山の成り立ちはいくつかあるが、もっともセンセーショナルな山の誕生パターンは、やはり火山によるものではないか。
地球の持つエネルギーを、地表が抑えきれずに隆起・噴出しているのだ。
ニキビみたいなものだろうか?
あなたも、いい年こいて深夜にラーメンをガツガツ食い、翌朝吹き出物ができていたら「ワォ!センセーショナル!!」と言うだろう。
僕だって言う。
だったら、地球だってそう言うだろう。
僕らが小さな吹き出物でもそれなりに騒ぐように、地球だって小さな火山にも過敏に反応すると思う。
だから話そう。
日本一低い火山と言われている、「笠山」のことを。
日本一低い山は、いくつも存在する。
山だって多様性の時代なのだ、きっと。
これが僕が今まで訪問した「日本一低い山」だ。
何がホンモノで何がウソだ、とかではなく、いろいろあって全部正しいと僕は思っている。
詳しくは、僕の書いた以下の【特集】をご参照いただきたい。
標高10mにも満たないミニマムな山が列挙されている中、1つだけ意識な標高112mもある山、笠山。
ま、他の山に比べるとはるかに高いが、冷静に考えれば笠山より「東京スカイツリー」のほうが5.6倍も高いのだが。
東京スカイツリーの5分の1にも満たないスケールの火山って、いったいどんななのだろうか?
これが笠山だ。
そしてヘタな構図で申し訳ないが、これは海越しに撮影した。
笠山は昔は海の中の島だったのだ。
それが、今は砂州で陸と繋がり、陸続きの島となっている。
以下にザックリとマップで示すので、それで改めて確認してほしい。
他の低山とは違う笠山の特徴、それは山頂直下まで車で登れることだ。
他の山では1合目から山頂までダッシュで何秒か計っていたが、笠山については計測対象外とする。
車を使ってしまうので。
さすがに高さ100mもあると、文明の利器を使いたくなるのだ。ごめんね。
道はちょっと狭い。しかし、HUMMER_H3であっても特に懸念を感じさせない程度の広さはある。
ウネウネと登って充分な空きスペースのある駐車場に到着する。
すごーく余談だけど、ここで車内自炊をしたこともある。
1日1~3食は自炊をしながら旅をしていた時代もあったのだ。
コストを抑えられるし楽しい。ただしそれなりの要領が必要だ。
このときはレトルトのカルボナーラだった。
では、カルボナーラのことはさておき、山頂や火口をご紹介しよう。
山頂と火口を巡る
山頂攻略
駐車場から少しだけ歩いた広場に、笠山山頂園地を示す大きな立て札があった。
結論から言うと、ここが一番「来ました感」のあるスポットだ。
「記念写真を撮るならここ一択だ」 って思った。
この看板から10mほど登っただけで山頂エリアに出た。
木々も多いのでよくわからないけど、どうやらお鉢のようになっているようだ。
山頂の片隅には、上記のような展望台がある。
あの向こうは日本海だ。これ絶対景色がいいヤツだ。もちろん登る。
はい、すごい。
日本海にポツポツと浮かぶ小島が一望できる。
「阿武火山群」に属する島々で、いくつかは火山なのだそうだ。
以前「ブラタモリ」でもやっていた。
あなたは、「…ってことは、あの島々こそが日本一低い火山ではないか」と思うかもしれない。
…そこのところは、結構難しいようなのだ。
かつて溶岩を噴出していた島ではあるが、定義上「山」ではないらしく。
俗に火山として世界最小(あるいは東洋最小、日本最小とも)などと称されることもあるが、火山の定義や地形学的分類により捉え方は様々であり、その序列を断定的に呼称することは無意味である。
Wikipediaさんにも上記のように書かれている。
しかし実際、この笠山を日本一低い火山・世界一低い火山として取り上げているWebサイトは多い。
まぁ、いろんな見方があっていいんじゃないだろうか?
そもそも「日本一低い山」自体が、様々な定義でいくつもあるのだ。
日本一低い火山なら、なおさら定義がフワッとしてしまうかもしれない。
そんな中で、自分のお気に入りを探せればよいのだと思う。
お鉢巡りをしてみた。
結論から言うと、1分足らずで終わった。
小さい小さい火山であることを、自分の足で実感することができた。
4月の中旬の訪問の際には、八重桜がチラホラと咲いていて風流だった。
こんなお鉢巡りも渋くて良いなって思った。
あと、途中に三角点があったので記念撮影をした。
どうやら3等三角点なのだそうだ。
ここがガチな山頂なのだろうか?
山頂を示す碑などはなくってわからなかったが、とりあえず三角点は踏んだのだ。
この山は制覇したと自負している。
火口攻略
いよいよ、火口を見学してみよう。
笠山は、まだしっかりと火口が残っている火山らしい。
であれば、やっぱ火口を見てみたいのが人の心情であろう。
火口の規模は、直径30m・深さ30mだそうだ。
ウネッとした階段で、日の当たらないお鉢の中へと降りていく。
これは4月中旬の訪問の際の写真だ。
まだ季節的にそんなに緑が茂っておらず、形状が大まかに把握できる。
一方これは、まだまだ暑い9月の中旬に撮影したものだ。
緑が元気で、何がなんだかよくわからない状態だ。
一番下まで降りると、金網のフェンス越しに溶岩剥き出しの火口深部を見られる。
真っ赤な岩が、溶岩だ。
フェンスと溶岩の間には隙間があり、さらに下の方を覗き込むことができる。
この奥の奥から、マグマが湧き出してきたのだろう。
僕の後から来た人がここを見て、「全然火口じゃないね」と言っていた。
確かに「富士山」や「阿蘇山」の火口をイメージしてしまっていたら、ずいぶん見劣りするであろう。
しかし、確かに地球の鼓動を感じたよ、僕は。
調べてみると、この火口は8800年前のものなのだそうだ。
すごい昔に感じられるかもしれないが、日本列島って数10万年・数100万年前の火山とかで形成されている。
8800年前のものは、むしろかなり若い部類であろう。
溶岩を拡大してみた。
すごく綺麗な溶岩だ。
この笠山は生きている。…そう感じたのだ。
明神池を散策しよう
笠山と一緒にぜひご紹介したいスポットがある。
さっき掲載したMAPを再度引っ張り出してみた。
「明神池」。
昔は島だった笠山だけど、陸との間に砂が堆積して砂州となり、陸続きとなったのだ。
その際に、砂州の真ん中にちょっとだけ海が取り残された。
そう書くとなんだかマヌケな表現になってしまうかもしれないが、それが明神池だ。
はい、その明神池にやって来た。
笠山の麓にあり、笠山に行く際にはほぼ必ず横目で見ながら通ることとなる池だ。
明神池のすぐ横の駐車場は有料なのだが、3分ほど歩いたところに無料の駐車場があるのを発見した。
ありがたいので、無料の方を使わせていただく。
池のほとりには燈篭などが建っていて、日本庭園のようだ。
どうやら歴史を紐解くと、江戸時代の初期に毛利氏が「厳島明神」を勧請したのだそうだ。だから明神池。
昔は茶室などもあったのだそうだ。
なるほど、その頃の名残が今も少しだけ感じられるな。とても渋い。
そして何より面白いのは、この池は笠山の溶岩の隙間から海へと繋がっているという点だ。
だから池の水は海水なのだ。
海の魚が泳ぐし、海の満ち干きに合わせて水位が変化する不思議な池。
すげーぞ、明神池。
池の西側には林が広がっており、その中には「萩厳島神社」がある。
毛利氏が勧請した、例のアレである。
さらにその奥には、「風穴」という洞窟があるそうなのだ。
洞窟好きな僕としては、ぜひ行ってみたいではないか。
上の写真のちょっと手前には「風穴の店」という簡素なお店があった。
風穴は、このお店の敷地内の庭のような部分にあるのだ。
ちなみにお店はこのときは営業してはいなかった。
お店の前を経由し、写真のスペースに足を踏み入れた途端、体を冷気が包んだ。
10℃ちょっとくらいだろうか?
そんな冷気が辺りに滞留していた。
「どっかの洞窟から出ているのかな?」って思ったけど、それと思われるような洞窟は見当たらなかった。
庭の中心には井戸のような池のような水たまりがあったけど、ここが全ての冷気の原点というわけではなさそうだ。
どうやら冷気が噴出される特定の穴というのは無いらしく、辺り一面の岩の隙間などから冷気が出ているらしい。
上の説明板をご覧いただきたい。
この冷気は、笠山を形成する溶岩の隙間で冷やされた空気が出ているものなのだ。
笠山・明神池、そして風穴。
どれも繋がっている。全部合わせて、笠山の特徴だ。
日本一低い火山には、その箱庭のような狭い空間の中に、火山としてのエッセンスを詰め込めこまれており、かつ島から陸続きになったという特異な歴史を持つ火山であった。
この山は、面白い。
また1つ、僕の人生は深みを増しただろうか?
笠山を背に、次のスポットへと再び走り出した。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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