北海道の最南端。
「白神岬」だ。
まだ日本1周目をしていた頃の僕にとっては興味の範疇にもならず、本土四島の東西南北端を巡ろうと考えた際に、ようやくその存在を知った岬であった。
…確かに知名度は低いかもしれない。
ついでに地味かもしれない。
いや。だからこそ、知る楽しみがあるかもしれない!
入口を見逃すな!
北海道・本州・四国・九州。
日本の本土と言われるこの4つの大きな島、それぞれの東西南北端がある。
詳しくは、僕の書いた以下の【特集】をご参照いただきたい。
最北の島、北海道。
その中での最南端。
なんとなく、北海道って本州の完全に北側に位置しているようなイメージがある。
しかし、実態は違う。
上の地図でも確認できるが、北海道最南端の白神岬は、本州最北端の「大間崎」よりも南なのだ。具体的には13㎞も南。
そして津軽半島最北端の「竜飛崎」までの距離は19㎞。
つまり白神岬は、極めて本州に近い北海道。
さぁ、どんなところだろうか?
それを確かめるため、僕は車を走らせている。
片側は海。そしてもう片側は切り立った崖である。
このエリアは、海沿いギリギリまで山が迫り出しているようだ。
従い、海際ギリギリを走る道はあっても、内陸部に入る道はほとんど存在しない。
そして、海沿いの道であっても、ご覧の通り展望はあまり開けず、片方から常に山のプレッシャーを感じるドライブとなるのだ。
それはすなわち、シーサイドであってもトンネルが多いということ。
函館方面の東側から白神岬にアプローチする際、ラスト4㎞弱で実に7本ほどのトンネルが登場する。
ぶっちゃけ、空の見える道よりもトンネルの方が長いのではないかと思われるほどの区間だ。
覆道もある。
厳密にはトンネルとは言わないのかもしれないが、これもトンネルにカウントする。
上の写真をご覧の通り、山が陸地の全てを飲みこんでいる。
道路を通す場所なんてない。
だからギリギリのところに覆道を作っている。
日本の土木技術の叡智を目の当たりにできた気分である。
白神岬が出現するのは、こんなタイミングだ。
白神岬があるのは、こんな立地である。
あ、左端の「白神岬展望広場」は北海道最南端ではないので、そこだけ注意してほしい。
展望広場の方は駐車場が広いしトイレもあるしで、一般観光客だったら正解だ。
しかし、突端マニアとしては不正解なのだ。
白神岬は、覆道の裏側という、とんでもないところにある。
左側に見えているのが、白神岬だ。
東側から来るのであれば、国道228号から覆道に吸い込まれると思いきや…、左手の空き地に滑り込む必要がある。
まぁ東側から来るのであれば、手前から空き地が見えているのでハンドルを切りやすい。
ちょっと難易度高めなのは、西からくる場合のルートだ。
右手に見えているのが、白神岬の空き地だ。
覆道を出た瞬間、右側に入り込む必要がある。
ちなみに事前に案内標識などは一切ない。
空き地そのものの入口にやや小さめの白神岬の看板があるだけだ。
ちょうど覆道を出て、外界の明るさで目がくらんで見にくいだろうし、目に入ったところで車はみんなハイスピードで走っているので、ブレーキを踏んでハンドルを右に切るのは危ないかもしれない。
そんな初見殺しな立地にあるのが、北海道最南端なのである。
北海道最南端の碑
近くにトイレ付きの白神岬展望広場があるためか、若干扱いが低そうに思えるこの岬。
確かに設備は全然充実していないが、旅人や突端マニアとして喜ばしい要素はそろっているので、ご紹介したい。
まずは、空き地から国道を振り返ろう。
背後には迫りくる山肌と、国道を疾走する車、そして覆道が写っている。
手前側が全部空き地。
駐車場だろうけど、駐車線も何もなく、ノッペリしたアスファルトと広がっているのみだ。フリーダムな駐車が実現可能である。
次に、空き地から東側を見てみよう。
ノッペリゾーンが続いている。
ところでち中央に看板が見えるだろうか?
画質が悪くて恐縮だが、拡大してみよう。
これが、前述の白神岬を表す唯一の看板である。
事前に標識は無い。
今はカーナビであらかじめ設定しておくこともできるが、そうでない時代においてはなかなか唐突の出現かつ控えめな看板で、見つけづらい旨をご想像いただけるとありがたい。
さて、本題だ。
空き地の海側一番奥に、「H」のかたちをした石碑がある。
北海道最南端の石碑だ。
これがあるのと無いとで、岬の価値が大きく変わる。
こんな何もない立地に、石碑を設置してくれてありがとうって、心から感謝を述べたい気持ち。
フリーダムな敷地なので、こうやって愛車との撮影も容易だ。
後ろはすぐ海なので、景観的にも絵になる。
ついでだ。
当ブログで今のところ登場頻度の少ない、日本3周目の後半戦を担当したbBも掲載してやろうか。
次に、碑の内容に着目したい。
『海底下の 列車のひびき 聞こえ来て 白神岬は さざ波の列』という句が刻まれている。
これが何を指すのか。
それは、「青函トンネル」だ。
岬からは少々外れはするが、すぐ近くを青函トンネルが走っている。
この岬の地下、そして津軽海峡の海底を列車が通り、反対側の津軽半島まで行くのだ。
ちなみに、北海道側・本州側それぞれに青函トンネルの入口があり、見学することができる。
これはまた、機会があったらご紹介したい。
とりあえず、そういう立地であることを石碑に刻んであるのだ。
「H」の両側の柱には、 横に隠し包丁みたいな切れ込みがたくさん入っている。
このデザイン、謎だ。
ちなみに僕が小学生のころ、消しゴムを定規でゴシゴシ削ってこんな感じに傷だらけの消しゴムを作ったりした。
もちろん母親に怒られる。
摩擦で熱くなった定規は、友達の素肌に押し当てて悲鳴を聞いたものだ。
いや、申し訳ない、余談であった。
「H」の左側には、もう1つ小さめの石碑がある。
少し見づらいが、「北海道最南端」と書かれている。
感無量だ。
今僕は、広い広い北海道の一番南にいる。
すごく本州に近いのだ。
仮に電車で来た場合は、北海道の中で最初の接点となる地なのだ。
最南端からの景観と灯台
さて、そんな立地の白神岬であるが、ここから本州は見えるだろうか?
冒頭でも書いたが、津軽半島最北端の竜飛崎までの距離は19㎞。なのだ。
うむ、ボンヤリと対岸に陸地が見えている。
あまりにボンヤリしてしまっていて面白みがないので、手前の岩礁も入れてみた。
岩礁の近くにいる小舟は、岩海苔でも採取しているのだろうか?
遠くの方の景観は、天国からおじいちゃんが手招きしてそうな感じになっている。
なんだったら、大型船が空に浮いてしまっている。
おじいちゃんのサイコキネシスで浮き上がってしまったのだろうか?
北海道と本州の間って、そういう磁場が働いているのだろう。
快晴の日の写真もあるので、もってきた。
しかし本州がどこにあるのかわからない…。
かろうじて見えなくもないが、この天気に反して相当に見づらかった。
僕は白神岬から竜飛崎がクッキリ見えた経験が1度もない。
逆に竜飛崎から白神岬方面は、いつもバッチリよく見えている。
曇ってきても結構北海道が見える。
立地の関係なのか、それとも運なのかよくわからないが、僕はそんな人生を歩んでいるのだ。
次に灯台をご紹介したい。
先ほど手描きの地図でも岬と灯台との位置関係を記したが、覆道を挟んだ先に灯台がある。
その距離は200mほどであるが、覆道内を徒歩で歩くのはあまりオススメできない。
かといって、灯台に駐車場があるかと言えば、上記の通り貧弱だ。
車道の反対側に一瞬停車して、灯台の写真を撮るのが一番スマートかもしれない…。
しかもこの灯台、敷地内は厳重に管理されていて立入禁止。
わざわざ頑張って訪問や撮影しても、コストパフォーマンスが低い可能性がある。
だから僕も、これ以上に接近したことは無い。
しかし見上げれば、紅白のかわいいデザインの灯台。
頭頂部が尖っているのも、またオシャレ。
通りすがりに余裕があれば、是非見てみてほしいと思う。
少々ローカルかもしれないが、 白神岬は北海道と本州を繋げる重要な地。
海峡の向こうに霞む本州を見ながら、再び僕は走り出す。
北の大地は、ここから始まる。全てがここより北にある。
それを攻略していく行程に、胸の高まりが収まらない。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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