わっ!シカだ!」って思ったが、シカたちは「わっ!人間だ!」って思ったに違いない。

イレギュラーな存在なのは僕の方だと思う。

 

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絶望の淵5

「出口橋」という橋を渡り、坂本貯水池の上流方面にさらに遡上するのだ。

橋、ボロボロだなー。

メンテする費用対効果とか、あんまりないのだろうなー、きっと。

 

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絶望の淵6

どんどん道は荒れてくる。

落石だらけだ。

テクニカルに回避しながら、深淵を目指す。

 

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絶望の淵7

ところどころ土砂が堆積しているので、四駆モードに切り換えて乗り越えたりする。

…いやぁ、なかなかデンジャーだよ、これ…。

 

そしてついに絶望が眼前に現れた。

 

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絶望の淵8

上の写真、僕の愛車のすぐ眼前を見てほしい。

 

土砂が道を埋め尽くしているのだ。

これはまいったぜ。

しばし呆然とする。

 

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絶望の淵9

目指す集落まではどのくらいなのだろう?

もうそんなに距離はないはず。

ここからは徒歩で土砂を乗り越えて行ってしまおうか…。

 

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絶望の淵10

しかし何かしあったら本当にヤバい。

前述の通り電波は圏外だし、僕は1人旅だし独り暮らしだ。

トラブルがあっても助けが呼べないし、しばらくは誰も気付かない。

ここでそこまでのリスクを負うのは賢くない。

 

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絶望の淵11

東の川集落は、土砂に閉ざされてしまったのだろう。

そして、この道を復旧させるだけの意味もあまりないことから、今後永久に隔離された世界で、人知れず朽ちていくのだろう。


その運命を自分の目で見れただけでも、よかったとしようか。

 

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絶望の淵12

狭路をしばらく恐々とバックし、何度も切り返しながら、なんとかターンできた。

センチメンタルな気持ちで、来た道を戻る。

 

廃校の近くまで戻ってきたところで、僕は自分の浅はかさに嫌気がさした。

 

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絶望の淵13

なぜかというと、廃校のすぐ近くの山の斜面の中腹に、廃村が見えたからだ。

 

上の写真、僕はさっき右から左へと橋を渡っていたのだ。

すぐ背後には廃村があったのに、気付かなかったのだ。

 

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絶望の淵14

確かに、行きのルートではとても見づらい位置にあり、視界に入らなかったであろう。

 

しかし、学校が集落から途方もなく離れたところにあるはずがない。

廃校を見つけた時点で、周囲の景色や分岐する小道、全てに細心の注意を払っておくべきだったのだ。

 

秘境アドベンチャーにある程度慣れているにもかかわらず、なんたる失態だ。

お恥ずかしい。


そしてどうやら、東の川集落は廃村としてのかたちはまだ保っているようだ。

さっきはセンチメンタルなことを言ってしまってすまない。

改めて、集落を訪問させていただこう。

 

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絶望の淵15

僕のいる車道から集落までは、短いもののとんでもなく狭い道であり、かつ激坂でヘアピンカーブである。

かなりの運転テクニックが必要そうだし、路面がさらに荒れている可能性、そして集落内に駐車場がない可能性もある。

 

であれば、ほんの数分だから歩いて登ろう。

いよいよ、念願の東の川集落訪問だ!

 

 

現れし東の川集落 

 

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東の川集落1

山の斜面の狭路。

そこに一直線に、長屋のようにように並ぶ廃屋。

これが、僕の見た東の川集落の最初の光景であった。

 

もったいぶった説明のほうが盛り上がるかもしれないが、残念、一番手前の建物が本丸である。

僕の第一目標である、東の川簡易郵便局だ。

 

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東の川集落2

 素では郵便局とわからないほどの、ウッディさバリバリの素朴な小屋である。

そして、クリスマスがやって来たんじゃないかと勘違いするほどの赤さ。

この赤さが郵便局であると訴えかけてくる。

イメージカラー、大事。

 

ところどころに残っている四角い枠は、郵便局であったころの残滓であろう。

 

ja.wikipedia.org

 

Wikipediaさんへのリンクを貼る。

営業当時の写真と見比べてみてほしい。

このころに訪問したかった。心から、そう思う。

 

さて、郵便局の在りし日に思いを馳せるのは、また後の項目でじっくりやりたい。

ひとまず東の川集落の全景を見ていこう。

 

 

まずはこれが、Googleマップから持ってきた衛星写真だ。

下の方にかろうじて見えているコンクリの大きな建物が、前項で触れた上北山村東ノ川小中学校だ。

 

そしてそのちょっと北の山腹に広がっているのが、東の川集落。

全部で8軒ほどの建物が残っているようだ。

 

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東の川集落3

郵便局から一列に続く長屋みたいな建物群を、反対側から振り返ってみた。

集落のメインストリートだ。

 

既に廃村となってしばらく経つが、生活の息遣いが聞こえてくるような世界だ。

 

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東の川集落4

その一因は、きっと建物の脇に設置されている二層式洗濯機。

すごいレトロだぞ、これ。上部についているダイヤルがとてもエモい。

 

そして、かつての住民は極まれにここを訪れて、家屋をメンテナンスしているという話を聞いたことがある。

だから、まだキチンとしているのだ。

 

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東の川集落5

廃村と言うと風雨でバッキバキになったり、いたずらされてひどい有様になっていたり、草ボウボウとなることが多い。

そんな廃村をこれまで無数に見てきた。

 

だが、ここは愛されている廃村だ。

静かに、そしてゆっくりと時が流れている。

もしかしたら、21世紀になったことすら気付いていないのかもしれない。そういう世界だ。

 

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東の川集落6

静寂。

ここに村はあるのに、生活音も人の気配も皆無。

 

周囲数10㎞に、僕以外の人間はいないかもしれない。

そんなドキドキ感がたまらないのだ。

 

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東の川集落7

観光地や景勝地であれば、再訪もあるだろう。

現に僕は日本を何周もし、同じスポットに何度も立ち寄ったりしている。

 

しかし廃村は別だ。

一生に一度切りが原則だ。

 

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東の川集落8

2度訪問した廃村もあるが、少し時間が流れただけで、大きく崩壊が進んでしまっていたりもしている。

2度と、同じ光景は見れないのだ。

だからこそ、目と記録に焼き付ける。

 

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東の川集落9

集落内には、ひときわ重厚なコンクリートの建物がある。

これは森林組合の事務所だ。正面玄関にプレートが掲示してあった。

 

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東の川集落10

ドアは施錠されているが、ガラスなので中が見える。

ちょっと近づいて覗いてみようか?

 

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東の川集落11

ザ・昭和って感じの灰皿。

それと、喫煙していた人がそのまま煙になって消えてしまったかのような配置で、一組のスリッパが残っていた。

 

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東の川集落12

少し高台にも2軒ほどの家屋がある。

よく見てほしいのだが、屋根にいっぱいタイヤが乗っているんだ。

瓦が飛ばないように抑えていたりするのだろうか?

 

ちなみにさっき引用したGoogleマップ衛星写真でも、屋根の上にタイヤが並んでいる様を確認できる。興味があったら再度ご確認いただきたい。
 

…東の川集落は、このような廃村であった。

 

 

最後まで営業した郵便局

 

村が廃村となると同時に、そこにあった郵便局も閉局する…であれば、きっとそんなに珍しいことでもないだろう。

しかし、ここの東の川簡易郵便局は違う。

 

廃村となっても営業していたのだ。

 

これが最大の特徴であり、多くの郵便局マニアや秘境マニアを惹き付けた要因の1つだ。

 

もともとは、もっと大きかった東の川エリアの集落。

しかし、前述の坂本貯水池の基となる「坂本ダム」の建設により、水没する。

 

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坂本ダム

1959年に工事が始まり、1962年に完成したそうだ。

 

村人多くは、これを機に山を下りて町へと移り住む。

わずか23世帯の人は、この東の川集落に残って暮らしていたそうだが、やはり山深い生活ではいろいろ不便もあり、少しずつ人口は減っていく。

 

いつから廃村となってしまったのかは、Webをいろいろ調べても明確な情報を発見できなかったが、1980年ごろにはほぼ無人となっていたのではないかと推測している。

 

ただ1軒の郵便局を覗いて、だ。

 

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廃村郵便局

何10年もここを守っていたのは、1人のおじいさんだという。

三重県の尾鷲に住んでいたが、毎日酷道をバイクで走り、ここまで勤務していたそうだ。

 

誰もいない廃村。

しかし、極まれにやってくるかつての住民、そして郵便局マニアを対象に、長年営業を続けていた。

 

驚くべきは、この郵便局の特徴のもう1つである、オフラインであるという点だ。

当時は全国で2つしかオフライン郵便局は残っていなかったという。

 

オンラインが当たり前の時代なので、僕自身オフラインと言われてもピンと来ない部分がある。

 

具体的には、電話線が通っていなかった。

無線電話だ。

ネットワークも通じていなくって、もちろんATMなんぞない。

完全アナログな世界だ。

 

おじいさんはゆっくりゆっくり丁寧に、手書きで通帳を作ってくれたり、通帳にハンコを使って記帳してくれたりしたそうだ。

今でもWeb検索をすれば、運営当時に訪れた人の記録が少々残っている。

もしあなたが興味がおありであれば、ぜひ探して見てほしい。

 

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崩れた廃屋

おじさんが廃村で細々と郵便局を続けていた時代にも、終わりが来る。

2007年に行われた郵政民営化

 

これに先駆けて小さな郵便局がいくつも消滅させられたという。

オフライン郵便局であり、かつほとんど利用者のいない東の川簡易郵便局は、もちろん真っ先にリストラされることとなったのだろう。

 

2005年4月1日で、ついに歴史に幕を下ろした。

 

僕がこの郵便局の存在を知ったのは、2005年の夏のことである。

一足遅かった!

悔いたが、もう消滅したものはどうしようもない。

 

その後も長い年月を悶々としていたが、この度ついに跡地を訪問したという次第だ。

 

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その後も消防団が…

郵政民営化以前の情報は、もう公式Webサイトでも情報がない。

 

東の川簡易郵便局は、当時を知っている人のわずかな情報の中で語られるだけの存在となってしまっている。

 

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僕は忘れない

だからこそ、忘れちゃいけない思い出ってあるよね。

 

遅すぎた訪問者である僕がそう言ったところで、まったく説得力は無いかもしれないが。

だけども、みんなが生きた残滓はしっかりとこのハートに留めておくよ。

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 東の川簡易郵便局
  • 住所: 奈良県吉野郡上北山村西原
  • 料金: 無料
  • 駐車場: 集落の下部に駐車が無難と思われる
  • 時間: 閉局につき営業時間なし

 

No.115【石川県】十戒の「モーゼ」は日本にやって来て583歳まで生きた!じゃあ墓参りだ!

AEDのご準備はよろしいだろうか?

えっ…、手元にない??

 

恐縮だが、それで何かあっても当ブログは一切の責任を取ることはできない。

カクゴして読み進めてほしい。

 

今回の物語の主人公は、旧約聖書の登場人物である預言者「モーゼさん」だ。

十戒」とか「超能力で海を割る」とか、あなたも耳にしたことがあるだろう。

 

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エジプトを舞台に活躍したモーゼ。

「約束の地」を求めて何10年も旅をしたが、その後にどうなったか、あなたはご存じだろうか。

 

…ちょっと間を省略するが、石川県でのびのびと暮らした。

583歳まで。

 

さぁ、会場が充分にザワついたところで、本題だ。

 

 

ミステリーの幕明け

 

能登半島内陸部の、のどかな山道であった。

そこは「宝達山」のふもとであった。

 

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ミステリーゾーンへ1

いきなりキャッチ―なデザインの看板で「伝説の森モーゼパーク」という看板が出てきた。

これが僕の目指すスポットである。

 

カクゴはいいな?

自分はそう自分に言い聞かせた。

受験のときに志望校の校門をくぐるときにも似た感覚であった。

 

森の中の狭路をしばらく進んだところで、駐車場が出てくる。

ここで愛車のパジェロイオを駐車した。

 

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ミステリーゾーンへ2

駐車場脇に掲示してあるMAPがこれだ。

大体すべてが森だ。

 

右奥にこんもりと3つある丘が、お墓らしい。

そして、その前には広場があり、ピュアホワイトな爺さんが浮遊している。

 

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ミステリーゾーンへ3

これがモーゼさんだろう。

ミステリーヤードの上を雲に乗ってプーカプカだ。

地図上で見る限り、駐車場のまっすぐ上なのだな。では行こうか。

 

あ、ちなみに駐車場にはもう1台車が停車していた。

こんなところに僕以外に来る人がいるとは。

しかも今は朝の7時台なのだ。熱心なモーゼファンだろうか?

 

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ミステリーゾーンへ4

とりあえず、歩き出そう。

駐車場周りは綺麗に整備された森の中の芝生の丘だったが、一気に薄暗い山道となった。不安しかない。

 

ちなみにここは「ロマンの小経(こみち)」というらしい。

不安しかない。

ロマンはいったいどこにお隠れになったのか。ロマンを全く感じさせない森の中を登る。

 

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ミステリーゾーンへ5

そのうち、木立の中に電話ボックスくらいの大きさの、簡素な小屋を見つけた。


モーゼの墓記帳所」って書いてあるぜ。

「モーゼクラブ」って書いてるぜ。

 

中には普通にノートがあり、訪問者のコメントが残されていた。

あと、なぜここがモーゼの墓と呼ばれているのかが書いてあった。

 

だが、あなたにはまだその内容はナイショにしておこう。

プールに入るときと一緒。

いきなり飛び込むと心臓への負担が強すぎるのだ。足先からゆっくり馴染んでいこうぜ。

 

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ミステリーゾーンへ6

…しかし、どう考えても遠い…。

 

もう汗ばんできたし、疲れてきた。

なのに全然モーゼの墓に辿り着かない。

 

先ほどの地図を見てほしい。駐車場からすぐのはずなのだ。

おかしいではないか。

 

…ってデジカメで撮った写真をマジマジと見て、すごいカラクリに気付いた。

 

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ミステリーゾーンへ7

 

2つの「A↑」「A↑」がリンクしている…。

 

 

「何考えてんだ、おめぇ?こんなん、わかるか」

そう思ってしまった。

 

地図の右側にある白くて大きな線は道ではなく、2つの地図の境界線だったのだ。

なんというトラップだ。

その後、Webで調べてみると、このMAPに翻弄されて森の中をウロウロした人がわんさか出てきた。

 

被害者の会、作ろう。

そうしよう。

 

 

舞台は深淵へ…

 

しばらく山道を歩いていたところ、前方の小さな広場に1人の女性を発見した。

 

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森を徘徊1

しかも立ち止まっている。足元の何かをガン見してる。


朝っぱらからこんなところに1人で来る人なんて、あからさまに怪しい。

微動だにせずに足元を見ているだなんて、もっと怪しい。

ここはヘタに近付かない方が利口ってヤツだ。

 

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森を徘徊2

僕は静かに女性のそばを通り過ぎ、その脇にあった「浮船展望台」という分岐から展望台方面に登って行った。

いきなりハデな倒木が現れて、一瞬躊躇はしたが。

 

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森を徘徊3

イテテテ、ヤブがひどい。痛い。

 

なんかもうこれ、手入れ諦めているでしょ。

どこが歩道だか全然わからないよ。

 

僕はすごく気軽な気持ちでモーゼさんのお墓参りに来てしまったのだが、やっていることはずいぶんとガチ寄りのハイキングなのだ。

旧約聖書を甘く見ていた。

 

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森を徘徊4

とりあえず展望台みたいなところまで行った。

だが木立でほとんど景色が見えなかった。

 

チラッとだけ押水の町並みが見えたが、木立が多くってカメラのピントは目の前の枝に合わさった。なんてこったよ、旧約聖書

 

しかし、いつまでもヤブに絡まっているにも限度がある。

もうあの女性はお帰りになったであろうか?

展望台にて歩道は行き止まりなので、Uターンして女性のいた広場まで戻ろうと思う。


広場まで戻ると、例の女性はちょうど立ち去るところだった。

お互い軽く会釈をした。

 

それから僕は、さらに道を奥へとズンズン歩く。

 

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森を徘徊5

山道をさらに登ると、なんかT字路に出ちゃった。

標識がないのでどっちに行ったらいいのかわかなない。

 

しかしどちらも草の生い茂った廃道みたいな感じだ。

昔はこれ、未舗装の車道だったりしたのだろうか?

いや、そんなことはどうでもいい。僕はどっちに行けばよいのか。

 

ちょっとだけ進んでみた。

どうやら登る道はこの山頂に向かって行きそうだ。これはちょっといただけない。

行っちゃダメだ。

 

そもそも、駐車場からモーゼの墓までの距離感を僕は知らない。

こんな登山みたいな感じなのだろうか?

もう最初っから間違えていたりしたのだろうか?

 

とりあえず、引き返してみた。

さっき女性と擦れ違った場所のちょっと先まで戻った。

浮船展望台との分岐辺りまで。そこで足もとの石柱を見て、ようやく気付いた。

 

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森を徘徊6

「ミステリーヤード」って書いてあったよ。

さっきは女性がいたので不用意に近づけなかったが、ちゃんと書いてあったよ。

 

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森を徘徊7

つまり僕は今、ここにいるのだ。

MAPで見る限り一番メインっぽいスポットだ。

 

だがしかし、ホワイトな爺さんもいない。像くらいはあると思ったのに。

あまりに森の中の簡素な広場だったので、まさかここがメインとは思わずに通過してしまったのだ。

 

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森を徘徊8

とりあえず、ミステリーヤードで記念撮影をしてみた。

普通の公園の敷地みたいな雰囲気。

 

正直、達成感はあまりない。

疲労感はそれなりだ。

 

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森を徘徊9

中央にはモーゼの伝説についての説明版が設置されていたが、老朽化が進んでいて文字はほとんど読めなかった。

そうか、さっきの女性は足元を見ていたのではない。この説明板を読んでいたのだな。

 

ここで僕は、油断しかけた。

僕はこの地にミステリーヤードを求めて来たのではない。

あくまでモーゼの墓なのだ。

 

MAP上のモーゼ爺さんがあまりに存在感があったのでだまされそうになったが、あくまで墓参りに来たのだ。

 

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森を徘徊10

一緒に見てほしい。

このミステリーヤードの後ろには、丘が3つある。

その中の真ん中のものが、モーゼの墓のようなのだ。

 

よし、目的地は近いぞ。

 

 

モーゼの墓参り

 

僕の眼前にある、あの丘がモーゼの墓なのか?

それっぽい説明書きは周辺に何もないが、消去法からこれ以外にないだろう。

 

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モーゼの墓参り1

とりあえず、獣道みたいな道を辿る。

どうだい、墓参りをしている人の撮った写真に見えるかい?

 

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モーゼの墓参り2

よーし、朝からいい試練を与えてくれるじゃないか。

さすが旧約聖書

 

ゼーハー言いながら頂上まで辿り着いた。

木々は伐採されていて、それなりに整備しようとした痕跡が見えた。

あと、なんかいろいろカオスなものが目に入った。

 

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モーゼの墓参り3

シーサー。

「ありがとうございます」

 

さて、リアクションに困るというヤツだ。

新時代の墓の幕明けかなって思った。

 

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モーゼの墓参り4

「これはスパイシーですよ。強烈なスパイスが効いていますよ。」と心の中で興奮した。

このやる気の無さよ。

愛情が感じられるか感じられないかの、ギリギリの瀬戸際を攻めるような投球よ。

 

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モーゼの墓参り5

 墓標が雑だ。

僕が小学生の頃に飼っていたカエルが死んでしまい、敷地内の花壇に埋めて割り箸で墓標を作ったときと似ている。

 

書いてある文字を読む。

モーゼ一族霊団供養??

一族か。ファミリーだったのか。

 

まぁ僕は前述の電話ボックス大の小屋の中で説明板を読んだので知っているのだが、3つある丘はそれぞれが墓である。

1つはこのモーゼのものだが、他はモーゼの妻のものと、孫のものと言われているのだそうだ。

 

モーゼファミリー、安らかに眠れ。

シーサーに守られて眠れ。

 

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モーゼの墓参り6

また山の中をテクテク歩き、愛車を停めた駐車場まで戻ってきた。

 

ついついしだれ桜が綺麗でそちらをメインとなるように撮影してしまったが、駐車場周りは綺麗に木々が整備されている。

 

そして、桜の背後にわずかだがギリシャ建築のような石柱が見えている。

この施設内の貴重な本格的オブジェなのに、しっかり写真を撮れずにあとあと後悔している。

 

ここでは管理人さんと思わしきおじさんが、草木の手入れをしていた。

「どうだった?墓はすぐ分かったかい?すぐ横にモーゼの親族の墓もあることに気付いたかい?」などと気さくに声をかけて来てくれた。

 

あと、「さっきも女性が1人で来ていてね…」と、なぜか得意気だった。

そうかあの人か。しゃべったのか。

 

おじさんは、「モーゼについて知りたいことがあれば、なんでも聞いてくれていいよ」と自信満々だ。

何も質問しないのは悪いよな…。

 

「あの女性はどんな質問をしたの?」というのを僕からの質問としようと思ったが辞め、「モーゼの孫はなんという名前だったのか?」などと質問させてもらった。

おじさんは「タルヲス・イホスチヒリウスだね」と、「リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ」みたいな勢いでスラスラ言うものだから面食らったね。


本当はあんまり知りたいことは無かったんだけど、他にも2・3質問してみたよ。

いつか、この知識が僕の糧になるかもしれないから。

転職するときとかに有利になるかもしれないから。

 

 

モーゼの伝説と竹内文書

 

さて、いよいよモーゼ伝説の真相に迫ってみよう。

ソースは、電話ボックス大の小屋の掲示物、WikipediaさんなどのWeb媒体、そして管理人のおじさんの話だ。

 

まずあなたは、この記事のタイトルを見た瞬間から思ったはずだ。

「本当にモーゼの墓なのか」と。

 

結論から言おう。

 

違う。

 

少なくとも現代の調査では、モーゼがここに眠る根拠は満たしていない。

 

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竹内文書1

何故モーゼの墓と云われるか?
古史古伝の代表作竹内文献のなかに、モーゼは能登・おしみずへやって来ていると記されている。


竹内文献

竹内文書」という呼ばれ方の方が一般的であろうか。

 

ひとことで言うならば、バチバチにぶっ飛んだ空想歴史本だ。

そりゃもう、モーゼもキリストも釈迦も日本にやってきて天皇に仕えるし、天皇は「神武天皇」より古い105人の天皇がいるし、その天皇は空飛ぶ船で全国行脚だ。

ムー大陸アトランティス大陸の原型も登場している。

 

昭和の初めに突然明るみに出た、竹内家の所有している歴史書

やれ文書偽造だ、詐欺だと裁判騒ぎになり、ゴタゴタしているうちに第2次世界大戦で焼失した。

 

この竹内文書が大好きだった人物がいる。

昭和前期の考古学者でありジャーナリストである、「山根キクさん」だ。

 

彼女は、「ここがモーゼの墓だ」と言い出した。

ここがモーゼの墓であるの根拠は竹内文書にすら記載がない。

話の解像度がだんだん低くなってきたな。

 

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竹内文書2

地元の人も、そりゃ信じていたわけではない。

ここ押水町だって、ウソと思われる歴史に加担はしたくはなかった。

 

だけどもこの押水町、産業もなければ観光地もなく、金もない状態だったらしい。

「試しに…、作ってみるか?モーゼパーク…。」

こうして誕生したのが、伝説の森モーゼパークだ。


話の解像度が、もう原型を留めないほどに崩れてきたな。

面白い。

 

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竹内文書3

モーゼは海を割ったりなんやかんやし、そして「シナイ山」で神から十戒が書かれた石板を授かる。

そのあと天浮舟(あまのうきふね)という空飛ぶ船で日本にフラリとやってきて、十戒天皇に献上したら、天皇は喜び娘をモーゼの妻に推薦した。

 

2人はその後もいろいろあったけど仲良く暮らし、モーゼはここ能登で583歳の生涯を終える。

ちなみに長男はニウマポンヒリウス、孫は例の墓に眠るタルヲス・イホスチヒリウスだ。

 

…ちょっと頭痛がして来たかい?休むかい?

うん、ではそろそろ話を終わらせよう。

 

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竹内文書4
  • 滝を割ったモーゼ
  • 奇想天外な竹内文書
  • ぶっ飛んだ見解を示した山根キクさん
  • モーゼ運用を後押しした押水町

 

一体、どこまでが正しく、どこからがこじれてしまったのだろうか?

 

しかし、どうなのかな?

「歴史書」・「伝承」・「おとぎ話」・「聖書」…。

これらの境界線は実はあいまいかもしれないし、今僕らが信じている歴史だって正解ではないかもしれない。


真実は、本当に僕らの見える範囲にしかないのかもしれない。

 

じゃあ、何も信じられない?

いや、そんなこともない。

 

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竹内文書5

「歴史書」・「伝承」・「おとぎ話」・「聖書」。

共通してるのは、後世に残したい強い想い・強い希望。

 

僕らは先人たちのその思いを受け止め、新しい時代・新しい季節を歩んでいくのだ。

…きっと。 

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 伝説の森モーゼパーク
  • 住所: 石川県羽咋郡宝達志水町河原
  • 料金: 無料
  • 駐車場: あり
  • 時間: 特になし

 

No.114【山口県】感じろ、地球の鼓動!!日本一低い火山「笠山」の火口を覗いてみた!!

山の成り立ちはいくつかあるが、もっともセンセーショナルな山の誕生パターンは、やはり火山によるものではないか。

 

地球の持つエネルギーを、地表が抑えきれずに隆起・噴出しているのだ。

ニキビみたいなものだろうか?

 

あなたも、いい年こいて深夜にラーメンをガツガツ食い、翌朝吹き出物ができていたら「ワォ!センセーショナル!!」と言うだろう。

僕だって言う。

だったら、地球だってそう言うだろう。

 

僕らが小さな吹き出物でもそれなりに騒ぐように、地球だって小さな火山にも過敏に反応すると思う。

だから話そう。

日本一低い火山と言われている、「笠山」のことを。

 

 

日本一低い山は、いくつも存在する。

山だって多様性の時代なのだ、きっと。

 

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これが僕が今まで訪問した「日本一低い山」だ。

何がホンモノで何がウソだ、とかではなく、いろいろあって全部正しいと僕は思っている。


詳しくは、僕の書いた以下の【特集】をご参照いただきたい。

 

drive-ns.hatenablog.com

 

標高10mにも満たないミニマムな山が列挙されている中、1つだけ意識な標高112mもある山、笠山。 

ま、他の山に比べるとはるかに高いが、冷静に考えれば笠山より「東京スカイツリー」のほうが5.6倍も高いのだが。

 

東京スカイツリーの5分の1にも満たないスケールの火山って、いったいどんななのだろうか?

 

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笠山に登れ1

これが笠山だ。

真ん中に「萩観光ホテル」を有しているのがインパクトある。

 

そしてヘタな構図で申し訳ないが、これは海越しに撮影した。

笠山は昔は海の中の島だったのだ。

 

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笠山に登れ2

それが、今は砂州で陸と繋がり、陸続きの島となっている。

以下にザックリとマップで示すので、それで改めて確認してほしい。

 

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他の低山とは違う笠山の特徴、それは山頂直下まで車で登れることだ。

他の山では1合目から山頂までダッシュで何秒か計っていたが、笠山については計測対象外とする。

 

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笠山に登れ3

車を使ってしまうので。

さすがに高さ100mもあると、文明の利器を使いたくなるのだ。ごめんね。

 

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笠山に登れ4

道はちょっと狭い。しかし、HUMMER_H3であっても特に懸念を感じさせない程度の広さはある。

ウネウネと登って充分な空きスペースのある駐車場に到着する。

 

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笠山に登れ5

すごーく余談だけど、ここで車内自炊をしたこともある。

 

1日1~3食は自炊をしながら旅をしていた時代もあったのだ。

コストを抑えられるし楽しい。ただしそれなりの要領が必要だ。

 

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笠山に登れ6

このときはレトルトのカルボナーラだった。

 

では、カルボナーラのことはさておき、山頂や火口をご紹介しよう。

 

 

山頂と火口を巡る

 

山頂攻略

 

駐車場から少しだけ歩いた広場に、笠山山頂園地を示す大きな立て札があった。

 

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山頂巡り1

結論から言うと、ここが一番「来ました感」のあるスポットだ。

「記念写真を撮るならここ一択だ」 って思った。

 

この看板から10mほど登っただけで山頂エリアに出た。

木々も多いのでよくわからないけど、どうやらお鉢のようになっているようだ。

 

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山頂巡り2

山頂の片隅には、上記のような展望台がある。

あの向こうは日本海だ。これ絶対景色がいいヤツだ。もちろん登る。

 

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山頂巡り3

はい、すごい。

日本海にポツポツと浮かぶ小島が一望できる。

 

「阿武火山群」に属する島々で、いくつかは火山なのだそうだ。

以前「ブラタモリ」でもやっていた。

 

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山頂巡り4

あなたは、「…ってことは、あの島々こそが日本一低い火山ではないか」と思うかもしれない。

 

…そこのところは、結構難しいようなのだ。

かつて溶岩を噴出していた島ではあるが、定義上「山」ではないらしく。

 

俗に火山として世界最小(あるいは東洋最小、日本最小とも)などと称されることもあるが、火山の定義や地形学的分類により捉え方は様々であり、その序列を断定的に呼称することは無意味である。

 

Wikipediaさんにも上記のように書かれている。

しかし実際、この笠山を日本一低い火山・世界一低い火山として取り上げているWebサイトは多い。

 

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山頂巡り5

まぁ、いろんな見方があっていいんじゃないだろうか?

 

そもそも「日本一低い山」自体が、様々な定義でいくつもあるのだ。

日本一低い火山なら、なおさら定義がフワッとしてしまうかもしれない。

そんな中で、自分のお気に入りを探せればよいのだと思う。

 

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山頂巡り6

お鉢巡りをしてみた。

結論から言うと、1分足らずで終わった。

小さい小さい火山であることを、自分の足で実感することができた。

 

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山頂巡り7

4月の中旬の訪問の際には、八重桜がチラホラと咲いていて風流だった。

こんなお鉢巡りも渋くて良いなって思った。

 

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山頂巡り8

あと、途中に三角点があったので記念撮影をした。

どうやら3等三角点なのだそうだ。

 

ここがガチな山頂なのだろうか?

山頂を示す碑などはなくってわからなかったが、とりあえず三角点は踏んだのだ。

この山は制覇したと自負している。

 

 

火口攻略

 

いよいよ、火口を見学してみよう。

笠山は、まだしっかりと火口が残っている火山らしい。

であれば、やっぱ火口を見てみたいのが人の心情であろう。

 

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火口見物1

火口の規模は、直径30m・深さ30mだそうだ。

ウネッとした階段で、日の当たらないお鉢の中へと降りていく。

 

これは4月中旬の訪問の際の写真だ。

まだ季節的にそんなに緑が茂っておらず、形状が大まかに把握できる。

 

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火口見物2

一方これは、まだまだ暑い9月の中旬に撮影したものだ。

緑が元気で、何がなんだかよくわからない状態だ。 

 

一番下まで降りると、金網のフェンス越しに溶岩剥き出しの火口深部を見られる。

 

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火口見物3

真っ赤な岩が、溶岩だ。

フェンスと溶岩の間には隙間があり、さらに下の方を覗き込むことができる。

 

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火口見物4

この奥の奥から、マグマが湧き出してきたのだろう。

 

僕の後から来た人がここを見て、「全然火口じゃないね」と言っていた。

確かに「富士山」や「阿蘇山」の火口をイメージしてしまっていたら、ずいぶん見劣りするであろう。

しかし、確かに地球の鼓動を感じたよ、僕は。

 

調べてみると、この火口は8800年前のものなのだそうだ。

すごい昔に感じられるかもしれないが、日本列島って数10万年・数100万年前の火山とかで形成されている。

8800年前のものは、むしろかなり若い部類であろう。

 

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火口見物5

溶岩を拡大してみた。

すごく綺麗な溶岩だ。

 

この笠山は生きている。…そう感じたのだ。

 

明神池を散策しよう 

 

笠山と一緒にぜひご紹介したいスポットがある。

 

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さっき掲載したMAPを再度引っ張り出してみた。

「明神池」。

 

昔は島だった笠山だけど、陸との間に砂が堆積して砂州となり、陸続きとなったのだ。

その際に、砂州の真ん中にちょっとだけ海が取り残された

 

そう書くとなんだかマヌケな表現になってしまうかもしれないが、それが明神池だ。

 

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明神池1

はい、その明神池にやって来た。

笠山の麓にあり、笠山に行く際にはほぼ必ず横目で見ながら通ることとなる池だ。

 

明神池のすぐ横の駐車場は有料なのだが、3分ほど歩いたところに無料の駐車場があるのを発見した。

ありがたいので、無料の方を使わせていただく。

 

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明神池2

池のほとりには燈篭などが建っていて、日本庭園のようだ。

 

どうやら歴史を紐解くと、江戸時代の初期に毛利氏が「厳島明神」を勧請したのだそうだ。だから明神池。

 

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明神池3

昔は茶室などもあったのだそうだ。

なるほど、その頃の名残が今も少しだけ感じられるな。とても渋い。

 

そして何より面白いのは、この池は笠山の溶岩の隙間から海へと繋がっているという点だ。

だから池の水は海水なのだ。

海の魚が泳ぐし、海の満ち干きに合わせて水位が変化する不思議な池。

すげーぞ、明神池。

 

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明神池4

池の西側には林が広がっており、その中には「萩厳島神社」がある。

毛利氏が勧請した、例のアレである。

 

さらにその奥には、「風穴」という洞窟があるそうなのだ。

洞窟好きな僕としては、ぜひ行ってみたいではないか。

 

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明神池5

上の写真のちょっと手前には「風穴の店」という簡素なお店があった。

風穴は、このお店の敷地内の庭のような部分にあるのだ。

ちなみにお店はこのときは営業してはいなかった。


お店の前を経由し、写真のスペースに足を踏み入れた途端、体を冷気が包んだ。

10℃ちょっとくらいだろうか?

そんな冷気が辺りに滞留していた。

 

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明神池6

「どっかの洞窟から出ているのかな?」って思ったけど、それと思われるような洞窟は見当たらなかった。

 

庭の中心には井戸のような池のような水たまりがあったけど、ここが全ての冷気の原点というわけではなさそうだ。

どうやら冷気が噴出される特定の穴というのは無いらしく、辺り一面の岩の隙間などから冷気が出ているらしい。

 

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明神池7

上の説明板をご覧いただきたい。

この冷気は、笠山を形成する溶岩の隙間で冷やされた空気が出ているものなのだ。

 

笠山・明神池、そして風穴。

どれも繋がっている。全部合わせて、笠山の特徴だ。

 

日本一低い火山には、その箱庭のような狭い空間の中に、火山としてのエッセンスを詰め込めこまれており、かつ島から陸続きになったという特異な歴史を持つ火山であった。

 

この山は、面白い。

また1つ、僕の人生は深みを増しただろうか?

笠山を背に、次のスポットへと再び走り出した。

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 笠山
  • 住所: 山口県萩市大字椿東越ヶ浜4区
  • 料金: 無料
  • 駐車場: あり
  • 時間: 特になし

 

No.113【山形県】過酷な環境に耐える秘境駅の「峠駅」!!名物は絶品のお餅だ!うめぇ!

2021年度の秘境駅ランキング、第14位。

「峠(とうげ)駅」。

 

日本の鉄道駅は、2017年時点で9909駅あるそうだ。

ザックリ1万駅だ。鉄道大国、日本。

その中の秘境度ランキング14位という、エリート中のエリート駅をご紹介したい。

 

hp1.cyberstation.ne.jp

 

情報ソースは、「秘境駅へ行こう!」のWebサイトである。

筆者の「牛山隆信さん」は秘境駅スペシャリストで、さまざまな関連書籍も出しているぞ。

僕も尊敬している。

 

ちなみに第1位~20位くらいまでは、駅周辺には人家無し、あるいは片手に収まるほどの家があったら「オォ、ブラボー!メガロポリス!」といったレベルだ。

当然駅なので電車は停まるが、電車以外の手段で駅に行こうとなると、道が無かったり・山道だったり・舗装されていなかったり、過酷を極めることがほとんどだ。

 

drive-ns.hatenablog.com

 

ちなみに、以前ご紹介した「奥新川駅」は55位だ。

 

では、見せてもらおうか。

第14位、峠駅の実力を。

 

 

姥湯温泉から峠駅へ

 

僕は、まずは秘湯「姥湯温泉」に行ったのだ。

今回ご紹介する峠駅より数段山奥にある温泉だ。

ここでは、その姥湯温泉について詳細を語るつもりはない。

 

drive-ns.hatenablog.com

 

でももしあなたが「姥湯温泉気になる、気になる―!」というのであれば、上記リンクを先にご参照いただきたい。

僕はその姥湯温泉から戻る道すがら、本日で執筆する峠駅に立ち寄ろうというのだ。

 

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秘境駅へ1

今は夏なのにいきなり秋の深まる写真をご紹介してすまない。

季節は真逆だが、晩秋の肌寒さが恋しくなったのでしょうがない。

 

さて、ご覧の通り道はかなり細いが、先に深部である姥湯温泉を極めてしまったので、ぶっちゃけ気がラクだ。

行きに来た道を戻るだけなのだ。

 

道は細いが舗装はされている。荒れた舗装ではあるが、ありがたい。

だが、ワケのわからんスイッチバックのためのポイントとかが出てくる。

 

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秘境駅へ2

一瞬では理解できないような動作を強いられるポイント。

他ではちょっとお目にかかれない標識で、なかなか楽しい。

 

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秘境駅へ3

深い山道を8㎞ほど引き返したところで、「←峠駅 国道13号→」の分岐が出てくる。

最終的には国道13号方面に帰るのだが、これから峠駅に行く。

 

そしてランチにする予定なのだ。

実は峠駅には名物のお餅屋さんがある。それが僕のお目当て。

 

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秘境駅へ4

看板に「わくわくカーブ」っていうのが書いてある。

どんなカーブか知らないが、山間部のカーブで観光客を誘致しようという作戦なのか、そっか。

 

そして、「山形新幹線が走る峠駅」と書かれている。

「停まる」わけではない。音速で目の前を通過される駅だ。

 

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秘境駅へ5

はい、これが件のわくわくカーブである。

わくわくしているかい?

 

…僕?

大丈夫、人生わくわくしているから。

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秘境駅へ6

駅へと向かう道。

晩秋の紅葉がとても綺麗だ。

 

もし対向車が来たら擦れ違えないが、この道は駅で行き止まり。

対向車が来る可能性はほぼゼロなので、ルンルン気分のドライブである。

 

そして、峠駅に到着だ。

 

 

スノーシェッドの峠駅

 

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峠駅1

前述の「秘境駅へ行こう!」のWebサイト情報によれば、人家は僕がこれからランチをしたいお店を含めて2軒だそうだ。

 

しかし、サイト情報は結構古そうだ。もしかしたら1軒しか残っていないかもしれない。

 

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峠駅2

この写真と1つ前の写真、共に2軒の家を写しているが、なかなかに静かなので現役でないのかもしれない。

 

あ、そしてこの写真の奥へと続く道が、今僕が来るまでやってきた道だ。

なかなかに狭いだろう。

 

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峠駅3

では今からね、この倉庫のような建物の中に入る。

これが何かって?

決まっているじゃないか、峠駅だよ。

 

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峠駅4

えっと、ごめん。正確には、峠駅のスイッチバック遺構という。

駅本体はこの倉庫のもっと奥の方にあるのだ。

スイッチバックについては、後程ご説明しよう。

 

この倉庫、外観はボロボロだが、内部はなんだかかっこいい。

隙間から光が差し込み、SFの世界のタイムトンネルのようにも見える。

 

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峠駅5

この倉庫はスノーシェッドといい、雪から駅を守るためのものである。

 

山形県福島県の県境に近い、その名の通りにあるこの駅は、冬場はメチャクチャ雪深いのだ。

だからこうして、施設全体をすっぽりと覆っているのだ。

 

さぁ、駅本体が見えてきた。あれがホームだ。

 

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峠駅6

すっげぇ近未来。

 

これ、世の中の男子は全員好きなパターンではなかろうか。

もし例外がいるなら、その人の分まで僕がこの駅を愛そう。

 

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峠駅7

この中を、山形新幹線が走るのだ。

そう都合よく電車は来てくれないが、新幹線の走行シーンを想像するだけでワクワクしちゃう。

 

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峠駅8

スノーシェッドの出口は、まるで時空をワープできるかのように輝いていた。

レトロフューチャーというか、スチームパンクというか、そういう感じのデザイン。

 

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峠駅9

…と思ったら、米沢警察署の「熊・出没!」の貼り紙が目に留まり、一気に現実へと戻ってくるのだ。

現実に戻ってくるタイムトンネル、体験しちゃったじゃないか、このやろ。

 

では、このスノーシェッドの中間点くらいに出入口があるので、外に出てみよう。

 

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峠駅10

100点。

 

僕が今まで通学や通勤で使っていた駅とは、テイストが違うのだ。

「これがランキング14位の実力か!」ってほれぼれしたさ。

 

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峠駅11

長ーく連なるスノーシェッド。200m以上あるらしい。

この中を新幹線様が走られるんですぜ。

天皇陛下を僕のお気に入りのボロ食堂に招待しちゃうかのような背徳感を感じる。

 

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峠駅12

そんでよく見てほしいんだけど、これは線路のレールと枕木でできているのだそうだ。

 

すごく美しい。廃材アートだ。

こんなデザイン、令和のこの時代に新しく作れるだろうか?

 

 

スイッチバックの歴史

 

峠駅の立地について、ご紹介したい。

峠駅は、「東北の屋根」とも言われる奥羽山脈を越える、奥羽本線山形線の駅である。

明治時代、まだ機関車(SL)が走っていた時代からある、とんでもなく歴史の古い駅だ。

 

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機関車は、登り坂ではメチャクチャ体力を消耗する。

大量の石炭や水を積んで山の麓を出発しても、このままではエネルギー切れで山を越えられないのだ。

 

従い、山の途中に補給基地が必要となる。

それが峠駅だ。

 

でも、険しい山なので機関車が停まれるだけの土地を確保するのも難しい。

ほら、坂の途中で自転車を停めたときのことを想像してほしい。再び漕ぎ出すのはすごくハードだろう。

坂の途中に少しでいいから、平坦な土地がほしいだろう。

 

こうして山の途中に場所を選び、いろいろ切り開いたりして、駅ができた。

上の図を見ていただければ、なんとなくイメージがつくかなって思う。

 

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ついでに、駅前の茶屋に飾ってあった絵もご紹介したい。

山・山・山…だ。

そんな中での列車の唯一の休息場所だ。

 

では、駅への停車や発車をどうしていたのか。

そこで活躍するのが、スイッチバックだ。

 

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こんな理屈。

スイッチバックにも種類があったり、平らな部分が駅ではないケースなどもあるが、少なくともここはこんな感じ。

 

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ただし、今はスイッチバックは使われていない。

 

近代の電車は馬力がある。

もうスイッチバックを使う必要がなくなり、1990年に廃止されたのだ。

 

かつてスイッチバックを使っていた当時のレール、それが上記である。

僕が最初に歩いた部分だ。

 

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かつて切り返しをしていたレールに思いを馳せて、触ってみた。

 

僕は、こんなことで何かを感じ取れるほどの感性を持つ人間ではないが、歴史に触れるのが大事だと、そう思って触った。

 

 

茶屋の力雑煮蕎麦

 

では、もう15時ではあるが、遅いランチだ。

冬も間近なので日が暮れてきた。

 

名物の「峠の力餅」を売る、「峠の茶屋」で食べよう。

 

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峠の茶屋1

場所は駅前だ。

ぶっちゃけ峠駅の周辺で、生命の鼓動が聞こえる家屋はここの1軒だけだ。

早朝7時から営業しているのだそうだすごい。

 

しかし、冬場は3mほどの雪に覆われる過酷な環境なため、食事処は冬季は休業するそうだ。今の時期はギリギリのシーズンかもしれない。

 

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峠の茶屋2

ビールケースの黄色が目に眩しい敷地である。

その向こうに、「峠の力餅」と力強く書かれた建物が見えてきた。

 

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峠の茶屋3

石のカエルに、駅ホームでの立ち売り用のボックスが掛けられていた。

店員さんは、電車が来るタイミングでこれに力餅を入れ、窓越しやホームで販売をするのだ。

 

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峠の茶屋4

庭に駅名板もある。ここは海抜624mなのだそうだ。

前述の通り、東北の屋根と言われる奥羽山脈の中の駅なのだ。過酷な立地だ。

 

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峠の茶屋5

お店の全容が見えてきた。オシャレな庭園だ。 

中に入ると、はっぴ姿のご主人が快く迎えてくれた。

 

まずはお持ち帰り用に力餅を買ったのだが、その話はまた後程。

 

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峠の茶屋6

こんな感じの、17・8人くらいが入れそうな店内。

メニューはお餅がメインだ。

さて、何を食べようかな。

 

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峠の茶屋7

天井近くにはズラリとメニューの貼り紙が並んでいる。

見事にどれも末尾の文字は「餅」だ。

 

うん、確かに餅は食べたい。

しかし、僕は空腹なのだ。ボリューミーなものを食べたい。

 

その折衷案が、力雑煮蕎麦であった。

値段は1500円だったであろうか。なかなかにインパクトのある価格だが、その分期待も高まるというものだ。

 

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峠の茶屋8

待ち時間は、店内をキョロキョロ眺めて過ごした。

 

奥に「峠の茶屋 創業明治二十七年」と書かれた幟が見えるだろうか。

明治27年と言えば1894年である。

今から130年近くも前だ。すごい歴史だ。

 

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峠の茶屋9

さぁ出てきた、力雑煮蕎麦だ。

重量のある大きな丼。立ち上る、いいダシの香りよ。

 

具は山菜などがたっぷりだ。

この近所のものだろうか?違うのかもしれないが、山奥で山菜を食べるだけで崇高な気持ちになれるのは間違いない。

 

そして、注目すべきはもちろん傍らで存在感を放っているお餅である。

丸くて白くて、メチャかわいい。

 

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峠の茶屋10

うわぁぁぁぁぁぁ!!

もっちもちだぞ。赤ちゃんのほっぺみたいだぞ。

口に入れただけで、笑顔を止めるすべがなく困るのだ。

 

つきたてのお餅、昔僕も母方のじいちゃんの家で餅つきして食べたことがあるが、絶品なのだ。ふんわりレベルが別次元。

それを思い出した。

 

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峠の茶屋11

水のおかわりを頼んだら、「そこのお茶でもいいし、外の湧水でもいいよ」と言われた。

湧水か、行ってみよう。

 

お店のすぐ前には「峠の力水」という湧水が湧いている。

ここからグラスにおかわりした。

山奥に湧き出る水はとっても爽やかであった。この水でお米を炊いてお餅を作ったなら、おいしくないはずがないよね。

 

最後に僕、「外の水をペットボトルにも詰めていっていいですか?」って聞いて、汲ませてもらったよ。

 

水まで美味しい店。ごちそうさまでした。

優しい気持ちになれるお蕎麦だった。

 

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峠の茶屋12

 

 

お土産は峠の力餅 

 

僕は峠の茶屋で、力餅をお持ち帰りで買った。

家へのお土産だ。

 

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力餅1

峠の茶屋のWebサイトを見たところ、鉄道が通って以来120年も、この力餅を駅のホームで立ち売りしているというのだ。

この一箱に、悠久の歴史が詰まっている。

 

今回は時間の関係上、ホームで立ち売りするシーンは見れなかったので、せめてものお持ち帰りなのだ。

 

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力餅2

峠の茶屋にて、店内に展示されている写真を何枚か撮影させてもらった。

茶屋の方は代々力餅を販売しており、現在は4代目と5代目が活躍中だそうだ。

僕の対応をしてくれたのは、たぶん4代目。

 

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力餅3

近代化の波とか過疎化の進行とかで、峠駅に泊まる日中の列車の本数は、たったの6本のみ

しかも、停車時間はわずか30秒だ。

 

6本×30秒=180秒
 

1日わずか180秒の立ち売りに、全力を注いでいる。

 

あとは、僕のように難路を越えて直接駅までやってくる物好きな人のみだ。

そんな環境で入手した餅は、どこまでも尊いのだ。

 

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力餅4

古老が語る峠の力餅は我々が幼い頃から口にした郷土の味です

遠く明治三十二年福島米沢間に初めて鉄道が開通し板谷峠の難所吾妻越の山腹に峠駅が設けられ人も車もほっとひといき入れたものでした

その時駅頭の力餅の一切れは我々の元気を呼びもどしてくれました。

 

いい包み紙じゃないか。これ、家宝にしてよいか?

 

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力餅5

純白のお餅が登場した。

純真無垢な顔をしていやがる。

 

ふんわり柔らかいそのお餅は、皮はしっかり塩味がついており、中のこしあんは上品な甘みであった。

 

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力餅6

峠駅は、険しい奥羽山脈を越える機関車の水や石炭の補給場所として造られた。

登り坂だと石炭も水も消費が著しいので、周辺の立地はさておき、峠の途中に中継基地が必要なのだ。

機関車はそこでパワーを補給し、福島県へと山を越えていく。

 

駅の名は「峠」

名物は「力餅」

 

この合計3文字。

しかし、いろんな歴史の重みを背負っているのだろう。

 

www.youtube.com

 

温かいお茶と共にお餅を食べながら、僕は土産話をするのだ。

 

冬の近付く姥湯温泉のこと。

スノーシェッドの駅のこと。

お餅入りの蕎麦がうまかったこと。


間もなく、峠駅は雪で包まれる。

姥湯温泉は、僕の訪問から2日後に冬季休業に入る。

雪のような真っ白な力餅を食べながら、「ここも寒くなってきたなぁ」と、窓の外を眺める。 

 

2020年、冬の近付くある日の出来事。

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 峠駅
  • 住所: 山形県米沢市大字大沢
  • 料金: 無料
  • 駐車場: あり
  • 時間: 特になし

 

No.112【鹿児島県】廃墟のような建物!!その中で軍歌を聞き不思議なラーメンを食べた!

建物の前で、僕は躊躇する。

 

「これ、ヤベーぞ。マジでヤベー。1人で来るような場所ではない。

しかし、今入らなければきっと一生中には入れない。

逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ…!!」

 

意を決して、僕は建物内に入ろうとする。

 

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うむ、入口はどこかな?

 

*-*-*-*-*-*

 

…さぁ、刮目せよ!

コロナ禍の始まる少し前のある日、僕はとんでもない食堂に足を踏み入れる。

 

ドライブイン薩摩隼人」・「戦史館」・「軍国酒場」…。

いくつかの呼称があるが、ここではドライブイン薩摩隼人と呼ばせてもらいたい。

 

いやしかし、こんなドライブインは一生に一度だぜ、マジ…。

 

 

戦慄の車中泊で見たものは!

 

ちょっと話を遡ろう。

日本5周目のお話である。

 

薩摩半島最南端の「長崎鼻」で夕陽を見て、鹿児島市内のラーメン屋で夕食にした僕。

夜の鹿児島湾を大隅半島方面に走っていた。

 

「そろそろ眠くなってきたな」と思っていたところ、暗がりに店舗のようなものと広めの駐車場があったので、愛車をそこにピットインさせた。

 

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邂逅の記憶1

闇夜に浮かび上がった、そのシルエットに僕は恐怖した。

ボロボロの館…!?


なんかさ、深夜ドライブで車を停めたら太古に戦で滅んだお城で、怪奇現象がいろいろ起きて…っていうベタな怪談を彷彿とさせる。

 

なんなのか気になる。

しかし当然この時間はやっていない。

ちょっと、ここで朝まで仮眠させてもらおう。

 

いい夢を見れますように…。

 

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邂逅の記憶2

そして改めて朝だ。朝の5時台だ。

 

昨夜の建物を見上げた。

改めてクレイジーだ。朝日で浮き彫りになった天守閣のような屋根の部分の骨格が、相当に儚い感じに見えるぞ。

台風来たら全部飛んでいきそうだ。

 

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邂逅の記憶3

ジャンクさが大渋滞している。

雑多な感じがとんでもない。

波照間島の「たましろ」と那須の「戦争博物館」を足して2で割って、それに廃材をパラパラ振りかけた感じだなって思った。

 

文字情報もとても多い。

一番目立つ太字は『戦史館 強ぃ日本軍魂』って書いてある。

小さい「ぃ」が、一昔前のギャルのようだ。

 

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邂逅の記憶4

老兵は死なず ただ消え去るのみ

・燃ゆる思いは大阿蘇か たつすいさをは高千穂や

さつまの軍人さんは西郷さんの志をついておられたから出さなかったそうです。牛小屋のワラの中に隠し持っておられた物です。

大山大将は鹿児島市出身です。西郷さんの部下だったそうです。

・朝日に映ゆる高千穂の 聖き姿を振り仰ぐ 隼人の気魂烈々の 誓いに燃えて空を征く

・海とう天をつくところ 燃えて火を吐く櫻島 花はつぼみの稚児桜

・個人 日本一 戦史館 ヨコミチ

 

さぁさぁさぁ!

朝の5時台なのに胃もたれして来たな!

文字フォントがパワフルすぎて暑苦しいぞ!

 

・百聞が一見にしかず 耳で聞くよりひと目で見た方が良いと思います。

・国のために 戦死なされた人達の遺品が数多く供養されております

・現在の日本の発展は、この戦争で散華された幾多勇士の尊き犠牲に依ってもたらされたものである。この心理は今後幾星霜を経ても決して消滅することなく後世に継承されることを信ずる。 店主

・国のために310万人の兵隊さんの遺品・写真など数多く供養されて居ります

 

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邂逅の記憶5

なんなんだ、気になり過ぎる。

徐々にしっかり建物に日が当たってきているが、なんだこの奇抜すぎるデザインは。

 

凡人には描けないフォルムだ。

すっごい不器用な小学生が夏休みに造った割りばし工作みたいだ。

 

三角屋根をさかさまに乗せたような部分が気になり過ぎる。

 

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邂逅の記憶6

天文館で43年 隼人10線で38年 今だ現役 チスレ行ケ

 

天文館」とは、鹿児島市の繁華街の名前だ。

「隼人10線」は、国道10号線の薩摩隼人という意味だろう。

「今だ現役」は、きっと「未だ現役」ってこと。

最後のフレーズはわからん…。

 

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邂逅の記憶7

接続された建物の前には、「うどんそば」の立て看板。

あとは、元気なフォントで「ハチミシ.黒糖 たい焼」って書いてある。うん、ハチミシ。

 

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邂逅の記憶8

堂々たる「横道店」

あとでわかるのだが、横道というのは店主の名前だ。

 

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邂逅の記憶9

うん、知っている。

まだ会ったことすらない店主に、心の中でツッコミを入れた。

 

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邂逅の記憶10

この建物の名は、戦史館。

(後日、1階部分がドライブイン薩摩隼人だということを知る)

 

ご飯を食べることもできる。

オーナーの名前は「横道さん」。


ひとまずこれだけの情報は掴んだ。

過去も走っているはずなんだけど、気付かなかったな。

夜のことが多かったからかな。

 

愛車に乗り込んで、走行スタートする。

 

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邂逅の記憶11

口直しに、道路を挟んで反対側の「桜島」をどうぞ。

 

帰宅後、Webでこの施設の調べた。

内容は後述するか、「次回鹿児島をドライブをする際には絶対に立ち寄ろう!」と決めた。

 

…これが、僕とこの店との出会いであった。

 

 

突撃せよ、廃墟系ドライブイン! 

 

さて、少しだけ月日が流れた。

日本6周目の僕だ。

 

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ドライブイン薩摩隼人1

今日は朝イチから皮膚科に行くハメになって若干浮かない顔をしているが、天気は最高だ。

桜島がめっちゃカッコいい。シビれる。

 

昼前に、懐かしのドライブイン薩摩隼人にやってきた。

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ドライブイン薩摩隼人2

よしよし、今日は元気に営業しているようだ。

以前の 『強ぃ日本軍魂』の看板がなくなってしまっているが、大丈夫だ。このお店は、まだまだ強いままだ。

 

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ドライブイン薩摩隼人3

しっかし、このジャンクさよ。

「マッドマックス」に登場しても違和感ないぜ、この店。

世界観からして違うのだ。

 

営業中の立て看板があり、シーツのような白いのれんに「ヂャンボ からあげ屋」と書かれているが、不安しか感じない。

見たことないタイプのからあげ屋だ。

 

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ドライブイン薩摩隼人4

奥の方の三角屋根の前には、ハンドメイドではなく既製品の幟が数本立っている。

からあげとかうどんとか書いてある。

既製品を見たことで、ほんのちょっとだけ心臓の鼓動が落ち着く。

 

いやしかし、ここはドライブインの概念をどうみても超越しているだろう。

ドライブ中に「あ、ドライブインだ。ランチしていこう。」とはなりにくいビジュアルだ。

ことさらドライブデートの途中に立ち寄ろうものなら、嫌われるかある意味尊敬されるかのどっちかだ。(僕は後者がいい)

 

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ドライブイン薩摩隼人5

怖いよ。あぁ、怖いさ。

でも行くしかない。

チャンスは今回が最初で最後だと覚悟してきた。

 

入口はここか?

演歌だか軍歌が、中からすんごい音量で聞こえてくる。

 

中を覗くと、すぐ目の前は薄暗いバーカウンターのような場所だった。

帽子を被ったおじいちゃんが1人、座っていた。

オーナーの横道さんだな。御年89歳だそうだ。

 

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ドライブイン薩摩隼人6

「こんにちはーー!」と声をかける。

おじいちゃんは「どうしたー!?」、「戦史館!!?」と聞いて来ているようだ。

しかし、軍歌の音量がすごくて全然聞こえない。

 

僕:「ランチ!」

おじいちゃん:「はぁ!?」

僕:「お昼食べたいんだけど、やってますか!!」

おじいちゃん:「なにー!?」

僕:「お昼食べられますか!!!?ラーメンとか!!!」

 

ようやく通じたようだ。たぶん。

「じゃあこっちへ入りなー!!」

 

台風直後みたいにガッチャガチャに引っくり返った建物内の小道を抜けて、深淵へと誘導される。

 

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ドライブイン薩摩隼人7

なるほど、これだけ温暖でいい気候の鹿児島湾沿いで、この店には窓1つ無いのか、そっか。

アンダーグラウンドな気配が充満している。


おじいちゃんは僕をカウンターに座らせると、その向こうに佇むおばあちゃんに対し、「お客さん!!ラーメン!!」と叫んだ。

 

あ、もう僕ラーメンをオーダーしたことになったのか。

まぁいっか。

このクソ暑い中で、クーラーの無い店内でアツアツのラーメンを食べるのは、悟りを開けちゃうかもしれないけど。

 

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ドライブイン薩摩隼人8

…で、おじいちゃんからのオーダーを受けたおばあちゃんなのだが。

 

微動だにしない。

 

ダメこれ。

歌の音量デカすぎ、かつ店内ゴチャゴチャすぎてさ、おばあちゃんは僕が入ってきたことすら気付いていない。

もう、なんだこれ。

 

おばあちゃんもそれなりのお年なのだから、耳が遠いのかもしれない。

もうちょっと音楽のボリュームを絞るといいのでは?って思ったけど、そのアドバイスすら聞こえないであろう。

 

おじいちゃんは大きく息を吸い込むと、「ルァァーームェーーン!!」と、ヘビーメタルのヴォーカリストのようにシャウトした。

カウンターの向こうのおばあちゃんがピクリと反応した。

通じたのだ。

 

おばあちゃんが僕の方を向き、その口のかたちが「いらっしゃい」と動いた。

音は聞き取れない。今は演歌がうるさい。

 

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ドライブイン薩摩隼人9

さぁさぁおばあちゃん。

作ってくれ、僕のラーメンを。

 

って思ったら、おじいちゃんが「じゃあワシ、奥でラーメン作ってくるわ」と消えていった。

アンタが作るんかい。なんでさっきおばあちゃんにオーダーしたよ。

もう、なんだこれ。

 

 

施設内は軍歌吹きすさぶダウンタウン

 

おじいちゃんが奥でラーメンを作っている間、僕はおばあちゃんとカウンター越しで1on1だ。

 

軍歌のボリュームが大きくてほとんど聞こえないが、たぶん「はいお水」と言われてカウンターにグラスが置かれた。

飲んでみた。常温だった。

 

おばあちゃんが「どこそこから汲んできたいい水で…」と説明しているような気がするが、爆音軍歌の中では固有名詞はほぼ聞き取れず、高度のリスニング能力が必要だ。

いい水でなくっていいけど、冷たい水が欲しい気がする。

今日は朝8時から汗だくになるくらいに暑いのだ。南九州、ヤベェのだ。

 

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ドライブイン薩摩隼人10

カウンターの背面を撮影させてもらった。

つまり、僕の視線の先がこれだ。この写真の中央に、こっちを向いているおばあちゃんが立っていると想像してほしい。

 

情報量が多いな。

たぶんおばあちゃんがいなくなり、ラーメン登場まで1時間がかかっても苦にならない。

そのくらい、得るべき情報の多いカウンターである。

 

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ドライブイン薩摩隼人11

『昔の味で出しています』って、なんだろう。

そばやラーメンに文明開化ってあったっけ?

 

次に、僕が座っている位置から首を右に回してみよう。

 

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ドライブイン薩摩隼人12

伝説のダウンタウン、「九龍城」みたいなことになっている。

各所に貼り付けてある波状のトタン板は、どれだけの歴史を見てきたのだろう。

 

それと、延長コードが空中を横切っているのが壮観だ。

 

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ドライブイン薩摩隼人13

ここの部分とか、もうサーカスみたいで優勝。

 

あと、元気からあげ・大安からあげ・若とりステーキなどの貼り紙がある。

「大安からあげ」はたぶん「おおやす」と読むのだろうが、「たいあん」みたいでおめでたいことになっている。とても良い。

 

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ドライブイン薩摩隼人14

 『昔の味で出しています』

あくまでこの店は、クラシックスタイルにこだわるのだ。

大切なことだからな、2度言ったぞ。

 

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ドライブイン薩摩隼人15

先ほどの写真にも写っているが、カウンターの後ろ側にはとんでもないスペースがある。

 

これは…、「小上がり」と呼んでいいのか?

小さな小さなテーブルが無ければ、ただの荷物台だろう。

しかし、そこにテーブルがあるだけで、僕らはものの見方を変えねばなるまい。

 

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ドライブイン薩摩隼人16

おそらく手作りの木の台の上に、絨毯の切れ端。

そこに小さなテーブルを設置。

これで、幅数10cmのワンダーランドの完成だ。

 

座ろうとすると扇風機やコード類が絶妙にディフェンスしてくるけどな。

座布団もないので、あなたのお尻にとっては過酷な環境だろう。

 

…さて、おばあちゃんとの会話であるが、すっごい難易度が高かった。

とにかく軍歌と演歌のボリュームが大きく、聞こえないのだ。

 

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ドライブイン薩摩隼人17

声が聞こえないからお互いカウンターに乗り出すようにし、大声で会話した。

怒鳴るように声を張り上げていたが、決して怒っているのではない。

こうしないと意思疎通ができないのだ。

 

僕、ラーメンの待ち時間のうち、半分くらいは立ち上がっていたような気がする。

こうして会話した内容は、大体以下の通りだ。

 

おばあちゃん:「あの人は器用でね。なんでも1人で作るの。この建物の上のお城みたいなのも、あの人が作ったのよ。すごいでしょ。」

おばあちゃん:「えー!あなたそんな遠くから九州まで来て、1人で一周しているの!?青春ね!」

おばあちゃん:「以前は鹿児島の中心で軍国酒場をやっていたんだけどね、昨年にお店を畳んで、今はこっちがメインなの」

 

文字に起こすとシンプルだが、一節一節で「え!?なんすか!?」と言い、何となく聞き取れたら「~ってことですか?」と復唱する。

そして、おばあちゃんが「そうだ」とうなずいたら、「へぇー、すごいっすね!」と、アメリカ人のように大げさなジェスチャーをつけて返答する。

大変な労力なのであった。

 

 

摩訶不思議ラーメンと対峙する!

 

20分くらい待っただろうか。

おじいちゃんがラーメン持って登場した。

 

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とんこつラーメン1

  「うまいぞー!これを食べると元気になるぞー!」って、ニコニコしながら言ってた。

 

さてさて、具材の多くがフレッシュだなって思った。サラダだ。

キャベツとネギには火が通っておらず、きっと歯ごたえはシャキシャキだ。

 

ネギは切っているうちに途中で腕力がなくなったのだろうか。

薄い切れ込みが入っただけの、見事な筒状で転がっているケースが散見される。

ワイルドスタイルである。

 

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とんこつラーメン2

目玉焼きと、その下にあるなんか秘伝のタレを絡めたかのような鶏肉はおいしそうだと思った。

 

しかしスープが見えない。

最近では、まぜそばや汁なしラーメンなどが流行っているが、このお店もそれに追従しているのだろうか?

だとしたら、『昔の味で出しています』はどこ行った?

 

まぁごたくはいい。食べるか。

「いただきます」と言うと、おじいちゃんは「おぉ!食べてくれ!」と得意げだ。

 

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とんこつラーメン3

まずは、おじいちゃんがラーメンと共に割り箸を持ってきてくれてよかったなぁ、って思った。

 

なぜなら、カウンターにある箸立てにも箸袋に入った割り箸があったのだが、その箸袋がちょっとベタついて変色していたのだ。

おじいちゃんの持ってきてくれた割り箸の袋は、キチンと綺麗だった。うれしい。

 

最初にスープを飲みたかったが、スープが見えないのでまずは麺を食べた。

フニフニだった。

歯のない老人でも余裕の、優しさがほとばしる煮込み具合だ。

僕は固めが好きな人種なのだが、これは好き好きだろう。正解は無い。

 

次にキャベツを食べた。もちろん生だ。

味付けもないので、鶏肉と一緒に口に入れた。キャベツと肉の触感にギャップがあったものの、味のお裾分けが実現した。

 

スープが姿を現した。レンゲの登場である。

おじいちゃんが持ってきたレンゲは、なんだか黒ずんでいる。

卓上のティッシュで拭くと、レンゲは白く、ティッシュは黒くなった。

問題解決した。

 

ようやくたどり着いたスープ。

ぬるい。

ラーメンを作り終わってから目玉焼きを焼き始めたと推測した。

 

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とんこつラーメン4

カウンターの奥の貼り紙をまじまじと見た。

そして小首をかしげた。

「あつあつ」…。

 

おじいちゃんは、相変わらずニコニコしながら横に座り、「どうだ!うまいか!」と言っている。

いろんな意味で温度差があるなって感じた。

 

あと、おばあちゃんがおじいちゃんに「この人はすごいの。すごい遠方から来て、車中泊で九州一周しているの。」みたいなことを言っている。

もちろん演歌がだいたいかき消してくれて、僕の耳にはニュアンス程度しか届かない。

 

おじいちゃんは「ほう!そうかそうか!そういえば数日前に来た連中も…」みたいに語りだした。

あ、一見さんのお客さんも来るんだ。正直、失礼ながらそう思った。

 

おじいちゃんは「若いころにいろんな世界を見て回るといい」と言っていた。

これはすごく同感です。ありがとう。

 

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とんこつラーメン5

一度席を外したおじちゃんが戻ってきて、「これを飲んでいきなさい」と、キンキンに冷えた缶コーヒーをくれた。

とてもありがたい。

 

ラーメンの後半戦、僕はコショウをかけたいタイプの人間である。

しかし、卓上のコショウケースは湿気でペッタペタになっていて、1ミリたりとも出てこなかった。

 

まぁしょうがない。おじいちゃん、おばあちゃんとの会話がスパイスだ。

味に集中する必要がなくなるし。

 

ごちそうさま。

ひとまず完食できた。一生忘れられないラーメンだったよ。

 

 

あのお店の、2021年現在は…!

 

何度目だろう。

いつまでも鳴り響くコール音にため息をつき、僕はまたスマホを切った。

 

僕は2021年2月以降、何度もこのドライブイン薩摩隼人に電話をしている。

しかし誰も出てくれないのだ。

 

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いただいた写真1

3月26日、僕はTwitterを用いてフォロワーの方々に現地情報のご提供を依頼した。

数時間後、現地にて写真を撮ってくれた方がいる。

この度、許可をいただきその写真をここに掲載する。

 

天守閣のようなオブジェが無い。

あれほどあった看板もない。

 

閉店してしまったのだろうか…。

 

2020年、コロナ禍の中でも「コロナ割り」などの名目で、さらに値引きをして営業していたことを知っている。

2020年秋、どうやらシンボルの天守閣部分が崩壊したのか取り壊したのか、なくなったそうだ。

 

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いただいた写真2

かなり痛々しい写真である。

なぜか1つ残った立て看板、『いつまでもあると思うな親と金 ないと思うな地震津波、台風』。

これが皮肉に思えてしまう。

 

看板が撤去されたのは、2020年の年末から2021年の年明けごろなのだそうだ。

そのころから、この店が営業しているのを見た者はいない…。

 

せめて僕は、このお店がどうなったのかをしっかり確認したいのだが。

横道さんは、2021年現在は91歳だろうか?

人知れず、引退してしまったのだろうか?

 

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いただいた写真3

まだ建物内に軽自動車が停まっている。

ナンバープレートがあるということは、登録上は生きているということだ。

リニューアルをし、このお店にまた横道さんが現れることに、一縷の望みを託したい。

 

また、これをお読みのあなたがもし、このお店の情報を得たのであれば、僕に教えてもらえるとありがたい。

 

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ねぇ、横道さん。

今だから話すよ。

 

 あのラーメンはね、

「食べると元気になる」のではない。
「元気な人しか食べられない」って言うんだと思うよ。

ネギ、すごく辛くて涙が出そうだったよ。

 

僕が味わったのを「ラーメン」だとするなら、評価は限りなく低いよ。

 

しかしね、僕は味だけを求めているのではない。

店の雰囲気、店員さんの人柄、そこであったエピソード。全部ひっくるめた思い出を求めているのだ。

 

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「そんなボロボロのお店に入って、マズかったらどうするのさ」

人からそういう言われることも多い。

 

仮にマズかったとしよう。

それでも、個性的なお店に滞在したことや、店員さんとのやりとりに価値を見出せればいいじゃないか。

食事はエンターテイメントなのだ。

 

だからさ、もし僕がこの店で味わったのが「旅情」だとするなら、限りなく評価は高いものだと感じてる。

 

だから、ありがとう、横道さん。

 

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…時間軸を少し戻そう。

 

「あの!!このラーメン食べ終わったら!!戦史館も見学したんですけど、いいですかーーー!!!」

軍歌に負けないように、僕は叫んだ。

 

「おぉいいぞ。案内しよう。」と、おじいちゃんが答える。

 

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あなた、もしやラーメンの話だけでお腹いっぱいになったりなんて、していないよな?

 

ここからがメインだぞ。

横道さんが個人で収集し、作り上げた戦争博物館「戦史館」に行くのだ。

 

まぁでも、僕も鬼ではない。

少しだけインターバルを置こうな。

呼吸が整った人だけ、以下に行ってほしい。

 

drive-ns.hatenablog.com

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

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