TKG(卵かけご飯)。
これは、その最高峰を目指した二人の男たちの物語である。
その絶品卵かけご飯を提供してくれるのは、「コケコッコー共和国」。
なんというグローバルな響きよ。
その国の国民食が、卵かけご飯なのだ(と推測)。
それを我々に提供してくれるのだから、これは一大国家プロジェクトに違いない。
胸が高鳴るぜ、国際コミュニケーション!
コケコッコー共和国、入国へ…!
残暑の厳しい初秋のある日であった。
琵琶湖を巡る旅をしていた僕は、かねてからの旅友であるふじふじと合流することとなった。
このときから遡ること6年ほど前、僕は日本最北の有人島である「礼文島」にてふじふじと出会った。
その後、京都や大阪でふじふじと再会し、一緒に観光したり酒を飲んだり、鴨川に飛び込んだりしている。
11月の鴨川の水は冷たいが、僕らはアツい魂を持っているのでそこそこ大丈夫だ。
ふじふじは、原付で分割日本一周をしている旅人である。
この度は、ちょうど伊勢エリアでふじふじと会えそうな日程であるため、「じゃあ会おうか」となった次第だ。
伊勢のとある温泉施設でふじふじと合流すると、二人でひとっ風呂浴びた。
暑くて汗だくだったので気持ちがいい。
全部割愛するが、実は本日僕がここにやってくるまでの間も、いろいろ冒険があったのだ。人生冒険だらけなのだ。
ふじふじのバイクを見せてもらった。
各地のステッカーが貼られたり剝がれたりしていた。
これで分割日本一周か、すごいな。
日本一周を始めたのはかつての僕の影響だと言っていた。申し訳ない。
このあとも一緒に観光したりするのだが、ひとまずその話も割愛だ。
そして昼飯を食べようという話になった。
そこでふじふじの口から出たスポットが、コケコッコー共和国であった。
僕はパスポートとか持っていないので少し心配になったが、どうやらそういうものは不要らしい。
ふじふじは「卵かけご飯を食べるのだ」と、力強く言っていた。
こぶし、握りしめていた。たぶん。
ブンブン唸るふじふじの原付に僕のHUMMER_H3がついて行くという異様な光景が実現した。
ほどなくして国境付近に来たようだ。
卵かけご飯、卵食べ放題390円の看板が、入国者の心を躍らせる。
そして、無事に入国。
入国審査とかもなかった。全人類ウェルカムな文化だ。
卵、それは命!
こんにちは、コケコッコー共和国。
2台並べて駐車した。
丘の上の、緑あふれる山々が見渡せるロケーションの国だ。
実際に高速道路に乗るにあたっては、迂回しながら行く必要があるが、それでも相当に近い立地だぞ。
高速ドライブ中でも気軽に立ち寄れる。
コケコッコー共和国は、ニワトリが飼育され、そして有精卵・卵や鶏肉の加工食品などが販売されている施設と、食堂とがある。
あとはアスレチックエリアなどがあるらしい。
勢和多岐ICとコケコッコー共和国の位置関係がわかりやすい。
そして、おそらく長屋のようにズラリと並んでいるのが鶏舎だ。すんごい規模。
ひとまず、僕らの目当てはランチだ。
「山の駅よって亭」という名の食堂にめがけて突進する。
鶏肉も食べられるそうだぞ、イェイイェイ!!
…が、食堂は満席だったそうだ!
どうやら席数はそんなに多くは無いらしい。
まぁそれ以上に、卵かけご飯や鶏肉が魅力的すぎるからだろう。そりゃそうだ。みんな食べたいに決まっている。
受付に名前を書いておき、その間にまずはお土産屋を見て回ることとした。
一日一個の元気 健康を保つ
全国有数の平飼い有精卵を扱っています
太陽の光を十分に浴びて育った平飼い有精卵
ちょっと写真のフレームから文字が切れてしまって、全文読めない部分もあり恐縮だが、このような文言が読み取れる。
「なんかスゲーんだな」ってことが伝わればいいんじゃないかと思う。
卵は鶏の大事な一つの命なのです。
産み立てだからかたいけど、これが昔の味なんです。
もうね、これらってコケコッコー共和国での必修科目である、「道徳」の授業だよね。
僕らはこれから卵をいただくのだ。有精卵だ。
それすなわち命である。
危なかった。
待ち時間なく食堂に入っていたら、普通に「卵うめー!」みたいに喜ぶだけだったであろう。
命の尊さ、これ大事。事前に改めて学習できて感謝。
思わず空を見上げたよね。
秋のうろこ雲が綺麗であった。
うろこの1つ1つが純白の卵にも見えた。
そして、それは命の価値を知っている人が大事に育てた鶏の卵なのだ。
これは生命の宝石と言っても過言ではないだろう。
卵かけご飯への期待も爆上がりする。
絶品の卵と鶏肉のランチ!
30分ほど待機していたであろうか。僕らの名前が呼ばれた。
いよいよランチの時間である。
そのとき僕とふじふじは、「八ッ場ダム」に沈んだ群馬県の「川原湯温泉」の話で盛り上がっていた。
あと、「竹田城」の雲海を薦められた僕が「よーし、行ってやる!なんだったら来週にでも行ってやる!」と豪語していた矢先であったが、とりあえず食堂に移動することとする。
30人ほど入れると思われる食事スペースだ。
ワイワイ気さくにランチを楽しめるような、ハードル低めの空間だ。ステキ。
まずは卵かけご飯だ。
390円である。当然それをそれぞれオーダーする。
鶏肉も2人で1つオーダーしよう。
かためとやわらかめがあり、どちらも410円だ。
かなり迷ったが、ここはやわらかめだ。
通ならかためにするのかもしれないが、通じゃないのでわかりやすい方を選んだのだ。
いいのか悪いのか、平成時代以降は「やわらかさが正義」みたいになっているので、しょうがない。
卵がやって来た。
テーブルの上にドンと卵いっぱいのカゴが置かれたのだ。
ここから自由に取って食べるシステム。
8個ほど入っているように見えるが、足りなければまたお替り頼めるのだ。
まぁご飯はおかわり自由ではないので、ご飯と卵の比率を考えるとそんなに何個もは使いづらいだろう。
卵。
黄身の黄色がすごく鮮やかで、そして白身はしっかりと立体を保とうとしている。
これが生命力というヤツなのだろう。そう僕は思った。
卵の味、濃厚だ。小宇宙だと思った。
ご飯に軽く纏わせて食べれば、ただただ至福よ。
本能にまかせるのであれば、このまま「ガガッ」と汚く掻き込みたい。そんな衝動に駆られる。
しかしここはパブリックスペースだし、ご飯のお替りはできない。
上品に丁寧に、卵を味わった。
そして鶏肉である。
約400円とは思えないほどのボリュームに僕らは驚いた。
一家族のおかずになるわ、これ。
焼く前にこのお皿の上の味噌だれとよく絡め、そして炭火で焼くのだ。
おいしくないはずがない。
ちょっとした暴力だ。味の暴力。
この写真を見れば、たった一皿の鶏肉がどれだけボリューミーかわかるだろう。
かためとやわらかめの2皿をオーダーしなくてよかった。
危なく2皿頼みそうであったが、1皿で充分であった。
もし2皿オーダーしたなら、これ中ジョッキ絶対必要ですもん。
そしたら僕ら、もう今夜はここで車中泊せざるをえないですもん。
顔をお見せできなくって残念だが、ふじふじはすっごい悪い顔して笑っている。
わかる。
楽しみ過ぎるのだ。炭火で肉を焼き始め、香ばしい匂いが漂っているのだ。
はい、うまーい!!
鶏肉ね、やわらかい方にしたけども、やっぱ身の引き締まり方が違うのよ。
噛んでいて程よく「ギュッギュッ」ってなる。
ずっと噛んでいたいと思う。
そして卵かけご飯だ。
「卵→鶏→卵→鶏」 のデリシャス・ルーティーンだ。
卵、マジでうまい。
いい親鳥から産まれた卵なんだろうなぁ。
親の顔を見てみたい。
正直、結構腹いっぱいになった。
あとはゆっくり鶏肉を焼くのだ。
まるで焚火を囲んで語り合うかのように、僕らは炭火で焼けていく鶏肉を見ながら語り合ったさ。
礼文島が大きな災害に見舞われた話、そこにある日本一クレイジーな宿「桃岩荘」もいろいろ大変だった話など、ふじふじが島の情報をいろいろくれた。
桃岩荘には、日本9周目でまた訪れたいと考えている。
「ただいま!」と言って帰るのだ。それまで元気に営業してほしい。
ごちそうさまでした。
卵は1人3つずつ食べた。
1人あたり600円でこのパラダイス。
満足しかない。
そして僕らの旅路は分岐する!
では、ここでさよならだ。
ここから先はまた、それぞれの旅路だ。
僕はふじふじに声をかける。
「今回はありがとう。手段もスタンスも違うけど、この先もお互いが日本国内を走っていれば、またいつかどこかで再会することもあるだろう。
そのときはまた、礼文島の話で盛り上がろう。」
最後に記念撮影をした。
そして僕は、ふじふじを見送ってから出発することとする。
…このときから少し時間は流れた。
僕はこのとき以来、2021年現在に至るまでふじふじとは会えていない。
一度、ふじふじが「あとは鳥取県の海岸沿いを走れば日本一周達成!」って言いながら鳥取を走っているとき、僕も近くを旅していたのだ。
連絡を取り合ったが、ニアミスであった。
それぞれの旅路を優先させたので、惜しくも出会えなかったのだ。
それでもいい。
きっとまたどこかで会えるから。
…さぁ、あなたも三重県を旅することがあるのであれば、コケコッコー共和国に立ち寄ってみてはどうだろうか?
コケコッコー共和国の公式Webサイトを開くと、こんな表示も出てくるぞ。
『三重 ツーリング中の休憩に』
この国は、ツーリングライダーの訪問を待っている。
旅人の訪問を待っている。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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