週末大冒険

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ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No.392【島根県】歩いて20秒!?レトロ自販機店「オアシス」と「後藤商店」を同時攻略!!

日本国内に数10店舗が点在する、レトロ自販機を保有する店舗。

その形態はドライブインだったり自販機コーナーだったり、はたまた道の駅だったりと様々。

そして群馬県島根県の比率が多いけれども、たかだか日本中で数10店舗だからコンビニのように視界に複数店舗が同時に入るなんてことは無― … 

 

 

あったわ。

「オアシス」と「後藤商店」。家1件を挟んで左右に位置する、日本で唯一1枚の写真に複数のレトロ自販機店を複数店舗入れることのできる奇跡のスポットだ。

 

 

レトロ自販機でうどんやそばを食べながらハシゴする趣味の人もいるかと思うが、この距離は腹ごなしすることは絶対にできないぞ。徒歩で20秒ほどの距離だもん。

じゃあ、この2店舗を攻略してきた思い出でも執筆しようかな。

 

 

出会いの後藤商店

 

最初に僕が訪問したのは、もう今から10年以上前の後藤商店であった。

 

後藤商店1

国道187号沿いにたたずむ赤い屋根の商店。梅雨入り直後の曇天ではあったが、このビビッドな色に僕の心は弾んだ。

写真中央部、富士電機のレトロ麺類自販機が3台も並んでいるのがわかるかな?もうこれ、すんごい光景なんだぜ。こんな光景、今の日本ではめったにお目にかかれないよ。

 

後藤商店2

この自販機に狙いを定めた。メニューはラーメンと肉そばであり、どちらも350円。うむ、今の気分は肉そばだな。

コインを入れてボタンを押すと、20秒ほどでアツアツの肉そばが自販機から登場した。

 

後藤商店3

どうだい、力強いビジュアルだろう。肉もかなりボリューミーだ。

正直「肉そば350円は他のレトロ自販機と比べてもややお高めだな…」って思ったけども、この肉の量を見て納得した。これはお得だぜ…!

さらには刻みネギとカマボコ、そしてチラリと黄色いゆずが覗いている。至れり尽くせりってヤツだ。

 

後藤商店4

自販機にはロープで一味唐辛子とコショウがくくり付けられている。お客さんが持って行っちゃったりしないための工夫なのだろうな。なんだかこれもチャーミング。

 

それではオープンテラスで肉そばを食べるのだ。

ひとくち食べて「うわぁ、うめぇ。」って思った。実はレトロ自販機の肉そばって、これまでほぼ食べたことがなかったのだ。肉の旨味がスープに溶け出していて絶妙だわ。

 

後藤商店5

ときろい大型トラックが前を通過する川沿いののどかな商店の軒先。ちょっと涼しくなった黄昏時にノンビリと自販機そばをすする。最高じゃない。

聞いてくださいよ。これが旅ってヤツですよ。

 

食べていると近所のおじいさんがやってきた。たぶん「今日のダシの濃さとつゆの量はどうだい?」と聞かれた。

「いや、ここに来るのは初めてなので他の日と比べようがないのですが…。でも、味も量も適量で最高です!」って答えた。

おじいさんは「そうか!喜んでもらえてよかった!」と喜んで、自分の分を買っていた。

 

10年以上が経った今(2024年)から思えば、もしかしたらおじいさんは「僕がひんぱんにここに来ている」前提ではなく、「自販機そばのダシが日によって変わる」前提で質問してきたのだろう。

まぁでもこんなビミョーに食い違った会話もまた、旅の醍醐味だよね。

 

 

国道のオアシス

 

日本6周目終盤の春。僕はここのエリアを再訪した。

 

国道のオアシス1

初めまして、オアシス。冒頭にも書いた通り後藤商店から数10mの距離なのだが、前回は後藤商店のみで満足してしまい、ここまで足を延ばすことはなかった。

当時は全国のレトロ自販機店を網羅することにそれほどの意気込みもなかったからだ。そして調査不足だったからだ。

あとから「ハシゴすればよかった」とすごく悔しい思いをしたのだよ。

 

国道のオアシス2

レトロな自販機店にレトロな車で来れた。とても嬉しい。

さて、今回はおなかのコンディションを整えて来たぜ。3杯くらいならギリギリ食ってやるからよ、かかってこいや。

 

国道のオアシス3

うわぁ、なんだここ最高だーーッ!!

このレトロ自販機を見てよ。左右にまるで金剛力士像の阿形と吽形のように、あるいは狛犬のように、左右に鎮座している。

そしてこの圧倒的な経年変化。すべてがすばらしい。その奥のポリバケツにモリモリに積まれた食べ終わった丼の量もすごいぞ。

 

国道のオアシス4

いやぁ、これはいいものを見せていただいたわ。ほれぼれするようなこのビジュアルを何度も左右を行ったり来たりして眺め、そして一礼して店内に入った。

敬意だ。この店には敬意を払わねばならぬ。願わくば賽銭箱が欲しい。

 

国道のオアシス5

自販機は二段構えであったか!!富士電機のレトロ麺類自販機の後ろには、これまたレトロな汎用自販機群が構えていた。隙が無いな、この店は…!

 

ただ、ちょっと見てくれ。右側にさっきのレトロ麺類自販機の裏側が写っているのだが、一部が朽ちてなくなっている。かわいそうに…。なるべく元気で今後もがんばってほしい…。

 

国道のオアシス6

汎用自販機群。スナック菓子などがお手頃価格で売られている。「販売中」の一文字ごとに「」をあしらう表現は、もしかしたら小学生ぶりに見たかもしんない。

奥にはカウンターが見えている。そちらに行ってみよう。

 

国道のオアシス7

うんうん、どんなオシャレなバーのカウンターよりも、今日の僕にはこっちの方が魅力的に見えるよ。

狭くて長くてイス1つという不思議な造りだけど、ここで食べるレトロ麺はさぞかしうまいに違いない。

 

国道のオアシス8

奥の方にはファミリーブースか!これで一家できても楽しく食事ができるじゃないか!なんて罪なお店なのだよ。名前は"自販機コーナー"なのに、もうこれ自販機コーナーを凌駕したありがたい施設だよ。

これで24時間営業なんだぜ。クラクラしてきた。

 

国道のオアシス9

窓からお店の裏側を眺めた。ローカルで目に優しいロケーション。まだご飯を食べる前だが、まずは心が満腹になった。

 

国道のオアシス10

じゃあラーメン食っていいかな?400円。

中国地方のレトロ自販機では肉そばばかり食べ、四国地方のレトロ自販機では天ぷらうどんばかりを食べている傾向がある。そんな常識をちょいと打ち破りたい。

 

国道のオアシス11

うおぉ!なんだか手に重量感!受け取った瞬間に目に飛び込む玉子のインパクト!!

落ち着け落ち着け…。まずはこぼさないように、さっきのカウンター席に運んだ。僕、あの一目ぼれしたカウンターでラーメン食べるよ。

 

具の一部は麺の下に潜り込んでいるので、まずは天地返しした。

 

国道のオアシス12

なかなかにゴージャス!ゆで玉子が丸ごと1個。それから厚切りチャーシュー、キクラゲ・メンマ・モヤシ・ネギ・ナルト。これは手間がかかっていますなぁ…!

味はスッキリ醤油味。チャーシューは柔らかくってプルンプルン。

これは予想以上にお腹にたまるぜ…!嬉しい誤算だ…!!

 

国道沿いにある24時間営業のオアシス。これはまさに、長距離ドライバーさんたちのオアシス。思い知ったぜ。

 

 

再びの後藤商店で

 

間髪入れず、後藤商店にやってきた。徒歩で。20秒で。

 

スタミナ万歳1

看板には『お弁当・仕出し』と書かれている。今もやってる…?それとも昔はそのような営業もしていたのかな…?

そして見えにくいけども青い屋根の上の看板には『LIQUOR&FOOD GOTO』とポップな字体で書かれている。

 

ちなみに、初回訪問では赤い屋根だったじゃない。あれは台風の日にビリビリに裂けてしまったようだよ。残念。でも青も好き。

 

スタミナ万歳2

メニューは、肉うどん・ラーメン。天ぷらうどん・スタミナうどん・肉そば・鶏と天ぷらうどん…。

スタミナうどん・鶏と天ぷらうどんなどの、他の店舗では耳にしないメニューが気になる。いや、別にお腹空いているわけじゃないんだけど、せっかくだからオンリーワンな体験したいじゃない。ジレンマ。

 

スタミナ万歳3

いってやんよ。スタミナうどんをいってやんよ。ホントにスタミナをつけてくれるんだろうな?名前負けしたメニューが出てくるのか、はたまたガチなもの出てきて僕の胃袋が破壊されるのか。勝者はどっちだ。DEAD OR ALIVE!?

400円を投入して購入。

 

スタミナ万歳4

ヤッベェ!全部乗せだこれ!!

ゆで玉子・カマボコ・天ぷら・肉・ワカメ・ネギ…。スゲーことになっている。こんなバラエティ豊富な自販機麺、他では見たことないぜ…!

 

スタミナ万歳5

日当たりのいいお店の軒下で食べることにした。ちょっと天気が良すぎて白飛びしちゃっているけど、写真手前のテーブルの上にスタミナうどんがあるのだよ。

3台のレトロ自販機に囲まれてうどんを食う。なんという幸せ。

 

スタミナ万歳6

国道側のロケーションはこんな感じ。素晴らしいでしょ。

オアシスもだけど、後藤商店はさらにひっきりなしにドライバーさんたちが立ち寄っている。自販機でドリンクを買ったり、ササッと自販機麺を食べて行ったり。

このエリアの方々にとっては日常の風景であり、でも無くてはならないスポットなのだろう。

 

スタミナ万歳7

うま!やっぱ西日本の麺類はダシのレベルが違う。

そして具材の織り成すハーモニー。満腹すぎる。誰だよさっき3杯くらい食う的なことを豪語していたヤツは。

 

スタミナ万歳8

食後に店内をいろいろ見て回っていたら、カロリーメイトの自販機あったんだね、ここ。初めて見たかも。しかしもう僕にカロリーは不要。

ごちそうさまでした。

 

 

支店の脅威に慄け

 

最後にエピローグ的な位置付けでご紹介したいお店がある。「後藤商店 支店」。そう、あの後藤商店の支店なのである。

これも国道187号沿い、本店から1kmもないところに存在する。どんだけ密集しているんだよ、このエリア!

 

支店1

力強い『うどん』の文字。屋根部分には『うどん・そば・らーめん』と麺類御三家の文字が並んでいる。ここにも富士電機のレトロ麺類自販機があるのだ。

さて、ここでもう1杯食べられると思う??それは神のみぞ知る。

軒先には既にレトロ自販機が見えているね。そこに近づいてみた。

 

支店2

デラックスうどん・肉うどん、どちらも350円。しかし残念なことに故障中だ。

あぁ、貴重なレトロ自販機の故障は悲しい。ここまで来てこのお店のうどんを食べられなかったことも悲しい。しかし限界まで食べなくて済んだことはちょっと嬉しい。

なのでどういう表情をすればいいのかよくわからない。

 

支店3

ここにちょこんと腰掛けてうどんを食べてみたかったなぁ…。それが実現する日は、もう少し先のことになりそうです。

嬉しいことに、その後にこの自販機の故障は直り、元気に稼働しているみたい。またここを訪れる楽しみができたってことだ。

 

支店4

さぁ、あなたはこのエリアで何倍の自販機麺にチャレンジできるかな?

一度では攻略しきれないほどの楽しみがあふれているぞ。そして、仮にここの3店舗の麺類を攻略できたとしても、ここから1時間圏内にさらにいろんなレトロ自販機店がひしめいているのだぞ。

 

僕もまた、日本7周目で訪れようぞ。

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

後藤商店 本店

 

  • 住所: 島根県益田市安富町1905-3
  • 料金: スタミナうどん¥400他
  • 駐車場: あり
  • 時間: 自販機は24時間営業

 

 

 

オアシス

 

  • 住所: 島根県益田市安富町
  • 料金: ラーメン¥400他
  • 駐車場: あり
  • 時間: 24時間営業

 

 

 

後藤商店 支店

 

  • 住所: 島根県益田市安富町13
  • 料金: デラックスうどん¥350他
  • 駐車場: あり
  • 時間: 自販機は24時間営業

 

 

No.391【沖縄県】沖縄本島から車で行ける最も綺麗なビーチ!?「古宇利島」の浜辺へGo!!

沖縄県の海って、本州など日本のほかの地域の海とは全然別次元の青さだよね。

そりゃ本州にも北海道にも九州・四国にも綺麗な海はあるけども、吸い込まれるようなクリームソーダ色の海は沖縄独特なんじゃないかって思う。サンゴ礁があるからこその、あの色なのだろう。

 

その沖縄県であっても、例えば沖縄本島八重山諸島とではさらに次元が違ったりするんだだけどもさ。そんな久米島の「はての浜」・波照間島の「ニシ浜」などの離島の最強レベルの海はさておき…。

比較的アプローチしやすい沖縄本島那覇空港でレンタカーを借りて、そのまま走っていける絶景ビーチの最高峰ってどこだろう…??

 

 

それは古宇利島の「古宇利ビーチ」かなぁ。僕は個人的にはそう思っているし、Web検索してみても同様の意見の人が多そうだ。

じゃあ、今回はこの古宇利ビーチをご紹介しよう。

 

 

ここは天国かな?

 

まずは「古宇利島ってどこかな?」っていうあなた。Googleマップを貼り付けるので本島との位置関係をボンヤリとでもイメージしておいていただけるとありがたい。

 

 

初めて古宇利島に上陸したのは、日本3周目の頃だったかな。

左右に畑の広がる景色を見ながら屋我地島をノンビリ運転していたら、前方に突然「古宇利大橋」が見えてきたんだ。

 

初めての古宇利大橋1

「すっご!!」って思わずハンドル握りながら声が出た。眼下のエメラルドの海に湾曲した橋が架かっているんだ。

今までの屋我地島はひたすらにローカルな景色が続いていた。そこからの突然こんなロケーションが登場なのだ。これは脳内から興奮物質がダダ漏れだよ。

 

初めての古宇利大橋2

橋のたもとには駐車場がある。そこからしばし橋を眺めようではないか。

美しい曲線を描く橋。2005年2月にできた1920mの橋なのだそうだ。これで沖縄本島と古宇利島を行き来できるようになったんだね。便利になったのだね。

 

初めての古宇利大橋3

この初回訪問時は、この橋は無料で渡れる橋としては日本で一番長い状態であった。

その後の2015年に宮古島伊良部島を結ぶ、3540mの「伊良部島大橋」ができて記録更新されたんだよ。3540m、ほぼダブルスコアじゃないか。スケールが違う。ちなみに僕は伊良部島大橋ももちろん好きだが、この古宇利大橋がやっぱ思い出深いな。

 

初めての古宇利大橋4

じゃあ2005年以前はどこが無料の最長なのかと言うと、山口県の「角島大橋」だったよね、確か。

あれは本州本土と角島を結ぶ橋。ライダーさんなどにとても人気の橋。日本の橋ランキング1位の橋。過去にブログに書いてあるので、よかったら以下から読んでみてあげてほしい。

 

drive-ns.hatenablog.com

 

橋を走行中、海の眺めが最高だった。前方の白いビーチに吸い込まれていくような感覚。このときはまだ僕は八重山諸島デビューする3ヶ月ほど前だったので、「海も今まで見た中では一番綺麗だ!」って思った。

橋を渡った先にはビーチと駐車場がある。おぉ、歩こうじゃないか。

 

天国のようなビーチ1

天国のようだと感じた。見ていると吸い込まれそうだ。ため息ばかりが漏れてくる。なんと形容していいのか…。「美しい」なんていう陳腐な言葉は扱いたくないと思ったが、やっぱ美しいよ。うん、美しい。

 

天国のようなビーチ2

これらの写真を見るとほとんど人がいないように見えるかもしれないけど、実際は砂浜には結構人がいたよ。駐車場にはたくさんのバイクが停まっていたりして賑わっていたよ。でも波打ち際まではみんな行かず、遠巻きに見ているだけ。僕のように。

それでいいのだ。僕、沖縄の海は眺めて楽しいけど、入ろうとはあまり思わない。足すら入らない。

 

天国のようなビーチ3

いやぁ、良かった。ちょうど太陽がギンギンに顔を出してくれ、ほぼ南中時刻の太陽が海の色を一層際立たせてくれたのだ。ちょっと目が開けていられないくらい眩しかった。

 

古宇利島MAP

余談なのだが、少々空腹になった僕は駐車場の売店等を覗いてみたけど、ちょいとピンとは来なかった。そこで古宇利島を一周ドライブしてみることにしたんだ。

 

古宇利島は直径2km・一周8kmほどの小さい島。車で10分ほどで一周できてしまう。少なくとも僕が最初に足を踏み入れた当時は、これといった観光名所はなくのどかなサトウキビ畑とかが広がっていた。喫茶店がポツポツあるだけで、あとは生活感の漂うローカルで気持ちのいい風景。

 

ところどころには「リゾート化、反対!」みたいな看板が立っていました。橋の影響で観光客がガンガン訪れるようになり、島の人は戸惑っているのかもしれないね…。ちょっと複雑な気持ち。そして僕が1人でランチしたくなるようなお店は島内にはなかったわ。腹減り。

 

古宇利大橋を見下ろす

島をほぼ一周したとき、眼下にさっきの古宇利大橋が姿を現した。

上から見下ろすような構図になるのだ。なんか無加工なのに景色全体が青く感じる。短いけれども最高の島ドライブだった。

 

 

どこにもない青

 

数年度、再び僕はやってきた。ここを気に入ってしまったのだ。

 

よく晴れた春の日に1

前回よりもよく晴れているでしょ。一番晴れた日を狙ってここに来た。橋の向こうの古宇利島の眺めがドラマチックだ。「今からあそこまで橋を渡っていくんだ」って思うと、胸が高鳴る。

 

よく晴れた春の日に2

古宇利大橋をズームしてみた。海の色が橋に写り込み、橋自体も青く見える現象。晴れているとこういう発見もあるのなー。

 

よく晴れた春の日に3

橋のたもとの東屋だ。春だというのに本州の夏くらいに日差しが強くって、砂浜が真っ白すぎて目がチカチカするので、東屋の木陰はありがたい。ここから階段で下に降りていき、橋の直下まで歩くこともできるよ。汗かくから僕はやらないけど。

 

良く晴れた春の日に4

遠くの海をズームしてみた。遠くは青さが際立つのだ。

それから古宇利大橋を渡り、前回と同様に橋の向こう側の古宇利ビーチにアプローチした。

 

橋の下のビーチ1

お土産や軽食のお店のある駐車場から100mほど歩くと、目の前には真っ白な砂浜が広がる。

気温もグングン上がり、まだ3月中旬だけども半袖でも大丈夫な感じ。紫外線もハンパない。ヤバい。ただ、数日の寒波で海に入れるような気温ではなさそうだね。元気なキッズが数名足まで入っている程度だ。

 

橋の下のビーチ2

もう少し暖かくなれば、シュノーケリング・ダイビング・海水浴などもできるビーチだそうだ。

しかし海水浴シーズンはここいら一帯の海がブイのついたロープで囲まれるそうなので、眺めるのであればロープの無いこの時期が良いかもしれない。

 

橋の下のビーチ3

まだまだ素敵な写真がたくさんあるのだが、似たような写真になってしまうのでビーチの写真はここまでとしよう。次はまた島を一周走ってみる。

 

島一周1

普通に馬がいたりして「うわぁ!」って叫んだりした。

前回の訪問時には、まだ本島と橋で繋がった環境に慣れきっていなかったためか、ところどころに「リゾート化、反対!」みたいな看板が立っていたよね。しかし数年経つとそれもほぼ見かけなくなった。

 

島一周2

たぶん、リゾート化せずに済んだんだと思う。だってさ、前回との違いがあまり無い気がするから。島民の勝利だと思う。

ちなみに島一周の道路はわりと島の高い部分を走っており、ぶっちゃけあんまり海は見えない。緑に囲まれた、同じような光景が続く。

 

島一周3

そんで最後にキラッキラに輝く海に一直線に通る古宇利大橋を見下ろすスポットが現れるわけだ。ドライブしていて島内で海がまともに見えたのはここのみ。

だがその唯一がすごい。カタルシスがすごい。

島一周4

また来るよ、古宇利島。

 

 

雨季の終わりの海

 

沖縄って雨季と乾季がある。いつも晴れているイメージの県ではあるが、実は冬から春先まではずっとグズついた天気でいることが多く、年間を通せば晴れの日が少なめの県なのだ。

 

冬の海1

ここまでいい色の海を掲載してきたのでそのまま終わってもいいのだが、あえて冬の曇天の海も紹介するわ。

風が強いし、寒いし、これまでを知っている僕からしたら海の色もビミョーかな。雨はギリギリ止んでくれてよかった。

 

冬の海2

このときは友人数名とドライブしていたんだけど、そのうちの1人が初沖縄で「海の色が本土とは違う!」と大はしゃぎしていた。

まぁ…そうだね。でも本気出したときの沖縄はこんなもんじゃあないけどね。

 

浜辺の洞窟1

浜に降りて橋の下をくぐり、さらに浅瀬を歩けるところまで歩いてみた。そしたらボコボコ洞窟が空いた岩礁地帯に辿り着いた。なにここ?

こんなところ初めて気づいた。天気が良ければきっと海だけを見ていただろう。曇天で物足りないから徘徊したからこその発見だ。曇天、いいじゃないか。

 

浜辺の洞窟2

大きな洞窟もあるので、中に入ってみたりした。みんなでフナムシ見つけてギャーギャー叫んだりした。フナムシは海を越えて沖縄にもいるんだね。全国区。

浜辺の洞窟3

大きめの洞窟には天窓があったよ。

晴れていたら青空がポッカリ開いていてもっとステキかもしれないが、これはこれでいいじゃないか。

古宇利大橋方面の戻り道は、わずかな滞在時間だったのにちょっと潮が満ちていた。あと30分遅かったら帰れなくなっていたかも。きっといつも行けるわけではないのだろう。来れて良かった。

 

冬の海3

橋を渡って古宇利ビーチ。ここの写真もたくさん撮ったのだが、今回は1枚だけご紹介しよう。

 

少し寒いけど、1年で最も寒い時期で本州だったら凍えているだろうけど、沖縄はちょっと穏やかで。ギンギンの直射日光ではなく、柔らかい色合いの海がなんだか曇天までも明るくしてくれていて。そんな冬の沖縄もいいのかもしれない。

同じ旅なんて二度とないのだから「今」を楽しむ。それだけなのよ。

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 古宇利ビーチ
  • 住所: 沖縄県国頭郡今帰仁村古宇利
  • 料金: 無料
  • 駐車場: あり
  • 時間: 特になし

 

No.390【沖縄県】波照間島のドカ盛りの宿「たましろ」!日本一汚い!?でも最高に楽しい!

遥か南の海。石垣島から小船に揺られて辿り着いた、日本の有人最南端の波照間島

 

そこに「たましろ」という名前のクレイジー極まりない宿があった。

日本一ボロいとか、日本一汚いと言われる宿。愉快な旅人が集まってドカ盛りご飯をつつきながら毎晩ゆんたくする、最高に楽しい宿であった。

 

 

旅人たちの間では伝説の宿だ。『北の「桃岩」・南の「たましろ」』。そう言われたりする。桃岩とは日本の有人最北端の島である礼文島の「桃岩荘」を指すのだが、そこも大変に芳ばしく、僕の大好きな宿である。

 

そんなたましろだが、1年前の2023年にオーナーのオジーが亡くなり、閉鎖してしまった。とても悲しい。

ジーが亡くなったことは常連さんを通じて早い段階で僕の耳にも入ってきたが、「しばらくのうちは内密にしておこうとなっている」と聞いていたので、その通りにした。

だがオジーの死から1年が経ち、今やWebで普通にその情報を確認できるようになった。

 

なので、この折にたましろの思い出を執筆しようと思う。

僕、たぶんたましろが無かったら、今の人と結婚してなかったと思うぜ。

 

 

■1回目:スクランブル

なんだこの宿は

 

波照間島の初夏の朝。僕はレンタサイクルショップのオーナーさんが運転する軽ワゴンに揺られていた。

ショップに行く前に、僕の今夜の宿であるたましろに立ち寄って荷物を置かせてくれるらしい。ありがたい。

オーナーさんが車にブレーキをかけ、「ここだよ」と教えてくれた。

 

ましろとの邂逅

うん、すんごい。

 

ジャンク部品が散らばっているしブルーシートだし、なんかもう説明する気も無くすくらいにインパクトが強い。

一緒にワゴンに乗っている「ひまこさん」が「私はここ、無理なんだよね…」と眉をひそめた。その気持ちは痛いほどわかるが、それを耳にすると僕も自信を無くしそうだから辞めてくれ。

 

で、僕の荷物はどこに預ければいいのだろうか?

軒先で寝ている人(常連さん)に聞くと、「オーナーのオジーは不在なので、そこの外のテーブルに置いておくのがいいんじゃないかな」とのことで、そうした。

バガバガのセキュリティだが、まぁいいや。今夜が楽しみだ。

 

日本一綺麗なビーチ、「ニシ浜」

このあと、僕は昨夜の宿で一緒だったひまこさんと共に自転車で島中を駆け巡る。自転車で半日もあれば容易に島一周できるような規模なのだ。

初めての波照間島は何もかもが新鮮だった。特に「ニシ浜」は最高だったな。3回行った。でも他の観光スポットを含め、今回は全部割愛しよう。たましろのことだけ語りたいので。

 

幻の泡盛、「泡波」

15:00すぎに別の宿に泊まるひまこさんと解散。じゃあね、またどこかで会うことがあれば。

まだ早い時間ではあるが、炎天下で朝から自転車を漕いでいたので汗だくでクタクタなのだ。たましろにチェックインしよう。

 

チェックイン1

オーナーのオジーは、買出しかなんかでまだいなかった。軒先のテーブルで他の宿泊の人とダラダラ話しながら待機する。平和な時間だ。いい感じの日陰で眠くなってくる。

 

チェックイン2

てゆーか、実際寝ている人もいる。最高にゆるいな。ここが毎晩ゆんたくが行われるテーブル席らしい。

 

16:00頃、オーナーのオジー「玉城さん」が戻ってきたのでチェックインの手続きをする。1泊2食で5000円だ。そして部屋に案内される。

 

扇風機の間

建物の中、とんでもない熱気。宿泊者たちが外で寝ている理由を理解した。

熱帯のような湿気であり、畳も布団もペッタペタ。畳はじゃっかん砂でジャリジャリ。エアコンはなく、布団1つに付き扇風機1台が用意されているという異様な光景に、さんぴん茶噴いたわ。

 

午後のひとときを

心地よい疲れだ。夕食まで昼寝でもしようかな…。僕も常連さんたちにならい、屋外のテーブル席で1時間ほど仮眠をした。

 

 

幻の泡盛とドカ盛りご飯

 

17:45だ。夕食は18:00から開始であり、続々と宿泊者が揃い出した。これからたましろ最大の名物である夕食が始まるんだぜ、ウホホ、楽しくなってきた。

 

泡波3合瓶

まずは泡波とロックアイスがガンガン配られる。「まずは」なんてサラッと書いたが、これを本州で飲もうものなら万札が余裕で消えるからな。波照間だからこそ飲める、幻の泡盛なんだからな。

だがたましろでは飲み放題だ。最強!ハッピー!みんなでカンパイ!!

 

同泊者は20人以上いるのでいいペースで瓶は空になり、オジーがさらに泡波1升瓶を持ってきた。1升は常連でも滅多に見たことがないレアらしい。会場がどよめいた。興奮の坩堝(るつぼ)。

 

酒を飲みながらいつ島に来たのかだとか、波が激しかっただとか、今日のニシ浜のコンディションどうだとか、島の話題で盛り上がる。観光地が少ないから何の話をしてもみんなが理解できて楽しいぜ。同じ目線で話ができる。

 

ドカ飯登場1

ここでたましろ名物のドカ飯が登場!!すさまじいボリューム!!

茶碗が小さく見えるかもしれないけど、実はかなり大きい丼だぜ。普通の茶碗の2~3膳分はあるのかな?牛丼屋の特盛くらいを想像してほしい。

ウナギが小さく見えるが、これは普通サイズだ。お茶碗であれば白米を覆えるくらいの大きさはある。

 

ドカ飯登場2

それと対比すると、いかにうどんが驚異的な量なのかわかるだろう。たぶん3玉くらい。かきあげも負けじと巨大だ。炭水化物コンボ。

あとは刺身の盛り合わせ、バナナ・パイナップル・漬物・ジーマミドーフ。

 

常連さんに言わせると、今日のメニューはやや難易度が高いらしい。「まずはかきあげを違う皿に非難させ、うどんを速攻で攻めよう!」…みたいな作戦が広まり、ひたすらうどんを食べる。すばやく食べないとうどんが汁を吸って永久に食べ終わらなくなってしまう。

現に僕の隣の人はうな丼から食べて大失敗し、うどんはほとんど手をつけられなくなっていた。かきあげは2時間後くらいに酒のつまみにし、うな丼もうなぎだけをつまみにして、ご飯は食べないのが賢いんだって。

 

ゆんたく1

僕、うどんの麺を食べきったよ!頑張った!快挙だ!しかし後悔…。もう満腹。オカズ食えない。炭水化物だけで力尽きた…。

悔しいので根性で刺身を完食する。あとはちょっとずつかきあげを攻めようか。

 

もう周りではリタイアの人が続出してきていた。
まぁそんな人も含め、終始酒を飲みながらみんなで楽しくゆんたくしているんだけどね。時間は無限にあるのだ。なんなら朝まで食べていてもいいのだ。思い思いに食事を楽しむのだ。

 

食べながら綺麗な夕焼けを見てていたが、20:00頃に暗くなってきた。日本の最西部にあるので1日が終わるのがとても遅いのだ。21:00くらいまではかろうじて明るい。

あぁ、もう2時間も経っているんだ。話しているとあっという間だな。でもまだ全然食べ途中だな。

 

ゆんたく2

メンバーの中には今日島を離れたかったけど欠航で連泊になってしまった人が5・6人いた。さすがに明日は島を出ないと仕事がヤバイんだって。おー、明日に帰らなければいけない仲間がいるぞ。僕もそうだぜ。

 

明日は1便で島を離れた方がいいかな?常連さんによると、1便が一番出航できる可能性が高いみたいなので、僕も1便狙いでいこう。

 

ゆんたく3

明日の1便で島を出る予定の人たちと話し合う。きっと今日はほぼ全便欠航だったから、一番確率の高い1便に人が集中する。フェリーには確実に全員乗り切れないだろう。そうしたら早い者勝ちだ。朝、速攻で港に行かなければ。…ということらしい。

朝食を早めてもらうことってできるのかな?とりあえず早起きはしなくちゃ。

 

ゆんたく4

21:30ごろ食事をギブアップした。

うぅ…、ご飯は半分以上残してしまったよ…。宿泊者20数人のうち、2名が完食できたみたいでした。すげー…。

 

ここでシャワーを浴びるために席を外した。ボロッボロの小屋の中でシャワー浴びた。

その後、ゆんたく席に戻ってしばらくダラダラしていた後、「希望者でニシ浜に星を見に行こう!」ってなった。行く行く!

 

漆黒の波照間

合計8人でほとんど真っ暗で街灯も無い道をニシ浜まで歩く。

頭上は満天の星。夢みたいな世界。北斗七星とサソリ座が綺麗だ。残念ながら南十字星は見えていないけど。

 

東屋の思い思いの場所に腰掛け、みんなで夜空を見上げる。

天の川が空を横切っている。ときおり流れ星が飛ぶ。ニシ浜の穏やかな波音だけが心地よく聞こえる。お互いの顔も見えないくらいに辺りは暗い。

同泊者の人の三線の演奏を聴きながら最南端の星々を見ていると、旅って本当にいいなーって思えるよ。

 

 

別れは嵐のように

 

昨夜は部屋に戻ってすぐに爆睡したので、汚さとか暑さとか全然意識しなかった。

8:00から朝ごはんなのだが、7:20くらいから僕はそわそわしてゆんたくテーブルにいた。同じような人も数人いた。

 

朝食を食べたらすぐに出発したいから、荷造りを済ませておく。

ジーは「みんなフェリーが気になるだろうから、今日は早めにご飯にするよ。」って言ってくれた。

朝ごはんができるまで、ゆんたくテーブルで空の様子を眺めていた。

 

朝のたましろ

昨日よりも若干風が弱いような気がする。一昨日の夜なんて嵐の前みたいにゴウゴウいってたけど、それと比べるとだいぶ穏やかだ。

しかし問題は波が収まっているかどうかだ。波照間は外洋だから、八重山諸島の他の島と違って海の状況が過酷なのだ。

 

ソワソワしているだけってのも耐えられないので、石垣島のフェリー会社に電話してみた。「さっき石垣港からは出航しましたよー」って、電話に出た係員の人が教えてくれた。

わーい、やったー!これで少なくとも波照間から船には乗れるよね!

…って喜んで同泊者の人に報告したら、「いや、大抵石垣島からは出るって。そのあと波照間島の直前で引き返すパターンが多いんだよ。」だって。

 

ガクッ…。

そうだった。そういや昨日の1便だってそのパターンだったと聞いていたな。もう波照間が見えているのに引き返すこともあるらしいのだ。

あー…、不安だ。

こう考えると一昨日の夕方に僕がちゃんと波照間に来れたのって結構すごいのかも。3回もトラブルを起こし船を一艘壊しながらも到達したもんなぁ。

 

朝食1

人数が多いので屋外のテーブルと室内のテーブルで2班に分かれた。僕は屋内になりました。なんか、アレだね。ここはトイレが近いので、そこからの臭いがアレだね…。

 

朝食2

うっわ。多っ!

何この味噌汁の量。ラーメンかなってくらいのボリューム。奥にサンマ一匹があるのに、遥かにインパクト負けしてるわ。とりあえずガンガン胃に詰め込んでいく。

ちなみにたましろでは朝食時に一緒にラップや塩を出してくれる。常連さんはこれで朝食の残りでオニギリを作ったりし、昼ご飯にするそうだ。

 

運命の出航へ1

「すぐに港に向けて車を出発させられるからねー。」とオジーがのんびりした口調で言う。よし行こう。バタバタしてしまったが、楽しかったよ。最後に振り返って宿の写真を1枚撮った。

 

同泊者3人とたましろのワゴンに乗りこみ、宿の前で手を振る同泊者の人たちに挨拶し、港に向けて出発したのが8:20だった。

 

運命の港へ2

1便は9:30に波照間を出航する。この時間から港に行って間に合うだろうか…。

既に朝ご飯の前にたましろの前を素泊まり宿「やどかり」の送迎ワゴンが通過していたのを思い出した。

そうだった。朝食付きの宿よりも素泊まりの宿の方が早いに決まっている。これはピンチ?

 

そしてフェリーはちゃんと来るのか?無事に石垣島まで行けるのか?

「お香典がいらないことを祈っときますわ~。」とか、オジーが縁起でもないことを言ってる。みんなで精いっぱい突っ込む。

 

運命の港へ3

ジーにお礼を言い、僕らは桟橋へと急いだ。

さて、今回はたましろのお話なのでここまでだ。このあと、フェリー乗員の倍くらい桟橋に溜まる人々、大荒れの海、海上保安庁も巻き込むあれやこれやのトラブル…などがあるのだが、それも割愛。

…と、かつて「八重山スクランブル」というタイトルで執筆した長編旅行記の一部からのご紹介でした。

 

 

■2回目:クライシス

お正月は永久に続く

 

夕方16:30、再び僕は波照間島の桟橋に降り立った。

各宿の車が港に送迎のために来ている。その中でもひときわボロくて白いワゴン車。みんな知っているね、たましろのオジーのワゴンだよ。このワゴン、すごいんだぜ。天井の内貼りとか、全部剥がれて鉄板丸見えよ。頬が緩む。

 

港の桟橋

ワゴンに乗り込むと、同じ便で島に着いたらしい旅人が1人いる。聞くと、さっきのフェリーで僕の後ろの席に座っていたという。

名前は「KEN君」で波照間島は初めて。僕と同じく2泊3日の予定だそうだ。よろしくね。

 

ボロい宿よ、再び1

いやぁ、相変わらず笑える外観でワクワクする。

クリスマスパーティや正月パーティをやって片付けていないのか、いたるところにそれらの飾り付けが残っていた。「明けましておめでとう」と書かれているが、もうすぐ4月だぞ。

 

ボロい宿よ、再び2

KEN君はたましろのうわさは聞いていたとのことだが、想像以上のレベルに既にビビっていた。

そして「前面に掛かっているブルーシートがイメージダウンの元だと思う」と冷静に分析をしていた。うん、間違っちゃいないがそういうレベルではないと思うよ、もはや。

 

ジーは「19:00から夕食なので、それまでに「お風呂に入っておくといいですよ。」と言う。

どうやら今日の宿泊者は僕とKEN君の2人のみだそうだ。3月後半の3連休で多くの旅人が来て、それが掃けた直後の様子。でもまた明日からは週末なのでこの宿にも9人ほどの旅人が新たに来るらしい。今日はちょうど閑散日のようだね。

 

ニシ浜は最強

このあと、「夕食が19時ならば時間的に余裕よ!」みたいな感じになり、KEN君と共にニシ浜まで歩いたり近くの商店で買い物したりしたんだけど、そこいらの話は割愛。

で、綺麗なニシ浜を眺めた後の… ― 

 

ボロい宿よ、再び3

ー …たましろ。この落差。ギャップ萌え。

パッと見では絶対に宿だとは思えない。建物であることはわかるが、一体何棟が合体しているのかもわからない。あと、ついでに入口も知っていなければわからない。面白いだろ。他人事だと思って笑っててくれや。

 

ボロい宿よ、再び4

いろんなところから正月がチラッチラと見えている。このクソ暑い中に正月要素を持ってこられても戸惑うばかりだ。

 

ボロい宿よ、再び5

庭の一角には、野生の泡波が集会を開いていた。この量、写真に映っている分だけでも東京で買おうとしたら、5万でも無理だよね。それを水のように飲める宿は、波照間島でも貴重なんだぜ。

 

ボロい宿よ、再び6

宿は奥に行くほどカオスな感じになっていく。洗面所とかお風呂場はかなりのレベル。ドアの建付けは最悪だ。シャワーやトイレを使う際には、常に「誰かがドアを開けませんように」と祈りながらだ。

 

ボロい宿よ、再び7

キッチンから出てきたオジーが「お風呂の後に夕日が見えるかもしれないよ。今の時期ならモンパの木の付近だよ。」と教えてくれる。

「モンパの木」は、ここと「ニシ浜」との中間あたりにあるお土産屋さん。んじゃ、ダッシュでお風呂に入ってから夕日を見に行こうかな。

 

シャワー後、オジーは宿の自転車も貸してくれた。

「全部かなりガタが来ているから、それを覚悟の上ならば自由に使っていいですよ。」とのことだ。うん、想像はついてますんで大丈夫です。

漕ぐ度にガショガショいい、ハンドルが若干曲がった自転車で、KEN君と夕日を見に行ったのだが、そこいらもまた機会があったら書こう。

 

夕闇迫る

夕食ギリギリで帰還した。せっかくシャワー浴びたのに、また汗をかいた。

この島、まだ春なのに暑すぎるんだよ。そしてブッ壊れそうな自転車で坂道を上がってくるのは想像以上にふくらはぎに負担がかかったよ。

 

今回の部屋

ここが僕の部屋。扉を閉めるにはかなりのコツが必要だし、床は老朽化で一部沈んでいる。座布団とか布団とかはちょっとアレだし、壁に掛かっている鏡は割れている。

座卓にお湯(?)の入った急須が置いてあるが、中にはいつのものかわからない茶葉がミッチリ詰まっている。これ危険?自分のさんぴん茶を飲むわ。

 

 

ドカ盛りを前に醜態さらせ

 

そして19:00、夕食が始まる。どうやら人数が少ないので宿の前のゆんたく用のテーブルではなく、室内のテーブルらしい。前回にお朝ご飯を食べたお部屋だ。

 

泡波でカンパイ

まずは泡波だな。この島以外ではほんのコップ1杯でも1000円くらいする幻の泡波。泡波は島内で消費される分しか生産していないから、島から出ると一気に高くなるのだ。

それを「まずは」とか言って飲める幸せ。カンパイ!

 

ドカ盛りと闘う1

すさまじいボリュームの夕食が登場。

普段はポジティブシンキングのYAMAさんも、見た瞬間もう敗北を悟りました。
余裕。余裕で敗北よ、これ。本能レベルでもうわかった。うまそうだがダメこれ。

 

とりあえず脳内で素早く攻略作戦を立てた。

一番危険なのは、手前の沖縄そばだな。パッと見で3玉分。そこに大量の肉が乗っている。普通だったらこれだけで満腹になるか食べきれないボリュームだ。

これの麺を最初に攻略し、のびるのを防ぐ。

 

ドカ盛りと闘う2

次に何気に脂分が多いであろう、刺身セットをたいらげよう。時間をあまりおくのも衛生上もよろしくないし。

それから小鉢類を個別撃破し、ゆっくりとご飯の上の鮭を食べながら酒を飲む。その下の大量のご飯は食べれたら食べるが、厳しいかもしれないな。バナナはKEN君に食べてもらおう。よしっ、カンペキだ!世が世なら天才軍師だぞ、僕は。

 

ドカ盛りと闘う3

…無理でした。

まずは麺の半分だけで満腹。「ヤバいです、ヤバいです!」とかアラートをKEN君に出しまくり、そうそうに小鉢に逃げる。

そんで中盤には「もうコーヒーゼリー食べちゃっていいですかぁ?安らぎが欲しいん
ですけどぉー。」と禁断の発言。

KEN君に「もう逃げるのかよ!」とツッコまれつつも、ツルッとゼリー食べちゃった。あぁー、和む。

 

バナナは計画通りKEN君にあげた。鮭の乗った2杯分くらいのご飯はもう全然無理。鮭を1口食べるだけで限界だった。

一方で基本的に出されたご飯は全て食べるのがポリシーというKEN君も無様に敗北してた。

 

夜のひととき1

あとは2人で食堂でダラダラTVを見つつ酒を飲み、旅の話をした。

楽しいねぇ。2人だけだけども、ダラダラと周囲に気を遣わずに酒飲んでご飯を食べて。今日出会ったばかりとは思えない。

 

夜のひととき2

星が出ていたらいいなって思って、KEN君とちょっと外を見に行ったけど、分厚い雲がかかっていた。ま、いっか。疲れたので寝る。

 

 

鉛色の空の下で

 

朝起きて、外に出た。

 

暗雲立ち込めるクリスマスツリー

お、おぅ…、なんなのだよ、この絶望色の空は。いつ雨の降り出してもおかしくないような空気感。しかも寒い。

そんで風が強い。辺り一帯がザワザワしてる。それと連動して僕もザワザワと胸騒ぎ。庭のクリスマスツリーもザワついている。

 

ジーが出てきて、「今日は1~3便はダメだぁ…。4便は大丈夫だと思うが…。」っ
て言う。1~3便欠航ということは、夕方までは島のメンバーは固定されるということだね。

 

朝食の破壊力

朝も破壊力大だ。一番奥に焼き魚1匹とかドカンといますからね。中央に鎮座する玉子とじも、玉子5つくらい使ってるんじゃない?

そしてご飯はおひつでやってきた。フタを取ってみたら、6~7合分くらいのご飯がデーンと入っていたので、そっ閉じよ。ムリだし。1膳の半分も食べれないよ、僕。

2人で1時間半かけて食べたけど、もちろん残してしまった。

 

その後はKEN君と自転車で島内を巡るんだけど、いろいろあってさ。

「明後日から仕事だからどうしても確実に島を出たい。貨物船に紛れ込んででも出たい。」と真剣に話すKEN君。ヘタすると今日の宿泊者が自分1人になってしまうので、それを穏便に食い止める僕。

 

全便欠航

全便欠航!!

「貨物船ぱいかじに乗るんだ」とまだ言っているKEN君をなだめ、たましろのオジーにこのことを報告しに行く。

ジーは「そうですか…。今日来る予定だった9人は全員キャンセルですか…。」と肩を落としていた。出会えるはずの旅人に出会えなくって、僕も残念だぜ。

でも波照間ってこんなもん。概要だから欠航率が非常に高いよね。

 

それでもニシ浜は綺麗

1日中自転車を漕いでヘトヘトになり、2人とも夕方に仮眠。

そして19:00にゆんたく開始なのだ。週末でここに来るはずの旅人たち9人がいなくってまた2人だけだけど、親睦を深めようぜ!

 

常飲ドリンク

泡波もおなじみだ。もう幻とか貴重とかって感じではなく、ゴクゴク飲むぜ。自転車で走り回って水分欲しているしな。

そして今夜のドカ飯はこちらだ。

 

活路を見出せ

おぉ、今日は活路を見いだせるかもしれないぞ。僕もKEN君もこのメニューを見て同じことを思った。

まず、手前のスープ。昨日はそばが3玉分くらい入っていたが、今日は具が少なめの普通のスープだ。これは胃に流し込める。

そして中央のメインのおかずは煮物。角煮・ニンジン・ジャガイモ・昆布・コンニャク
などが主な具だ。これはヘルシー。胃に負担をかけずに食べれるぞ。

 

さらに豆腐はツルッといける。他の小鉢も1つ1つは量は少ないのでダメージも抑えられる。バナナやパイナップルは食べれないのでKEN君にあげるとして、あとは刺身くらいか。

 

ご飯は見なかったことに…

あと、ご飯が今日は丼ものではないので自分でおひつから盛る形式。これを食べないのであれば炭水化物ゼロ作戦となる。なんとかなるぞ、これ。

 

今日は結構作戦通りに行けた。やっぱ炭水化物が無いだけで全然難易度が変わるわ。

おひつには相変わらず大量のご飯が入っていて、僕はそれは1口くらいしか食べれなかったけどね。あとはフルーツ以外は全部食べられた。

そしてKEN君と語らいながら21:30くらいまで酒を飲んでいた。泡波、余裕で1瓶空いた。

 

屋内の宴会場

食後に外を見てみると雲が晴れてきている。これ、「ニシ浜」まで行ったら星が綺麗に見えるかもしれないなぁ。

KEN君と2人、「ニシ浜」に行った。お酒飲んでいるし、道は街灯も無くて真っ暗だから徒歩だよ。いつも携帯しているライトで夜道を照らしながら歩いた。

夜に思う1

まだうっすら雲がかかっているためか、天の川とかは見えないし、満天の星とまでは届かない感じ。しかし頭上は綺麗な星空が広がっていて、目が慣れるにつれていろんな星座が見えてくる。

しばらく波の音を聞きながら星空を見上げた。まだ風は強いけど、明日は天気も回復しそうだな。あとはフェリーが復活してくれることを祈るばかりだ。

 

夜に思う2

今回はこの屋外のゆんたくテーブルは使えなかった。それがほんのちょっと心残りだけど、どんな旅だってオンリーワンなんだよ。失敗も成功も無い。

確実かつ保障された道を歩くだけなら、僕はそれを"旅"とは呼びたくないな。

 

まだクリスマス

僕は、今日という日に精一杯の感謝をする。

眠りにつく前に、改めて僕は夜空を見上げた。

 

 

サトウキビ畑で僕らは叫んだ

 

翌朝は、雲は少なめ。西の空は雲が多いが、東は晴れている。これはいい朝日を見れそうだ。しかし風はやや強め。うーん…、このくらいだったらフェリーは出ると思うけどなぁ…。少なくとも、石垣港は出発してくれるだろう。

 

とりあえず「天気がよかったら一緒に朝日を見ようぜ」とKEN君と話していたので、KEN君を起こしてオンボロ自転車に乗り、島の東を目指した。

 

通常運航!

朝日を見つつも手元の携帯電話をチェック。するとちょうど今しがた、本日全便運航すると発表された。

おぉぉぉ!!これで島抜けできる!!危機を乗り越えた!

島の東側のサトウキビに囲まれた一本道。その向こうに昇ってくる朝日を眺めながら、僕とKEN君は叫んだ。帰れるーー!!

 

サトウキビ畑と自転車と朝日

陽光を背中に感じながらゆっくりとたましろに戻り、荷造りをする。

8:00から朝食だ。ドカ飯ファイナルだ。

 

ドカ飯ファイナル

おかずだけで満腹で、ご飯まではほとんど手を付けられない。無理矢理詰め込み、チェックアウトする。きっと船はヤバいくらい揺れるぞ。でも吐くなよ、朝ごはん。

 

フェリーは石垣港を無事出航したとの情報も入ってきた。

最後の懸念である波照間直前でのUターンも、オジーが「この程度の風なら大丈夫ですよ~。」と言ってくれた。

 

さよならたましろ

ではたましろ、さよならだ。

てゆーか上の写真、たましろのどこの何を撮ったんだっけ?外壁??

 

ましろワゴンに揺られ

ジーにお別れを言い、僕らはターミナルの建物内に入る。まだ桟橋はガラガラなので並ぶ必要はなさそうだ。そもそも平日だったので島内には観光客も少なかったのだ。

 

9:30頃、石垣島からやってきた船が無事に入港した。

桟橋に降ろされる物資、そして陸に降り立つ旅人達…。また島が活気づくね。何人かの旅人がたましろワゴンに向かって行くのも見えた。

 

最南端の旅、終わる

今日のたましろはきっと賑わうことだろう。

旅人たちの思い出は、こうして延々と紡がれていく…。

 

 

■3回目:ヴォヤージュ

久々の外ゆんたくは楽しい

 

八重山諸島を何日もかけて旅していた。当初波照間島に渡ろうと思っていた日は天候が悪く、全便欠航になってしまった。

 

全滅

予定を組み替えて別日に波照間に渡ることにしたが、その日は当初泊まりたかったちょっと雰囲気よさそうな宿は満員であった。

 

うーむ。でも波照間には行きたいんだよ…。波照間島で、前日に予約しても空いていそうな宿ってどこだろう…?

はい、そこのあなた。もうあなただったら答えられますよね?

 

「た ま …」。いや、みなまで言うな。

僕はチラッと横を見た。今回は1人ではないのだ。同行者は、この1年前に小雨の降る沖縄本島の海を見に行ったら、初めて見る沖縄の海に感動していた。

いやいやいやいや。雨の沖縄本島の海に感動するようでは、晴れの波照間の海を見たら泡吹いて気絶するぞ。実際やってみる?

…ってことでここまで来た。たましろはちょっとハードル高すぎやしませんか?

 

ましろワゴン、再び

翌朝、気付いたら波照間港でたましろワゴン乗っていた。ゴメン、なんかもう、これしか策が思いつかなかった。オジーが予約電話に出て「はい~?」とゆるく応答したとき、正直安堵してしまった。

 

ワゴンには8人くらい乗った。大盛況だ。

ジーも表情からはわかりにくいが上機嫌のようで、「ではまずはワゴンで集落を案内しますね~」と言い、メンバーの1人が「何度も来ているので大丈夫です」と言っても完全スルーで、10分ほどの観光案内が強行された。

ちょっと天然入っているオジーの島案内、僕にとっては楽しい時間だった。

 

相変わらずのボロ

ましろについた。同行者が唾を飲むのがわかった。

ジーは「あの、お金ないんで。夕食の材料買えないんで先に5000円ください」と言ってきた。この正直者め!好き!

 

そのあと、レンタサイクル屋さんに行き自転車を借りて、みんな思い思いに島を駆け巡ったよ。

 

ニシ浜、とてもよい

またニシ浜に行ったり、オシャレなカフェができていたのでそこでランチしたり、日本最南端のプラネタリウムを見たりいろいろしたんだけど、例によって全部割愛。

そんなこんなで19:00からたましろのゆんたくが始まるのだ。

 

まずはオリオンビールと泡波でカンパイだ。

外のゆんたくテーブルで10数名で夕食開始。楽しめそうだぜ!

 

こいつはうまいぞ

おぉ、うまそうだ。炭水化物は1品のみだ。レベルはやや低めのヤツだ。

向かって左は大盛りのジューシー。右はアーサ汁。どっちも人気メニューであり、大変うまい。一同盛り上がる。

 

奥側には刺身もいっぱい

これまではゆんたくに同席していなかったオジーが今回はグイグイ来て、「では順番に自己紹介していきましょ~」ってなり、1人1人ニックネームやこれまでの旅などを話した。

ノリのいいメンバーばかりで、すぐに打ち解ける。

 

オリオンビール

メンバーの1人は大量にオリオンビールを差し入れてくれた。狂喜乱舞。

 

途中で南十字星を見に行く星空ツアーの送迎バスがやってきた。ゆんたく中ではあるが、数名がそれに乗って最南端の天文台に出かけて行った。

以前は別の宿の送迎シャトルバスで僕も行ったことがるが、今は各宿ごとに行くのは禁止されていて、島共通の大型バスにみんな集合することになっているそうだ。

 

バスから見られる

バスの中の他の宿の人たち、「へぇー、ここが伝説のたましろかー」みたいな顔でこっちを見ている。そうです、ここがたましろです。楽しいのです。

オシャレなペンションにはそれ特有の良さがあり、こちらにはこちらの良さがあるのです。

 

でもね、一緒にゆんたくしている男性1人と女性1人がたましろのアネックスに宿泊しているそうで。そっちはなかなかに衛生面が厳しいと言っていた。

アネックスなんてあったのか、初めて知った。こちら側の部屋の写真を見せると、「うらやましい!まるでスイートルーム!」って言ってた。マジか。

 

 

ましろジー、裏声で歌う

 

ジーが「ではみんなで歌を歌って盛り上がりましょ~」と言い出した。

 

歌うぜ1

いきなり「知床旅情」を歌うことになった。最南端の島で北国の歌。いいぞいいぞ。もうみんなお酒入っているので海賊みたいに陽気に歌う。

続いて「遠くに行きたい」・「りんご」など。昭和の歌が多い…。よくわからんけど、みんなでわからんなりに肩組んで歌えば全部楽しい。

 

ジーは「えーと、あなた横浜から来たのなら「赤い靴」歌いましょうか。横浜の歌でしょ?」みたいなキラーパスも投げてくる。

「じゃあ次はオジーの番!!」って言うと、大真面目に歌ってくれるんだけども裏声でとんでもなく高い声で「小さい秋」を歌ったりし、一同大爆笑したりした。

 

歌うぜ2

ジーは「じゃあ次はこの歌」って言うんだけど大正時代の歌で誰も知らなかったりして。

「え…、どこの居酒屋でもかかっているでしょう…」と言うオジーに対し「どこの居酒屋だよー!」と複数名がヤジを飛ばしたら、本気でショボンとしてしまってみんなでフォローしたり。

 

盛り上がるゆんたく

ジー主催の歌唱大会だけで1時間くらい楽しんだ。ご飯をチビチビつまみ、酒を飲みながら外でこんなことする。非日常が震えるくらいに楽しい。

島情報もみんなとたくさん交換した。僕らが「隊長」と呼んだ人には黒島を勧められた。礼文島に行ったことがある人もいて共通の話題で盛り上がった。行ったことのない人には礼文島アピールをしておいた。

 

三線で歌う

メンバーに三線弾ける人がいると盛り上がるよね。

リクエストすると様々な琉球ソングを奏でてくれ、それをみんなで歌う。あぁ沖縄の歌って素晴らしい。沖縄の夜ってすばらしい。

 

ギリギリ完食ならず

23:00ごろ、10人ほどでニシ浜に星を見に行った。満天の星が頭上に広がっていた。

ましろに戻ってくると、1人の女の子がたましろの前で泣いていた。集落の中心地の方から家出してきたと言っていた。みんなで事情を聴き、なぐさめ、そして夜道を歩いて家まで送り届けたりした。

その帰り道で見た星空、最高に綺麗だった。

 

 

さよなら最南端の島

 

翌朝。前日にシャワーを浴びるヒマがないほどに楽しんでしまったので、早起きしてシャワーを浴びた。ちょうどオジーがキッチンにいたので、頼んでボイラーをつけてもらった。

 

爽やかな朝のごはん

朝ごはんは、なんだかオジーがドタバタしているらしくいつもよりより遅めの8:15。しかもフェリー1便で島抜けするメンバーだけ、外の席で先に食べるようなスタイルだった。僕らは1便で石垣島に戻るので、先にいただきますね。

 

今日はこの時期ありえないほどに爽やかな気候。ちょっと肌寒いくらい。ムシムシしていないので快適はあるけども。

さて、そろそろ1便の人たちの港送迎の時間なのだ。宿をチェックアウトする。

 

宴の跡

ましろワゴンに僕と同行者、それと同泊者のおじさん1名が乗り出発。昨夜一緒にゆんたくでドカンドカン盛り上がったメンバーは、既にどこかに行ってしまったようだ。

あれ…。最後に挨拶したかったな。ちょっと切ない。

 

港に到着すると、昨夜のメンバーがみんないた。先回りして見送りのために集まってくれていたのだ。

みんなで集合写真を撮り、連絡先の交換をした。また会おうね!

 

島抜け1

フェリーが到着した。1人1人と握手をしながら船に乗り込む。

あれ…?でも見送りに来てくれた人、5人ほど少なくなっている…。そのままフェリーは出航。ゆっくりと防波堤を超える位置まで近づく。

 

島抜け2

いた!少なくなっていた5人のメンバーは、防波堤の最先端まで移動し、そこで僕らを見送ってくれていたのだ!

ありがとう!また会える日を夢見ている!!

 

島抜け3

僕と同行者は、最高の思い出に包まれ、外洋に向けて乗り出した。

 

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この送迎時のメンバーとは、このあと東京で大集合して飲んだりした。

2023年、オジーの玉城さんが亡くなった。

2024年、この防波堤も安全面から立入禁止になってしまった。

日本最南端の島も、少しずつ変わってきている。また訪れたい気持ちもあるが、思い出の地が変わってしまった部分を見たくもないというジレンマもある。

 

 

それでも、僕の心の中の波照間とたましろは不変なのだ。

ありがとう、オジー

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

 

No.389【沖縄県】もう見ることができない小さな絶景!竹富島の「なごみの塔」の思い出!

竹富島の展望所「なごみの塔」。集落の中心地に建ち、島のシンボルのような存在だと思っている。

1953年に造られた建物であり、国の登録有形文化財にもなっている。つまりは歴史的にも重要なスポットなのだ。

 

 

しかし老朽化のために2016年から一般人の立ち入りが禁止され、その後に改修工事が入ってそれが2020年に完了したのだが、「やっぱ一般観光客がワイワイ自由に登り降りするのはちょっと難しいかもな」みたいな判断がされて2024年現在も立入禁止なのである。

 

その決断が間違っているとは思えないが、なごみの塔から見下した島の景色をもう二度と見られないと思うと切ない気持ちにはなる。

だからね、今回はかつて僕がなごみの塔に数回登った思い出を語ろうと思う。

 

 

僕は初めて塔に登る

 

僕が初めて竹富島を観光したときのことだ。何もかもがわからずに単身島に上陸し、自転車をレンタルして紙の地図を1枚もらった。

地図には『オーリトーリ ミーハイユー』と書かれていた。八重山諸島の言葉で『ようこそ ありがとう』だ。テンション上がるぜ。

 

竹富の集落1

小さな小さな島。集落には真っ白な砕いたサンゴが敷き詰められ、住民の方々が常に綺麗に保ってくれている。

そして沖縄の伝統的な赤瓦の屋根の住居。重要伝統的建造物群保存地区にも登録されているのだそうだ。

 

竹富の集落2

実際はこの白亜の道の照り返しがまぶしいほどだった。最高の気分だ。

地図なんぞいらない。自分の思うままに迷路のような集落の中を走るのが楽しい。そして見つけた食堂で八重山そばを食べたりして楽しく過ごした。

自転車を漕いでは汗をかき、アツアツの八重山そばにコーレグースをかけすぎては汗をかいたのだが、都会とは違って気持ちのいい汗であった。

 

竹富の集落3

今回は割愛するけど、島内の有名なビーチにも足を延ばした。メチャクチャ綺麗なビーチに目を奪われ、木立の日陰に座って海を眺める時間は至福だった。

こうして集落内に戻ってきたところで、僕はやり忘れていたことに気づいた。

 

竹富の集落4

登録有名文化財、なごみの塔。高さ6mの小さな丘の上にある、高さ4.5mの小さな塔だ。

こうして見るとコンクリの遊具のようにも見えてしまうが、れっきとした重要建造物なのだ。最初にもらった地図にも目立つように表記してあったよな。ここに登らねば。

 

ただしご覧の通り会談も狭そうだし上の展望台も狭そうだ。2人くらいずつしか登れない。あなたも街中で電柱の整備とかしているゴンドラ付きのトラックを見たことがあるかと思うが、あれと同じがもう少し小さいくらいだと思っていただきたい。

 

竹富の集落5

これがなごみの塔の建つ「赤山公園」の丘からの眺め。

先客のカップルが塔に登っているので、彼らが下りてくるのを虎視眈々と待ち受けながら撮影した。この状態でもそこそこ眺めはいい。これから登る塔の上からの写真と見比べてみてね。

 

竹富の集落6

カップルと入れ違いに階段を上り始めた。

いやこれ階段じゃない。むしろハシゴだ。傾斜エグい。Wikipedia情報によれば幅約45cm・奥行き約16cm・段差が約35cmらしい。すさまじいな。前方に距離を稼ぐのよりも倍以上のペースで上方に距離をかせぐのだ。てゆーか奥行き16㎝だぜ。足を載せるスペースすらない。つま先でがんばれ、踏ん張れ。

 

竹富の集落6

登った。おぉー、気持ちがいい。塔の足元にいたときとは全然見通しが違う。集落全体を見渡すことができる。それもそのはず、このなごみの塔は島内で最も高い場所の1つなのだ。

彼方にずーっと水平線が続いているの、わかるかな?特に右端あたりの海の色がとってもきれいだよね。

 

竹富の集落7

反対側の眺めはこんな感じ。こことほぼ同じ高さの堅牢な建物がある。これ、最終章で大事な存在になってくるから覚えておいてほしい。

 

 

竹富島に通っていた時代

 

普段は本土を車で走り回ることをメインの活動としていた僕だが、2年連続で竹富島を訪問したこともあった。一時期僕に八重山諸島ブームが来ていたのだ。

 

箱庭的な集落が好き1

竹富島の集落を巡っていると、なんだかテーマパークに来たような気分になる。限られたエリアに僕の日常とは違う風景がギュッとコンパクトに形成されているのだ。まさにそれってテーマパークであろう。

 

「観光化に力を入れすぎて、これはかつての八重山の原風景ではない」という声も耳にするが、それでも竹富島がこのような景色を保つには相当な努力をしていることだろう。何より僕はこれ以外の竹富島を知らないので何とも言えない。

 

箱庭的な集落が好き2

集落の中は、ときどき観光客を乗せた水牛車が通る。僕は乗ったことないが、これを眺めるのも楽しい。急に立ち止まって用を足したりするし。すぐにスタッフさんが清掃するけど。

 

箱庭的な集落が好き3

ただ、旅人たちの間でよく聞く話として、「夜になると観光客がほとんどいなくなるのですごく静か。住民と宿泊者だけの、かつてに近い竹富島の雰囲気を味わえる。」という。

僕は宿泊もしたことがないが、いつかそういう光景も体験したいと思っているよ。

 

箱庭的な集落が好き4

では、今回もなごみの塔に行ってみよう。

塔では数人の中年女性が「怖い!登れない!」とテンパっていた。階段の奥行きが足のサイズよりずっと狭い上、傾斜60度という殺人的な角度だもんな、中高年にはちょっと危険なケースもあるかもしれない。

おばさま方は展望台まで登れたのは1人、あとは途中でリタイアしていた。登頂率、低。よしっ、ここは僕の番だな。

 

箱庭的な集落が好き5

逆光になってしまったが、前回と同じ構図だ。赤い瓦屋根の集落が相変わらず素敵だ。

下ではおばさま方が「やっぱ若い人はすごいわね」みたいな顔で僕を見上げている。そんなおばさま方を得意顔で見下ろした。

…まぁ実はちょっと息が切れていますけどね。

 

箱庭的な集落が好き6

赤い大きな屋根の施設は「軒下のゆんたく休み所」だな。無料でお茶などふるまわれていた記憶がある。あまり直射日光を遮ることができる場所のないこの島において、ありがたいスポットだよね。

 

箱庭的な集落が好き7

これはまた別の年の風景。透き通るような青空が印象的な日であった。

八重山そばと共にオリオンビールをグイっと飲むと、それだけで満ち足りて天国にいるような気持ちになるぜ。

日常のコンクリートジャングルとか、ノルマとかタスクとかどうでもよくなる。そんな時間がひつようなのだ、人生には。

 

箱庭的な集落が好き8

日頃はギュウギュウの電車に乗っている。だけどもここではギュウギュウの水牛車に乗りたくなる。

混雑などでノロノロと徐行運転をする電車にはイラっと来るが、ゆったり歩いていきなり立ち止まる水牛車には「いいぞ、もっとやれ」とすら思う。なんだこのギャップ。

 

箱庭的な集落が好き9

再びなごみの塔にやってきた。

なごみの塔って、正面から見るとマジに柱とゴンドラ部分だけなのね。最低限のシンプルな要素しかない展望台だ。そんなところが好き。

 

箱庭的な集落が好き10

塔はファミリーやカップルが代わる代わる登って楽しんでいる。

それを見て「今回は登らなくっていいや」って思った。もともとなおみの塔まで来る予定もなかったのだ。もっとマイナーなところを中心に巡っていたのだ。

だけども目についてしまったからには来るしかないって感じで、丘まで来たのだ。だってなんだかんだで魅力的なスポットなんだもん。

 

箱庭的な集落が好き11

塔の足元にて、所持しているカメラのジオラマモードを活用して撮影してみた。箱庭のようなこの集落にはジオラマモードが合うと思ったのだ。

まるで物語の中に入り込んだような図になった。さて、これからの僕はどんな物語を紡いでいこうかな…。

 

 

なごみの塔に登れた最後

 

2016年から2024年現在に至るまで登れなくなってしまったなごみの塔。この章では最後の僕が登ったときの話をしよう。

 

最後の思い出1

なんだかかつてと比べて人気も上がって混雑してきたな、と感じるなごみの塔。

とりあえずこの角度を見てほしい。登っている瞬間の人もいるので過去一傾斜具合がわかりやすい写真になったでしょ。先頭の人、あきらかに腰が引けているでしょ。

 

最後の思い出2

このときには階段のアホみたいな斜度しか意識していなかったが、今から振り返るとずいぶんと老朽化していたんだなぁ…。

ところどころに無数のヒビや傷がある。60数年前のコンクリートだもん、そして海の近くで風雨にさらされていたんだもん、そりゃ痛むよね。

 

最後の思い出3

展望台の上から見下ろした図がこれだ。階段ではなくハシゴ、って最初に形容した理由がよくわかるでしょ。あと、僕の足元もかなりヒビ割れているのがわかる。

 

たった数mの高さなのに「行ってよかった日本の展望スポット 2014」の第18位という驚異の結果を残したなごみの塔。2016年から老朽化のために立入禁止となった。

 

最後の思い出4

2019年からは補修工事を行い、ヒビを埋めたり表面を塗り直したり、なんと階段や登頂の展望スペースに金属製の手すりまでつけた。

そんな工事が2020年に終わったのだが、「ぞろぞろと一般客がひっきりなしに上り下りできるような利用形態は好ましくない」との判断となり、現在も立入禁止の状態だそうだ。

 

最後の思い出5

もともとなごみの塔は観光スポットではなく、集落のみんなに高い所から素早く情報伝達できるように造られたそうだ。つまりは小学校の朝礼台みたいなもんか。

しかも重要文化財だから、立入禁止になっても文句は言えないし言いたくもない。だけども残念ではある。

 

最後の思い出6

最初の章にも出てきたこの建物。

個人商店ではあるのだが、今は100円を払うことでここの屋上から集落を眺望することができ、赤瓦の集落を上から見られるということについては代替案が取られている。「赤山展望台」と名付けられたそうだ。これだけでもありがたいね。

 

最後の思い出7

最近僕は訪れていない竹富島。だけども小さな絶景をあそこから見た記憶は忘れない。

次にまた行ける機会を楽しみにしているよ。

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: なごみの塔
  • 住所: 沖縄県八重山郡竹富町竹富
  • 料金: 無料
  • 駐車場: なし
  • 時間: 特になし(立入りは禁止)

 

No.388【徳島県】バリケード感の強いレトロ自販機コーナー「横田」!閉鎖が悲しいな…!

昨今のレトロブームでTVのバラエティ番組やニュース番組、はたまたドラマにも登場したりしているレトロ自販機。

そこで人気に火が付き、連日のように人が詰めかけるお店もあるそうだ。

 

その裏で、ひっそりと永年営業していたお店がひっそりと消えていることもある。

昭和時代から自販機営業をしていたお店は、オーナーさんも自販機も高齢だったりするのだ。オーナーさんが倒れるのが先か、それとも自販機が来れれるのが先か…。

なんとも切ない二者択一ではあるが、目を背けるわけにはいかない現実だったりする。

 

 

さて、今回ご紹介したいのは「横田自販機コーナー」だ。

残念ながら2020年にレトロ自販機は非稼働となってしまったようだが、200円でこのモリモリなうどんを食べられたんだぜ。マジ誰にも教えたくない自販機店であったが、閉業なのでもう紹介しちゃうわ。あぁ、泣ける。

 

 

まるで工場裏の秘密基地のよう

 

その自販機コーナーは、四国の東海岸を縦断する国道55号のすぐ近くにあるという。

盲点であった。僕はかつて何度も何度もこの国道55号を走っている。特にこの自販機コーナーの近くから四国最東端の「蒲生田岬」にアプローチする道が延びているので、僕としては思い出深いエリアだったのだ。

 

工場地帯の自販機コーナー1

国道を反れて、ほんの200mほどなのだ。されども200m。観光客が足を踏み入れることはまずないであろう工場地帯。

そして情報も充分にないスポットなのでこの200mのゴールを発見できずに付近をグルグル5分ほど走り回った。愛車のHUMMER_H3がこの小さな工場地帯を延々周っている光景は異様だったかもしれぬ。

 

だけどもな、道を聞こうにも人がいないのだ。工場は稼働している気配があるが、道を人が歩いていたりはしない。自力で頑張れってこった。

 

工場地帯の自販機コーナー2

…あぁ!見つけたぜ!きっとあそこだ!!

あなたは上の写真を見て「その冷蔵庫が数台ミッチリと詰め込まれた小屋が該当の自販機コーナーなの??」って渋い顔をしたかもしれない。

違うんだ、僕が見ているのはそこじゃない。僕はあなたよりももっと未来を(先を)見ている。

 

工場地帯の自販機コーナー3

ここだここ。工場群が立ち並ぶ中でも裏路地にあたるような界隈にたたずむ、"小屋"という以外に当てはまる単語がちょっと思い浮かばないようなスポット。

 

上の写真の通り普通に道路を車で走っていたらほとんど内部は見えないので自販機コーナーかどうかも気付きづらい。徐行しながら小屋の前を通過する瞬間に「ぐいっ」と首を左に向けてようやく確信が得られるのだ。

 

工場群の自販機コーナー4

だがしかし、奥は深いし暗いぞ!でもそんな中でも最奥にレトロ麺類自販機が鎮座しているのがチラッと見えたぞ!なんだか秘密基地っぽいテイストだなぁ、ワクワク…!

 

専用の駐車場はないのかな…?少し先の工場地帯の空き地に停めさせてもらい、歩いて戻ってきた。さぁさぁ、レトロ自販機のうどんでのランチタイムだ!

 

 

200円のうどんで得られる幸福よ

 

改めて自販機小屋の内部を観察してみよう。

 

自販機小屋1

うん、すっごいの。バリケード感がすっごいの。

手前の日向の部分が白飛びするくらいまで調整しないと、小屋の奥の自販機がまともに撮影できない。ごらんなさい、手前の小さな四角いテーブルはもう完全に真っ白に写ってしまっているわ。

 

自販機小屋2

そんでな、マニアが泣いて喜ぶレトロな富士電機製の麺類自販機が一番奥の一番端、暗闇の中にあり、しかも手前側の自販機に少し隠されてしまうようなポジショニングなのだ。

なんて控えめなんだ。こんな自己主張しないレトロ自販機はあまり出会ったことないぞ。だからここにレトロ自販機があるって知らないと、100%素通りするぞ。穴場OF穴場。

 

それと、麺類自販機の2つ右にはビターな色合いのドリンク自販機がある。コーヒーなどの飲料自販機なのだが、それはまた後述しようね。

 

自販機小屋3

最奥にあるレトロ麺類自販機の前に立った。きゃー、暗いわー。でも落ち着くわー。

まるでバリケードの奥のような感じで落ち着く。きっと夏でも涼しい。まぁ今は真冬だから普通に寒いんだけどな。

 

自販機小屋4

メニューは2種類で天ぷらうどんときつねうどん。そしてどちらも200円だ。

安ッ!!僕は2024年現在において全国ほぼすべてのレトロ麺類自販機を巡っているが、ここは最安だよ。しかもWebで調べてみると2020年の営業終了まで値上げしていなかったらしい。神だ。お商売大丈夫だったのかな?儲けは出ていたのかな?

 

手描きの貼り紙が掲示してある。

『毎度ありがとうございます 時々出ないことがあります 〇〇-〇〇までお電話くださいませ 夜は売切れにさせていただきます よろしくお願い申し上げます』

 

これだけでさ、いろんなことがわかるよね。朝と夕方の最低2回はオーナーさんがチェックに来ているだろうこと。おそらく毎朝うどんを補充していること。文面の冒頭と末尾から、丁寧なオーナーさんだということも窺い知れる。

 

天ぷらうどん1

だからな、「自販機だから」・「200円だから」とあなどっちゃいけないレベルだってことは、もう僕本能で察知していたよ。襟を正して天ぷらうどんのボタンを押したよ。

そしたらごらんなさいな、すっげーもんが自販機から誕生なさったよ。麺がモリモリではないか。なんだこのハッピーヌードル。

 

天ぷらうどん2

天ぷらは麺の下に潜んでいる。気をつけて天地返しをすると、この通りだ。ふっこふこのかき揚げが登場した。だしを吸い込んでうまそうなことこの上ない。

 

この天ぷら、小エビがいっぱい入っていて芳ばしくておいしい。うどんやだしはさすが四国って感じのレベルだ。

僕はここまで四国を一周ドライブしており、ほぼ毎日2回ずつうどんを食べてきた。今回はその最後のうどんに当たるわけだが、グランドフィナーレを飾るにふさわしいうどんだ。写真を見ただけでも生きの良さが伝わるよね、これ。

 

天ぷらうどん3

そんでな、この最高のうどんに拍車をかけてくれているのがこのロケーションなのである。

自販機コーナー内には、さっき白飛びした写真でお見せした通りテーブル兼イスみたいな設備がある。そこでうどんを食べたのだ。


薄暗い自販機コーナーではあるがこのミニテーブルには日が当たっており、そこから正面に立ちはだかる、これまたちょっとレトロな工場風景を見ながらのうどんは旅情をくすぐってくれる。

洞窟の入口、冬の日だまりで食べたうどん、って感じだ。あぁ、うまかったなぁ…。

 

 

オーナーさん亡くなりうどんも無くなり

 

ここね、2020年に高齢のオーナーさんが体調を崩してレトロ麺類自販機の稼働を停止させることになり、2021年の暮れにオーナーさんが亡くなってしまったそうなのだ。残念すぎる。

僕は1度きりの訪問で終わってしまった。また行きたかった。次はきつねうどんを食べたかった。

 

飲料自販機1

さっき触れたレトロな飲料自販機も、訪問時は故障していた。故障したままオーナーさんは亡くなってしまったようだ。

この自販機も富士電機製らしい。カップ飲料の自販機だな、これ。今まで食品自販機ほどには意識していなかったが、他で見て来た記憶がない。これもかなりレアなのかもしれないな。

 

飲料自販機2

スタンダードコーヒー・アメリカンタイプコーヒー・ココア・紅茶、そして飛び道具的にいきなり生姜湯が出てきたりする。生姜湯だけ力強い明朝体で書かれている。

あとはブラジオーレ。何ブラジオーレって。人間界に来てそれなりに長いけど、初めて聞いた。価格は驚きの全商品50円。

 

飲料自販機3

お金入れてどこも動かなくって、故障だと気づいた。珍しくペットボトルや缶コーヒー以外に興味を示したのに、残念だ。

 

閑話休題

2024年、僕はWebからこの自販機コーナーのことを調べた。2020年2月3日に体調不良で麺類自販機の運営を継続することが難しい旨の貼り紙が、自販機に貼られたんだね。

オーナーさんご夫婦共に体調が悪くなってしまったそうだ。

『いつもご贔屓いただきまして誠にありがとうございます。』から始まり、『恐れ入りますが何卒よろしくお願い申し上げます。』で終わり、相変わらずとても丁寧な文面であった。

 

その後に復活することなく、オーナーさんは亡くなった。

でもレトロ自販機は2024年現在もあのバリケードの奥でひっそりとたたずんでいる。

 

 

もうあのおいしいうどんは食べられないが、オーナーさん直筆の貼り紙がついたレトロ自販機がまだ僕らも会いに行けるのだ。

いつの日か、後を継ぐ人ができて復活してくれるといいけどなぁ。その日まで、静かに暗がりで眠っていてほしい。

 

以上、日本7周目を走YAMAでした。

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 横田自販機コーナー
  • 住所: 徳島県阿南市橘町豊浜
  • 料金: 天ぷらうどん¥200他
  • 駐車場: おそらく無し
  • 時間: 自販機コーナー自体は24時間営業

 

No.387【沖縄県】与那国島で、在来種の与那国馬に乗る!目指すはジャングルの「人面岩」!

日本最西端の与那国島には、"与那国馬"という在来種の馬が100頭ほどいて、体験乗馬ができる施設がある。

体験乗馬というと、スタッフさんが手綱を握りながら牧場内をグルリと一周散歩するだけ…とかを想像するかもしれないけど、違うんだ。1人で馬を操り、公道を走ったり山間部を山登りのようにザクザク進むのだ。馬に乗りながら。

 

 

正直乗馬には全然興味のない僕ではあったが、これはとても面白かった。

また与那国島に行ったらぜひ体験したいと思っているほどだ。

 

一昔前の体験談ではあるが、登場するスポット、スタッフさん、馬は2024年現在も現役だ。コースや料金など今は多少変化はあるかもしれないが、興奮は今もきっと変わりない…っていうかむしろレベルアップしているに違いない。

それではお聞きいただこうか。僕と与那国馬の「フジコ」とのドタバタ物語。

 

 

与那国馬の乗馬は楽しいらしい

 

宿で知り合った「OR君」と飲みながら、「与那国馬にでも乗ってみようか」という話をした。

宿のオーナーの「まなみさん」も「与那国に来たなら是非乗って行って。最初はあまり興味を持っていない人でも、乗ったらすごく面白がってリピーターになったりするんだよ。」って言っている。

 

宿でのゆんたく1

うん、僕も小さいころは牧場とかでちょっと乗ったことがあるよ。係りの人に引いて
もらいながら100mくらい乗るヤツね。

アレは子供ながらに「なんだか物足りない…!!」と思っていた。

 

与那国馬の乗馬がそうではないのなら、大人でも楽しめるというのなら、記念に乗ってみようと思うのだ。

 

宿でのゆんたく2

積極的に遊ばないと、与那国島での時間を持て余してしまうからね。なにせたっぷりと滞在日数を確保しているから。

そして何事もチャレンジだ。固定観点なんてつまらんもの、旅では捨ててしまえと思っている。

そう語り、OR君とアルコール60度の泡盛をグビグビ飲んだ。

 

…翌日の朝である。

天気は曇りときどき雨。そして強風。

石垣島」からの通称"ゲロ船"が欠航になったとの情報がこの宿にも入ってきていたよ。普段でもゲロ船なのだから、強風の日は血ヘドまで吐くかもね。欠航正解。

 

与那国馬の予約をしよう

食堂の脇の壁には、島のいろいろな施設や食事処のチラシが貼り付けてある。その中の与那国馬乗馬体験の施設に電話をしてみた。

本当なら昼前後で予約したかったんだけど「16:00からじゃないとちょっと厳しい」って言われたので、16:00にした。

 

今は2月。本州とかであれば17:00には薄暗くなるんだけど、日本の最西端である与那国島は19:00くらいまで明るいからなんとかなるのであろう。

昨夜知り合ったOR君と共に参加してみることにした。OR君とは15:30にこの宿で待ち合わせをすることにし、それぞれの観光をスタートさせた。

 

 

まずは構内学習やってみよう

 

15:20に宿に戻ると、OR君はすでに戻ってきていた。昨日に続いて今日も自転車で島を一周したと言っていた。マジか。どんだけ元気なのか。

 

不穏な天気の中

歓談しているうちに、時刻は15:40。なんだか今にも雨の降りそうな天気。すげー不安だけど、じゃあ今から乗馬施設に行ってみる?

OR君と車に乗り込み、僕の運転で乗馬施設の人との待ち合わせポイントである「アヤミハビル館」を目指す。

 

アヤミハビル館の駐車場から乗馬施設に電話する。「今行きます」と言われたけど、待っているうちに結構雨が降ってきたよ。不安不安。

3分ほどで乗馬施設の軽トラが到着。乗馬トレーナーの"アニナグ"さんにご挨拶。そのまま軽トラに着いて車を走らせること数100mで乗馬施設に到着した。

 

風牧場1

ここが「与那国馬 風牧場」だ。"風"って書いて"う"って読むらしい。つまりは"うぼくじょう"だ。

幸い雨はさっきの一瞬だけで、今はほぼ止んでいる状態。良かった。ギリギリセーフ。

 

風牧場2

与那国馬とご対面。コミカルな牧場だ。乗馬施設だけども建物は無く、南国植物が屋根代わりになっている切り株のテーブルで受付用紙を記入した。こういう雰囲気、沖縄っぽくてとても好き。


与那国馬とは、日本在来種の与那国島だけに生息する小型の馬。カテゴリとしてはポニーに分類されるらしい。

古くから島の農耕や運搬に使われ、島の暮らしになくてはならない存在だったん
だって。一度は文明の発達で役目を失って激減し、60頭を切ったこともあったそうだ。しかし保護活動のおかげで今は110頭くらいまで回復してきているよ。天然記念物にもなっているよ。

 

風牧場3

まずは自分とペアになる馬とのご対面。僕の相棒はフジコっていう牝馬。ご挨拶として、まずは全身ブラッシングしてあげるのだ。

なんかゼンマイみたいな器具で体をブラッシングする。気持ちいいのか、これ。

 

このあと遠方まで馬と一緒にお出かけするコースも多数あるけど、この基本の行程は必ず実施しないとダメなんだって。挨拶してブラッシングして、構内をちゃんと歩けるようになってからの路上講習。運転免許と一緒だ。

 

それから引き馬の練習。

それぞれの手で手綱のどこを持つのか、どのように方向転換するのか、馬への声掛けの方法などを習った。うん、なんとかフジコも着いてきてくれているぞ。

 

風牧場4

次に鞍を設置。実際に馬の背中に乗ってみる。

小さめの馬なので片方の鐙(あぶみ)に足をかけた状態から地面から直接乗るんだけど、鐙に体重をかけると馬にも負担なので片方の足で地面を思いっきり蹴ってジャンプするように跨るそうなのだ。

 

風牧場5

この姿勢から跨るのだ。まずはアニナグさんがお手本を見せてくれた。

なるほど、チビで短足の僕にもできるだろうか…。ちょっとドキドキしたが無事に馬上に乗ることができ、フジコも無表情だったのでたぶん合格。

 

手綱はあらかじめ馬の首の下でクロスしておくんだそうで、これは与那国馬独特の乗り
方なんだって。

その状態で手綱を左右どちらかに引っ張ることで、それが首の下に伝わってハンドル替わりになるんだそうだ。

 

それと発進方法、停止方法とかをいろいろ教わる。発進は「ハイッ!」って言って、停止は「ドウッ!」。あとは加速や減速も。うん、なんとか頭では理解した。

 

風牧場6

そして実践。まずは牧場内の敷地でOR君とそれぞれの馬を引き馬で歩かせた。

発進・停止は何とかできるけど、方向転換が…。馬の意志と反発しててんやわんやですよ、あなた。

アニナグさんに「まだフジコにナメられてますね。」って言われた。おぉ!?オメー、フジコ、ナメとんのか、コルァ!

 

てゆーかフジコがオテンバ過ぎなの、コイツ。

急に腹減ったみたいで盛り草エリアに突っ込んで行って、アニナグさんに「仕事中に何食ってんだコラーッ!」ってスゲー怒られていた。

その後に完全スネちゃったみたいで、「ハイッ!」って言っても全然動かなくなったりするし。メンドくせーヤツだ…。

 

アニナグさんは「馬は人の感情がわかるから、威厳をもって接すれば動くはず」って
言ってた。OR君はそこそこうまく馬をコントロールしていた。僕はイマイチだ。

僕には威厳が不足している。うん、知ってる。

 

風牧場7

30分ほどでここまでの基礎講習が終了。

次は希望者は別コースで路上に出ることができる。行くよ、僕は行くよ。国家らが本番よ。

OR君は悩んだ挙句、ここまでで終了することを選択した。路上だと料金が1万を超えるからね、ちょっと痛いらしい。でもここでしかできない体験が待っているぜ、きっと。

 

OR君を見送った後、どこに行こうかとアニナグさんと話し合う。

海だったり山だったりいろんなコースがあるらしいが、この天気なので海や眺望のいい場所はあまり効果を発揮しないよね…。
そんなことを言うと、アニナグさんが「じゃあ人面岩コースにしましょう。ジャングルの中を馬で歩くコースですよ。」と提案してくれた。

 

おぉ、なんだそれ!楽しそうだ!

そんなわけで与那国のミステリースポット、「人面岩」に向かって出発なのだ!!

 

 

馬は車道も山道も構わず進む

 

公道に出た。ガチで公道だぞ、車道だぞ。しかもアニナグさんに手綱を持ってもらっているわけでもなく、1人で馬に乗っている。

いわぁワクワクだわこれ。初めて車で公道に出たときの感覚だわ。

 

馬との散歩1

ところで牧場からはフジコの旦那の寂しそうな鳴き声が響いててさ、フジコも気が気でないらしく、なかなか進まねーの。愛だね。まぁでもアニナグさんに発破かけられて、なんとかペースを取り戻した。

フジコはなかなか仕事に火がつくのが遅いタイプだそうですぜ。なにそれ僕と一緒。親近感。

 

アヤミハビル館の前を通り、山間部の水田の脇とか大きい牧場を経由して島の南部に向かう。もうすぐ水田に水を入れ始めるんだと、アニナグさんが教えてくれた。2月なのにもう!?早いなー。


宇部良岳」の横を通る。公道に出て30分ほどで島の南端にある「新川鼻自然遊歩道」に入った。

来たっ!山道!すごい登り坂!ここ写真がなくって残念なんだけど、あなたの家の近所の山のハイキングコースとかイメージしておいてほしい。

 

登り坂だし階段もあるし、山の中で草木が生い茂っている。むしろジャングルだ。そこを馬に乗って突破していくのだ。楽しすぎる。

南国植物の葉が歩道にまではみ出ているからさ、体中にペチペチ当たる。それはまだいいけど木立もあるからね、馬の背中に乗りつつもテクニカルに回避しないとモロにヒットして落馬ですわ。

 

17:20ごろ、「新川鼻自然遊歩道展望台」に到着した。

 

馬との散歩2

ジャングルの中のときは頭上が木々で気にならなかったけど、開けたところでは雨が気になる。少しまた降り出したのだ。そこそこ寒い。

展望所はしばらく数前の台風の被害で、柵とか結構ボコボコになっている。ロープが張られているが、なかなかにスリリングな状態になってしまっていた。

 

馬との散歩3

東の彼方には昨日車道から眺めた与那国島のシンボルの1つ、「立神岩」が見えた。なるほどね。これでようやく自分がいる場所がなんとなく理解できた。

 

ここいらは島の最南端の「新川鼻」っていう岬の近く。岬の先端までは道が無いので立つことができないんだけどね。

そして、この岬の南側数100mのところの海底には有名な「海底遺跡」が沈んでいるのだよ。海底遺跡も与那国に来たからには見ておきたいスポットの1つだ。明日に行こうかな。

 

馬との散歩2

ここで我々も休憩だし、フジコも休憩だ。フジコ、早速草を食べ始めた。

アニナグさんが「こっちに秘密の絶景スポットがあるんだよ」と、柵の向こう側に行
く。いや、正確には柵は壊れちゃってるから、そのまま素通りなんだけど。

マジか、いいのか?怖くないのか??

 

馬との散歩3

断崖のギリギリまで行くと、真下は数10mの絶壁であった。

そして真下の世界の一面に深いジャングルが広がっている。

 

馬との散歩4

「いつもはもっとギリギリまで行ったりするんだけど、今日はここが限界。雨で濡れ
ていて滑りやすいので落ちないようにね。」と言われる。確かに落ちたら死ぬ。

ビビっているので写真もそりゃブレますってことです。

 

馬との散歩5

立神岩とは反対側の西側には綺麗なストライプに入った断崖の地層が見えている。なんてワイルドな断崖なのだろう。

沖縄の離島というと真っ白な砂浜の広がるなだらかな島を想像するかもしれないけど、与那国島は切り立ったテーブル状の島なんだよ。基本海岸線は全部ワイルド。

 

馬との散歩6

では、ボロッボロの展望台を出発。ここからは本格的なジャングルだ。

 

ジャングルの中の人面岩

 

さらに道は細くなるし、アップダウンもキツくなる。

登りは結構簡単だけど、下りってちょっと怖い。すごい下を見るような感じになるから
思いっきり重心を後ろに下げないといけないし。だけどもフジコは器用に坂だろうと階段だろうと上り下りしていく。

 

密林を進む1

あぁここからはね、乗馬中のメインのカメラマンはアニナグさん。「乗りながらの撮影はシンドいエリアなので、自分が撮影しますよ。」って言ってくれたのでカメラを預けた。

アニナグさんは前を進みながらもときどき器用に振り返って僕を撮影してくれた。

 

密林を進む2

どうやら今回の目的地である人面岩のすぐ近くまできたらしい。馬たちを遊歩道で待機させ、最後の10mほどは急な斜面を自分の足で登るそうだ。

 

辿り着いたのは、山の中なのにどこか開けたような雰囲気を持つ不思議な空間。2~3mほどの巨岩がその空間にいくつかゴロゴロしています。

「さぁ、どれが人面岩でしょうか?」とアニナグさんに聞かれ、辺りを見渡す。…あ、わかった。これだね?

 

密林を進む3

古来からここには拝所があったとの伝承があった。

その場所で、何かの因果か2002年に発見されたこの奇岩。近年まで深い薮に覆われていたので、見つかってからまだ20年ほどの比較的新しいスポットなのだ。

 

密林を進む4

高さは2m・幅と奥行きは3mほどあるという。天然にしてはあまりにいいポジションに舌となる岩があるねぇ。まさに人面だ。

人によっては明らかにパワーを感じたりするのだとアニナグさんが言っていた。

与那国島を舞台としたドラマ「Dr.コトー」では、ここは「志木那島神社」として登場したそうだよ。

 

密林を進む5

 

さぁ出発だ。再び馬にまたがり、先へと進む。

新川鼻自然遊歩道は周遊コースになっているので、元来た道を戻らずに先へ先へと進むと最初の車道に戻れるんだって。


…と思ったら、いきなりフジコがストップしちゃった。

「ハイッ!」って言ってもビクともしねー。かといって用をたしているわけでもねー。どうした??


先を行っていたアニナグさんが「やっぱりな」って戻ってきた。

「ほら、ここは人面岩のちょうど真下くらいに当たるんだよ。そしてなぜかフジコは必
ずここに来ると怖がって歩かなくなっちゃうんだよ。これは動物的なカンなのかな?このこと、まなみさんに聞いてなかった?」

えぇーっ?そうなんだ。なんか僕まで怖くなるぜ。この「人面岩」直下の10数mのエリアにいったい何があるんだろうかね?

 

アニナグさんが自身の馬上から手綱を取ってフジコを歩かせようとしてくれたけど、それでもフジコが動かなかったので、一度降りて引き馬しながらナゾのエリアを突破した。そしたらフジコ、急に元気になった。

 

密林を進む6

いやー、面白いね。乗馬、面白い。

これが一般的な牧場で、その場内での乗馬体験であれば、ここまでの興奮は無かっただろう。お出かけして目的地があって、これだけの冒険があるからこそ盛り上がるのかな。

 

あいにくの天気ではあるけれど、雨に濡れた密林、そして夕闇の迫ってくる中の薄暗いドキドキ感。これは快晴の日中では味わえない感覚だよね。

考え様によっては、この天気もラッキーなのだ。

 

密林を進む7

ぶわっは!!フジコ、おまえわざと木々が生い茂っているところに行っただろ!おもくそ葉っぱにぶつかったわ!!

左右への方向転換の方法を習っているし僕も一応フジコに指示は送っているけど、たぶんあんまり僕の言うことを聞いていない。「うるせーな、私の歩きたいところに従え」か、「指示されなくてもわかってるわ」のどっちかだと思う。

 

密林を進む8

薄暗い森の中をついに脱出。アスファルトの車道へと帰還した。ここから30分くらいで牧場だったかな。

 

するとアニナグさんが「じゃあ、ここからは駆け足で行きますか。」って提案してきた。そして駆け足の方法を教えてくれた。

2頭でダッシュ。ウゲェェ、すげー揺れるー!イテテ、イテ。僕のまろやかなお尻が大変なことに!

 

牧場へ駆け足で

あぁ、でも楽しいなぁ。なんて楽しいのだろう。

雨上がりの夕暮れの道、2頭の馬が「パカッパカッ」と蹄の音を響かせている。それだけで最高なのだ。

写真はマスキングしちゃっているけど、上の写真の僕の表情は、今日一番のものだったよ。

 

お尻へのインパクトが大きいので何度か小休止しなららも、ダッシュで牧場へと帰還した。およそ2時間の冒険だった。充実した2時間だった。

OR君に送迎依頼の電話をし、それを待ちながらフジコのブラッシングをして乗馬体験プログラムは終了である。フジコ、ありがとね。

 

間もなくOR君が到着。アニナグさんとフジコとお別れだ。

ここは、夏場になると与那国馬と一緒に海に突入するコースもあるんだって。鞍を外した裸馬と一緒に波打ち際を走ったり、泳ぐ馬の尻尾をつかんで一緒に泳いだりもするらしい。
すごい楽しそうだ。またいつか機会があれば。

 

今日のお酒はきっとうまいであろう。

夕暮れの空の下、ハンドルを握るOR君にその後の出来事を話しながら、車はゆっくり集落に向かい走って行った…。

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 与那国馬 風牧場
  • 住所: 沖縄県八重山郡与那国町与那国3500
  • 料金: 人面岩コース¥11000他
  • 駐車場: あり
  • 時間: 8:00~日没ごろ

 

No.386【沖縄県】人口18人の小さな「大神島」!!神の住まう島でご飯を食べ展望台に登る!

神様の住む島と言われる、「大神島」という島がある。集落や歩道以外の部分の多くは聖域なのだそうだ。2024年現在は島民がわずか18人と言われる小さな小さな島だ。

 

"ウヤガン"っていう秘祭があって、観光客はもちろんこと島民も見ることができない謎に満ちた祭りなのだが、それもメインを担当する女性が高齢となったために2023年を最後に廃止となるか…という状況なのだそうだ。

 

 

そんな島に、僕は2023年に上陸している。

ウヤガン最後の年と言われているから行ったとかではなく、この日はWBCの決勝で日本が優勝して国中が歓喜に沸いたのだがそれを祝いに行ったわけでもなく、なんかフラリと気が向いたので海を渡っただけだ。

 

 

僕は宮古島の島尻港から小さな船に乗る。大神島に向けて。

そして大神島では1軒しかない食堂でご飯を食べ、ウヤガンの拝所を経由して島の最高所の展望台から海を見た。

そんな昨年の思い出をちょっと語らせていただきたい。

 

 

350円で神の島に上陸する

 

小さなフェリーで大神島に渡る。1日4往復のみだ。ちなみに僕は1便に乗りたかったのに時間を間違えて乗り遅れたりしてな、2便で渡るのだよ。

大神島の神々は、そんな僕のおちゃめな部分もきっと包み込んでくれるであろう。

 

神の島へ1

なんか空、じゃっかん曇っているけども気にしない。未知なる島へのワクワクで胸がいっぱいなのだ。

僕ったら日本7周もドライブしているから陸地は大体どこも行ったことあるけどね、島は車と一緒に行きにくいところもあるからどうしても網羅しきれていないの。逆に言うとまだまだ人生楽しみがあるの。

 

神の島へ2

ぶっちゃけこれはフェリーの上ではなくって宮古島からズームで撮影したんだけども、大神島だ。ゆるやかな三角形を描く島。

上の写真では見づらいけども、左の方の浅瀬にはゴロゴロと大きな岩が転がっていて独特の景観。

 

神の島へ3

これはフェリーのデッキから後ろを振り返った図。宮古島が平たく伸びている。

ところで航行時間はたったの15分なんだよ。料金は片道300円ちょい。神秘の島ではあるが、宮古島から行こうと思えばすんごくお手軽なのだ。

 

神の島へ4

島が近づいてきた。例のゴロ岩をズームした。そしたらブレたけどな。まぁあのあたりは後で歩いて行って紹介するから今は触り程度と思っていただきたい。

 

神の島へ5

ずっとデッキでハイテンションだったのだが、大神島に着岸した際にせっかくなので船内の客席も覗いてみたよ。

なんかみんな一心不乱にスマホを眺めていた。「せっかくだからスマホじゃなくって海を見ろよ!」って思ったが、実はこのときみんなWBCの決勝戦を見ていたんだな。なら許す。僕、そういうの疎いから知らなかった。

 

神の島へ6

はい、これが僕の乗ってきた船。名前は"ウカンかりゆす"。全然意味が分からないレベルの船名だが、ウカンは大神でかりゆすはめでたいっていうことだ。

2022年にできたばかりのピッカピカの船だよ。

 

神の島へ7

港の近くには入島料を入れるボックスがあり、わんちゃんが番をしていた。環境美化に使うらしい。盛り上がれよ神の島。僕も100円をチャリンと入れておいた。

 

神の島へ8

11:40に僕は2便で大神島に上陸した。3便の13:30発のフェリーで宮古島に戻ろうと思う。2時間弱、精一杯に島を満喫しようじゃないか。

 

 

島で唯一の「おぷゆう食堂」

 

まずはランチにしようと思う。

港の近くには島で唯一の民宿兼食堂の「おぷゆう食堂」がある。こういうお店は昼どきを外すとすぐに閉店してしまったりする。このチャンスを逃してはならない。

 

おぷゆう食堂1

港から島の中心部の高台へと心臓破りの坂道が続いている。その一番下に構えているのがおぷゆう食堂。早速入ってみよう。

おぷゆう食堂2

こんな感じの、テーブル席が4つほどの簡素な食堂ではある。しかしなんかお客さんたちがTVを見てニッコニコで盛り上がっている。何が起こったのだろうと僕もTVを見てみた。

 

おぷゆう食堂3

ついさっきWBCで日本がアメリカを破り、優勝したそうなのだ。胴上げしたりと選手たちが歓喜に沸いていた。お客さんも歓喜に沸いていた。

なるほど、僕は試合を1ミリも見ていないので感情をどう持っていけばわからないが、とにかくめでたいことだね。このあと大谷選手にインタビューが行われるという。誰、大谷って。

 

おぷゆう食堂4

野球はさておき、何を食べようか。名物はカーキだこ丼というタコのくんせいの丼なのだそうだ。しかし今の気分は麺類かなぁ。宮古そばにしようかねぇ。

お店の入口付近のレジにいるスタッフさんに声掛けしてオーダーする仕組みっぽい。

 

おぷゆう食堂5

三枚肉と波打ったかまぼこを使っている宮古そば。シンプルであっさりしたダシ。たまらん。なんだかんだで宮古諸島滞在中に自分で引いてしまうくらいの回数の宮古そばを食べたのだが、どこも個性があって楽しいしうまかったぜ。

そして付け合わせのサラダがジャッキジャキの食感でとても元気のいい植物。

 

おぷゆう食堂6

三枚肉!三枚肉!柔らかくてジューシー!!

この肉からいただいたエネルギーさえあれば、このあと島の最高所の展望スポットまでも余裕で行けると確信したよね、僕。まぁ実はこのあとヘロヘロにバテるんですけどね、僕。

おぷゆう食堂7

みんな僕の後ろにあるTVを見ている。僕だけみんなの方を眺めながらそばをすすっていて、なんかゴメン。でもそばうまい。

 

おぷゆう食堂8

そういえば、僕の視線の先には日用品が置かれた棚がある。

どうやらこのお店は商店も兼ねているのだろう。確か他にこの島には商店と言えるようなところもなかったしな。島の人々の支えになっているスポットなのだろうな。

 

おぷゆう食堂9

まだ熱気に満ちているTVの向こうと店内に別れを告げ、僕は島内散策に乗り出すことにした。

大丈夫、野球では盛り上がっていないけど、この島への期待で盛り上がってはいるのだから。

 

 

アンバランスな奇岩、ノッチ

 

まずはあなたにも島内のイメージを掴んでほしいから、おぷゆう食堂で撮影させてもらった島の全景写真を掲載するね。

 

島内MAP

こんな感じ。島を一周する道は存在してなくって、向かって左側は「ノッチ」、右側は「ンナパズ」までしか歩道がない。時間があれば両方の端っこを踏んでおきたいと思うよ。そして島の中心かつ最高所である「遠見台」にももちろん行く。

 

ノッチ1

最初にノッチに向かうことにした。港からは徒歩10分、そして道が平坦そうだからだ。食後にいきなり遠見台を目指したら、心臓破りの坂の途中で文字通り心臓がかわいそうなことになりかねないからな。

 

港付近には廃車がゴロゴロ。車を捨てるにはカーフェリーを使って宮古島に持っていかないとであろう。そんで廃車のためにそれだけ手間ヒマを掛ける余裕は作りづらい…って感じなのだろうな。

そして小さな小さな島ではあるが、やっぱ生活の足には車が必要だったりするのね。

 

ノッチ2

途中の歩道から眺めた宮古島方面の海が美しい。宮古島池間島を繋ぐ「池間大橋」も肉眼でちゃんと見えているんだよ。ちょいとズームしてみようか?

 

ノッチ3

はい、この通り。池間大橋、かっこいいぜ。

僕もさっきあそこをドライブしたりしたよ。フェリーの時間を間違えて、時間をつぶしている間にね。

 

ノッチ4

海沿いの歩道。大部分において左側が海であり、そこに大量の赤いカニがいたりして、僕は1人キャッキャとしながら写真を撮ったりしたんだけど、カニの写真を掲載しても別にアクセス数増えないだろうから辞める。

あと、海沿いに続く歩道の写真を掲載しようかとも思ったんだけど、海が全く写っていないけども一番青空が映える写真の方を選んで掲載する。

 

ノッチ5

ノッチと呼ばれる奇岩群がいよいよ見えてきた。すごいゴロゴロしている。

大昔に大神島が隆起した際に転がり落ちた大岩。それが果てしない歳月をかけて風や波に削られて、奇妙なかたちになっているのだ。

 

ノッチ6

なんかすごくいい…!

青い穏やかな海に、緑に覆われたかわいい岩がチョコンチョコンと並んでいる。カエルやヒヨコのような、小動物を思わせるような並びだ。

 

ノッチ7

歩道のすぐ脇、手の届きそうなところにも奇岩がたくさん出て来たぞ。足元が大きくえぐられてキノコのようなフォルムになっているのが特徴だ。

 

ノッチ8

こちらに対し何かを語りかけてくるような、そんな不思議な雰囲気がしませんかね?

周囲に誰もいない静かな空間に、現実離れしたかたちの岩の数々…。夢の中にいるような気持ちになる。

 

ノッチ8

誰もいない…って書いたばかりだけど、歩道のすぐ脇で大の字になっている若い女性観光客がいた。島からパワーをもらっているのだね。きっとここ、それだけのポテンシャルあるに違いない。

あと、ネコいた。島民の数倍のネコがいるらしいニャ。

 

ノッチ9

池間大橋と奇岩のコラボ。かっこよすぎるだろ、ここ…。

さて、港から歩くこと約10分。間もなく島の向かって左側の道の突き当りだ。

 

ノッチ10

歩道は突然に終焉を迎える。崩壊というかたちで。歩道を形成するコンクリートがバッキバキなのだ。えらいこっちゃ。

これね、以前島を一周する道を造ろうとしていたんだって。だけどもここまで工事したところで重機は壊れるわ、現場監督が不審死するわ、関係者が病気で続々と倒れるわ…と、不可解なことが相次いだんだって。

 

ノッチ11

だから「神様が辞めとけっていっているのかな…。」ってなって、ここで工事が中断したのだそうだ。

割れた道路を飛び越えながら、一番先まで行って海を眺めた。岩の隙間から見える海は青くって穏やかだった。

 

干潮の際にはジャブジャブと浅瀬を歩きながらも島一周できるという話も聞いたことはあるが、僕はそこまではしたくない。ここまでで充分だ。

 

ノッチ12

それでは、ここでUターンして港まで引き返そう。

次はメインとなる「遠見台」だ。

 

 

遠見台、トゥンバラまで登れ

 

港の目の前のおぷゆう食堂まで戻ってきた。時刻は12:40。帰りのフェリーの出航まであと50分。つまりは実質の行動時間は40分ってとこだろう。

大丈夫かな?間に合うかな?右側の道路の端っこであるンナパズまで行く時間はあるかな?

島内MAP

遠見台は島の人の言葉で"トゥンバラ"と呼ばれているらしい。

坂を上り、集落を抜け、神聖な祭りウヤガンの拝所を抜けて標高74.8mの島の山頂に造られた展望スポットなのだそうだ。

 

遠見台へ1

すごい登る。僕のふきらはぎ、かわいそうによぉ。普段全然使われていないのに、いきなりこんなにも酷使されてよぉ…。

ゼーゼーハーハー言いながら坂道を登る。こんな先に集落があるんだぜ、港の近くではなくって山の中腹に集落があるんだぜ。みなさん大変だ…。

 

遠見台へ2

エグい坂道の果てに、少しずつ集落が見えていた。18人の人々が住まう集落だ。

他の観光客も見かけず静まり返っている雰囲気だが、遠見台はこの集落を抜けなければならない。そっと通過させてもらおう。

 

遠見台へ3

坂の途中、まずは頑丈な造りのコミュニティセンターが登場した。この島でもっとも頑丈と思われる建物だ。ここで島民たちによる神事について打ち合わせが行われたりするのだろうか。

 

遠見台へ4

集落の中心部、住宅街に当たる部分にやってきた。

あ、車だ。しかしナンバープレートがない。これも廃車だろうか…。

そして赤瓦の屋根の民家。どうやら既に空き家になってしまっているような家も散見されるな…。どこの離島もそうであるように、ここも高齢化が進んでいるのかもしれない。

 

遠見台へ5

集落の中のクランクを抜けて山の上へと進んでいく…。

静かな集落ではあるが、綺麗に手入れが行き届いているよね。さすが神の島。

 

遠見台へ6

どうです、見てくださいな。鮮やかな花を咲かせる鉢植え。そして綺麗に選定された庭木。住民たちの気配はないが、ちゃんと丁寧な暮らしがここに息づいているのだ。

まぁこの鉢植えの横にある家がさ、壁も天井もない状態でちょっとビビるんだけお、主はきっと近くに住んでいるのさ。

 

遠見台へ7

この風景、20年先や30年先も見られるのだろうか?かつてこの島には学校があったが今は無いという。

この島には子供はいないのだろうか?高齢化が進み、住む人がいなくなってしまったりしないだろうか?

そんな一抹の懸念があるからこそ、この景色を目と写真に焼き付ける。望むにしろ望まないにしろ、日本の景色は刻々と変わっていくのだ。次くるときに同じ景色が見られるとは限らないのだから。

 

遠見台へ8

集落内はやや入り組んでいるが、基本的には道なり。さらにはわかりづらいポイントには遠見台への道しるべがあるから安心だ。

いろいろ平坦な住宅地を抜け、また周囲はやや登り勾配、そして草木が茂り出した。

 

遠見台へ9

貯水タンクだ。どうやら1980年に海底からの送水システムが整ったことで設置できたものらしい。島の生命線だ。

 

遠見台へ10

『かんまなかたや にんぎんなあたたや』

人間はケンカして仲直りしても、神様は見ていて反省していない場合は罰を与える、とのことだ。マジか。反省を伴わない仲直りは地獄行きだぜ。こりゃ僕も襟を正して生きるしかないというヤツだ。

 

遠見台へ11

小さな畑の脇を通る。島の人が農作物を作ったりしているのだろう。

海辺はほぼ険しい岩礁か砂浜であり、山の中は勾配が急だったり神域が多い。土があって畑ができる部分って、結構貴重なのかもしれないな。

 

遠見台へ12

遠見台入口の階段だ。かなり急ではあるが、ここを登り切れば遠見台。昔はそこから異国の船を監視していたという。

また、冒頭でご説明した神事ウヤガンもこの先の拝所で行われる。選ばれた女性のみがそれに携われるのだが、以前は何人もいた資格を持つ女性も今は80代のおばあさん1人だけになってしまったと聞いている。

 

遠見台へ13

4・5日の間、ろくに飲食もせずに神を憑依させて祈りを捧げるという。つまりは生命を極限状態に置くことによってトランス状態になり、神と精神がシンクロするのだね。

確かに80代の方には過酷な神事だわ…。

 

しかし古来よりウヤガンは内容を口外禁止とされており、その時期には島民以外は島に渡れないし、島民であっても遠見台には近づけなくなる。

だからこのままだと誰も知ることなく滅びてしまうイベントなのだ。

 

遠見台へ14

…もしかしたら、島の人にとってはそれでもいいのかもしれないけどな。文化だとか伝統だとかって言葉で表現できるようなものではないのだろう。

もっともっと、島の人の精神の奥深くに生きている魂みたいなものなのだろう。

 

ここがウヤガンの拝所だ。岩に絡みつく木々のツル。そして小さな祭壇のようなもの。自然の象徴のような、でも静かな場所であった。

 

遠見台へ15

…いよいよ遠見台なのである。

 

 

遠見台から眺める青い海

 

坂道と階段を登って火照った体に、南国の風が吹く。ぶっちゃけ爽やかでもないし涼しくもなく、「もわぁぁ~!」って感じだけども、その独特の感じが先島諸島なのだよ。

 

遠見台からの海1

遠見台は数人がようやく立てるほどの狭い展望所。

僕が到達したときには女性旅行者と思われる人が座り込んで瞑想をしていた。あ、ジャマしちゃってすみません。

女性が立ち去った後、僕は改めて遠見台から周囲の景色を眺める。

 

遠見台からの海2

あぁ、あそこは大神港だな。着岸した桟橋も見えるしフェリーも見える。

…フェリーが見える…!?大丈夫かな、フェリーがいるということは、宮古島からのお客さんを下ろしてちょっと休憩した後に出航だよね?

でもまだ出航までの時間はあるはずだよね…!??

数々の旅でフェリーギリッギリになったり、はたまた乗り遅れたりしている僕は、こういうシーンを見ると不安になってしまうのだ。

 

遠見台からの海3

目線をギリギリまで下げてみると、今まで歩いてきた道のりが大体わかる。

港・心臓破りの坂・集落・給水塔、そしてここ遠見台。ほぼ一直線でそれらがまとまっているのだ。

このルートと海沿いの道を除けばほとんど山と神域のみの、静かで小さな島なのだ。

 

遠見台からの海4

宮古島とは反対側には、もう島はない。どこまでも海が広がっている。気持ちがいい。

空は相変わらずやや曇っているが、それでも海はこんなにも綺麗なのだ。快晴だと想像を絶する青さなのだが、たぶん直射日光でここにはそんなに長い間は滞在できないであろう。このくらいでちょうどいい。

まだ春先だし、今。まだまだ沖縄としては快適な季節。

 

遠見台からの海5

反対側の宮古島方面。島の最北部の細く突き出た部分が遠くに横たわっている。さらにその向こうに薄っすらと見えているは伊良部島だろう。

 

遠見台からの海6

こちらの足元に見えているのは「多目的広場」と「カミカキス」っていう名前の奇岩群。すごいよね、綺麗にサークル状になっているけども、これは人が並べたんじゃないんだよ。天然のもの。

 

遠見台からの海7

カップルが遠見台に登ってきた。では、入れ違いで僕はそろそろ降りますか。次はあのカミカキスや多目的広場に行きたい。まだ時間はあるはずだ。

 

 

ンナパズ・広場・そしてさよなら神の島

 

では、最後にまた島の全景写真をお見せしよう。

 

島内MAP

遠見台から激坂を降りておぷゆう食堂前まで行き、海沿いの道を突き当りのンナパズに向かって歩く。

このときには気付かなかったんだけど、集落から多目的広場に繋がる山道がうっすらと見えているんだよね。おぷゆうう食堂を経由するのはかなり遠回りだったなぁ。

 

多目的広場1

多目的広場だ。島内では貴重な、フラットで広大な空間だ。東屋くらいしかなくって「多目的ってなんだよ」って思うかもしれないが、白紙であるからこそ可能性って無限だよね。

あとトイレあるし水道もあったし。充分だ。

 

多目的広場2

ときどき空が青くなるのも嬉しかった。トイレ行って、非常時のための水を補充させてもらった。

 

カミカキス1

広場の反対側、海側はカミカキスという奇岩群だ。カップルが「わーい」みたいな感じで浅瀬に入って行った。

見覚えがあるなぁと思ったら、さっき遠見台で入れ違いになったカップルだ。「早すぎないか!?」って思い、「あぁ、この人たちは僕が見つけられなかった山道でショートカットしてきたんだね」って気づいた。

 

カミカキス2

たぶん魚とかサンゴとかいるのだろう。チラホラと海に入っている観光客見える。

でも僕はこういう離島に来てもシュノーケリングをしたいとは思わないし、基本的に脚すら濡らさないのだ。結構レアな人種だと思う。

でも僕はドライブできればいいし、陸から海を見ているだけで満足なの。

 

ンナパズ1

最後にこっち側の道の突き当り、ンナパズまで行くか。ここからは歩いて3分くらいで行けるだろう。

ンナパズってどういう意味だろう?Webで調べてみたけどわからなかった。でもわかんなくってもいいや。そういう要素があった方が似合うと思うよ、この島は。

 

ンナパズ2

はい、着いた。道路の突き当りだ。すっごい浅瀬が広がっていて、ザブザブと歩いているおじさんも1人いた。島一周チャレンジでもするのかな?

 

ンナパズがどういう場所かすら僕にはよくわからないが、おぷゆう食堂で見た島内案内図には『採ったサザエを持ち帰るためにさばいていた場所』と書かれていた。貝殻が重いからさばいて捨てていたってこと?

 

ンナパズ3

じゃあそろそろ時間かな?出航時刻まであと10分もない。

せわしない散歩だったが、ここでUターンだ。

 

大神港

桟橋からフェリーに乗ると、間もなく出航した。なかなかに危なかった。

船内には例のカップルもいた。早いな!キミらつい10分くらい前に浅瀬に入って水遊びを始めていたばかりなのに!

 

帰りのフェリーでは歩き疲れて、行きのデッキとは違い冷房の効いた船内でゆっくりしていたので海上の写真は撮らなかった。

 

神の住む島

そんな神の住むと言われている島を歩いた僕。

「体験した」というにもあまりに短い時間であり、表面的なものしか見れていないとは思う。だけども表面であっても見れたことには価値があり、そして沖縄本島宮古島の市街地にはない原風景を目の当たりにできたことは事実であろう。

その記憶を大事にしていきたい。

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

 

No.385【大阪府】テントで80代の姉妹が営む「串かつ・どて焼 武田」!立ち飲み最高だぞ!

暮れなずむ町。

そこにポツンと明かりをつけ、串カツを売る1つの模擬店。切り盛りするのは80代の姉妹。お客さんはその店頭で立ち食い・立ち飲みをする。

もう50年以上、この光景が続いているという。

 

 

いいじゃないか、それ。僕もその脈々と続く歴史のひとこまになりたい。地域住民に半世紀愛されるその模擬店を、僕も愛したい。

…というわけで、冬・春・夏と3シーズン訪れてみた体験談をここに執筆しようと思う。

 

これ僕の持論なのだが、お店は3回訪問してようやくなんとなく雰囲気を知り、ブログ執筆できるに値するようになる。

まぁ初回訪問のみで執筆に突っ走れる店もあるのだが、それはある程度お店のインパクトがあったり特異なエピソードがあった場合だ。

だから僕は3回通いたい。今回、3回通えたのでこのお店のことを書こう。

 

おっと、これ以上は前置きが長くなってしまう。名店「串かつ・どて焼 武田」、ここはシビれるぜ…!!

 

 

冬の夕暮れは暖かくて

TVドラマ「孤独のグルメ」を知ってる?アレのシーズン6の第1話のエンディング近くでちょこっと出て来たお店が、この串かつ・どて焼 武田だ。

基本的には1話で1店舗しか出てこないこのドラマにおいて2店目が出てくる理由とは?たぶんだけども「2店目だけでは尺が持たないが、どうにか紹介したい」みたいな制作側の思いがあるのではなかろうか。

僕はこれを見て一目ぼれし、「いつか行きたい!」って思っていた。

 

少し時が流れた寒い寒い季節。僕は初めて武田を目指す。

 

冬は夕暮れ1

「どこかな…?」とキョロキョロする僕の視界に、既にそのお店は写り込んでいたのだがね。写真中央、光を灯すオレンジ色の布がその店舗である。「平野南海商店街」の入口近くに店舗を構えているようだ。

 

冬は夕暮れ2

開店直後なのかな?女性3人がお店の準備を整えつつも、同時に呼び込みをしていた。

これは貴重な光景だ。このお店、誰もお客さんがいない光景を見たのはこの1回切りだからだ。模擬店にしか見えない簡素な店舗なのだが、常にお客さんが途切れないというすごい実力店なんだぜ。

 

さて、お店を独占できる貴重なタイミングなのであるが、このときは僕はお店の前をスルーする。ちょっと先に優先したい用事があるからだ。

 

drive-ns.hatenablog.com

 

上記リンクを貼った「全興寺」ね。ここから数100mの距離にある全興寺に向かっていたのだ。もう夕暮れの時間であり、お寺の方を急がざるを得なかったのだ。

では、全興寺の見学を終えた続きを語ろう。

 

冬は夕暮れ3

紫色に染まる空。「光永寺」というお寺の外壁に寄り添って立つ武田のお店。そこが煌々と光り、数人のお客さんが群がって既に飲み食いしているようだ。ここまでふんわりと揚げ物のいい匂いが漂ってくる。食欲が刺激された。

あぁ、なんていい雰囲気。

 

冬は夕暮れ4

でも、あの4・5人いる中に入っていけるかな?いかんせん小さなお店なので、そんなにキャパシティは多くはないぞ。

でもせっかく武田目当てにここまで来ているのだ。行かない選択肢はない。

 

勇気を出して「1人、行けますか?初めてなのでよくわかんないですけど。」って声をかけてみた。みんな「どうぞどうぞ」とちょっとずつ詰めてくれた。ありがたい。

えっと、まずはどて焼きかな。あとはレモン酎ハイ頼もう。

 

冬は夕暮れ5

情報量の多い写真ですまない。でもいい席だった。

左側に写っているのがどて焼き。まずはすぐに提供いただけるそれを2本オーダーした。トロトロに煮込まれた牛すじ。口の中でとろける。でもガッツリ強い牛肉の味わい。コクのある脂。

これが酒に合わないわけがない!今日、車がなくって本当に良かった!

 

冬は夕暮れ6

お店にメニューはない。さっきの写真にも写っていたけど、カウンターの向こうには揚げる前の食材があってね。それを「〇〇ください」みたいに言うの。

パッと見ではわかりづらいものもあるけど、「それは何ですか?」って気軽に聞いてOKだよ。

 

冬は夕暮れ7

お客さんがオーダーすると、オーナーのおばあちゃんがその場で串カツを揚げてくれるよ。すごいスピードで作ってくれるから待ち時間はほとんどない。

 

ちなみに上の写真、もうどて焼きが空だよね。1つ前の写真からのほんのわずかな時間で、持ち帰りのお客さんが来て8本ほど注文し、なくなった。危ない危ない、いいタイミングだったな。

 

冬は夕暮れ8

シイタケとタコを頼んだ。揚げたてなのでアツアツのサックサクだ。ご覧の通り衣は細かくてフワフワタイプ。個人的にはザクザク系の衣よりもこっちが好き。

なにこれメチャうまい。どうしよう。

 

ところでこのお店、値段表示もない。聞けば答えてくれると思うけど。

イートインの場合は最後にお会計をするんだけど、串の本数でカウントされる。そして上の写真をよく見てほしいんだけど、下側の串カツには串が2本刺さっているよね?これは倍額商品ってことだ。タコは高価なのだ。

 

冬は夕暮れ9

続いてはウズラの卵・牡蠣・紅ショウガ。

ウズラの卵は大好物だよ。紅ショウガは関東ではあまり見かけないよね。揚げるとツンとする刺激も減ってうまいんだよ。牡蠣はジューシー。間違いない。

 

以上で1800円ほどだっただろうか?

すげーうまかった。冬の屋外ではあるが、火を使っているので暖かかった。お客さんと談笑して心も温かかった。

 

冬は夕暮れ10

お店を振り返る。まだまだお客さんはやってくる。

なんてすごい店だったのだろう。ごちそうさまでした。

 

 

まだまだ寒い春の夜に

 

暦上は春になりつつあるのだろうが、19:00ごろはまだまだ寒い時期。その店は暗闇にホタルのように灯っていた。

 

春は夜1

ちょいとこのお店を紹介していこう。

串かつ・どて焼 武田は、2024年時点で創業から55年になるそうだ。すごい長い歴史だ。よほどのクオリティで地域から愛されていないとここまで長続きはしないであろう。

 

創業者の方は途中で病に倒れ、ある時期からはその奥さんと妹さんにて切り盛りすることとなった。今も、80代のおばあちゃん姉妹と女性の方の3人で元気に営業している。

今回は3人の先客がいた。スルリと入り、瓶ビールとどて焼き2人をオーダーした。

 

春は夜2

このお店、営業しているのは1週間のうちでも月火水曜日の3日間だけである。そして営業時間は16:00~19:30の3時間半だけ。

さらに、こういう営業形態なので雨が降る日は営業しない。なので普通にサラリーマンをしているとなかなか行きづらいお店なのだ。こうして訪問できているのはとてもありがたいこと。

 

春は夜3

今回は19時ごろの訪問なので結構ギリギリのタイミングだったかもしれない。

あ、営業しているかどうか微妙なときは、食べログ等に掲載されている携帯電話番号に架けると教えてもらえるよ。僕もやったことある。心配な際には夕方にTELだ。

 

春は夜4

この時間でもどて焼きがたっぷりあって嬉しかったな。でも串カツメニューはやや少なめだった。

 

揚げものやどて焼きの調理を担当するお姉さんに対し、妹さんは下ごしらえなどを担当する。息の合った連係プレーも見ものだ。

お客さんの何割かは持ち帰りであり、地元の奥さんと思われる人が自転車を止めて串を数10本一気に購入したりもしている。大量の購入であっても素早く提供できている。すごい。

 

春は夜5

串カツはエビと牛ヘレにしたんだっけかな?もう気分が良すぎて後者はよく覚えていなくってすまない。

揚げあがったものは上の写真のように金属のバットで目の前に置かれるので、自分の皿に移動させる。ちゃんと火は通っているものの、不要に長い時間をかけていないのでしっかり中に水分が残っていてジューシーだ。エビもプリッとしていて弾ける食感。ビールが進む。

 

春は夜6

2・3種類ほどの巾着系のメニューもあったりする。油揚げの中は納豆であったりネギであったりし、聞けば中身を教えてもらえるよ。あんまりほかの串カツ店では見かけないメニューだよね?

これまた独特の食感でやみつきになる。

 

春は夜7

静かな夜に、カンパイ。

 

 

梅雨入り前の夏空の下

 

最後に最新の、2024年初夏の様子をお届けしたい。

日が最も長いシーズンだよね。本来であれば梅雨入りしている時期なのだが、2024年はなかなか梅雨が始まらない。

そんなこんなで、武田での青空を眺めながらの飲食が可能となった。

 

夏は夕方1

光永寺の壁にはまだ日が当たっている。太陽に照らされている武田、初めて見たわ。

だけども平日の明るい時間からもうお店の前には人がたむろしているぞ。みんな武田、大好きなのだな。何を隠そう僕もだ。

 

夏は夕方2

そういえば今朝はとんでもない豪雨だったのだが、ちゃんと営業してくれていてラッキーだった。驚異的な天候の回復に感謝。

雨上がりとあってか、夏なのだがそこまでは暑くない。夕方で気温も落ちてきて、ちょうどいいすごしやすさの中で串カツを食べられそうだぜ。

 

夏は夕方3

夏だからさ、まずはビールですかねぇ。瓶ビールをオーダーする。

ところでこのお店はアルコール類しか取り扱いが無いが、例えば「ソフトドリンクないですか?」などと一声かければ「あそこの自販機で買ってきて持ち込んでいいよ」などと言ってくれるそうだ。アルコール飲めない人も充分に楽しめるのでチャレンジしてみてほしい。

もっとも、僕はここに来るときにはしっかり飲めるシチュエーションを整えているけどな。我ながら意気込みがすんごい。

 

夏は夕方4

どて焼き3本だ。まずはこれでゆっくりじっくりと場の空気に体を慣らす。

いろんなお店でどて焼きを食べているが、武田のどて焼きはトップクラスだと感じている。お酒にももちろん合うが、機会があれば大量にご飯と共にかっ食らってみたい。絶対に最高。

 

夏は夕方5

まだ明るい時間だからか、食材が豊富だ。

ただしこんな時間だからこそ、商店街での買い物帰りの奥様が大量買いしていったりしている。串の取り合い戦争だ。

レバー・紅しょうが・からあげ・キスの4本を一気に注文した。陸・海・空全制覇してやんよ。

 

夏は夕方6

なんとテンションの上がる絵なのでしょう!今夜はごちそうだ!

持ち帰りのオーダーをして待っているマダムがこちらを見て思わず「揚げたては最高でしょう!?」って声をかけてきた。

太陽が東から昇るくらいに当然のことですが、うますぎなのです…!ここで今、酒と共にこれを食えてよかった!

 

夏は夕方7

冒頭で僕は、「グルメについてブログ執筆するなら3回通いたい」と書いた。

このお店には3回と言わずもっと通いたいけどな。

どて焼きも串カツもうまいし、なにより風情がある。みんなでワイワイしているこの空間が好きだ。

 

夏は夕方8

冬・春・夏と訪問履歴を得られたから、次に行くとしたら秋かな。オールシーズンコンプリートしたい。

まぁ夏もこれからが本番。こういう屋外の店舗で火を使う形態だと、調理側はきっと想像を絶する暑さであろう。おばあちゃんたちには体調に気をつけて続けてもらいたいな。

 

夏は夕方9

ちょいとくたびれたオレンジ色の模擬店。そこに大きく『串かつ・どて焼』の文字。50年以上続けてきた威厳すら感じるビジュアルだ。

 

一見すると入りにくそうだし「なんだこの露店は?」ってなるような店構えだが、とても居心地がよく美味しく、忘れられない空間。屋外だからこその、町との一体感。季節を感じながらの飲食。

遠方に住む僕にとっては、まるでお祭りに来たかのようなフワフワと浮かれる時間であった。

 

夏は夕方10

まだ日の沈まない光永寺沿いを歩きながら、鼻歌でも歌いたい気持ちだった。

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 串かつ・どて焼 武田
  • 住所: 大阪府大阪市平野区平野本町1-5
  • 料金: 1本150円前後?
  • 駐車場: なし。付近のコインパーキングを使用のこと。
  • 時間: 16:00~19:30(月火水のみ営業)

 

No.384【島根県】山間のプレハブ「風花」!丸太イスに座りレトロ自販機うどんを食べた!

益田市内の国道191号は右も左もなだらかな山が続いていて、ドライブしていてとても気持ちがよかった。

そんな道沿いに「自販機のお店 風花」はある。ほら、町から離れた国道脇の駐車帯などに大型トラックが停まって休憩しているシーンを見たことあるだろ?ちょうどあんな感じのスペースに、かわいい自販機小屋があるのだ。

 

 

ほら、左手に風花が見えてきた。

少し前のお話ではあるが、ある年の春にお腹を空かせてここにたどり着いた思い出を語ろうと思う。

 

 

山間部のかわいいプレハブ小屋

 

とある春の日の昼下がりであった。僕は愛車のHUMMER_H3に乗り、中国地方をドライブしていた。

このときのドライブはなるべく中国地方のレトロ自販機をたくさん巡ろうって感じの企画で、その1つとして風花に行こうと考えていた。

 

風花へ1

さぁ、そんな経緯で充分に空腹になった僕がやって来た。昼下がりだがお昼にありつけていなかったので、空腹だった。

テンション上がりきってかなり寄りで撮影してしまったので、まるで林の中に佇んでいるような図になってしまった。

 

実際は違うのだ。冒頭にGoogleマップストリートビューを掲載した通り、なだらかな山の谷間の道であり、そこそこ空も広い。

 

風花へ2

この通り、お店の敷地から目の前の国道を撮影した写真が手元に残っている。

こんなロケーションだ。春のいい感じの陽気の日だ。

 

風花へ3

改めてお店を眺めてみよう。おそらくだけどもプレハブ製の小屋。だけどもセンスはあふれている。

外壁はなんだかコスモスみたいな花が咲き乱れている。わりとハンドメイド的な貼り方だけども僕もO型だからさ、そういう細かい部分は目に入らない。

 

屋根直下にはかわいいパネルで『自販機のお店』と書かれている。"販"と"機"・"お"と"店"の文字が少し重なっている部分がポイントだ。たぶん。

 

風花へ4

ピクトグラムもあしらっており、親しみ安さを感じるよね。「これはもう、うめーヤツだぜ!」って僕の本能も反応している。

とりあえず中に入るか。

 

 

ウッド調の内部とレトロ自販機

 

あぁ、中はまるでログハウスのように落ち着いて温かみのある雰囲気。

 

レトロ自販機1

目を引くのは木製の丸テーブル、そして丸太イス。コンクリートの簡素な床ではあるが、これがあることによってなんとも言えないぬくもりを感じる。

 

そして同じ空間に立ち並ぶのは、富士電機製のレトロ麺類自販機、カップヌードル自販機、飲料自販機などだ。

どうやら2010年ごろまではレトロハンバーガー自販機もあったらしい。西日本では非常に残存数の少ない自販機なので、それがもう無くなってしまっているのはちょっと悲しいね…。

 

あと、写真には写っていないけどもレトロな汎用自販機もあって菓子パンやおにぎりなどが入っていたぞ。それらにも興味はあるが、まだこの先で食べたいものもあるので今回は麺類だけにしておこう。

 

レトロ自販機2

こういう小物があるだけで、ソリッドな自販機小屋も一気に柔らかくなる。心遣いを感じさせる小物だ。きっと治安も良いのだろうな。24時間営業だけどもこれだけ綺麗なのは、オーナーさんもお客さんもいい人だからだぜ、きっと。

そんで外観といいこれらといい、オーナーはオシャレなおばさまなのかなって思って調べたら、その通りのようだ。

 

レトロ自販機3

花の飾られた三角ニッチ。ステキです。

店内には小さな子連れの先客がいたので、ちょっとだけ外でボンヤリして待機した。テーブル1つだけだから、僕が合い席しちゃうとくつろげないだろうからね。

ファミリーがいなくなったタイミングで、いよいよ僕が麺類を購入するぞ。

 

レトロ自販機4

ここのメニューは、350円のラーメンと300円の肉うどん。どちらにしようか迷う。

ラーメンの方が希少性が高いんだけども、個人的においしいと思えるのはうどんの方の可能性が高いんだよな…。初めて来たお店であれば、やっぱうどんかな。50円分安いしな。

 

レトロ自販機5

『ラーメン よくかきまぜてお召しあがりください』とのことだ。案内が丁寧。スープが底の方に沈殿するのかな?自販機内部で湯切りをした後に最後にスープを注ぐ製造方法ではないのかな?

 

とりあえず肉うどんを選ぶ。レトロ自販機のメニューでうどんは定番ではあるが、肉うどんは関西地域にしかないのだ。もっとも関西地域では定番メニューなんだけど、ある意味希少性が高いのだ。

そしてこれ大事なんだけど、レトロ自販機の肉うどんにはずれはほとんどない。マジで肉うどんってうまいよな。レトロ自販機から牛肉が出てくるんだぜ、信じられるか?

 

 

丸太イスと肉うどん

 

お金を入れてボタンを押して気付くんだけど、出来上がりまでのカウントダウンをする数字版がデジタル表示ではなくって、ニキシ―管なのね。

 

肉うどん1

あらかじめそれぞれの数字のかたちをした発光管を埋め込んである形式。

デジタルのレトロ自販機も多いので、これはややレアなタイプ。もう製造されていない、近い未来にはロスト・テクノロジーとなるであろう、絶滅間際の技術だ。しかもLEDなんかよりも遥かに寿命が短い。

 

話は変わるけど、僕は一時期本気でニキシー管時計がほしくって真面目に検討したさ。かなり高額だし寿命があるけども、この温かみは他にはない魅力がある。

まぁ今の技術だとLEDで似たようなことをできてしまいけどね。結局は僕もLEDに流れつつあるけどね…。でもあこがれって大事さ。

肉うどん2

20秒ほど待ち、ニキシー管のカウントがゼロになると同時にうどんが出てきた。

おぉ!これクオリティ高いのではなかろうか!

 

しかも出てきた瞬間のビジュアルがこれだぜ!普通レトロ自販機の麺類って湯切りのときに具が落っこちないように麺の下に忍ばせていることも多いのだが、これは上に綺麗に乗っている。

出会った瞬間からこの仕上がり具合は、否が応でもテンション上がりますなぁ!

具は甘く煮つけた牛肉、カラフルなかまぼこ、そしてネギだ。

 

肉うどん3

だし、うめぇ…!

関西特有のスッキリしたダシだけども、肉のエキスでパンチが生まれている。しかもわずかにユズが入っているね。後味に爽やかさが残るよ。

麺もつるつるしこしこで本格的だ。並のうどん屋さんよりうまいかもしれぬ。

 

Webでもここのうどんやラーメンの評価は高い。

特にラーメンは分厚いチャーシューに半熟卵までトッピングされていて非常に人気なのだとか。そっか、知っていたラーメンにしたかもしれないが、肉うどんも充分にうまかったので後悔はない。

また来る機会があったらラーメンにもぜひチャレンジしたい。

 

肉うどん4

ガチで自販機のみの、小さな小さなドライブイン

他のレトロ自販機店のようにゲームコーナーがあるわけでもないし、従業員さんが対応してくれるようなサービスもない。

それでも、この空間でうどんを食べたことに幸せを感じたよ。オーナーさんに会うこともなかったけど、オーナーさんのこだわりを非常に感じられたよ。

 

さっさと次のスポットを求めて走り出すことが多い僕としては珍しく、食後ここのお店の外で20分ばかりドリンクを飲みながらくつろいだ。

食後に風に当たるのが気持ちよかった。出発する頃には少し日が傾き出していたな。遅いお昼、これにて完了。

 

三里ヶ浜

かなりの山間部かと思ったが、15分ほどで日本海が見えてきたりした。同じ益田市内の「三里ヶ浜」というスポットだ。

ここでまた僕はくつろぐ。うどんの余韻を噛みしめながら。風に当たりながら。春の旅は、こうやってふわふわしながら続くのだ。そういや"風花"って、いい名前だよね。

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 自販機のお店 風花
  • 住所: 島根県益田市大谷町
  • 料金: 肉うどん¥300他
  • 駐車場: あり
  • 時間: 24時間営業

 

No.383【大阪府】1杯11万円!スプーン1口2500円!「ザ・ミュンヒ」で幻のコーヒーを飲む!

あなたはコーヒー1杯にいくらを払えるか。

僕の場合は700円を超えると「おっ、なかなかの自信ですな」って思う。1000円を超えると、その反動でその日の夕飯がひもじくなるであろう。

 

スマホを見るあなたはもしかしたら「ふふん、YAMAもまだまだだな」って思うかもしれないが、じゃあ「コーヒー1杯で11万円」って言われたらポンと払えるか?

1万円じゃないぜ、11万円だぜ。1万円でも清水の舞台から飛び降りるだろうに、11万円だとさらにケタが違って脳がバグるであろう。

 

 

さて、僕はこの超高額コーヒーを提供する「ザ・ミュンヒ」というカフェを訪れる。超高額コーヒーをほんのひと口だけ味見するのだが、ひと口で充分すぎるほどのインパクトがあった。

 

 

さらに、4500円というなかなかのお値段のコーヒーもいただいた。これまた他では味わえない体験であった。冗談ではなく、コーヒーというものの概念が変わった。

そんなオンリーワンの喫茶店での体験談、ぜひ聞いていただきたい。

 

 

日本に1台のバイク、ミュンヒ

 

八尾市の住宅地。大きなビルも大きな店も周囲に無く、でもフラットな土地に綺麗な一戸建てが続いていて住みやすそうだな、って思った。

 

ミュンヒ1

その一角にあるのがザ・ミュンヒというコーヒー専門店だ。

おじいさん1人で営んでいるというが、Webで調べたところ営業時間はなんと6:00~翌3:30。1日の営業時間が21時間30分だ。ブッ壊れているじゃねぇか。しかも基本的に年中無休だ。

「マジかよ、Web情報の誤りだろう」と思って事前にお店に電話をしてみたが、ずっと呼び出し音が鳴り続けていた。かなり不安だ。

 

ミュンヒ2

お店に到着した。どうやら営業中のようで安心した。

『熟成珈琲超濃厚エキス専門店』・『エスプレッソ以上の超濃厚なコーヒーは最高の料理です』・『名車と熟成珈琲 自家焙煎の店』・『珈琲だけの店』…。

真相はまだ謎だが、普通じゃないことは充分に理解できただろう。深呼吸をしてからドアノブに手を掛けた。

 

ミュンヒ3

これがほぼ店内の全景である。撮影者である僕の立っているところが、窓際の4人掛けの席。全部で20人ほどのキャパのお店だ。

店内に入るとオーナーのおじいさんが「こちらへどうぞ」と4人席を案内してくれたので、ここに座った。ちなみにこの日は平日の夕方であり店内滞在時間は1時間半ほどだったが、他にお客さんは来なかったぞ。

 

ミュンヒ4

これは水出しコーヒーの器具だよね?スケールが大きくアンティーク感も満載で目を奪われるよ。じっくり時間をかけて抽出という行程にもロマンを感じる。

 

…だが、この店内で最も目を奪われるのは、たぶんこれじゃあない。それはアイツだ。

 

ミュンヒ5

"ミュンヒ"。すんごい大型バイクだ。この店名の由来ともなっているバイク。世界に5台、そして日本にはこの1台しか存在しないと言われている伝説のモンスターマシンだ。

 

オーナーさんが1981年に入手してこのお店を開店すると、たくさんのライダーさんが見に来る繁盛店になったんだって。でも「数年するとブームも収まっちゃうかもなぁ」と思い、コーヒーの道を究めることとしたそうだ。

コーヒーの道をどう究めたのかは、また後の章で語るね。

 

ミュンヒ6

これらの写真は、オーナーさんがコーヒーの準備をしている間に許可を得てお店の中を見てまわり、撮影させてもらった。

残念ながら僕はバイクに疎くって、そんなにバイクの価値をわからないのが悔やまれるところだ。

 

 

1時間以上かけてドリップするコーヒー

 

少し時間を巻き戻そう。座席に座った僕に対し、オーナーさんは「さてどうしましょう?」とメニューを見せてくれた。

 

超濃厚コーヒー1

よかったら上の写真、拡大してみてほしい。一番安いもので2500円、そして高いもので8000円だ。

 

マニア向き

  • 全てぬるいめの創作抽出(想定外)コーヒーです。
  • ネル出しにつき時間をかけることによってかえって酸化しにくいコーヒーになります。

 

自分で「想定外」って言っちゃったよ。わかってらっしゃる。しかし僕もそれを味わいたくって来ているのだ。

でも全部想定外メニューだ。この中のどれを選ぶべきか…。

 

超濃厚コーヒー2

オーナーさんが言う。「急いでいる人であればすぐにドリップできる安価なコーヒーもある。ただしこのお店のウリは時間をかけて抽出する究極のコーヒーなんだ。」

うん、そのためにここに来た。

 

「では、"苦味の苦味の甘味"ではどうでしょう。おちょこ1杯くらいの量だけども超デミタスで150グラムの豆を使い、4500円。抽出時間は50分~1時間くらい。

よし、じゃあそれだ。単語1つ1つが規格外で全然ピンと来ないけど、全て任せた。

 

超濃厚コーヒー3

しばらくするとオーナーさんが大きめのボウルを持ってやってきた。「これが1杯分の豆。これを使って抽出していくからね」、とのことだ。

多いな…。普通の喫茶店であれば店内にいるお客さん全員にコーヒーが行き渡る量なのではなかろうか。

 

これが150グラムだという。普通コーヒー1杯だと豆の量は10グラムほど。

オーナーさんは「だから4500円だけども、15杯分の値段だと思うとそんなに高くはないんだよね。」と言う。

いや、原価やビジネスの目線だとそうかもしれないが、飲む側の立場だとなかなかにエグい価格ですぜ。

 

超濃厚コーヒー4

僕のテーブルの隣にネルのホルダーが置かれ、オーナーさんは厨房へと帰って行った。

奥の方から「ガガガ…!バリバリバリバリ…!」と豆を挽くサウンドがずっと聞こえていた。さすが150グラムなのだ。

 

超濃厚コーヒー5

「この新聞記事とか読んでてくださいな」と言われたので、ザ・ミュンヒについて書かれた新聞を読んでおいた。今年(2024年)の2月12日のものだ。画質高めで撮影したから、スマホの前のあなたも読んでおいてほしい。

なるほど、抽出に4時間かかるコーヒーもあるのか。果てしないな。コーヒー待っている間に普通のコーヒー3杯飲める。

 

超濃厚コーヒー6

ネルが横のテーブルにセットされた。「長い時間待たせちゃうからね、お客さんのすぐ前で抽出するのですよ。」とのことだ。ブロガーとしてもありがたい。いちいち写真を撮らせてもらった。

 

ただ、1枚写真を撮り損ねた。最初、このバカデカいネルに豆がこんもりと山盛りになっていたのだ。それをオーナーさんがギュッと押さえつけて圧縮したのが上の図だ。

もうネルの中、豆でパンパンなのだ。すごい光景だ。

 

超濃厚コーヒー7

オーナーさんはそのたっぷりの豆の上にお湯をチャチャッと一振りすると、またどこかへと消えていった。それを何回か繰り返した。

ご覧の通り、ネルの下にサーバーもカップもない。その程度の湯量では到底コーヒーはドリップできないので、まだ下には何も置く必要はないのだ。

「最初の1滴まで大体30分ですからねー…」って言ってた。スケールが違う。

 

超濃厚コーヒー8

ときどき戻ってきてチャチャッと水やりしては、厨房に帰っていく。あるいはじっくりと座ってコーヒーを観察する。

それをジッと見守る僕。店内にはこの2人のみだ。すごく奇妙な時間が流れている。

 

そのうちネルの下に小さな小さなカップが置かれたが、まだここに雫が落ちる気配はない。旧東ドイツ製のマイセンのカップらしい。貴重だぞ。

 

超濃厚コーヒー9

「こんなふうに手間がかかるから、お客さんが重なったときとかはこの方法では提供できないんですよ。あらかじめドリップしたものがあるから、それをもう少し安い価格で出すの。でもね、こうやってドリップしたコーヒーは酸化しないから味に違いはないんですよ。」と言う。

他のお客さんがいなくって良かった。マンツーマンドリップ、体験出来て良かった。

 

超濃厚コーヒー9

他にもオーナーさんとはいろいろ話した。なにせドリップ時間だけで1時間だったのだ。オーダーしてから飲むまでは1時間10分かかったのだ。そりゃいろいろ語り合ったさ。

とてもすべては書ききれないが、このあとの記事内でそれをポツポツ入れ込んでいくね。

 

コーヒーをドリップし始めて20分後、ようやく最初の1滴がポタリと落ちた。マスターが、「おっ、落ちましたね」と言い、僕は「えぇ、落ちましたね」と返答した。

なんか春になって「おや、土地からフキノトウの芽が出ましたね」みたいなテンションで、2人で微笑ましく言葉を交わした。

 

超濃厚コーヒー10

ネルの中を上から見るとこんな感じだ。わけわかんないくらいに粉まみれ。これら全部抽出の役に立っているのかな、ってくらいに粉だらけ。

そしてポタリ、ポタリとドモホルンリンクルみたいに1滴ずつ丁寧に抽出されている。見つめていると人生を考えてしまいそうな時間だ。

 

 

抽出開始から1時間が経過した。

おちょこのようなサイズには、40ccほどのコーヒーが溜まった。「さぁどうぞ」とオーナーが言う。とうとうそのときが来たのだ。

 

超濃厚コーヒー11

4500円のコーヒー。今までの人生でダントツ一番高いコーヒーであり、今後の人生でもこれ以上はおそらくないであろう。

 

ひとくち飲んでみた。

おい、これヤベーぞ!!全然今までのコーヒーとチぞ!!オヤジ、おまえコーヒーにいったいどんな魔法をかけた!!?…って思った。

1時間かけてドリップしたので、当然ほぼ常温のぬるいコーヒー。15杯分のガチに濃厚でブラックのコーヒー。

ほんの少し口に含むと、トロリとしたような口当たりで「あれ?クリーム入れたかな?」って感じにまろやか。そのあと遅れて角の無い上品な苦味がやってきた。

 

超濃厚コーヒー12

「えっ…!?」って感じだ。こんなにも丸い味わいなのか。力強さと優しさって、両立するのか。

すごく安易な表現をしてしまうと、それはコーヒーゼリーにクリームをかけた1口目のような感覚だ。苦いのにマイルド。あれを100倍昇華させた感じ。

こういう世界があるのか…!スゲーぜ。

 

オーナーさんは目の前に座ってその様子を眺め、「いろんな豆、いろんな焙煎方法で試したんだけどね、この抽出方法でこういう味わいになるのはほんのわずかなんだ。他のお店でマネしようとしてもこうはならない。」と淡々と語っていた。

 

そうだろうね。そしてこのコーヒーはガブガブ飲むものではない。厳選されたほんのわずかな量のものを"嗜む"ものであるな、って感じた。

正直少し疑っていたが、値段に見合う価値があると感じた。

 

 

1杯11万円、1口2500円のコーヒー

 

おっと、僕はまだ帰らないぜ。この喫茶店を知る者は、このコーヒーによってその情報を得たのであろう…っていう有名なコーヒーがあるのだ。

 

最高額コーヒー1

"元祖熟成樽仕込み氷温コーヒー26年物"!!

価格は40CCで11万円だ!!おちょこサイズで11万円!!

 

これをこの量で飲むには予約が必要である。僕の場合、予約していないし11万円も払えない。

しかしメニューをよく見てほしい。"おためしコース"としてスプーン1杯2500円なのだ。もう金銭感覚崩壊しているから「2500円?さっきのより断然安いな、くれ!」ってなった。

 

超高額コーヒー2

小さな樽が出てきた。「H7年6月」と書かれている。1994年製だね。ちょうど30年前だ。マイナス3℃で管理しているらしい。

オーナーさんは片手でそれをヒョイと掲げながら「これは冷蔵庫の中でコーヒーをずーっと放置していて忘れてしまってさ、捨てるしかないけどもったいないから味見してみたらとてもおいしかったことに着想を得て…」とか語っているけど、「おいおい貴重なんだから片手で雑に持ちながら話すなや」って内心ハラハラした。

 

そしてその前に、博物館に展示されていそうな金色のお皿とスプーンが置かれた。

 

 

動画もご紹介しよう。なんとなく、すごく濃厚であることがおわかりいただけるかと思う。ポタポタと金色のスプーンでそれを受け止めるオーナー。

 

超高額コーヒー3

たっぷりとたまった。表面張力で盛り上がっている。なんだかプリプリで柔らかそうなコーヒーだ。これで2500円。

 

小皿を持ち上げ、こぼれないように気をつけながら口に含んでみた。

…なるほど!

 

正直に言うね。これ、おいしいとかまずいとかとは、また違う次元にあると感じた。

少しツーンと来るようなこの感覚は、ワインに近い。樽の中で熟成されたがゆえのテイストだろう。しかし僕個人としては、樽の風味が移りすぎてしまっているようにも感じた。

 

超高額コーヒー4

やや酸味が強くなり、発酵したような感覚の味わい。コーヒーとワインの中間くらいの味わい。面白い。

…が、少量で良い。これを40㏄飲めと言われたら結構キツい。この程度味わって「へぇー」と言えるくらいがちょうどいいかなって思った。

 

「これ、11万円払って1杯飲んだことある人はいるんですか?」って聞いてみた。するとオーナーさんは1冊の雑誌を見せながら語ってくれた。

 

超高額コーヒー5

ほんの数人ほどいるそうだが、直近ではアラブの方の王族の人だったかの1人。

外国人ユーチューバーがこのお店を取り上げてバズったことで知ったらしい。令和時代になり新たな天皇が誕生する式典に招かれたこの人は、式典後に大阪までやってきてこのコーヒーを1杯なのだそうなのだ。

なんという逸話だ。「天皇陛下⇒コーヒー」。世界でも類を見ないコーヒーなのだろうね。

 

超高額コーヒー6

昨今の物価高で、数年前までは10万円だったこのコーヒー、今では11万円。スプーン1杯も2000円から2500円になっているぞ。

あなたがもし興味あるなら、さらに値上がりしないうちに急ぐがよいですぜ。

 

 

ミュンヒは21時間、あなたの来訪を待っている

 

オーナーさん、僕にいろんなものをくれた。まずはオーダー直後に「お店のステッカーだよ、どうぞ」とこれをくれた。

 

ミュンヒの贈り物1

ありがとう、いい記念になるよ。

それと、スプーン1杯2500円のコーヒーをオーダーしたところで「以前TVに出たときの様子を録画したDVDもあるから、それもあげる」と言われた。

 

ミュンヒの贈り物2

DVDには『2015年3月2日放送 バイキング』・『坂上 vs IKKO目利きバトル 衝撃の超高額コーヒー』と書かれている。僕はTV番組とか芸能人には疎いのでピンと来ないのだが、何かの折に見てみよう。

 

あと、一緒に写っているメニューもいただいた。最初は「Googleの口コミでいい感じのコメントをしてくれたら…」みたいに言っていたが、最後は「まぁいいや。あげる。」と言われた。すごい包容力。

 

ミュンヒの贈り物3

それとね、スプーン1杯2500円のコーヒーを一滴ティッシュに垂らすとラップでくるみ、「これ1日は香りが持続するからよかったら部屋に置いてみて」と言われた。

む…!ゴミと間違えて捨てないように気をつけます!!

 

ミュンヒよ永遠に1

冒頭記載の通り気になっていたので「営業時間が6:00~3:30ってどういうことですか?」って聞いてみた。

すると「奥の部屋にいることもあるけどもやっているよ。お店を閉じていると寂しい気分になるから、ひとまず来たら対応するよっていう意味。私はちょっと仮眠すれば大丈夫なの。」という超人的な回答が返ってきた。

深夜バスで東京からやってきて、未明にここを訪問した人とかも数人いるらしい。

 

「でもね、2024年になってからは月火水曜日は21時ラストオーダーにしたんですよ。体力的な問題もあるから…」とのことだ。

そりゃそうだ。お体を大切に…。

 

ミュンヒよ永遠に2

「まぁ営業しているか気になったら電話してくださいな。そして遠いだろうけど、また来てね。」とオーナーさんがほほ笑んだ。

外に出ると、すっかり夕方の雰囲気が町に満ちていた。

 

ミュンヒよ永遠に3

そうそう、「ウチのコーヒーはこんなだけど、いろんなコーヒーがあっていいと思う。自分もいろいろなコーヒー店に行ったが、そうだなぁ横浜の「emo」はいい店だったよ。」と、そんな情報もいただいた。

 

伊勢佐木町emo

だからご紹介いただいた、横浜伊勢佐木町のライダーさんの集まるお店emoにも行ったのだが、その話はまた機会がございましたら。

 

ミュンヒよ永遠に4

夕暮れの静かな住宅地。もう春は目の前だがさすがにこの時間は寒い。

ポケットに手を入れ、指先がラップに触れた。ラップを少し開いて中のティッシュの匂いをかぐと、あの濃厚コーヒーの香りがフワリと鼻腔をくすぐり、「あぁ幸せな時間だったな」と頬が緩んだ。

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: ザ・ミュンヒ
  • 住所: 大阪府八尾市刑部2-386
  • 料金: 苦味の苦味の甘味¥4500他
  • 駐車場: なし。付近のコインパーキングを使用のこと。
  • 時間: 6:00~3:30(月火水は21:00ラストオーダー)

 

No.382【大阪府】お寺にリアルな地獄が!「全興寺」地獄堂の閻魔様の前で説教受けてきた!

僕の手元には、ちょっと現実離れした資料が2つある。

 

 

1つは「地獄通行手形」。すごいでしょ。僕まだ生きているのに、そして地獄なんかに縁がないような誠実な善人なのに、地獄に行けちゃうんだよ。

そしてもう1つは…。

 

 

「地獄への入り方」。文字通り、地獄のガイドブックだね。「地球の歩き方」みたいにサラッと言ってのけたけど、これすごいもんだからね。貴重だよ。

 

僕は手元に残ったこの2つの資料を見て目を細めた。

あぁ、地獄。ちょっと怖くて不思議だったなぁ。もう行くことはないかもしれないけど、貴重な体験だったなぁ、と。

 

…気になる?だよね。

じゃあ今夜は「全興寺(せんこうじ)」の地獄堂を訪問したエピソードを語ろうか。

 

 

商店街のお寺の中へ

 

ここは「平野本町通商店街」という名前らしい。夕暮れ近い時間ということもあるのかもしれないが、人通りはまばらであり、結構薄暗く感じた。

 

商店街1

上の写真は自動補正が入って結構明るく見えるかもしれないが、実際は懐中電灯が欲しくなるくらいの状態であった。

…が、この雰囲気は嫌いじゃない。しっかりと重厚感があり、昭和の時代からブレずに令和の現代まで生き残ってきた意思を感じさせるような商店街だ。

 

商店街2

その中でもひときわ目を引くアンティークな建造物。国の登録有形文化財にもなっている、大阪府最古の新聞販売店である「小林新聞舗」だそうだ。

日章旗みたいな中に書かれた"朝日新聞"の文字が、まさに朝日を現しているな。そっか、朝日新聞って朝日だもんな。朝日と共に朝刊をお届けしたい気概なのかね。改めて気付いた。

 

そんな新聞屋さんの隣に地獄への入口がある。

朝日から地獄へ…。なにこの暗転。

 

商店街3

これが僕の目指す地獄堂を有する全興寺の入口なのだ。

商店街の中にナチュラルにお寺の入口があるってすごいな。最初、まさか商店街には入口はないだろうと裏側を探索しちゃったんだよね、実は。

 

全興寺に入る1

右の看板、おどろおどろしい鬼の絵と共に「ウソをつくと舌をぬくぞ」と書かれている。

まだ境内に足を踏み入れて3mですぜ。初手からブッ飛ばしているな、このお寺。挨拶からこのアグレッシブさ。まだ僕ら、お互いのことすらよくわかっていないのにさ、初手の距離の詰め方がすんごいのな。

 

全興寺に入る2

境内を奥へと進んでいくと、何やら正面に青白く光る仏像がある。薄暗い夕刻にボンヤリと浮かび上がるそれは、なんだかゾクゾクさせてくれる。

 

全興寺に入る3

不動雲海という名前のスポットだ。不動明王がモクモクと焚かれた煙の上に立っていて、まるで雲海のようだぞ。

いや、でもよくよく考えてみたら僕、こんなパープルカラーの雲海なんて知らんぞ。なんだこれは。


そして煙の切れ間から見えたんだけど、この下は小さな池で鯉も泳いでいたぞ。鯉、こんなロケーションでリラックスした日常を送れているのか?それとも地獄か?そうだよな、地獄だもんな、ここ。

 

全興寺に入る4

寺務所を過ぎて広い境内の中心部に入ったところで、作業をしていたおばさまスタッフの方に出会った。

「こんにちは、地獄堂を見に行きました」みたいなことを言うと、「あら!もうそろそろ終わりの時間なのよ!でも17時半までだからあと15分あるわ!こちらに急いで!!」って、寺務所の受付に連れて行かれた。

 

なるほど、17時半終了なのか。そんなもんだとは思っていた。この夕暮れの時間でも境内には入れた時点でラッキーだと思っていた。

では急ごう。地獄へ急ごう。

 

 

僕は地獄を垣間見た

 

寺務所の受付にて100円を支払った。地獄堂の見学は100円なのだ。100円で地獄を見られるなんて、安いもんだよ。

 

境内にて1

これが本堂だ。おばさまが「どんなに時間が無くてもね、最初に絶対に本堂でお参りはしてもらうことになっているの」って言っていたので参拝をした。

中には薬師如来がいるらしい。既に勤務時間終了なのか、お隠れあそばせていたけどな。

 

境内にて2

境内の全景を載せておくね。

右が寺務所。左が本堂。右奥に地獄堂が少し写っている。この境内の中に見どころが7・8個あるらしくて17:30までに間に合うのか心配なんだけど、まぁメインの地獄堂だけはしっかり堪能してやりたい気概だよ。

 

境内にて3

うおっ、トトロがいた。なんだか怖い。なぜこんなところにいるのか知らないが、となりにいてほしくないタイプのトトロだ。

 

地獄堂1

では、メインである地獄堂だ。扉の上に鬼が乗っている。

ズームした写真は撮らなかったけど、向かって右側には「極楽度・地獄度チェック」っていうパネルがあったよ。

2択が並んでいて、「やる気がなく無責任」とか「時間も金も無駄使いする」とかを選ぶと地獄側に近づく。「義務も責任も進んで果たす」とか「親切で人のためによく尽くす」を選ぶと極楽寄りになる。

あれれ…。僕、極楽に縁がない…??

 

地獄堂2

ま、いいや。地獄の予行演習ということで。通行手形のQRコードをセンサーにかざすとお堂のドアが左右に開いた。最近では地獄もハイテク化が進んできたなぁ…。

 

地獄堂3

ドアから中に入ると、1畳もないような狭さのこの空間。わわっ、なにこれ!なにこれ!!すごい圧迫感!

いきなりのこの世界観に、僕は面食らったさ。

 

地獄堂4

閻魔大王!!僕の目の前には閻魔大王がいるのだ。これから審判を受けるのだ。この迫力よ。そんで距離近いよ。

同行者がいるならまだしも、僕1人だもん。怖いよ。

 

地獄堂5

右を見たら、地獄の鬼と奪衣婆だ!服を脱がせてその重さで罪の判定をする婆さんだったっけ?

このばあさんと会うなら冬場は避けた方がいいよね。コート、重いからな。アロハシャツとかでフランクに行きたい。

 

…とりあえず、何をどうすりゃいいんだっけ?ちょいと気が動転して、一度地獄堂を出た。

するとちょうど外にいたさっきのおばさまが「あら?早いじゃない。ドラを叩くのよ。叩いた?」って言ってくれた。そっか、ドラか。叩かなきゃ。

僕は再び地獄の中に吸い込まれた。

 

地獄堂6

ドラ、叩く…!「ギャオーン!」と響いた。反動で写真がブレた。

それに反応し、地獄解説動画が始まったようだ。

 

地獄堂7

鬼の横の鏡の中に顔が浮かび、リアルに動きながら語りかけてくる。

死んだら三途の川を渡り、奪衣婆に診断され、閻魔大王と対面し、地獄行きと判定されたらいかに悲惨か。そのエグい地獄の様子が次々と鏡に浮かび上がった。

ふむ、これ小さい子は泣くな。トラウマになるな。

 

地獄堂8

連動して奪衣婆もしゃべる。…てゆーか、マジにリアルな顔の婆さんだな。そしてさっき気付かなかったけど、腹の中に何を埋め込んでいるのだよ。

 

地獄堂9

鏡の中の動画はどんどん続く。

地獄の釜茹でだ。人間を煮込んでいるのがわかる。恐ろしい地獄だ。針山地獄もあるぞ。体、串刺しになる。かなり痛そうだ。

 

地獄堂10

賽の河原で延々と石を積み続ける子供たちもいる。哀れ。

 

そんな感じで6分ほど阿鼻叫喚な動画を見せられたあと、「命はひとつきり。悪い行いをすれば地獄に落ちるが、いい行いをすればお地蔵さんが救ってくれる。」と飴と鞭的な救済措置に入って行った。

「おまえらはどうだ?悪い行いはするなよ。人のためになるようなことをし、何より自分自身を大切に大切に、しろよ…。」と諭されて終わった。

 

地獄堂11

結構濃厚な演出に、しばし放心状態となったぜ。これ100円は安いな。

しかしもし参拝者がたくさんいた場合、これどうなるんだろうね?詰めても3人くらいのこのお堂に参拝者が詰め寄せたら大変そうだ。だからこそ、大事にしておきたいスポットかもな。

 

 

ごく一部ではあるが、動画もあるから見てみてね。

ちなみにこれを執筆時、ちょいと設定を間違えて自動的に延々ループになってしまい、この音声が執筆しながらもずーっと聞こえていた。やめて、心が壊れるぅぅ…。

 

 

そして極楽を巡り…

 

では、そのあと時間の許す範囲で巡った、その他の境内のスポットをご紹介しよう。

まずは地獄の釜の音が聞こえる石なんてものがあって、岩の中に頭を突っ込む場所があったりしたんだけど、それは写真に撮らなかったからスルーね。

 

極楽巡り1

これは仏様と赤い糸で結ばれるらしい。写真に向かって左側に座れば、レーザー光線のような赤い糸で仏様と繋がれるぜ。

いや、赤い糸って運命の相手とか恋人と繋がるんじゃないの?仏様と繋がるの?

 

極楽巡り2

なるほど、「カップルだったら2人でこのイスに座りなさい」ってこった!1人だったら仏様がお相手してくださるんだとよぉ!

僕は1人だ!仏様、相手してくれよ!そんでカップルは爆発しろ!!

 

極楽巡り3

うん、順番間違えたかも!賽の河原に来ちゃった!

ひとつ積んでは父のため、ふたつ積んでは母のため、だ。「どこまで石が積めるかあなたも挑戦してみてください」というユニークな体験コーナーだ。賽の河原がエンタメ化している!

 

極楽巡り4

なんだこの妖しい雰囲気のお堂は…。どうやら涅槃堂らしい。

時間と共にゆっくりと照明の色合いが変わっていくお堂の中には、ガラスの涅槃仏が祀られていた。

 

極楽巡り7

これね。現代アートの芸術家さんが造ったという涅槃仏。総ガラス造りのものらしい。静かで心休まりそうな空間だね。

 

いや、でも僕は実はあんまり心が休まっていない。境内の遠くの方でおばさまがこっちを見ているのだ。「そろそろ閉館よ、急ぎなさい」っていうオーラがビシバシとここまで届く。まぁ待て。17:30まではあと数分あるだろう。

 

極楽巡り8

最後に訪れたのは、「ほとけのくに」と書かれた地下に降りる階段。地下に行けばおばさまの目線も届かなくなる。

よし、逃げ込もう。助けて、仏様。あと数分だけ僕をかくまって。

 

極楽巡り9

幻想空間。「ほとけのいのちにつつまれる」と書いてある。ほとけのいのち?わかりそうでわからない。でもいい。頭ではなく心で感じるのだ。

 

極楽巡り10

あぁ、これはセーブポイント。リアルセーブポイントRPGのダンジョン内で体力回復と共にセーブできる聖なるスポットじゃないか。実在したんだね。

 

このステンドグラスの曼陀羅内で瞑想するといい感じらしい。周囲グルリと仏像に囲まれていてパワーもらえるらしい。

耳を澄ませば水琴窟からの水滴の音も聞こえてくる。リラクゼーション効果バツグンだね。

 

ただし僕はもう時間だ。残念。

 

極楽巡り11

もう境内はかなり薄暗くなっていた。

おばさまに「ありがとうございました」と伝える。おばさま、「通行手形があればまた何度でも来れるからね」と優しく見送ってくれた。

寺務所のライトが消えた。ギリギリの時間にすみません。でも楽しかった。

 

 

みんなも地獄極楽体験を

 

…というわけでだ、かなり遅い時間に駆け足で参拝したので、途中で漏れがあったかもしれないし順番が食い違ったかもしれないし、詳細まで理解できなかったかもしれない。

 

そんな全興寺1

何を撮影したのかよくわからない写真も数枚ある。現地でもっと解説などを読めばよかったけど、そこまでも余裕もなかったのだ。

いろんな見どころがあるので、もしあなたが訪れる場合は日中に時間に余裕をもって行ってみてほしい。

 

そんな全興寺2

まるでテーマパークのようだろう。全興寺さんもあまりかしこまらずに、気軽に遊びに来てほしいみたいなニュアンスのことをWebに書いている。

 

そんな全興寺3

「鬼ハンター」というスマホゲームまであるんだぜ。境内に隠れている4匹の鬼を見つけ出すというスマホゲームであり、4匹見つけると免許皆伝となってあなたに幸せが訪れるのだ。

 

こんなことを書くと「この寺、大丈夫かな?ちゃんと由緒とかあるのかな?」って思われてしまうかもしれない。

しかし1400年も前から続くお寺であり、あの聖徳太子薬師如来像をここに安置したことがお寺の始まりだそうなのだ。大阪最古の木造建造物の1つでもあるそうだよ。

ガチな歴史的スポットなのだ。

 

そんな全興寺4

楽しく地獄や極楽を学び、ほんの少しだけ自身の日ごろの行いを悔い改められればいいですな。僕も天国行けるようにがんばるよ。

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 全興寺
  • 住所: 大阪府大阪市平野区平野本町4-12-21
  • 料金: 100円
  • 駐車場: おそらく無し。付近のコインパーキングを使用のこと。
  • 時間: 8:30~17:00

 

No.381【大阪府】デカ盛り喫茶でノックアウト!刮目せよ、「喫茶Y」のハーフサンドを!!

「喫茶Y」というデカ盛りの名店がある。デカ盛りなだけではなく、サービス精神と人情味があふれるお店だというので、別に全然大食いではない僕の食指も動いた。

土日は営業していないし平日も13時には閉店するというちょっとハードルが高めのお店だが、気になる。なんとかしてこのお店の雰囲気を味わってみたいと考えた。

 

…というわけで、そこに興味本位で1人で突撃してヤケドした話をしたい。

マジにアホみたいに大盛りなので、行くならカクゴしてかかれよ、オマエら!!

 

 

 

商店街を歩いて行こうぜ

 

お腹を空かせるために、天満という駅の近くを歩いた。

 

天満の商店街1

駅前からかなり攻めた佇まいのお店がある。店名は「中トロと豚足」らしい。メニューみたいな店名だ。

1円で飲める立ち飲み屋とのことでさっそくフラリと覗きたくなるのだが、このあとの本命に支障が出ては困るのでここはガマンをする。

 

天満の商店街2

わぁ、なんて素敵な商店街。「千と千尋の神隠し」の冒頭で、両親が豚になるまで食った商店街みたいな雰囲気だ。

僕も豚になるなで食いてぇよ。黄色い「やきとん」の看板を見上げて、そうつぶやいた。

 

天満の商店街3

グリーンカレー」というパワーワードグリーンカレー自体はそんなに珍しいものでもないが、この看板を見ただけで「むふふ」と笑ってしまいそうになる。

 

天満の商店街4

僕はこの町に来るのは初めてなのでよくわからないが、こういう狭い商店街が格子状に組み合わさっているように感じた。

昭和時代のテイストを残す町並み。でも令和の今も活気がありそうな町並み。まだ朝なのでシャッターが閉まっているお店が多いが、夕方などはさぞかし活気づくのであろうな。

 

天満の商店街5

縦横無尽に続くアーケード。僕の心の中の少年が、「クラスのみんなでここで鬼ごっこしたらきっと楽しいね」と言っていた。そうだね。大人がやったら怒られるだろうけどね。

 

古い町並み

途中で古い町並みもあった。これは昭和ではなく、大正とか明治とか、そんな感じ?リノベーションしてオシャレなお店が入っているような雰囲気だった。

 

そんな新旧が融合した活気のある町の大通り沿いに目指す喫茶Yがある。

 

喫茶Yを発見

「思ったより普通だぞ」って思ったが、最近のドラマでも犯人は思ったり普通そうなヤツのことの方が多いよね。そういうこったよ。

 

 

嵐の前のざわめき

 

道路の対岸に見えた喫茶Yは、こうしてみるとそんなにとんでもないお店には見えなかった。しかしあなどるながれ、アイツはとんでもない牙を持っている。

まずはこうして広い車道の対岸から見学したのだ。

 

喫茶Yの脅威1

シックな看板。ブラウンの軒に黄色い文字で「Y」だ。かっこいい。こうしてみると落ち着いた純喫茶のような雰囲気もする。

こんな店がドカ盛りの名店なはずがないと思う。そうだよ、そうに違いない。

 

喫茶Yの脅威2

店の扉を開けると、10数席ほどのやや小さな純喫茶店風のお店。まぁ肩書は「喫茶」だしな。

数人のお客さんがいて、なんか目の前の大盛りのお皿と格闘していた。あぁマジだった。ここは戦場であった。

 

愛想の良いパワフルなおばちゃんオーナーが「奥へどうぞー!」と言うので、お店の一番奥の席に座った。

おばちゃんはお客さんにギャンギャンコミュニケーションを取ってサービスをしてくるそうだが、僕はそれに対するやや死角だ。少し残念だが、ビギナーだからこんなもんでいいだろう。

 

喫茶Yの脅威3

時刻は10:40であった。10時までであればモーニングセットというものがあり、1000円でドカ盛りプレートとコーヒーがつくらしい。

残念ながらその時間帯は終わっている。まぁ横ではまだモーニングと闘っている人がいるけど。最低でも40分は食べ続けているってことだよね、軽い地獄。

 

喫茶Yの脅威4

じゃあ何にしようかな。パンを食べたい気分だ。

ハーフサンドなんてどうだろう?1000円してちょっと高いし、ハーフだからなんだか量が少なめな感じもするけど、下手なものを頼んで自爆もしたくないし。

ドカ盛りを頼むのであれば、またいつの日か2回目の訪問をするときでもいいし。

 

ハーフサンドをオーダーした。それとホットコーヒーだ。

すぐに最初のお皿が出てきた。

 

喫茶Yの脅威5

パスタサラダだ。この写真ではそうは見えないかもしれないが、なかなかの量があるぞ。小腹を満たせるくらいはある。うまい。

 

カウンターのおばちゃんは、近くにいるお客さんに「粕汁!?豚汁!?」って聞いている。お客さんが「豚汁」と言うと、おばちゃんが「今日は粕汁がおススメなのよー!…で、どっち??」って選択肢のない二者択一を持ち掛け、お客さんは「じゃあ粕汁…」と言っていた。

「ふーん、なんかそういうセットメニューなのかなー」って思っていたら、僕も聞かれた。僕はおばちゃんの目をまっすぐ見据えて「豚汁を食べたいです」と言った。

 

喫茶Yの脅威6

豚汁が出てきた。お椀にたっぷりとだ。豚肉のエキスが解け出ていてとてもうまい。サラダパスタとこの豚汁があるので、あとはもうご飯をお茶碗軽めにもらえれば大満足といったところだ。

だがまだメインのハーフサンドとやらがまだなのだ。そこまでのボリュームではないと思うが、もうお腹はいい感じに落ち着いてきたので今後が気になる。

 

喫茶Yの脅威7

このタイミングでコーヒーが出てきた。マグカップで多めの量なのが嬉しい。クセのないビターなテイストでうまいんだぞ。

 

…外国人客の8人がやってきた。ここから風向きが変わる。

 

 

ハーフサンドの衝撃

 

外国人の人が扉を開け、おばちゃんに「8人ですけどいいですか?」みたいに言っていた。おばちゃんは少し考え、「いいよ」と答えた。

大柄な西洋人の男女8人が入店した。そして3つのテーブルに分かれて座った。

店内はもともとテーブル間隔も狭いので、彼らが座るともうすべてのテーブルとイスが密着するほどのギュウギュウ詰めとなった。

僕、絶対に出られない配置になった。もう逃げられないぞ、この店から。

 

ハーフサンドが出来上がったそうだ。

店員さんは西洋人に阻まれて僕のところまで近づけず、なんかもう「ラピュタ」でパズーとシータがギリッギリで飛行石を渡すシーンみたいにお皿を受け取った。

思った以上にお皿は大きく、そして重い。腕がガクッと下がりそうになるのを耐え、それを自分のテーブルに置いた。

 

ハーフサンド1

西洋人が僕のお皿を見て一様に「ワーォ!!」と言った。

いや、それは僕のセリフなのである。先に言うなよ、このリアクション泥棒。

 

アホみたいに巨大なサンドイッチが4つ、お皿に載っている。1つ1つのサイズはビックマックをさらに大きくしたような感じである。つまりビックマックを4つほど1人で食べるのよりもう少し多いくらいに思っていただきたい。

さらに忘れちゃダメなのが、さらにサラダパスタと豚汁をすでに食べているという点だ。ヤベーぞ、これヤベー案件。

 

ハーフサンド2

サンドイッチは片手でなんどか持つことができるくらいの厚さ。でも口には入らない。端っこから食べていくしかないな。

パンはこんがりとトーストしてあって香ばしくておいしいが、いかんせん口の中の水分を持っていかれるな。

 

モリモリのレタス、玉子もたくさんだ。無料で10個まで増やせるらしいが、特にオーダーしない場合は何個なのだろう?これ5個くらいは使っているのかな?

それとスライスハムがエグい。6枚重ねくらいになっている。

 

ハーフサンド3

外国人のグループはおばちゃんに「アメリカンスタイル」と言ってオーダーしていた。あぁそんなメニューあるの?

キッチンで大量の玉子や肉が焼かれだしたらしく、店内にもうもうと煙が立ち込めた。「ここはステーキハウスですかな?」って思った。

 

大皿に山盛りのスクランブルエッグ、そしてベーコンの山が西洋人の前にドンと置かれた。これホテルのビュッフェだね。外国人たち「ヒュオォォーー!」みたいにテンション上がって突っついていた。

それからトーストが2枚切りくらいのブロックで山盛りにされて次々出てきた。

 

おばちゃんは外国人グループにも「粕汁!?豚汁!?」って聞いていた。物おじせずにロクに話せない英語で果敢に突っ込んでいくおばちゃん、すごい。大阪のおかんだ。

 

ハーフサンド4

サンドイッチは残り半分となっていた。つらい。もう既に相当につらい。

忘れていたが、ハーフサンドでこれだぜ?じゃあハーフじゃないサンドイッチはこれの倍なのか?誰が食えるんだ、そんなもん。

 

のどが渇く…。しかし外国人に阻まれて水を頼みづらい。

なんとか隙を見計らって水をオーダーし、外国人の肩越しに受け取った。冷たい水がうますぎる。しかしそれによって胃のキャパはさらに少なくなったぜ。

 

ハーフサンド5

残り1つ…。もう僕、遠い目をしている。

多分僕は完食できずに撃沈するのだろう。そんな未来しか見えない。あとはどれだけ頑張れるかだ。

 

もう手も口の周りもケチャップなどで汚れているし、それを拭いたティッシュもテーブルの上にたくさんある。激しい闘いの軌跡。僕は身も心も疲れてきている。

 

ハーフサンド6

ここでダウンした。もうあと1ミリも食べられない。

「あとちょっとじゃないか」って思われるかもしれないが、たぶんコンビニの230円くらいのサンドイッチと同じくらいのボリュームある。無理。ごめんなさい。

 

会計時におばちゃんに「美味しかったのだけども、少し残してしまってすみません」と謝った。

おばちゃんは「いいのよー、量が多いもんね」ってにっこり笑ってくれた。

最後に僕は「ハーフであの量ってことは、普通のサンドイッチはどんな感じなのですか?」って聞いてみた。

 

するとおばちゃんは「昔はあったんだけどね、今はないの。だってあれ以上の量だと食べきれないでしょ?」とのこと。昔ってスゲーな。

 

また逢う日まで1

もともとは地元の学生に安い値段でお腹いっぱい食べてもらおうと始めたという大盛りのお店。

学生はいなくって西洋人に囲まれた異様な時間だったけども、その精神はしかと見届けた。それから「サービスしてモーニングと同じ1000円にしちゃう!コーヒー代はいらないわ!」って言われた。ありがとう、感謝です。

 

また逢う日まで2

もう今日は何も食べられないだろうし、何も食べたくないな…。

フラフラしながらお店を出た。冷たい風が心地よかった。…と、ここで店内にマフラーを忘れたことに気づき、慌てて戻った。そして外国人の肉の隙間を「すみませんすみません」って言いながら搔い潜り、マフラーを回収した。

 

また逢う日まで3

次があるのだとしたら、ご飯系のメニューを食べてみたいかな。

それでは、また逢う日までごきげんよう

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 喫茶Y
  • 住所: 大阪府大阪市北区豊崎1‐3‐1 丸善レヂデンス豊崎 1F
  • 料金: ハーフサンド¥1000他
  • 駐車場: なし。付近のコインパーキングを使用のこと
  • 時間: 8:00~13:00(土日祝定休)

 

No.380【岡山県】90代のばあちゃんが営むレトロ自販機!「ログランド」で食べたかった…!

レトロ自販機は、「いつか行こう」が通用しなかったりするんだ。

 

昭和時代から平成初期に作られた自販機はもうボロボロで、いつ壊れてもおかしくない状態のものも多い。壊れてももう部品が無いから直せなかったりする。

それに、当時から自販機を管理しているオーナーさんも高齢だったりする。もちろん世代交代していたり新規事情としてレトロ自販機ビジネスを始める人もいるが、一世一代のケースも多い。

まさに自販機が先か、オーナーさんが先か…みたいな事態もありうるのだ。

 

 

「LOG LAND(ログランド)」。

僕はここを2回訪問している。ログハウス風の外観のこのオシャレな建物の軒先にはレトロな麺類自販機があってね、90過ぎのおばあちゃんが管理していたのだ。

 

だけども僕はこのレトロ自販機のうどんを食べることができなかった。

おばあちゃんが亡くなり、自販機も管理する人がいなくなって稼働停止し、そしてついに撤去されてしまったのだ。あぁ、食べてみたかったなぁ…。

 

今回は、食レポはできない。食べたことがないのだから。レトロ自販機を求めて訪れたエピソードのみを執筆しようと思う。

ほら、旅って目的を達成できないものまた1つの醍醐味だからさ。まぁ「こういうこともあるうるよねー…」くらいの軽い気持ちで読んでくださいな。

 

 

あと少し早ければと悔いた朝

 

今から10年以上も前のことだったろう。シトシト降る雨の中、旧川上町に足を踏み入れた。

 

マンガ文化のまち1

見えづらいが柱の左側に『マンガ文化のまち』と書かれている。旧川上町は、マンガ文化で盛り上がろうとしている町なのだ。

 

どうやらね、もともとはマンガとは関係のない町だったけど、過疎化が進む中での町起こしとしてそれにちなんだ施設を作ったりし、活気づいて来ているとのなのだ。

その歴史は結構古く、1988年くらいから力を入れているらしい。1988年って、まだマンガは子供の読む低俗な文化だ、とか思われていた時代だよね。先見の明があるな、この町。

 

マンガ文化のまち2

マンガ家の「富永一朗さん」がこの町の名誉市民であり、彼の描いたキャラクターを掲げたりしてがんばっているらしいよ。

富永一朗さん、2021年に亡くなったよね。悲しみ。

 

さて、今回僕がここを訪れた目的は、マンガではなくてレトロ自販機なのである。この町のどこかに麺類のレトロ自販機の生き残りがあると聞いてやってきた。

 

マンガ文化のまち3

こんなのどかな雰囲気の町のどこにレトロ自販機があるのだろうか…?

詳細な情報は手元に無いので、一度国道沿いのレストハウス風のお店の敷地に車を停め
ツーリングマップルを確認し目星をつける。

そして町の中心地をグルグルと車で走りまわった。

 

…で、見つからなかった。町を一周してまたレストハウスに戻ってきた。

そこで気付いた。ここが目的地だった。ログランドというレストハウス。まさに灯台下暗しだったぜ。

 

雨のログランド1

これがそのログランド。ログハウス風の休憩施設。

まだ朝の9時なので施設自体はオープンしていない様子だ。だが建物の軒下には自販機
群があり、その1つが麺類のレトロ自販機なのだ。

よーし!見つけたぞ!!車を降りると、雨の中をダッシュで軒下に飛び込んだ。

雨のログランド2

おぉ、渋い飲食スペースだなぁ。小さなテーブルと、たった1脚のイス。なかなかそそるロケーション。そしてそれを見守るように富士電機のレトロ麺類自販機だ。

てゆーか、誰だよ直前に食べたヤツ。丼がそのまんまだし、パックのドリンク飲料も放置されているじゃないか。片づけて行け。

 

「では、気を取り直して自販機のうどんを食べますか」って思って自販機に対峙するんだけど、まさかの売り切れだった。ガックリ来た。

雨なのか自分の涙なのかわからないくらいになった。いや、それは誇張しすぎなんだけど、ガッカリはした。

 

雨のログランド3

どうやらこのお店のうどんはおいしいと人気で、すぐ売り切れるお店らしいね。

テーブルの上の丼にはまだ汁も残っている。丼回収容器の中も、丼でいっぱいだ。あと数時間、もしかしたら数10分早ければ食べることができたのかもしれないなぁ。悔しい。

まぁ次があるさ。気を取り直してドライブを続けよう。

 

マンガ文化のまち4

引き続き町を走って見つけたのは、成羽川に架かる「神楽橋」の欄干に立つのは、備中神楽のスサノオ。この曇天の雨の中だから、より一層おどろおどろしく見えますな。橋の反対側にはクシナダヒメがいたぞ。

これらはマンガ文化とは関係のないものなのだろうが、いいものを見られたぜ。

 

 

後の祭りだと気づいた夕暮れ

 

時は流れて2022年の春の夕暮れ。僕は再びログランドを目指していた。

 

切なさあふれる夕暮れ1

もうすぐ19時になろうとしている時間帯だ。空を染める赤い雲も、徐々に黒くなっていっていた。もうすぐ夜がくるのだ。

僕は焦っていた。ログランドの自販機麺が、また売り切れてしまってはないだろうかと。今さら急いでもしょうがないのだが、ハンドルを握る手に力が入る。

 

カーナビに入力した、ログランドの住所に到着した。

懐かしいログハウスが― …、

 

切なさあふれる夕暮れ2

― …あれ? ログハウスどこ行った?

カーナビに入れた住所、間違っていないよね??暮れ行く空、目の前の国道を音速で通り過ぎていくトラック。僕の心は不安でいっぱいになった。

 

が、すぐに気づいた。

 

切なさあふれる夕暮れ3

ログランドのすぐ前にガソリンスタンドができていたのだ。

上の写真には写っていないが、ガソリンスタンドの右手に国道がある。国道から見ると、ログランドは完全にガソリンスタンドの裏なのだ。

なんてこった。ログランドの駐車場はすんごく広いのに、あえて建物のすぐ前にガソリンスタンドかよ…!

 

切なさあふれる夕暮れ4

別角度からの写真を見てほしい。ログランドを包み隠すようにガソリンスタンドの外壁が造られている。

どういうことだENEOS…!!これはいったい、どういうことなんだよ…!!

 

僕は握りしめたこぶしがプルプル震えるのを感じた。いや、実際は「あれ?」って思ってちょっと眉間にしわを寄せた程度なんだけどさ。

それに実はこのガソリンスタンド、2013年くらいにできているんだよね。僕、知らなかったわ。知らない間に時間が流れすぎていた。

 

何はともあれ。この時間ではあるが、上の写真の通りログランドの屋根に沿っておめでたい感じの電飾がついている。営業しているのかな?早速本題のレトロ自販機を確認してみよう。

 

切なさあふれる夕暮れ5

 

ないの。

 

 

いや、何がないって、そりゃあなたレトロ自販機ですよ。

カップ麺自販機の隣に、あの日はちゃんとあったじゃないですか。その対面のテーブルに汁の残った丼が置いてあったのを、あなたも覚えているでしょ?

売り切れのカクゴはある程度してきたけど、まさかレトロ自販機自体がないことは想定していなかった。呆然とした。

 

切なさあふれる夕暮れ6

カップ麺自販機は『使用中止』と貼り紙がされていた。左の汎用自販機は動いているようだった。

しかしそんなことはどうでもいい。レトロ自販機のうどんを食べたかったのだ。撤去されてしまっては、もう二度と食べられないじゃないか…。

 

切なさあふれる夕暮れ7

ちょいとヘコむキツネに、「ドンマイ!」って感じで背中を叩くウサギ。いや、ドンマイじゃねぇし…。

国道を走り去るトラックのエンジン音だけが、僕の背中にむなしく響いた。

夕暮れ空は、いつもより切なく感じた。

 

 

90代のばあちゃんのレトロ自販機

 

これは後から知ったことだが。

ログランドのレトロ自販機は、90過ぎのおばあちゃんが毎日麺類を準備し、補充やメンテをして維持されていた。

独特の太麺のうどんは好評で、でもおばあちゃんの体力的にたくさんの個数は準備できなくって、だから売り切れる日も多かったみたい。

 

2019年だったかな。91歳だったおばあちゃんがお亡くなりになり、維持する人がいなくなった自販機は稼働しなくなったのだ。

 

無くなった自販機1

その後もしばらくは非稼働のままで放置されていた自販機であるが、2021年についに撤去されてしまったらしい。

Webで調べてみたが、その後の行方はちょっとわからなかった。

 

あぁ、僕は何も知らなかった。

あの日も「ログランドは当然現存するはず。うどんを食おう。」とウッキウキだったのだ。稼働しているか調べるという頭もなかった。

昔ながらの商店ではなく、こじゃれたログハウスだから、高齢のおばあちゃんが1人で管理しているとは想像もしていなかったよ。

 

無くなった自販機2

冒頭の内容を繰り返すこととなってしまうが。

レトロ自販機もそのオーナーさんも、かなり高齢になっているケースが多い。「いつか行こう」・「また行こう」が実現するとは限らないのだ。

昭和時代はどんどん遠のいているのだ。

 

そりゃ僕も「まだ残っていたんだ…!」って感覚でレトロ自販機巡りをするのが好きなんだけどさ、同時にこういう悲しい思いも味わっている。

だからこそ、1軒1軒感謝の気持ちで丁寧に巡り、そして記録をキチンと残したい。

 

無くなった自販機3

食べられなかったけど、会えなかったけど、遅すぎたけど。

オーナーのおばあちゃん、永い間お疲れさまでした。

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: ログランド
  • 住所: 岡山県高梁市川上町地頭1539
  • 料金: 天ぷらうどん¥330
  • 駐車場: あり
  • 時間: 特になし