「とまりのトトロ」。
決して「となりのトトロ」ではない。
なぜなら隣(となり)にはいないからだ。泊(とまり)にいるからだ。
2019年、トトロのシルエットが浮き上がる洞門が発見された。
場所は下北半島の泊という小さな集落。
SNSでは結構なバズりっぷりだったらしい。
僕もそこを訪問した。
なかなかのマイナースポットであり、そこに到達するには少々骨が折れた。
実際にとまりのトトロを訪問した人はまだまだ稀であり、Webを探しても詳細なアプローチ方法を紹介しているサイトがほとんどないのだ。
…では!
僕がつたない文章と共に紹介してみようか。
「ほんとだもん! 本当にトトロいたんだもん! ウソじゃないもん!」
トトロに出会いました
少し手前に愛車の日産パオを停めた。
ここに至るまで、このスポットを示す案内板などは一切ない。
まだ観光地として成り立っていないのだ。発見されたてのホヤホヤなのだ。
初めてだが、僕は確信している。
この先にトトロがいることを。
そして予想通り、僕の前に洞門が姿を現した。
はい、あった。
次に、洞門のかたちがトトロに見えるように、立ち位置を整える。
上の写真の通り、洞門から10mちょっと離れ、道の左端に立つ。
あとはセンチ単位で調整していこう。
トトロが現れた。
わかっているとはいえ、このシルエットが見えたときの感動は、ちょっと言葉ではいい表せない。
「知っている」のと「やってできる」のとは違うのだ。
何事も経験と実践、大事。
サツキやメイと同じように、浮かれて「夢だけどー!夢じゃなかった!」とハシャギまくりたい衝動に駆られた。
浮かれたついでに、ヘタクソなトトロを描いてみた。
洞門のかたちとピッタリだ。奇跡の融合。
この洞門、「宮崎駿監督」の怨念が宿っているとしか思えない。
ちなみに、どうやらベストな撮影をするにはもう少しだけ立ち位置を変え、耳を細くするのが良いみたいだ。
Web検索で出てくる画像も、大概僕の撮影時よりも耳が細い。
耳太めなトトロになってしまい、すまない。
一緒に記念撮影しようとすると、こうなる。
まぁ工夫すればお腹にしがみついたり、傘をさして一緒に並んだりすることもできるかもしれないが、それはあなたが勝手にやってほしい。
他の人も見ていたので、メンタル的に僕はこの程度が限界だった。
洞門を抜けた先は、海である。
漁業関連の小屋などがいくつか立ち並んでいる。
もう少し進んだ先には「滝の尻大滝」という滝がある。
最初と最後に"滝"がつくという不思議なネーミングだ。
洞門を振り返ると、こうなる。
反対側から見ると、トトロではない。まぁ当然だ。
ちなみに、この洞門の正式名称は「弥次郎穴」である。これが古来からの呼び名。
風や波で削られて自然にできた、いわゆる海蝕洞なのだそうだ。
洞門の向こう側から軽トラが現れて、「うわっ!」ってなった。
地元の漁師さんなどが使用することもある道路なのだ。要注意だ。
ギリギリだ。ワイルドだ。
随分前からこうして生活道路に使われていたのだろうが、とまりのトトロが発見されたのは、冒頭の通り2019年。
やっぱトトロは近くにいるけど、なかなか気付かれない存在なのだな。映画の通りだ。
内部をご覧に入れよう。
見よ、ゴッツゴツのワイルドな岩盤が剥き出しである。
海蝕洞の迫力、すっごい。
こうして洞門を一往復し、最後にトトロのシルエットを振り返るのだ。
トトロ、ホントにいたんだね。感動した。
トトロに会う方法
とまりのトトロはどこにあるのか。
少なくとも2021年現在は、非常にアプローチしづらい。
観光客向けの案内は皆無なのだ。…というより、まともな道すらない。
Web上の情報も非常に少ない。
ちょっと僕と一緒に確かめてみようか?
①:クライミングルート
まずはGoogleマップを出してみよう。
検索すればとまりのトトロは出てくる。
下北半島の主要国道である、国道338号・394号の重複区間から直線で200mも離れていない。
しかも上の地図を見ての通り、道路のすぐ脇にとまりのトトロがあるようだ。
Googleマップでナビ検索しても、上の図のような赤い矢印のルートが表示される。
でもこれ、行けなくはないけどオススメはしたくない。
衛星写真でお見せしよう。
とまりのトトロの目の前まで行っているように思える道が、実際は存在しない。
なんというホラーな展開だよ。
僕も現地で「どういうことだよ…」って混乱したさ。
かわりに、青枠の通り駐車場があった。
衛星写真では存在しないんだけど、実際にはあった。
こんな感じの駐車場だ。
そこから1分歩く。車道は行き止まりでどこにも行けないように思えるが、実は遊歩道が存在する。
パッと見ではわからないだろうが、実は軽自動車の目の前に遊歩道がある。
覗いてみたら、なかなかの急斜面だ。ロープが設置されているレベルの斜面だ。
僕が元気で気候も良ければ崖を下って行ってもいいかもしれない。
しかし今は真夏である。暑いので体力が心配だし汗をかきたくない。
しかも、この下にとまりのトトロがあるとの確証もない状態であった。
地図に記載するとこんな感じだ。
僕は使用しなかったが、もしあなたが興味があるなら行ってみてほしい。
海岸沿いから見た、クライミングルートの出口だ。
ここはとまりのトトロのすぐ脇。
おめでとう、到着だ。
②:フラットルート
僕が実際に使用したのは、なるべくトトロの近くまで車で行く方法だ。
先ほど洞門を通過する軽トラックの写真を掲載した。
その軽トラックが使ったであろうルートだ。
結論から言うと、こういうルートだ。
途中から道なんてなく、ご覧いただいてもワケわからないであろう。
僕個人としては、特にこのあたりの軌跡が秀逸だと思っている。
衛星写真でお見せしよう。
こうだ。
左から右へとやってくる舗装路。
赤い線の通り真横に行っても、道に沿って右下にカーブして行っても、前ブレもなく道がブツリと途切れるのだ。
この消失点が衛星から見てても笑える。
先ほどの赤い矢印の通り、左から右へと来た道の突き当りにて、上を向いた瞬間の写真である。
陸橋に沿って少しの区間だけ舗装路があるが、もう目の前で砂利ダートが始まろうとしている。
で、砂利ダートだけならまだいいんだけど、道なのかなんなのかわからない広大な空間が広がって戸惑う。
とりあえず陸橋をくぐり、そのまま海沿いに進行方向に進む。
すると少し道幅が狭くなり、そして前方にボロッボロのガードレールが現れる。
写真では道をふさぐようにガードレールがあるが、実はこれは急な左カーブである。
それにそって左にハンドルを切るのだ。
砂利が不得意な車であれば、ここいらで駐車してもいい。
とまりのトトロまでは、もう徒歩で3分もかからない平坦な道だから。
ガードレールに沿って左に曲がると、このような道になる。
PCから見ないとわかりづらいと思うが、進行方向に小さく神社の社が見えている。
社のすぐ手前に駐車した写真を次に掲載しよう。
ここがとまりのトトロの50mほど手前の地点である。
赤く見えていた社は、写真には写っていないが車の左側にある。
洞門を通過して海に出ようとか思わない限り、つまりはとまりのトトロが目的でここまで来た場合、ここが最後の駐車しやすいスポットになると判断する。
ご覧の通り、岩の裂け目に鳥居がある。
神様がいる。
トトロも森の主だもんな。ここ一体、神聖な場所なのかもしれない。
お参りをした。
同じ場所を車の頭方向から見ると、こうなる。
僕が来たのは写真左奥の方向である。
…が、右奥から来るルートもあるようだ。
陸橋をくぐった先のフリーダムなエリアで選択したコースによっては、右奥から出てくるのだろう。
ま、ただしこちらは深い水たまりがあった。左奥から出てきて正解だったと振り返る。
鳥居からとまりのトトロが見える場所まで、徒歩30秒だ。
もう少しだ。
写真に写っている男性は、とまりのトトロを撮影している。
あのあたりか、もう少し左の道路が濡れている部分がベストな立ち位置である。
こうして、冒頭の写真に繋がるわけだ。
道路の濡れている部分が、もう僕の目の前1mのところにある。
こんにちは、トトロ。
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秘境が多く存在するその地の、見過ごしてしまいそうな小さな集落の中に、トトロは確かにいる。
僕が訪問した際、他に2・3組の観光客がいたが、撮影に気付くと道を開けてくれたり撮影を譲り合ったりと、とても良い関係を築けた。
静かにそっと訪ねてみてほしい。
雲のかたちや岩のかたちが何か他の物に見えて、それだけでハシャいだ子供時代。
そのときの気持ちが残っているならば、きっとトトロはあなたの前に姿を現してくれると思うのだ。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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