週末大冒険

週末大冒険

ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No:060【神奈川県】海上に残るトロッコレールの残骸!!波に飲まれて消滅するは間近だ!

海の上に敷かれた線路。

そこを列車が走る…。

なんという幻想的な風景であろう。

 

しかし、なかなか現実には実現は難しいようだ。

フィクションであれば、「千と千尋の神隠し」・「ONE PIECE」・「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」などが思いついたが、やっぱりアレはフィクションだからこそできる演出なのだろう。

 

…と思っていた。

 

近しいものが現実に存在していたらしい。

だけども、それは間もなくなくなりそうだ。

 

ならば、すぐに見に行かねばならない!

それがノンフィクションであるうちに!!

 

 

曇天の久留和漁港

 

秋も半ばに入るというのに、南関東特有の残暑がまだ存在感をアピールしてくる。

曇天であっても、それはネットリと絡みついてくる。

 

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久留和漁港1

ここは、三浦半島の海沿いを走る国道。

そこを反れ、擦れ違い困難な狭路を下っていく。

道の行き止まりが、漁港である。

 

その漁港の名は、「久留和(くるわ)漁港」。

2020年は、コロナウイルス感染の抑制のため、漁港内の駐車場に一般人が駐車することはできない。

ロープが張られていたのだ。

 

仕方がない。

ちょっと離れたところに愛車のパオを駐車し、テクテク歩いて戻ってきた。

 

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久留和漁港2

あるとあらゆるモチベーションを吸い取ってしまうかのような、灰色の空だ。

漁港には数隻の小船が係留され、波の動きに合わせて静かに上下していた。

 

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久留和漁港3

遠くには湘南のシンボルと言っても過言ではない、「江の島」の灯台が見えた。

おそらく10㎞も離れていないのだろうが、あっちとこっちで随分と世界観が違うようにも感じた。

 

さらに江の島の背後には、きっと晴れれば雄大な「富士山」が見えるのであろう。

しかし、今回の企画のコンセプト的に、富士山は似合わないと感じた。

うん、見えなくって結構。

 

…もちろん、強がりである。

 

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久留和漁港4

漁港を奥へと歩いていく。

年季の入った小屋が見えた。

 

ペンキがほとんど剥げ落ちているが、「権兵衛丸」の上に微かに「船宿」の文字が見えた。

権兵衛丸(ごんべえまる)。見事なまでのシワシワネーム。

カッコイイな、と1人呟く。

 

さて、右奥に防波堤がチラリと見えていることにお気付きだろうか?

ここを華麗に乗り越える。

 

するとですね…。

 

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廃レール1

 

廃レール登場!! 

 

 

アドレナリンが「ブシュッ!!」と涌き出たのを感じた。

 

※ もしあなたが現地を訪れる場合、ここから先は自己責任でお願いします。

当ブログは一切の責任を取りません。

 

 

廃トロッコレールとの対面

 

防波堤の向こうはテトラポット

さらにその向こうに、鉄道のレールの残骸のようなものが続いていた…。

 

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廃レール2

 

 

…海に向かって。

 

 

いや、正確には海に向かっているわけではないか。

海の上を通り、海上のコンクリートの人口島に向かっている。

 

 

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廃レール3

Web上で調べたところ、あの人工島はかつては生け簀だったそうだ。

 

魚だかエビだかアワビだか。

それをあらかじめ捕獲してあの中で管理しておき、必要に応じて出荷できるようにしていたみたいだ。

 

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廃レール4

人工島には、レールの最後の残存部分が、かろうじて掴まっている。

その先にもなんらかの残骸があるが、もう原型を留めておらず、同時の面影は想像できない。

 

そして人工島は、今は野鳥の楽園だ。

 

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廃レール5

現在残っているのは、4区画分だ。

海上に取り残された3区画に、前述のコンクリート島に接続された最後の1区画。

 

しかし、壮絶なまでに朽ちているレール。

おすもうさんが張り手をしただけで倒壊しそう。

 

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廃レール6

少し角度を変えて撮影してみた。

かわいそうなくらいにヒョロヒョロなレールだ。

 

使用当時はどんな状態だったのだろうか?

まさか電車が上を通れるような強度ではあるまい。レール幅も狭いし。

 

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廃レール7

どうやら人力トロッコによって、生け簀の中の魚介類を運搬していたようだ。

では、トロッコを動かす人はどこを歩いていた??

…たぶん、レールの下に木の板でもあったのだろう。

 

それは波風の浸食が激しかったのか、それともレールが引退したときに意図的に撤去したのか…。

どのみち、現在は全く存在していない。

 

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廃レール8

サビっぷりも尋常ではない。

そりゃそうだ。

 

ここは潮風の影響をダイレクトに受けるし、波の高い日にはレール自体が波に飲み込まれる。

圧倒的スピードで朽ちていっているのだろう。

 

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廃レール9

では、トロッコがいつできて、いつ廃止されたのか…。

 

ここは僕の敬愛する 「山さ行がねば」の「ヨッキれん氏」のレポートに頼らざるを得ないだろう…。

 

yamaiga.com

 

コンクリートの人工島までザバザバ海を渡ったり、漁港の人に聞き込みまでしたヨッキさんのレポートによれば、この生け簀が使用されていたのは1978年から1988年ごろまでの、わずか10年ほどだったそうだ。

 

30年間でここまでボロボロになったのか…。

Web等でこの場所を検索すると、年を追うごとに崩壊が顕著にわかる。

 

特にここ5年ほどの劣化っぷりはハンパない。

2014年時点ではちゃんとレールはこっちからあっちまで繋がっていたのに、2020年現在ではボロッボロよ。

 

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廃レール10

どうだ、この消滅直前の最期の雄姿は。

大いなる自然に削り取られてできた、芸術作品であろう。

 

見るのであれば、本当に急がねばならないだろう。

来年の今は、もう支柱しか残っていないかもしれないぞ。

 

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廃レール11

 

テトラポットの上で

 

テトラポットを、波打ち際ギリギリまで下りてみよう。

油断すると海に落ちるし、波がかかって愛用の本革のバッグが濡れてしまうが、気をつければ大丈夫、たぶん。

 

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廃レール12

テトラポットの上には、もう残骸としか呼べないようなレールが落ちていた。

かつてはキチンと防波堤の上まで繋がっていたのだろう。

 

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廃レール13

まだボルトがしっかりと残っているのが、やけに生々しく感じた。

 

頑丈だったはずのレールは酸化して赤茶けており、表面が剥がれつつある。

さながら枯れ木のようだな、と思った。

 

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廃レール14

その老木のような鉄柱にそっと触れてみた。

僕がこのレールにとどめを刺すわけにはいかないし、僕もケガをするわけにはいかないから、あくまでそっとだ。

 

ガサガサになったその鉄柱から、在りし日の記憶を少しでも感じられたかな。

お疲れ様、トロッコレール。

 

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廃レール15

足元を見ると、無残に転がって波に洗われているパーツもある。

かわいそう。

 

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廃レール16

これは、完全に支柱しか残っていない状態。

支柱はしっかりしているので、こうやって最後まで残っている。

…とはいえ、全力で蹴れば折れてしまいそうな気配もするが。 

 

鉄って、最期はこんなふうになっちゃうんだな…。

 

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廃レール17

いよいよ、レールが目線よりも上になった。

立ち並ぶ支柱。でも数が足りない。一部は大きく傾いている。

波の力の強さを思い知る。

 

もう足元まで波が来ているので、カメラを低い位置に構える必要があるが、レールの裏側を撮影できそうだ。

 

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廃レール18

 

 

天空を走るレール。 

 

 

今まで鉄道の線路を見上げたことはあるが、こんなにもスッカスカで空が良く見えた体験は初めてだ。

まさに空を列車が走る様を、想像できるのではなかろうか。

 

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廃レール19

ノンフィクションが限りなくフィクションに近づいた図である。

 

願わくば、ここからレールを走るトロッコを見上げたかった。

それは適わぬ夢である。

 

僕の想像の中で、ここにトロッコを走らせようではないか。


 

ドンヨリと曇った三浦半島の小さな漁港。

しかし、僕はそこに束の間の夢を見た。

30年前の夢を。

 

もう間もなく消え失せる線路。

最後に振り返り、そして僕は再び防波堤を飛び越えて漁港に戻る。

 

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 久留和漁港の廃トロッコレール
  • 住所: 神奈川県横須賀市秋谷
  • 料金: 無料
  • 駐車場: あり(ただし2020年現在はコロナウイルス感染抑制のため、開放されていない)
  • 時間: 特になし