今回ご紹介するのは、「ふるさと村 大谷屋」というレトロ自販機を保有する小さな商店のお話だ。
僕は麺類・トースト・ハンバーガーなどがアツアツの状態で出てくるレトロ自販機が好きで、全国を渡り歩いている。
その中でも最後にアプローチすることとなったのがこのお店だ。2025年になってようやく訪問したのだ。長い長い旅路のフィナーレを飾るお店なのだ。

島根県の山間部。中国地方の日本海側と瀬戸内海側との中間点近く。
つまりは海沿いに中国地方を一周するケースの多い僕にとっては極めてアプローチのしづらい立地なのだが、このお店のためだけに内陸まで突っ込んでいく価値は充分にあったと振り返っている。
さて、ではその日の小さな小さな思い出をご紹介しよう。
川ガニも売ってるよ
ひたすらに山間部を奥へ奥へと走っていた。
寒いし小雨も降っていて、ドライブしていてあまり楽しい雰囲気ではなかった。今、僕の心の支えになっているのはふるさと村 大谷屋だけだった。

ふるさと村 大谷屋があるからこそ、ここまで内陸部を目指せている。
ただ、逆を言うと食べ終わったら来た道を延々と戻って、さっきまで海岸沿いを走っていた日本海まで行くんだけどな。ただ、帰路はきっと笑顔であると信じたい。数10分後の僕は温かいレトロ自販機のうどんを食べ、きっとニコニコでアクセルを踏んでいるはずだ。

ポツリポツリと人家も出てきた。集落かな。曇天で映えないが、赤い屋根の家が多いな。集落があるってことは、大谷屋もそろそろって感じかな…。

こうして大谷屋にたどり着いた。「おぉ、商店であることは知っていたが、思ったよりも小ぶりなのだな…」というのが第一印象であった。そして"村"っぽさはこのお店のどこにあるのだろうか、って思った。
それではまずは外観から見て行こうか。小雨が降る中ではあるが、素早く見学していこうと思うよ。傘をさすのは面倒だから。

まずは商店部分から見て行こう。…あ、自販機小屋はこれではなくって隣にあるのだ。だから自販機小屋はあとでご紹介するね。
緑の看板と軒先テントがかわいい店舗。
商店だろうしドアにデカデカと「酒」と書かれているので、少なくとも酒は売っているのだろう。他にどんなものが売られているのか少しだけ興味はあったが、僕はこのドアを開けなかった。
今回の本題はこの商店ではないし。ドアには「株式会社エムアンドアイ柿木事務所」と書かれていたので、マジにオフィスだったら気まずいな、とも思ったので。

「酒酒」と連呼されたドアの前には、新聞の無人販売がされていた。料金は宙に置いている青いボックスの中に入れるシステムらしい。でもマナーの悪い人のせいで料金が合わずに売上が不足しているので監視カメラをつけているという。
「じゃあ店内で販売すればいいのに」とも思うが、店内で有人販売はしないタイプのお店なのかな?セルフレジだ。ある意味進んでいる。

店舗の左側では大きな桶に水道からジャボジャボと水が注がれている。背後に川がにの看板もあるので、この中にはカニがいるのだろうか…?
なんかちょっと怖くって中を覗かなかったのが悔やまれる。仮にカニを買いたい場合、どうすりゃいいのだろう?これもセルフレジ?それとも店内にカニを持っていく?どうやって?手づかみで?
疑問は尽きない。
1人用コックピット
小さな自販機小屋
では、次に商店ではなく自販機小屋にフォーカスして見ていこう。

商店に向かって右側にあるのが自販機小屋だ。
Googleマップによると少なくとも2015年までは商店の左側に自販機小屋があったのだが、2018年にはそこは真新しい家が建っている。
逆に2015年までは右側の小屋は写真プリントなどを実施しているブースだったのだが、2018年には自販機小屋になっている。時代の流れで、写真フィルムをプリントしに来る人が少なくなったからなのだろうかね…。

『カラープリント スピード30分仕上げ』の看板は、ボッコボコだ。でもなんて味わい深いのだろう。
僕もデジカメデビューはあえて遅めだった人間であり、日本1周目の頃はドライブの度に近所の写真屋さんにカメラフィルムを現像しに行った。ドライブの頻度はハンパなかったので、相当の常連になっていたさ。

自販機小屋を正面から見てみよう。『クラブフォトハウスかきのき』という名前だったそうだね。サブタイトルとして付与されている『あなたの街の、あなたの写真屋さん』という文字が、令和の現在となっては少し切なく聞こえる。
透明のドアには『安い早い』や『カラーコピー』などのステッカーが残っている。
今はさらに『うどん機 営業中』という貼り紙もある。麺類自販機、"うどん機"って呼ばれているのか。新しい呼称。

開いているドアから中身を覗いてみると…。
あったよ、富士電機製のレトロ麺類自販機。小さな自販機小屋にミッチミチに入っている。旧自販機小屋からここに運んでくるの、大変だったろうな…。
…で、このあとここでうどんを購入したとして、どこで食べるのだ?外は小雨だが、イートインスペースはあるのだろうか…??

角度を変えて見ると、あった。
自販機小屋の右側にドリンク自販機があるので、恐ろしく狭いもののイートインスペースがある。
細長いテーブルと、丸太のイス。1人しか座ることができない。むしろ座っている間に右側のドリンク自販機を使う人が現れたら、どいてあげないといけないような狭さだが、イートインできるのはありがたい。
それでは中におじゃましよう。
かき揚げうどん
いよいよ僕はレトロ麺類自販機から出てくる麺を食べるのだ。いったいどんなメニューがあるのだろうか?売り切れたりしていないだろうか?

この写真は既にメニューボタンを押した後で、ニキシー管のカウントダウンが始まってしまっているが、メニューはかき揚げうどんとラーメンの2種類であった。どちらも350円。
どちらも売り切れてはいなかったのだが、僕はそのうち1種類しか選ぶことができない。
なぜかというと、実は日本海からここに来るまでの間には複数のレトロ自販機店があるのだ。
例えば、以前執筆した「オアシス」・「後藤商店」もそれらに当たる。しかもそれぞれのお店には複数のレトロ自販機がある。さらには「後藤商店 分店」や「道の駅 シルクウェイにちはら」にもレトロ自販機がある。全部で5店舗だ。すごすぎるのだ。
僕の胃袋のキャパは、普通に考えるとレトロ自販機麺で2杯分。死ぬほど頑張って3杯分。そう考えると、ここ島根県に遥々訪れた僕的には、1店舗で2杯を食べるのはもったいないのだ。
何度かこのエリアに足を運んでいるとはいえ、1店舗で1品、かつ最大3店舗を巡るようなイメージとなる。
話が長くなったが、かき揚げうどんを選ぶかラーメンを選ぶか…。
結論としてかき揚げうどんを選んだ。うどんの方がオリジナリティが出やすいメニューなのだ。どんなうどんを提供してくれるのか、気になるのだ。

出てきた。わぁ、すんごいサイズのかき揚げだぜ。ほとんど丼の全てを覆っている。
他に具はカマボコ、ネギ、それから刻んだゆずが少し入っているようで爽やかな香りがした。

あぁ、透き通った罪悪感のないダシの味。体に浸透する。この凍えるほどに寒く雨の降る天気の中ですすると、心からホッとする。ダシが血液となって体を駆け巡るようだ。
麺はやや太めでツルツル、かき揚げはふわふわでダシが染みておりおいしい。
これを、狭い狭い1人用コックピットで食べるのだ。楽しい。ドアに背を向けて座ることになるのでラーメン「一蘭」の味集中カウンターみたいにメッチャうどんに向き合うことができる。

すぐ右手で圧倒的存在感を放っているドリンク自販機、よく見たら故障中だった。ならばこの自販機を目当てに買い物に来る人もいないから、食事中の席を立って譲る必要もないね。
そんでこれ、アルコール専用自販機だった。最下段には焼酎のパックがドコンと売られていた。あまり見かけない光景。鬼ごろしは1100円でいいともは1750円だ。

壁にはレトロ自販機に関する注意書きが掲示されている。
ここに設置されたのは1980年(昭和55年)だそうだ。今から45年前。ずいぶん頑張っている自販機なのだね。
過去に様々なトラブルが起き、何10回も自販機を廃止にしようと考えたが、継続してほしいという声もあったので頑張って修理しながら続けているという、熱い思いが語られている。
うむ、トラブル事例の中の「表示と商品が違う」は自販機のせいではなくって人間のせいでは?って思ったりもしたけど、いずれにしても大変なのだ、レトロ自販機運営は。

寒いだの雨が嫌だのと、小さい文句言っている場合じゃないよな、僕も。
自販機うどんで温まった。また走りだそうじゃないか。目指せ日本海。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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