松山市から北東方面、奥道後に向かう国道317号沿いにユニークすぎるお店がある。
どう見ても廃電車、ボロボロな電車を使ったレストランなのだ。そのお店の名前は「でんぷん」という。
生まれついての廃墟好きである僕がこのお店に飛びつかない理由はない。突撃してきたときのことを執筆するので読んでほしい。
結論から言うと、外観に反してお料理メッチャおしゃれなんだからな!
だからあなたもデートとかで使えよ!1人で食いに行った僕が言える立場じゃねーけどな!!
歴史ある郵便鉄道車両
でんぷんは11:30に開店するという。
あまりお店ではなさそうなのと、マニアックな人たちから結構好かれてそうな予感から、開店少し前に到着するスケジュールを組んだ。満席で入店できない、なんてことは絶対に避けたかったからだ。
着いた。そしていきなり最高の光景だ。これを見たかったんだもんなぁ!
半分以上緑に覆われたボロボロの電車が店舗である。10年くらい前の写真を見ると緑は全然なくって車体もピカピカなんだけど、ジワジワと緑地化が進んでいるようだね。
でんぷんはかつては松山市街地にあり、20年近く前にここに移転してきたらしい。それ以前からこの車両はこの地にあって、他の飲食店が営業していたそうだよ。
車両の上に設置してある看板の"でんぷん"の文字が脱力系でまたギャップがある。
なんででんぷんっていう店名なのだろう。訪問時に聞こうと思っていたのだが、結局聞き忘れてしまっていたことを執筆時に思い出した。
この車両は"キユ25"というらしい。僕は全然鉄道には詳しくないので調べてみた。
キユ25とは、四国だけに存在したかつての国鉄時代の車両。1967年に生まれ、1986年に引退したものだそうだ。
この現物車両がいつからいつまで活躍したのかまではわからないけど、最低でも引退してから40年近く経過しているのだね。スゲーや。
特徴の1つは、これが郵便専用の車両であること。当時は郵便物を電車で運ぶこともあったのだ。たぶん道路の整備もまだ開発途上で、電車の方がいろんなところまで大量に運べたからなんだろうな。
さらにこういう郵便用の鉄道車両っていうのは他にもいくつかバージョンがあったんだけど、大体は他の物を運ぶ用途で造ったものを郵便用に改造したり、あるいは郵便以外のものも載せられるような設計になっている。
でもキユ25だけは郵便専用であり、郵便物を運ぶためだけに製造されたんだって。
そんな車両ではあるが、1986年に鉄道郵便制度が廃止され、お役目が終わったというワケだ。
なるほど、なかなかに貴重な車両だね。マニアにはたまらんだろう。それでちゃんと今もこうして第二の人生を歩んでいるんだもんな。
1000円で日替わりランチを
店内は半個室でワクワクだ
では、次はこの車両のレストランとしての部分もお見せしていこう。
店外に掲示してあるメニュー。いろいろと文字が剥がれ落ちてよくわかんない部分が多いけどね。
ちなみにパエリアが結構おいしいとウワサだそうだよ。僕はパエリアは食べていないから知らないけど、でもたぶん何食ってもここのはうまいと思うよ。
外壁部分の"でんぷん"の文字。
ちょっと植物っぽいテイストで書かれた文字の上にツタが這い寄ってきて見づらくなっている。そのうちここも浸食されてワケわかんないなっちゃいそうな気がするな。
では11:30の開店時間になった。オーナーのおばさまが営業中の札を出した。
車の中で待機していた先客2組が動き出した。続けて3組目である僕も店内に向かう。
店内へのドアを開ける直前、これが目に留まった。
おい聞いてくれ。本日の日替わりランチは"煮込みハンバーグ+貝柱のクリームコロッケ"だとよ。
ハンバーグまたはクリームコロッケではなく、両方か。主役級2品なんてすごくない?「あなたが落としたのは金のオノですか?銀のオノですか?」に対し「両方です」って答えたら「そっか、いいよ」と言われた気分だ。高揚感で体が火照る。
これが店内である。わかりづらいかもしれないが、テーブルごとにブースで仕切られていて、半個室のようになっている。お客さんはお互いを気にせずにゆっくりとくつろげるシステムだ。
ただしテーブル数は5つだけ。つまりは5組しか入ることができないから、満席になりやすいので注意してね。みんなそこそこくつろいじゃいだろうし。
上の写真は僕が案内されたブースから厨房方面を見ている。どうやら客席が2つあり、その向こうが厨房のようだ。
これが反対側を見た図だ。こっちにも客席が2つあり、僕が案内されたのはちょうどど真ん中なのだね。
一番奥がきっとトイレなのだが、僕は使用しなかった。使っておけばよかった。そうすれば他の客席もチラッと見ることができたんだけどな。
僕の案内されたテーブルがこれ。なんとも言えないアンティーク調の模様のテーブル。
半個室なので、この白い壁がほぼ四方を囲っており、人が出入りする隙間だけが空いているようなイメージなのだよ。すごくくつろげた。
チラリとメニューを見るが、もう心は日替わりランチに決まっている。おばさまにオーダーをした。
だけども再訪することがあれば、もっと他のメニューも食べてみたいな。なんかどれもそそられる洋食メニューなのだよ。
これはディナーコースの写真なのだが、これを見るだけでも丁寧に料理をしていることが窺える。
もう一度言うが、外観や店名とのギャップが大きすぎる。「ボロボロの電車の食堂だ!おもしろッ!」みたいにやってきた自分が恥ずかしくなるぜ。
コスパ最強1000円ランチ
ランチを待っていると、店内で「ガシャガシャガシャガシャ…!」という金属音を響かせながら何かがこっちにやってくる。
「おや、電車の中にいるのに電車がやってくるのですかな?」みたいに思ったんだけど、配膳用のカートの音だ、これ。
おばさまは食器をこのカートに乗せて行き来しているので、その走行音が鳴り響いてライヴ感を煽られる。コーヒー1杯でもこのカートが登場するんですぜ。
先客2組に無事ランチが届けられたことを耳で感知した。いよいよ僕だ。
最初に登場したのはスープとサラダ。
どちらもボリュームはやや控えめであるが、大丈夫。この後いろいろ来るから。そして全部合わせればボリュームもなかなかだから。
あと最初に行っておくけど、おかず2品・サラダ・スープ・パン・ドリンクで1000円だからね。キチンとこれだけ食べてこのお値段って、コスパすごくいいよな。
コーンポタージュの粒感がなかなか良い。「自分、さっきまでトウモロコシでした」って言いたげな舌触り。味も濃厚で満足感があるぞ。
サラダを頬張っていたらすぐにメインも来た。提供スピード、かなり速い。これで食後に頼んであるコーヒー以外はそろったぜ。
見てくださいな、盛り付けも美しいだろ。お店の外観と対照的だろ。
貝柱のクリームコロッケ。コロコロと丸くてかわいいビジュアル。
付け合わせはブロッコリーだ。僕って普段はあんまりブロッコれないんだけど、せっかくだから食べてみたらおいしくって普通にブロッコれたよ。おいしいブロッコリー。
コロッケの中身はアツアツでクリーミー。食べるとしっかりとホタテの風味が口いっぱいに広がった。僕、クリームコロッケが好きなのですよ。マクドナルドでもグラコロが好きで、寒くて日も短い冬のモチベーション維持方法はグラコロしかねぇ。
トマト風味っぽいソースも酸味があって意外に合うね。
続いては煮込みハンバーグ。シェフが力いっぱいこねたような、いびつで荒々しいフォルムだ。付け合わせはマッシュポテト。
わぁ、密度がすんごい。従って重量感もすんごい。「ふんわり」とか「ジューシー」とかとは世界観の違う料理だぞ。「肉を食いたいヤツ、かかってこい!」って言われているような気持になった。
食後、いいタイミングで厨房の方からガラガラと金属音が聞こえてきた。コーヒー、やってくるぞ。
コーヒーを飲んで至福のひととき。
開店と同時のアプローチでよかったな。結局開店10分ほどで満席になり、その後やってきた2・3組が断られていたから。
今回はランチタイムであったが、またいつか機会があったらディナータイムに訪問したい。きっと夜は夜で雰囲気いいんだろうな。電車はライトアップされたりするのかな?
ごちそうさまでした。
じゃ、今はもう走れない電車のかわりに、僕が走ろう。快速で旅の再開だ。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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