現在は多くの人がその存在を知ることなったレトロ自販機。
いや、もちろん昭和時代や平成初期の栄華をご存じの方であれば「は?最初から知ってますけど?」みたいな感じかと思うけど、ここ10年くらいで若年層などにも広く知られるようになったじゃない。
そうなったきっかけは3つくらいあったかなって、僕は考えている。
1つ目は、2007年に開設された「魚谷さん」のWebサイト「懐かし自販機~味わいの昭和レトロ自販機コーナー」。
レトロ自販機を再び世に広めた第一人者だと思っている。魚谷さんのことは神のようにしている。このサイト、たぶん僕は2009年くらいから見ているぜ。まだサイト名が"グーテンバーガー"だったころから見ている。

2つ目は、神奈川県にある「中古タイヤ市場 相模原店」。
もともとはタイヤを売っていたり車の修理をしているが、2016年に店頭に何台かのレトロ自販機を設置したところから始まり、いまや100台以上のレトロ自販機のひしめく一大聖地となった。
もちろん僕も足しげく通っている。
3つ目は、上記と同じか一瞬早いくらいの2016年にOPENした「岐阜レトロミュージアム」だ。レトロ自販機を数台有する昭和レトロなミニテーマパーク。
世の中、中古タイヤ市場 相模原店にスポットが当たりすぎてしまっているが、今までは昭和から続く個人商店やドライブインが細々と繋いできたレトロ自販機を、新たに目玉として設置してビジネスを始めるというスタイルは革新的だと感じた。

いや、正確に言えば2014年に群馬県に「自販機食堂」というレトロ複数台を使ったおkじゃれたお店ができたりもしているんだけども、やっぱ岐阜レトロミュージアムの規模で新規事業をやり始めたのはすごいのだ。
2016年って、レトロ自販機における革命の年かな?
じゃあ今回は、それの3つ目である岐阜レトロミュージアムについて執筆しよう。
圧巻の外観
日本6周目の終盤である2023年に、僕はレトロミュージアムを訪れた。
レトロ自販機を巡り出してから10年以上が経っていたし、レトロミュージアムができてから7年ほど経過していたが、初めての訪問なのだ。ゴメン、なかなか行く機会がなかったのだよ。

敷地の入口で車の駐車場誘導をしていた館長が、僕の愛車の日産パオに気付いて声をかけてくれた。どうやらSNSで僕の存在をご存じだったそうなのだ。恐縮!
…というわけで、館長に導かれて建物の裏側にパオを駐車。なかなかに人気の施設で、ギリギリ空きがあったよ。セーフ。

さっそく車の後ろの看板がいい味を出している。これもミュージアムの展示品の1つなのだ。もうこの敷地内の時間軸は昭和時代だぞ。三角窓がついてるレトロカーの日産パオがそれによく似合う世界観。

駐車場の奥にはこれまたレトロテイストな廃車が停まっていた。これは車種なんだ?ゴメン、軽トラにはあまり詳しくないんだよ。
さて、それでは館内に入ろう。
ここはドライブインでもなければ商店でもなく、テーマパークなので最初に受付で入場料が必要。
時間制であり、1時間だと1000円、3時間だと2500円、1日滞在で3500円となっている。うむ、僕の場合はレトロ自販機でご飯を食べるのが最大の目的なので、1時間コースでいこう。

入館手続きを終えた後、スタッフさんに「ちょっ、入る前に外観の写真を撮っていいですか?」って断って撮影した写真。
この瞬間に愛用のコンデジがバグってしまい、もっと撮りたい写真もあったのだが満足のいく成果を得られなかった。また行かなきゃ。
ところでこの施設は入口が2つある。向かって左がゲームやグッズであふれているゾーン、向かって右がレトロ自販機で飲食できるゾーンだ。入場料を払ったら、どっちですごしてもOK。

まずは僕は左に入った。…てゆーか、受付が左側にあったので、何も知らない僕は当然左から吸い込まれたってわけだ。
もう入口が渋い。昭和レトロな食堂風だ。こんな食堂が実際にあったら、間違いなく僕は突撃しているよね。

時系列上では早速僕は内部に入って行っているのだが、もうちょっとだけ外観の写真をご紹介させていただきたい。
これは角度を変えて撮影したもの。端にカッサカサに色あせた仮面ライダーさんがいる。詳しくないのでその種類までは存じ上げておりませんが。

屋外には飲食用のテーブルもある。「喫茶あわじ」っていう看板がある。
気候のいい時期なら気持ちいいのかもしれないが、1年の中で最も寒い時期の上に曇り空。今回はここを使う縁には恵まれなさそうだ。

これはレトロ自販機ゾーンへの入口。車庫のような内装の入口周りには、レトロなホーロー看板がいくつも掲示されていた。
正面うどんとカレーの電光掲示板を見るだけで、もうなんだかレトロ自販機のイメージが脳内を占有する。
では、いよいよ中に入ってみよう。
ゲームゾーン
入った瞬間の情報量の多さに「うおぉ…!」と小さく叫んだ。

これは奥の方から入口側を振り返った光景だ。入口は奥側から見ると「酒食料品店」と書かれた商店風のデザインになっていた。
ちなみにこれはかなり人が少ないタイミングを見計らって撮影している。実際は老若男女、ファミリーからカップルまで入り乱れていて、相当な賑わいだった。

では、もう少しズームしながら各所をご紹介していこう。入口裏にあるのはコスモス自販機。これもう超レアだぜ。
僕はこれの現役時代を知らないのだが、たぶん昭和中期から後期にかけて流行ったおもちゃの自販機。僕は現役のものは今まで3・4箇所でしか見たことがない。
こうして今も稼働しているものは、マニアが泣いて喜ぶレベルだろう。「待望のおもちゃ自販機稼働開始」と書かれているので、文字通りリリース直後だったのかな?めでたい。

そして駄菓子屋さん。昔々、僕もこういうお店に入ったことがある。
数10円でいろいろ楽しめて、そしてお店のおばあちゃんが優しくて、本当にワクワクしたなぁ。ああいう体験ができたことは、人生の糧だと思うよ。

もちろん本当にお菓子を買える。施設内にはスタッフさんが何名か常にいて、気さくに話しかけて買い物したり質問したりもできるのだ。
新しいかもしれないけど、こういう陳列風景を見るだけで懐かしい気持ちになってしまう、駄菓子屋の不思議よ。

おもちゃもギッシリだ。おもちゃ屋さんで買うようなものではない。まさしく駄菓子屋さんで売っているクオリティのおもちゃ。
もちろんチープで安価で、僕の記憶の中では100円前後で買えるようなものだ。だけども小さい頃はそんな高価なものには手が出なかったよね。機嫌のいい時の大人と一緒の時だけ、買ってもらえるのだ。

飛行機もね、作ったところでうまく飛ばないし、飛んだところで1日でどこかしら壊れるような華奢なもの。あるいは、壊れる前に飽きてしまう。
そういうのがいいんだよ。刹那を楽しんでいたんだよ、あの頃の子供って。
そういう刹那系おもちゃって大事に取っている人も少ないだろうから、思い出のだけの産物になってしまいそうだけど、ここには現役でこうしてある。あの頃の思い出は夢ではなかったのだな、と胸に熱いものがこみ上げてくる。

遠い彼方で見たことのあるじゃんけんゲーム。秒で1メダルが吸い込まれ、消えていくよな。
今から思えば当時の僕はなぜこんなものに夢中になっていたんだろうって思う。しかし子供にはたまらないエンターテイメントだったのだ。たかがじゃんけんなのに。生身の人間とじゃんけんせずに、ゲームとじゃんけんするのがすごく楽しかったのだ。
ところで、ここのゲームは何を何回やっても無料だ。僕は心行くまでじゃんけんをした。あの日のように。

国盗合戦。レトロゲーム界ではかなり知名度の高いものだろう。僕も名前だけは知っていたが、実物はたぶん初めて見た。
なんかルールが難しそうでよくわからない。当時は小さいことももやっていたのだろうが、僕は大人になってもわからん。
1つ左にあるゲームは、似たようなものを子供の頃に見た記憶がある。これも当時どういうルールかわからず、全く楽しめなかった。つまりは僕、全然成長していないのだ。嬉しいねぇ。当時の目線のままでこれらを眺められているよ。

テーブルタイプのゲーム機だ!古い喫茶店にたまーにあるヤツだ!
何種類ものゲームが内蔵されている。王道のスーパーマリオも入っている。おぉ、マリオって家庭用ではなくってこういうゲームセンタータイプのものもあるのか。

うん…、なかなか難しい。
いや、家庭用のファミコンのコントローラーであればもっとスムーズなのよ。だけどもゲームセンター用のスティックだと思うように動いてくれないんだよね、この小さいオヤジ。

おい見てくれ!アフターバーナーあるじゃないか!!
超アナログ時代に、3D視点を取り入れて一世を風靡した伝説のゲームじゃないか。当時おもちゃ屋さんの店頭TVで見たことあるが、こういう専用ゲーム機のタイプは初めて見たよ。結構リアルな操縦席じゃないか。

やってみようか。僕はパイロットとしての訓練を何も受けていないが、どうせタダで何度でもやり直せる安い命だしな。

あぁ、このリアルな描写にきっと当時の子供たちは熱狂したのだろう。インベーダーゲームみたいにガッチガチの2次元だった時代からいきなりこれが出てきたら、そりゃもう文明開化だよね。ペリーもビックリしてアメリカに引き返すわ。

なにをやっているのかよくわかんなくて、とりあえず機銃掃射してミサイルギャンギャン撃って、夕暮れ空をきりもみ回転する。それがいいのだ。空を飛んでいるだけで気持ちがいい。

ま、撃墜されまくるけどな。でも何度でも僕は立ち上がる。
もし昭和時代当時に僕が子供としてゲームセンターにいたなら、とっくにおこづかい無くなって燃え尽きていただろう。しかしここでは無限に遊べるのだ。
このゲーム機は1つしかないので、他にやりたそうな人がいないことを見計らって何度かやる。

そして出撃した回数と同じだけ、爆炎に包まれる。

こういったゲーム機でも遊んでみた。シンプルなのになんだかクセになるよね。今のゲームのようがハデだったり複雑だったり感動したりと100%上位なのだが、古いゲームはなぜか中毒性がある。シンプルで終わりが無いからかな?

最奥にはパチンコ専用のエリアがある。これも無料。そして子供も遊べる。ただし景品とは交換できないものだ。
おじさんたちが夢中になって遊んでいて、ちょいと異様な光景。僕はパチンコやったことないし興味もあまりないので、サラリと見る程度にした。
しかしここがレトロミュージアムの根幹なのだろう。館長はもともとレトロなパチンコ台の収集家で、それをみんなで遊べるようにするためにこの施設を作ったのだから。

好きな人はここで半日でも1日でもすごせるのだろうね…。数10台がズラリと並んだパチンコブースは壮観であり、賑やかな音が響いていたよ。

あと、ゲームコーナーの奥の方にはレトロハンバーガー自販機もあった。
食品自販機系は基本的にもう1つの入口側の方に集結しているのだが、例外でゲームゾーンにも1つあるのだ。

メニューには大判焼きもある…!これは珍しいぞ…!
プレーンバーガーもあるが、ケチャップ多めでカラシ少なめのレトロミュージアム限定の一品だそうだ。気になる…。

引き続きゲームに興じていると、食品自販機側のコーナーから館長に呼ばれた。「おーい、そろそろこっちにこないとハンバーガーが売り切れちゃうよー。あと2つだよー。」みたいに言われた。
わわっ、急ごう。戦闘機を爆発させている場合じゃなかった。
レトロ自販機
では、僕がここを訪れた最大の目的である、レトロ食品自販機コーナーだ。

全容はこんな感じだ。壁の片側は食品自販機が並び、もう片方はレトロな喫茶店のような革張りのイスが並び、ここでご飯を食べることができる。
じゃあランチにしよう。お目当ては麺類自販機とハンバーガー自販機だ。

中央に写っているアイス自販機も結構レアなんだけど、今は真冬なのでスルーだ。右側に写っているハンバーガーを食う。残り2つだもん、食わずに帰れるか。

カレーバーガー・てりやきバーガー・フィッシュバーガーがあり、すべて350円。僕はカレーバーガーを選んだ。
国内のレトロハンバーガー自販機で、他にカレーバーガーってあったっけ?あっても1つくらいだったろう。ならここでそれを食べたい。

これ見て!出来上がりまでの秒数カウントがデジタルでもなければニキシー管でもなく、プレートがパタパタ動いていくの。駅の行先表示板で、10年くらい前まで見かけることもあったよね?
でもレトロ自販機でこれを見たのは初めてだ。ほぼ全国のすべてのレトロ自販機を見てきたが、これは初。
興奮して館長に話しかけると、「ここだけのものだよ。魚谷さんもここに来て興奮してた。」って教えてくれた。おぉ、レトロ自販機の神もか。

取り出し口にコロンと出てくる紙のボックス。これがいいんだよね。ついつい集めちゃう。さて、席で食べようじゃないか。

シワシワで小さめのハンバーガー。野菜の一切入っていないバーガー。350円はお高めかと思うかもしれないけど、維持管理や補充の手間などを考えると納得なのだ。
そしてね、こういうので重要なのは味じゃあないんだ。エモいかどうかなんだよ。そういう意味では、これは最高にエモい。

ちゃんとパンにカレーが塗られていて、スパイシーな風味。肉はちょいとレトルト感が強めだけど、そういうのがいいのだよ。

次いくぞ。まずは手前2つの自販機を見てくれ。
さっそくこの味噌汁自販機がすごすぎる。これ、稼働しているのは国内では他に中古タイヤ市場相模原店にしかないよね?
かつては千葉県の「神栖 丸昇」に最後の1台があったんだけど、丸昇が閉店して一時期は地球上から消滅した激レア自販機だ。準備中で購入できないのが残念だ。

そしてこれが川鉄製の麺類自販機だね。日本で稼働しているのは数台の、これまた大変に貴重なものだよね。
「本日はきつねうどん」と貼り紙がされている。日替わりなのか…!通いたい!!

そんな貴重な川鉄自販機のうどん、楽しみすぎる。
メニューボタン押して待機中のときとか、館長が「動画撮るチャンスですよ!」って言ってくれていたんだけど、それ以前にカメラ起動というトラブル発生。なんだかんだでこの出来上がり写真だけなんとか撮影できた。

お揚げは麺の下に沈んでいるので、最初にそれをサルベージする。はい、見るからにジューシーそうなお揚げが登場だ。
あぁ、うまい。真冬のアツアツのきつねうどん、最高にうまい。ちょっと濃いめのダシも体に染み渡るなぁ。

このあとまたゲームコーナーを見に行ったりし、1時間まるまる遊びつくすことができた。
僕の旅ってあんまり1箇所に滞在することってないんだけどさ、こうやって限られた空間を遊びつくすのも楽しいな。

ゲームも自販機も、まだまだ1回だけでは見えない世界が多すぎる。
だからまたいつかここに遊びに行けることを楽しみにしているよ。館長、ありがとうございました!!
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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