油断していると伊豆半島の最南端の「石廊崎」が最南端かなって思ってしまいがちだけど、僅差で御前崎なのである。
ちょっとGoogleマップを引っ張ってくるからその目でご確認いただきたい。
こんな感じで、身近な深海として有名な駿河湾の西端にあたり、かつ砂丘で有名な遠州灘の東端にあたる岬だ。
伊豆半島と比べるととんがり方が足りないのでちょっとインパクト負けしてしまっているかもしれないが、地理的にも結構大事な岬。
そんな御前崎、僕も当然何度も訪問している。
今回はその訪問記を複数回分ミックスさせながらこの岬をご紹介したい。
「静岡県最南端の岬」の碑
僕個人的にはいきなりハイライトな要素だが、ここは静岡県本土の最南端であり、岬には「静岡県最南端の岬」の碑が立つ。
端っこ好き、モニュメント好きの僕としては、こういう碑(標柱?)があるだけでアホの子みたいにテンション爆上がりなのである。
毎回毎回この写真を撮っているので、ここから先は似たような写真ばかりであなたをゲンナリさせてしまう旨を最初におわびしておく。
ただし、僕らは1つだけ気を付けねばならないことがある。
×:静岡県の最南端
○:静岡県の本土の最南端
○:静岡県の最南端の岬
…ということだ。一見するとどこが違うのかわからないが、実はちょっと定義が違うので要注意なのだ。
結論から言うと、静岡県の最南端は「神子元島」。伊豆半島の石廊崎のさらに南に浮かぶ小さな島で、御前崎よりもちょっとだけ南に位置する。
ここに島にある「神子元島灯台」は日本最古の石造り灯台だったりし、小さい島ながらポテンシャルが高い。
「じゃあ御前崎、堂々と『静岡県最南端…』って標柱立てて大丈夫なのか?」って思うでしょ。
上の写真をよく見てほしい。『静岡県最南端"の岬"』って書いてある。この最後の2文字が重要。
神子元島には岬が無いのだ。県内の岬で最南端となると、御前崎なのだ。
さて、この文言はまっとうなのか、それとも屁理屈なのか。そのジャッジは僕にはできないが、でも好きだぜ御前崎。
この標柱があることで、僕個人のこの岬の魅力が3倍になる。
だからこそ、こんな真っ暗なときでもこの標柱を求めて、僕はフラフラと岬を歩くのだ。
全国的に貴重な登れる灯台
日本には、一般人の僕らでも上まで登れる灯台が16基ある。周囲を海に囲まれ、無数の岬とそこに立つ灯台を有する日本であるが、16基しかない。
その16基のうちの1つがここ御前崎の「御前埼灯台」なのだ。すごく貴重。
ちなみに他の15基が気になる方については、以下の【特集】をご参照いただきたい。
僕は全部の岬を訪問済みなので。
本来であればそんな貴重すぎる参観灯台である御前埼灯台に登ったことを力いっぱい書きたいのだが、何と僕はこの灯台に登ったことが無い。
何度も訪問しているにもかかわらず、だ。
灯台に登るには2023年時点で300円かかり、数年前は200円だったのだけど、それをケチったり下からの眺めで満足してしまっていたり、あるいは灯台がOPENしていない時間だったので入れなかったりしていたのだな。
まぁひとことで言うのであれば、僕は灯台に登ること自体はあまり重要視はしていない。
しかし「登れる灯台を眺める」ということにはステータスを感じている次第。
前章の静岡県最南端の岬の碑近辺から灯台を見ると、こんな感じ。
かなりの標高差がある。丘の上に建っているのだ。遊歩道が通じているのでゆっくり登ってもいいが、楽な人生を歩みたい人はちょいと迂回するが車でも灯台近くまでアプローチできる。
僕の場合は気分次第で使い分ける。
あぁ、朝日に照らされる、なんてカッコいい灯台なんだよ…!!
昔からここ御前崎エリアは航海の難所だったそうだ。
なので江戸時代初期にはもう燈明堂っていう、小屋の中でボンボン火を焚いて窓越しに光が見えるようにする和製灯台的なものが作られていた。
その燈明堂のレプリカもこの御前崎エリアにあるんだが、僕はまだそれは見たことない。ちょっと悔しい。日本7周目で行くね。
現在と同型の灯台ができたのは、1874年(明治7年)だ。国内の他の洋式灯台と比較しても、なかなかに初期。
マジで座礁事故が深刻なレベルだったので、「急げ急げ!」ってテンションで造ったそうだ。
ちなみに回転式の第1等フレネル式レンズが採用されたのは国内初だったそうだ。
なんて栄誉だ、御前埼灯台!
そんな灯台も、第二次世界大戦時の1945年にアメリカ軍の銃弾を浴びてボコボコにされてしまう。
今日僕らが目にしている灯台は、その後に元のデザインで復刻されたものだ。
ただし残念なことに、日本で初めて搭載された第1等フレネル式レンズについてはちょっとグレードダウンし、第3等になっちゃったんだけどな。
ところでどなたか、ご存じの方がいたら教えてほしい。
これは日本4周目の最序盤で撮影した御前埼灯台。その手前にボロボロの灯台の頭の部分がある。
これって今もあったっけ?そして、これは何?いずれの情報についてもWeb検索したが出てこなかった。
もしかして、初代の灯台の頭頂部だったりしたのだろうか…??
そんな御前埼灯台は、国内で人気の高い灯台が選別される「日本の灯台50選」にその名を連ねている。
さらに、歴史的かつ文化的価値の高さにより「Aランク保存灯台」、近代化産業遺産、重要文化財にもなっている。すごいのだ。
夜に灯台の足元まで来ると、回転する灯光が周囲の地面までも照らし、すごく幻想的なのだ。
これはぜひあなたも夜に訪れて体験してみてほしい。地面にも光が当たる灯台って、僕の知る限りそんなに多くはないから。
「海鮮なぶら市場」でグルメを
灯台から直線距離で1kmちょっとのところには、「海鮮なぶら市場」っていう観光施設がある。
施設入口には、なんかバカでっかいカツオの山車みたいのがあった。
どうやら"なぶら"っていうのはカツオの群れを指す言葉だそうだね。この付近には黒潮が流れているので、カツオいっぱい獲れるのだろう。
内部は市場系の店舗が並ぶ。なんかこういうのってワクワクするよね。本能が刺激される。とりあえず試食コーナーなども充実していたので、いろいろ食べさせていただいた。
そして本格的なランチに選んだのは、施設内の「ナチュラル」っていう和食系の食事処。なんで和食なのに英語の店名なの?謎。
ここには2回訪問したことがあるのだが、1回目はどこの店舗も混雑していてこの店も激込みで、30分くらい並んだ。
だけどもキンメダイの煮付け定食がメチャクチャうまくて行列のストレスも消し飛んだ。僕を慈悲深い気持ちにさせてくれるキンメダイだった。
キンメダイ、駿河湾で良く獲れるよね、確か。これも名物なのだろう。
なんでことごとくこの市場で撮影した写真がボケるのか謎だ。
キンメダイの亡霊がカメラに何か作用していたのもかもしれないね。
カツオの刺身定食を頼んだこともある。
秋口だったこともあり、店頭には今はカツオが旬であると書いてあったのでホイホイオーダーしたのだ。これも大正解だった。
この分厚い刺身。そしてカツオの力強い味わいが僕にパワーを与えてくれる。
満腹だ。黒潮の恵みに感謝。
内部にはジェラートショップもあったので、僕はチョコジェラートでデザートにした。
だいたいこういうところってご当地のフルーツを使ったジェラートなど豊富なのだが、チョコレートしか勝たん。僕はチョコレート味が好きなのだ。
あ、でもシラスのジェラートも味見した。
白いジェラートから、ところどころシラスがピンピン飛び出していた。
味はちょっとしょっぱく、そしてシラスの異物感がすごい。上の写真では飛び出たシラスが見えなくって悔しいぜ。
しずおか茶コーラ。確かに静岡はお茶どころだが、進出する方向を間違えてやいませんかね?
不思議なな味。お茶とコーラを混ぜただけの想像できる範囲の味だけども、そもそも混ぜたことが無いので脳がバグりそうになっている。コメントしづらいけど、まずくはない。でも脳が喜んではいない。
ま、いろいろあるんだぜ、なぶら市場は。
御前崎の美しい海、ネコとネズミ
猫塚・ねずみ塚
岬の先端から1・2kmの地点の、県道240号の小高い丘の上に、『猫塚 200m→』みたいな標識があるんだ。そこを目指したこともある。
でも『猫塚 50m→』までは見つかるんだけど、そのあとそれっぽいものが無いまま、今度は『← 猫塚 50m』になる。なんだそりゃ。不思議な世界に迷い込んだアリスか僕は。
しょうがない。車じゃムリだ。歩いて探そう。
車じゃ入れない小道に進むと、田園地帯の真ん中にヒッソリと猫塚があった。駐車場すらない、民家と田園の境界部分にあった。
標柱の上にネコがいる。すっごく目立たない。
芳ばしいなー。こりゃ相当に芳ばしいスポットだなーって、僕は大喜びした。
ちなみに隣の畑で野良仕事をしていたばあちゃん2人が物珍しそうに僕を眺めてた。そんなスポット。
横にあった看板の説明によると、昔おぼれているところを和尚に助けられたネコがいたそうだ。
そのネコは後年、化けねずみが和尚を食い殺そうとしてピンチなところ、ヒーローば
りのナイスタイミングで駆けつけて、命を懸けて和尚を救ったそうなのだ。
ネコ、グッジョブ!
そこから少し離れた地点。
御前崎の灯台から続く遊歩道の途中に「ねずみ塚」がある。そうなのだ、あの和尚を襲った憎きねずみなのだ。
なんと、あのネコとネズミの闘いの件、両方とも死んでしまったのか。ネコちゃん死んじゃったのか。
なんてこった。このクソネズミめ!憎いぜ!
この感情をどこにぶつければいいんだ!…って憤慨しながら遊歩道を散策した。
そして美しい景色を眺め
前章では唐突にネコやネズミの話をしてしまってゴメンね。いきなり文章のテイストが変わったので戸惑わせてしまったと思う。
僕も眠い中で執筆していたのできっとバグっていたのだと思う。
これは御前崎付近で車中泊をした後に眺めた、日本4周目終盤の真夏の朝日である。
夏の朝日もいいもんだ。力強い。なんなら早速暑い。
でも気持ちがいいもんだ。今日はこのまま海岸線から灯台の建つ丘の上まで散歩できるなって思った。
朝日を浴びながらゆっくりと階段を登るのが気持ちよかった。
太陽とほぼ同じ速度で僕も丘を登っていると感じたよ。
灯台のすぐ脇のテラスをゴールとした。
立地上常に強い潮風の吹く御前崎。夏の朝には、歩いて火照った体をほど良くクールダウンさせてくれる。
目の前には太平洋が広がっていた。あぁ、壮大だ。
僕は1人、いつまでもこの海を眺めていた。
ぶっちゃけ曇っていてもなかなかの眺めだ。見下ろす駐車場も含めた景色が好き。
写真の右端の方には小さく最南端の岬の碑が写っている。
海は生き物だ。青く澄んだ晴天の日の海。曇りの日の海。いろんな表情がある。春夏秋冬と同じように、天気だって様々だ。
だから僕はこんな天気でも全然めげたりはしない。むしろ嬉しい。
直近である日本6周目の終盤に行ったときは夜だった。
海も何も見えなかったが、灯台だけ見えた。むしろ灯台の存在が際立っていた。ステキ。
灯台の下の駐車場には、なんだか大きな船をかたどったようなオブジェがあった。これは前回までは無かったよね…?新しい発見が嬉しい。
次は日本7周目か…。どんな出会いがあるかな?
またなぶら市場でご飯食べようかな?次こそは灯台登ろうかな?そんなことを考えている秋の夜長なのだ。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報