益田市内の国道191号は右も左もなだらかな山が続いていて、ドライブしていてとても気持ちがよかった。
そんな道沿いに「自販機のお店 風花」はある。ほら、町から離れた国道脇の駐車帯などに大型トラックが停まって休憩しているシーンを見たことあるだろ?ちょうどあんな感じのスペースに、かわいい自販機小屋があるのだ。
ほら、左手に風花が見えてきた。
少し前のお話ではあるが、ある年の春にお腹を空かせてここにたどり着いた思い出を語ろうと思う。
山間部のかわいいプレハブ小屋
とある春の日の昼下がりであった。僕は愛車のHUMMER_H3に乗り、中国地方をドライブしていた。
このときのドライブはなるべく中国地方のレトロ自販機をたくさん巡ろうって感じの企画で、その1つとして風花に行こうと考えていた。
さぁ、そんな経緯で充分に空腹になった僕がやって来た。昼下がりだがお昼にありつけていなかったので、空腹だった。
テンション上がりきってかなり寄りで撮影してしまったので、まるで林の中に佇んでいるような図になってしまった。
実際は違うのだ。冒頭にGoogleマップのストリートビューを掲載した通り、なだらかな山の谷間の道であり、そこそこ空も広い。
この通り、お店の敷地から目の前の国道を撮影した写真が手元に残っている。
こんなロケーションだ。春のいい感じの陽気の日だ。
改めてお店を眺めてみよう。おそらくだけどもプレハブ製の小屋。だけどもセンスはあふれている。
外壁はなんだかコスモスみたいな花が咲き乱れている。わりとハンドメイド的な貼り方だけども僕もO型だからさ、そういう細かい部分は目に入らない。
屋根直下にはかわいいパネルで『自販機のお店』と書かれている。"販"と"機"・"お"と"店"の文字が少し重なっている部分がポイントだ。たぶん。
ピクトグラムもあしらっており、親しみ安さを感じるよね。「これはもう、うめーヤツだぜ!」って僕の本能も反応している。
とりあえず中に入るか。
ウッド調の内部とレトロ自販機
あぁ、中はまるでログハウスのように落ち着いて温かみのある雰囲気。
目を引くのは木製の丸テーブル、そして丸太イス。コンクリートの簡素な床ではあるが、これがあることによってなんとも言えないぬくもりを感じる。
そして同じ空間に立ち並ぶのは、富士電機製のレトロ麺類自販機、カップヌードル自販機、飲料自販機などだ。
どうやら2010年ごろまではレトロハンバーガー自販機もあったらしい。西日本では非常に残存数の少ない自販機なので、それがもう無くなってしまっているのはちょっと悲しいね…。
あと、写真には写っていないけどもレトロな汎用自販機もあって菓子パンやおにぎりなどが入っていたぞ。それらにも興味はあるが、まだこの先で食べたいものもあるので今回は麺類だけにしておこう。
こういう小物があるだけで、ソリッドな自販機小屋も一気に柔らかくなる。心遣いを感じさせる小物だ。きっと治安も良いのだろうな。24時間営業だけどもこれだけ綺麗なのは、オーナーさんもお客さんもいい人だからだぜ、きっと。
そんで外観といいこれらといい、オーナーはオシャレなおばさまなのかなって思って調べたら、その通りのようだ。
花の飾られた三角ニッチ。ステキです。
店内には小さな子連れの先客がいたので、ちょっとだけ外でボンヤリして待機した。テーブル1つだけだから、僕が合い席しちゃうとくつろげないだろうからね。
ファミリーがいなくなったタイミングで、いよいよ僕が麺類を購入するぞ。
ここのメニューは、350円のラーメンと300円の肉うどん。どちらにしようか迷う。
ラーメンの方が希少性が高いんだけども、個人的においしいと思えるのはうどんの方の可能性が高いんだよな…。初めて来たお店であれば、やっぱうどんかな。50円分安いしな。
『ラーメン よくかきまぜてお召しあがりください』とのことだ。案内が丁寧。スープが底の方に沈殿するのかな?自販機内部で湯切りをした後に最後にスープを注ぐ製造方法ではないのかな?
とりあえず肉うどんを選ぶ。レトロ自販機のメニューでうどんは定番ではあるが、肉うどんは関西地域にしかないのだ。もっとも関西地域では定番メニューなんだけど、ある意味希少性が高いのだ。
そしてこれ大事なんだけど、レトロ自販機の肉うどんにはずれはほとんどない。マジで肉うどんってうまいよな。レトロ自販機から牛肉が出てくるんだぜ、信じられるか?
丸太イスと肉うどん
お金を入れてボタンを押して気付くんだけど、出来上がりまでのカウントダウンをする数字版がデジタル表示ではなくって、ニキシ―管なのね。
あらかじめそれぞれの数字のかたちをした発光管を埋め込んである形式。
デジタルのレトロ自販機も多いので、これはややレアなタイプ。もう製造されていない、近い未来にはロスト・テクノロジーとなるであろう、絶滅間際の技術だ。しかもLEDなんかよりも遥かに寿命が短い。
話は変わるけど、僕は一時期本気でニキシー管時計がほしくって真面目に検討したさ。かなり高額だし寿命があるけども、この温かみは他にはない魅力がある。
まぁ今の技術だとLEDで似たようなことをできてしまいけどね。結局は僕もLEDに流れつつあるけどね…。でもあこがれって大事さ。
20秒ほど待ち、ニキシー管のカウントがゼロになると同時にうどんが出てきた。
おぉ!これクオリティ高いのではなかろうか!
しかも出てきた瞬間のビジュアルがこれだぜ!普通レトロ自販機の麺類って湯切りのときに具が落っこちないように麺の下に忍ばせていることも多いのだが、これは上に綺麗に乗っている。
出会った瞬間からこの仕上がり具合は、否が応でもテンション上がりますなぁ!
具は甘く煮つけた牛肉、カラフルなかまぼこ、そしてネギだ。
だし、うめぇ…!
関西特有のスッキリしたダシだけども、肉のエキスでパンチが生まれている。しかもわずかにユズが入っているね。後味に爽やかさが残るよ。
麺もつるつるしこしこで本格的だ。並のうどん屋さんよりうまいかもしれぬ。
Webでもここのうどんやラーメンの評価は高い。
特にラーメンは分厚いチャーシューに半熟卵までトッピングされていて非常に人気なのだとか。そっか、知っていたラーメンにしたかもしれないが、肉うどんも充分にうまかったので後悔はない。
また来る機会があったらラーメンにもぜひチャレンジしたい。
ガチで自販機のみの、小さな小さなドライブイン。
他のレトロ自販機店のようにゲームコーナーがあるわけでもないし、従業員さんが対応してくれるようなサービスもない。
それでも、この空間でうどんを食べたことに幸せを感じたよ。オーナーさんに会うこともなかったけど、オーナーさんのこだわりを非常に感じられたよ。
さっさと次のスポットを求めて走り出すことが多い僕としては珍しく、食後ここのお店の外で20分ばかりドリンクを飲みながらくつろいだ。
食後に風に当たるのが気持ちよかった。出発する頃には少し日が傾き出していたな。遅いお昼、これにて完了。
かなりの山間部かと思ったが、15分ほどで日本海が見えてきたりした。同じ益田市内の「三里ヶ浜」というスポットだ。
ここでまた僕はくつろぐ。うどんの余韻を噛みしめながら。風に当たりながら。春の旅は、こうやってふわふわしながら続くのだ。そういや"風花"って、いい名前だよね。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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