本州本土から橋で繋がる、「周防大島」を一周ドライブしよう。
そう思って島に向かっているときのことだった。
ふと見たツーリングマップルには、魅惑的な文字が躍ってきた。
「360°のパノラマが広がる。ルートは複雑」
その注釈は、標高438mの「大星山」の山頂を示していた。
よし行こう、大星山!
どうせ気ままな一人旅。気になるならば、突撃しない理由がない!
瀬戸内海を見下ろす山
「着いたーー!!」
…というわけで、営業マンのアプローチ手法と同様に、いきなりゴールのビジョンからお見せしたい。
少し難易度が高めである、ゴールへのプロセスについてはこの後だ。
うおぉぉぉっほぉーーい!!
これが、運転席からの眺めだ!
天空を走るかのような、このスペシャルな展望!
山深い狭路から、いきなりこの標高438mの山頂駐車場に出て、眼前が開けた。
駐車場には柵すらなく、僕の愛車と438m下の瀬戸内海とを隔てるものが何もない。眼前、開けすぎ。
これ、マジにもう少しアクセルを踏むと奈落にフォーリンダウンだから、最大限に気を付けなければならない。
テンションMAXの僕は、すぐさまコンクリートの展望台に駆け上がった。
すっごいな、この景色は。
瀬戸内海の大パノラマ。写真に見切れている左右を含めると、もう水平線が丸く見えるレベルだよ。
ちなみに僕が立つ展望台、側面に滑り台がついていて、下る際にはスイーッとスピーディに駐車場に帰還できる便利設計だ。
写真を撮らなかったことが悔やまれる。
晩秋の朝の寒さに怖気づいて、滑らなかったことも悔やまれる。
目の前に見えている、特徴的な形の島が、「馬島」だ。
水平線にチョコンと三角形に盛り上がっているのが、九州大分県の「姫島」だ。
設置されている案内板を基に、上の写真に島の名前を書き込んでみた。
姫島のさらにその先には、快晴の日であれば、大分県国東半島の陸地も見えるらしい。
うーん、今日は見えていないかな?
水平線がかなりガスっている。
一縷の望みをかけて、画像のコントラストを調整してみた。
おぉ、大分県の国東半島が見えた!!
霞の中に、海の彼方に、確かに九州の大地が横たわっている!!
遥かなる九州よ!
また九州を縦横無尽にドライブしたいものだぜ!
さて、次は右後ろを振り返り、北西方向を眺めてみようか。
左端に見切れているのが、前述の馬島だ。
そして、写真中央に突き出してみる岬が、「梶取岬」。
先ほど、 僕はあの岬の先端を通る国道188号を走り、光市方面からここ柳井市へとやってきたのだ。
平生風力発電所
大星山のもう1つの特徴、それは風力発電プロペラだ。
山頂付近に7つの巨大プロペラが回り、瀬戸内海の優雅な風景に色を添えている。
そのうちの1基は、展望台のすぐ横にあるのだ。
試しにちょっと近づいてみようか?
こんな感じだ。
遠目から見るとスリムだが、近くで見ると「なんじゃこりゃ」ってレベルに太い。
核シェルターのような重厚なポールに、頑丈な金属の扉。
ここから真上を見上げれば、眩暈がするような高さに、大きなプロペラが回っている。
その最高到達点、なんと100m。
回転によって描く円の直径は70m。
青空にプロペラ!!
この眺めが好きだ!
僕は全国、風力発電プロペラを見ると問答無用にテンションが上がる系の人間。
「ラピュタ」のオープニングで、数々のプロペラが回っているレトロ調の画像を見るだけでワクワクする。
ただ、最近は「実は円形のものが回っているだけでワクワクする」という、デフォルメされた趣味嗜好に自身で気付いてしまっている。
そっか。
だから僕は車が好きで、ドライブが好きなのか。
だから日本を何周も車で走っているのか。
せっかくの晩秋なので、紅葉と共に撮影してみた。
これも絵になる。
この風力発電プロペラ、1基あたりの定格出力は1500kwであり、年間では380万kwに及ぶそうだよ。
一般家庭1200世帯分くらいの電力が、このプロペラが昼夜回転することで供給できるのだよ、すっげ。
ありがとう、風力発電プロペラ。
ちなみに、この季節の朝方に、風力発電プロペラが立っているほどの風の強い山頂にいる僕。
実際はガタガタ震えながらの観光であったことを、再度述べる。
…というわけで、大星山の山頂からのレポートった次第だが…。
ここに至るまでのルートを、次項で少しご紹介したい。
海面スレスレから、この438mの山頂まで登ってくるのだから、それなりにハードなヒルクライムなのだよ。
山頂展望台への狭路
道は、まぁまぁ凶悪だ。
控えめにご説明しても、擦れ違いは不可能だ。
もう、本当に全線1車線。
おまけに、わりと多くの区間で側溝があるので、例えば対向車が来て無理に端に避けようとすると、脱輪する。
そういうファンタスティックなドライブを楽しめることを、保証しよう。
こんな道を、カーナビもない車で登っていく僕の心細さたるや、想像するにあまりある。
「どこまでこんな道が続くの?」・「山頂はまだなの?」と、プルプル震えながらハンドルを握った。
終盤にようやくプロペラ群が木立の上から顔を見せたときは、本当にうれしかった。
さて、山頂で僕は考えた。
別のルートで下山しよう。その理由は2つある。
- 上りのルートは狭かった。別ルートはもっと広いに違いない。
- 北側から上ったが、南側に下りたい。南側に位置する「長島」という島方面に、このあと行きたいから。
前述の通り、僕の車にカーナビは無い。
正確に言えばついているけど、西日本の地図情報は登載されていない。
そうなると唯一の情報源は、冒頭にも掲載したツーリングマップルであるが、ご覧の通り周辺はワチャワチャしており、あまり参考にならない。
目印も皆無。
…カンで行く!
下山を始めた僕は、立て札に集落名が記載されていることをチラリと確認し、そちらにハンドルを切った。
集落があるということは、下界に降りれるということ。
最悪でも、下界との道路があるということ。
…
…
自分のカンの悪さを呪う。
いや、最序盤はよかったんだけどさ。
また分岐が出てきてさ。
そこに立て札もなくってさ。
分岐がさ、「ちょっと下る道」と「もっと下る道」だったから、下界に早く降りれそうな後者を選んだの。
これがその始末。
上りよりも遥かに悪路。
一面落ち葉だらけだし、写真ではよく見えないかもしれないが、アルファルトは劣化してバキバキのボコボコだ。
これ、このまま突き進んだら廃道になってしまうのではなかろうか?
さすがに1人でこの道を走るのは怖いので、車を停めてちょっと考える。
延々バックして、来た道を戻るか?
いや、それはそれで怖い。このクネクネ狭路をバックしながら上るなんてイヤだ。
…進むしかない!!
ワハハー、ボコボコだぜー。
ちなみに、写真を撮っているのは比較的安全な場所で車を停車させたときのみ。
本当にヒヤヒヤしているときは、写真どころではないからね。
だから実際の道は、もっとクレイジー。
これ、外部からの観光客が気軽に来て大丈夫なところなの??
狭ッ!!
しかし、訪問当時の僕の手記を読み返すと、この写真を撮った理由は狭さからではない。
「やっと綺麗な路面の車道が出てきた、わーい」という内容であった。
こんな道で喜ぶだなんて、今までどれだけ過酷な人生を歩んできたのかと、涙が出るだろう。
こうして、無事になんとかかんとか、海沿いの県道23号に出ることができた。
「一般観光客は絶対にこんな狭路から出てこないだろう」みたいな道から、ヘロヘロになりながらコンニチハした。
ふぅ、疲れた。
疲れたっていうか、むしろ老いた。
そう思った矢先に、こんな交通安全のマネキンが登場した。
老いてるーー!!
交通安全を追い求め、老いた姿。
まさに今の僕ではないか。
親近感!
朝一からちょっと疲労困憊だけども、でも僕はすぐに回復するさ!
このあと、瀬戸内海の綺麗な海を見ながらの、シーサイドドライブなのだから!
およそ1時間後。
周防大島をドライブしていると、海を隔てた向こうに小さく大星山が見えた。
さぁ、旅はまだまだ続く!!
安全運転で楽しもう!!
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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