昨今のレトロブームでTVのバラエティ番組やニュース番組、はたまたドラマにも登場したりしているレトロ自販機。
そこで人気に火が付き、連日のように人が詰めかけるお店もあるそうだ。
その裏で、ひっそりと永年営業していたお店がひっそりと消えていることもある。
昭和時代から自販機営業をしていたお店は、オーナーさんも自販機も高齢だったりするのだ。オーナーさんが倒れるのが先か、それとも自販機が来れれるのが先か…。
なんとも切ない二者択一ではあるが、目を背けるわけにはいかない現実だったりする。

さて、今回ご紹介したいのは「横田自販機コーナー」だ。
残念ながら2020年にレトロ自販機は非稼働となってしまったようだが、200円でこのモリモリなうどんを食べられたんだぜ。マジ誰にも教えたくない自販機店であったが、閉業なのでもう紹介しちゃうわ。あぁ、泣ける。
まるで工場裏の秘密基地のよう
その自販機コーナーは、四国の東海岸を縦断する国道55号のすぐ近くにあるという。
盲点であった。僕はかつて何度も何度もこの国道55号を走っている。特にこの自販機コーナーの近くから四国最東端の「蒲生田岬」にアプローチする道が延びているので、僕としては思い出深いエリアだったのだ。

国道を反れて、ほんの200mほどなのだ。されども200m。観光客が足を踏み入れることはまずないであろう工場地帯。
そして情報も充分にないスポットなのでこの200mのゴールを発見できずに付近をグルグル5分ほど走り回った。愛車のHUMMER_H3がこの小さな工場地帯を延々周っている光景は異様だったかもしれぬ。
だけどもな、道を聞こうにも人がいないのだ。工場は稼働している気配があるが、道を人が歩いていたりはしない。自力で頑張れってこった。

…あぁ!見つけたぜ!きっとあそこだ!!
あなたは上の写真を見て「その冷蔵庫が数台ミッチリと詰め込まれた小屋が該当の自販機コーナーなの??」って渋い顔をしたかもしれない。
違うんだ、僕が見ているのはそこじゃない。僕はあなたよりももっと未来を(先を)見ている。

ここだここ。工場群が立ち並ぶ中でも裏路地にあたるような界隈にたたずむ、"小屋"という以外に当てはまる単語がちょっと思い浮かばないようなスポット。
上の写真の通り普通に道路を車で走っていたらほとんど内部は見えないので自販機コーナーかどうかも気付きづらい。徐行しながら小屋の前を通過する瞬間に「ぐいっ」と首を左に向けてようやく確信が得られるのだ。

だがしかし、奥は深いし暗いぞ!でもそんな中でも最奥にレトロ麺類自販機が鎮座しているのがチラッと見えたぞ!なんだか秘密基地っぽいテイストだなぁ、ワクワク…!
専用の駐車場はないのかな…?少し先の工場地帯の空き地に停めさせてもらい、歩いて戻ってきた。さぁさぁ、レトロ自販機のうどんでのランチタイムだ!
200円のうどんで得られる幸福よ
改めて自販機小屋の内部を観察してみよう。

うん、すっごいの。バリケード感がすっごいの。
手前の日向の部分が白飛びするくらいまで調整しないと、小屋の奥の自販機がまともに撮影できない。ごらんなさい、手前の小さな四角いテーブルはもう完全に真っ白に写ってしまっているわ。

そんでな、マニアが泣いて喜ぶレトロな富士電機製の麺類自販機が一番奥の一番端、暗闇の中にあり、しかも手前側の自販機に少し隠されてしまうようなポジショニングなのだ。
なんて控えめなんだ。こんな自己主張しないレトロ自販機はあまり出会ったことないぞ。だからここにレトロ自販機があるって知らないと、100%素通りするぞ。穴場OF穴場。
それと、麺類自販機の2つ右にはビターな色合いのドリンク自販機がある。コーヒーなどの飲料自販機なのだが、それはまた後述しようね。

最奥にあるレトロ麺類自販機の前に立った。きゃー、暗いわー。でも落ち着くわー。
まるでバリケードの奥のような感じで落ち着く。きっと夏でも涼しい。まぁ今は真冬だから普通に寒いんだけどな。

メニューは2種類で天ぷらうどんときつねうどん。そしてどちらも200円だ。
安ッ!!僕は2024年現在において全国ほぼすべてのレトロ麺類自販機を巡っているが、ここは最安だよ。しかもWebで調べてみると2020年の営業終了まで値上げしていなかったらしい。神だ。お商売大丈夫だったのかな?儲けは出ていたのかな?
手描きの貼り紙が掲示してある。
『毎度ありがとうございます 時々出ないことがあります 〇〇-〇〇までお電話くださいませ 夜は売切れにさせていただきます よろしくお願い申し上げます』
これだけでさ、いろんなことがわかるよね。朝と夕方の最低2回はオーナーさんがチェックに来ているだろうこと。おそらく毎朝うどんを補充していること。文面の冒頭と末尾から、丁寧なオーナーさんだということも窺い知れる。

だからな、「自販機だから」・「200円だから」とあなどっちゃいけないレベルだってことは、もう僕本能で察知していたよ。襟を正して天ぷらうどんのボタンを押したよ。
そしたらごらんなさいな、すっげーもんが自販機から誕生なさったよ。麺がモリモリではないか。なんだこのハッピーヌードル。

天ぷらは麺の下に潜んでいる。気をつけて天地返しをすると、この通りだ。ふっこふこのかき揚げが登場した。だしを吸い込んでうまそうなことこの上ない。
この天ぷら、小エビがいっぱい入っていて芳ばしくておいしい。うどんやだしはさすが四国って感じのレベルだ。
僕はここまで四国を一周ドライブしており、ほぼ毎日2回ずつうどんを食べてきた。今回はその最後のうどんに当たるわけだが、グランドフィナーレを飾るにふさわしいうどんだ。写真を見ただけでも生きの良さが伝わるよね、これ。

そんでな、この最高のうどんに拍車をかけてくれているのがこのロケーションなのである。
自販機コーナー内には、さっき白飛びした写真でお見せした通りテーブル兼イスみたいな設備がある。そこでうどんを食べたのだ。
薄暗い自販機コーナーではあるがこのミニテーブルには日が当たっており、そこから正面に立ちはだかる、これまたちょっとレトロな工場風景を見ながらのうどんは旅情をくすぐってくれる。
洞窟の入口、冬の日だまりで食べたうどん、って感じだ。あぁ、うまかったなぁ…。
オーナーさん亡くなりうどんも無くなり
ここね、2020年に高齢のオーナーさんが体調を崩してレトロ麺類自販機の稼働を停止させることになり、2021年の暮れにオーナーさんが亡くなってしまったそうなのだ。残念すぎる。
僕は1度きりの訪問で終わってしまった。また行きたかった。次はきつねうどんを食べたかった。

さっき触れたレトロな飲料自販機も、訪問時は故障していた。故障したままオーナーさんは亡くなってしまったようだ。
この自販機も富士電機製らしい。カップ飲料の自販機だな、これ。今まで食品自販機ほどには意識していなかったが、他で見て来た記憶がない。これもかなりレアなのかもしれないな。

スタンダードコーヒー・アメリカンタイプコーヒー・ココア・紅茶、そして飛び道具的にいきなり生姜湯が出てきたりする。生姜湯だけ力強い明朝体で書かれている。
あとはブラジオーレ。何ブラジオーレって。人間界に来てそれなりに長いけど、初めて聞いた。価格は驚きの全商品50円。

お金入れてどこも動かなくって、故障だと気づいた。珍しくペットボトルや缶コーヒー以外に興味を示したのに、残念だ。
閑話休題。
2024年、僕はWebからこの自販機コーナーのことを調べた。2020年2月3日に体調不良で麺類自販機の運営を継続することが難しい旨の貼り紙が、自販機に貼られたんだね。
オーナーさんご夫婦共に体調が悪くなってしまったそうだ。
『いつもご贔屓いただきまして誠にありがとうございます。』から始まり、『恐れ入りますが何卒よろしくお願い申し上げます。』で終わり、相変わらずとても丁寧な文面であった。
その後に復活することなく、オーナーさんは亡くなった。
でもレトロ自販機は2024年現在もあのバリケードの奥でひっそりとたたずんでいる。
もうあのおいしいうどんは食べられないが、オーナーさん直筆の貼り紙がついたレトロ自販機がまだ僕らも会いに行けるのだ。
いつの日か、後を継ぐ人ができて復活してくれるといいけどなぁ。その日まで、静かに暗がりで眠っていてほしい。
以上、日本7周目を走YAMAでした。
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