「奥鬼怒温泉郷」をご存じか?
「鬼怒川温泉のことかな?」とお思いならば、その思考を悔い改めてほしい。そこに「奥」の一文字がくっつくだけでマジ10段階くらい奥行きのある世界に突入する。
奥鬼怒温泉郷は関東最後の秘境と言われる、アクセスがなかなかにエグい温泉だ。まずはマイカーで相当な山奥まで行くのだが、途中でマイカー通行止めになるのだ。国立公園でマイカー侵入禁止だからだ。そのあとは山間部を徒歩で1時間半以上。
…ただ、4軒ある温泉宿のうち2軒だけは宿泊者限定の無料シャトルバスで送迎してくれるという神対応があるけどな。そういう超秘境の世界なのだ。

日本6周目の序盤の11月、僕はそこを訪れた。雪が降るか降らないかのギリギリの時期であり、ぶっちゃけ降ったのだけどもギリギリで帰ってこれた。そんな素敵な思い出、聞きたい?
秘境の「八丁の湯」を目指せ
どこまでも深い山の中へ
親孝行な息子である僕は、例年11月下旬に母親を旅行に招待している。日本6周目序盤の今回は、総勢5人で奥鬼怒温泉を目指すこととなった。
企画もドライバーも、毎年の通り僕だ。なぜなら旅行の達人だからだ。決まってるだろ。

日光市の今市でランチを食べ終わると汽笛が聞こえ、お店からすぐ目の前にある線路まで出てみると、ちょうどSLが通過した。
それはほんの3ヶ月前、51年ぶりに復活したばかりの「SL大樹」であった。ホント目の前、2mほどの位置を豪快な音を立てて通過していく。いいものを見れた。この旅、天気はあまり良くないものの、幸先がいいぜ。

…そのあとは延々と1時間半ほど山間部を走ってね。本当に何にもない道でね。あ、ドライブインの廃墟ならあったけど。そういう道のりだ。
そんなこんなでマイカーの終点となる「女夫淵駐車場」に到着した。奥鬼怒温泉郷に泊まる人は、ここにマイカーを置いていいらしい。そして冒頭に書いた通り、4軒ある温泉宿のうち2軒だけは宿泊者限定の無料シャトルバスで送迎してくれるのだ。

シャトルバス、来た。ただし1日数便だし事前予約必要だから気をつけろよ。僕はもちろん宿の予約時に申し込んでいる。このサイズのシャトルバスはほぼ満員となり、補助席まで使ったよ。まぁその補助席に座った貴重な人材が僕なんだけどな。
ここからとんでもなく深く狭い山道を30分だ。なかなかの工程だよね。運転手さんも大変だ。

ここが秘境、奥鬼怒温泉の八丁の湯だ。なかなか渋い木造建築。
1929年に創業したそうで、もうすぐ100年経つそうなのだ。100年前はシャトルバスが通ってきた車道もなかったそうで、ガチ登山だったらしいよ。ここも山小屋のような位置づけだったのかなぁ。

ここの標高は1400mほど。ランチをした今市が370mなので、相当高度に差があり、その分季節が進むのも早い。11月もやや後半に差し掛かった現在、紅葉はほぼ終わりを迎えていた。どうやら例年の紅葉のピークは10月20日頃だそうだ。さすがに1ヶ月も違うとほぼ冬山の気配。
でも、いいのだ。別に紅葉目的ではないので。母親の誕生日に合わせて来ているだけなので。

チェックインした。ごめん、エントランスの写真はない。たぶん成り行き上シャトルバスに乗っていた他のお客さんと同時のチェックインになるからさ、ワチャワチャしていて撮影できなかったんだと思う。詳細は忘れた。
かわりにエントランスにあった「日本秘湯を守る会」の提灯の画像を載せておくね。あなたもこの会に所属している温泉、好きだろ?僕も好きだ。
一番大きな客室はここ
これが館内のMAPである。

いろんな棟が渡り廊下で連結された複雑な造りなのだね。ところでここ、2023年ごろにさらに増築されたようだが、それより前の時代のものなのでご了承してくれ。
僕らが予約したのは左側にある「ログ13」という部屋。この時点の八丁の湯の客室としては一番広いのだぞ。最初の予約時にはこの部屋は埋まっていたのだが、2週間ほど前に再チェックしたらキャンセルになっていたので速攻で部屋移動したのだ。YAMAさん、グッジョブだね。

こんな感じの廊下を歩いて奥へと行く。バリバリ木造の建物であり100年の歴史があるが、とてもきれいな館内なのである。これだけ山奥でこれだけ清潔感を維持できているのってすごいよねぇ。
あぁ、ところで館内の廊下はとんでもなく寒い。ほぼ外気。真冬の気持ち。

これがログ13!巨大ログハウスのような部屋!!
キリスト教の人だったら「なんか縁起の良くない部屋番号だね…」とか言うかもしれないけども、僕はキリスト教じゃないので全然気にしないし。

しかもロフト付きとな!ワンパクな僕はバッグを投げ捨てると真っ先にロフトに登ったよ。長男だけども落ち着きがないのだ。落ち着いてたまるかよ。ましてやこの部屋で。
ログハウスではあるが、床は畳の和室であるというユニークな部屋。どうやら2025年現在はソファが置いてある洋室のようだけども、このときは和室だった。温泉旅館だもん、和室も魅力的だと思うぞ。
部屋は20畳と6畳の2部屋。ロフトなしでも他の部屋の2倍の広さ。その時点でかなーり広い空間ではあるが、あえて僕は夜はロフトで寝ることを心に決めた。幼き日に二段ベッドを上を陣取っていた思い出がよみがえってきたぞ。

部屋への入り口部分はこんな感じ。これまたオシャレで非日常を演出してくれている。
部屋は広いし角にあたるので、他の部屋の音もほぼ聞こえず、まるで一棟もののログハウスを貸し切っているような気分になれる部屋だ。

バルコニーもある。さすがにこの時期にここでくつろぐのは厳しいものがあるが、気候さえ良ければ楽しいスペースになるだろう。
ここで夜に虫の音を聞きながら酒を飲んだり、朝に鳥のさえずりを聞きながらコーヒーを飲んだり…。原生林に囲まれたバルコニーなのだ。ここを活用できなかったことだけ少し心残りかな…。

その後、少し敷地内を歩き回ってみた。周囲は全部山だ。下手に深みに入ると遭難しかねないからやめよう。すぐ近くを鬼怒川上流部である清流が流れているし、滝もあった。大自然。
あの滝は、さっきUPした館内MAPによると、露天風呂の奥のものだ。あまり滝に近づきすぎると入浴している人が丸見えになるのでお互い注意が必要だ。人目を気にせずに露天に浸かるのであれば、暗くなってからの方が無難かもしれない。

しかし寒い。曇っている上に下界と比べて格段に寒いので、そんなに外に長居はできないなって感じた。もう冬は目の前なのだ。それに、僕らの他に外に出ている人、全然いないしさ。

僕らの客室を外から眺めると、まさに一棟のコテージであった。堅牢なデザインだ。
うむ、あそこに早く帰ろう。
極上の温泉と夕食を楽しむ
完全かけ流しの最高の温泉
じゃあ次は温泉をご紹介するね。こんなにも不便な場所でこの宿が存在していられるのは、もちろんその不便さを上回る魅力のある温泉のおかげだ。

温泉には夕方・夜・翌朝の3回行っているのだが、それらをこの章にまとめて書くね。
まずはこれが内湯だ。すでにすんごい貫禄である。この旅館の中で一番古い湯舟なんだって。ここに浸かれるだけで幸せが込み上げてくるじゃないか。
まず頭や体を洗うのであればこの内湯が適しているが、もちろん露天風呂が目玉である。

ここが露天風呂へとつながる渡り廊下。
奥に見えている滝つぼの周囲に4つの露天風呂がある。4つのうちの1つは女性用の露天風呂で、少し離れているし入口も別のところだそうだよ。その他の3つは混浴。ただし夜に女性専用の時間が1時間設けられているっぽい。

これは「雪見の湯」という、脱衣所から見て一番手前にある露天風呂。手前にありすぎて、渡り廊下の時点で大体丸見え。だからこの写真もパブリックスペースから撮影できてしまった。そのためなのかどうかはわからないが、滞在中にここの入っている人は見かけなかったなぁ。
だが、この露天は1929年の、八丁の湯の開設当時からある一番歴史のあるお風呂なんだって。
ところで”雪見の湯”という名前であるが、積雪の時期にここに浸かると雪がきれいに見えたりするのであろうか…。ちょっと時間を飛ばそう。

これが明るい時間、かつ雪が積もった雪見の湯だ。風流ではあるが、なかなかに覚悟のいるロケーションだっていうこと、よくわかるよね…。
その他、「滝見の湯」・「石楠花の湯」というのがある。
前者は名前の通り滝の真正面だ。ほぼ真っ暗であるが、仄かな灯りと湯煙、そして滝の音が心身をリラックスさせてくれる。混浴であるが湯浴み着の着用OKなので、女性客もチラホラいたようだ。

石楠花の湯はそこからさらに階段を少々登り、滝を真横に眺める岩場の小さな湯舟。スリリングだが解放感バツグンだ。上記は翌朝の写真だが、赤丸で囲った分が湯舟。あそこまで全裸で上がるんだぜ、ワクワクすっだろ?
それらの内湯&露天を弟と共に巡った。良い時間だ。

ところでこの八丁の湯の温泉は、どれも自然に湧き出てきた源泉からのお湯をそのまま使用しており、100%のかけ流しなのだそうだ。もともとが高温なので加熱などもしていないらしいよ。
かつ、源泉が滝の真横にあるのであまり空気に触れずに新鮮な状態で入浴できるという。僕はそこまでは温泉の善し悪しはわからないが、とても価値のあるものだってことがわかった。現に体、ポカポカだし。

館内随所に休憩スペースがある。いずれもログハウステイストだ。そしてクッションだとか、小物がかわいい。歴史ある山奥の秘湯旅館なのだが、オシャレで清潔なので万人受けする造りだよね。きっとすごく努力しているのだろうなぁ…。

あ、休憩スペースの隅にタヌキの剝製いる…!
山奥なのできっといろんな動物がいるのだ。ほかにも館内にさまざまな剥製があるのだが、それらは追ってご紹介としよう…。
旬の食材と酒を楽しもう
夕食は18:00から食堂にて提供されるスタイル。待ちわびた。ビールも飲みたいし地酒も飲みたい。

旬の食材、地元の野菜を使い、さらにはすべての料理に山の湧き水を使っているとのことで、なんだか長生きできそうなコンセプトじゃねーか。ジビエも出るというぞ。

ここが会場だ。実はこれは食後、誰もいなくなってから撮影した。2時間くらいかけてゆっくり食べていたら、他のお客さんいなくなってしまったので。
食堂もログハウス風でテーブルスタイルなんだけど、下は畳という一風変わった造り。少し照明のトーンが暗くて落ち着いた雰囲気であり、そして薪ストーブが焚かれているので充分に暖かいぞ。ついつい長居をしてしまった。

これが今夜のお品書きだ。
こういうお品書きってオシャレな書きっぷりに全振りでイマイチわかりづらいことが多いけども、ここのはすごくストレートで腹にストンと落ちる。『食事:うどん』とか、思わずニヤリとしてしまうほどに直球だ。
ところで湯葉って、"湯波"とも表記するのだね。初めて知った。

これがスターティング・フォーメーション。美しい。洗練された並びだね。
ゴマ豆腐・湯葉など普段あまり食べないものを食べれる機会が嬉しい。まだ僕の舌が庶民すぎて理解しにくい味ではあるが、ビールにはマッチする。つまり結論、うまい。
これらは日本酒の方が合いそうだね。お酒、あるかな?…って確認してみると"奥鬼怒"というジャストなお酒があるそうなので、オーダーした。

1品1品丁寧に書いていくと記事の文字数が膨大になってしまうので、ちょっとダイジェストにするね。
左上はやしおマスと白エビだ。やしおマス、川魚だね。そのままお刺身として食べてもいいし、1人ごとに準備されている鍋でしゃぶしゃぶにして、ポン酢で食べてもいいらしい。どっちもうまい。特にしゃぶしゃぶにすると風味が濃厚になるような気もして最高だ。酒、ギュンギュン無くなる。
右上は土瓶蒸しだ。鶏つくねの団子がメインで、それを湯葉・マイタケ・青菜が脇から盛り上げてくれる。こいつらのダシ、どう考えても至高じゃないか。
右下は、ドドーンとやってきたいのしし鍋。中盤から後半にかけてのメインでありラスボスである。

これが出来上がったいのしし鍋だ。僕ら5人で1つの鍋。
いのししの他、白菜・しめじ・ネギ・豆腐などがふんだんに入った、ちょっと味の濃い味噌味の豪快な鍋だ。うまいんだけどもボリュームすんごい。
野菜のおかわりが無料でできるんだけど、全然無理。むしろ母親がすでに満腹気味でペースダウンしており、そのシワ寄せが子世代に来ている。やべーぞ、これ本気出さないとできねーぞ。兄弟たち、生まれて初めて心から一致団結する。

ギャー…!!頑張ってようやくいのしし鍋の終わりが見えつつあったのに、そこに締めのうどんが大量に投下されたー!妹がゲラゲラ笑いながら全部一気に入れやがった。本人ももう満腹間近なくせに。
うどんは本当に大変で、母親はもう1ミリもうどん攻略の役には立たないし、弟は酒飲んで真っ赤だし。急いで食べないとダシを吸って無限膨張するし。妻や妹の力でなんとかかんとか完食したけど、鼻からうどん出てくるかと思ったわ。

最後は癒しのデザートタイムなのである。オレンジ・キウイ・ラズベリーだそうだ。オレンジをくり抜いて陽気にしてあるのがユニーク。僕はフルーツは食べないタイプの人間なので、他のみんなに分け与えた。
そんなこんなで2時間程食べ続けており、気付けば他の客さんが食堂からいなくなってしまったというわけだ。僕ら、少食なのか…??

そのおかげで、食後に食堂の壁の剥製をゆっくり眺めることができた。
これ、ヘラジカだよね?さすがに奥鬼怒の山にヘラジカはいないと思うので、どっかで購入したのを持ってきて展示しているだろうね。

館内、こんな剥製もある。シカと熊。熊は普通に出没するかもしれんね。怖い。
…そんなワケで満腹すぎるので、部屋で一休みしてからまた温泉に入ってカロリー消費したりしたのだ。なぜかというと、せっかく広いログハウスの部屋なので、部屋で2次会をしたいのだ。その準備をしてある。…が、今のままでは胃袋に全くものが入らないのでね。

温泉に浸かることで胃のキャパが100%から90%くらいに減少した。相変わらず満腹の域は出ないが、ちょっとだけなら酒もつまみも入るので、2次会を開催したわけだ。
そんなヒリついた状態であっても2次会にこだわったのはな、この旅行の主旨が母親の誕生日月であることによる開催だからだよ。バースデーを祝うんだよ。いい子供たちだろ?

妹がボジョレーヌーボーや、海外出張で買ってきた謎のスナック菓子やらケーキを座卓に並べた。ときどき「うっぷ」ってなるくらいに満腹の飲み会だったが、それでも楽しけりゃいいんだよ。
こうして夜は更ける…。しっかし今夜は寒いなぁ…。
奥鬼怒に冬がやってきた朝のこと
銀世界を眺めながらの朝食
朝の6時半に目を覚まし、ログハウスから外を見て驚愕した。

雪が積もってるーー!!
バルコニーの窓を開けた。寒風が吹きこみ、息が白くなった。みんなで外を見て「わぁ」と言った。奥鬼怒に冬が来たのだ。まだ11月下旬に差し掛かったばかりだというに。ここは関東地方だというのに。

上着を羽織り、外にも出た。銀世界だ。
雪を見て犬のようにはしゃぐメンバーを眺めつつ、僕は不安に駆られていた。
実は僕の車、スタッドレスタイヤを履いていないのだ。12月第1週くらいに履く予定ではあるんだけど、まだなのだ。正直積雪を見込んでいなかった点は甘かったなぁ…。

仮に愛車がここにあるのだとしたら、積雪走行を余儀なくされ、かなり危険な状態に陥ると思う。でも僕の愛車があるのは女夫淵駐車場だ。
ここは標高1400m。女夫淵駐車場は標高1100mだという。さて、この300mの差で世界はどのように違うのか…。女夫淵駐車場もこのレベルの積雪だったら、この旅は完全に詰むよね。

心では「もう少しすれば気温が上がって雪も解けるかもしれない」・「天気予報では曇りのはずだったし…」とかポジティブに考えようと努めるが、なんか雪はフワフワとひっきりなしに天から落ちてくるんだ。
とりあえず気に病んでもしょうがないので、今は温泉入って朝ごはん食べよう。

風呂上がり、7:30から食堂にて朝ごはんだ。
これは朝食会場から見た外の雪景色。雪の反射で室内まで明るい光で満たされている。このあとの雪道走行の心配がないのであれば、「なんて清々しく平和な朝食風景なのだろう」と思えるのだがね…。

素朴だがうまそうな朝ごはん。左奥ではお味噌汁が温められおり、右奥のせいろは蒸し野菜だ。中央のカゴには季節の前菜と…、あとはマリオが食べたら巨大化するキノコみたいな柄の小鉢。
温泉卵や味付け海苔や梅干しなど、旅館の朝ごはんの定番アイテムもあるぞ。

蓋つきのそれぞれの中身をご覧あれ。お味噌汁は具沢山でありがたいねぇ。山の幸もふんだんだ。
せいろの中はカボチャとしめじ。僕は今までカボチャが苦手だったのだが、実家を出て以降かなり厳しい修行とか鍛錬とかそういうヤツを繰り返し、ついに克服しつつあるのだ。母親に自慢した。妻も僕の努力の日々を熱弁した。母親、たぶん感動で胸いっぱいだったと思う。知らんけど。

送迎のシャトルバスは9:00に出発らしい。あと1時間弱。チェックアウトの準備をし、最後の旅館内を巡って別れを惜しもうじゃないか。
スノーエリア脱出なるか…?
こうしてあっという間の滞在時間が終わりを迎える。

改めて館内を巡ったり、売店を覗いたり、パブリックスペースから見える範囲で温泉を眺めたりした。それらの写真は既に前章までにチマチマ挿入しているので、ここでの再掲はしないけどもね。

受付でチェックアウト手続きをし、そして雪原でシャトルバスを待ちながらしばし遊んだり記念撮影した。
今シーズン初めて見る雪なのだ。寒いのは苦手であるが、雪を見るとテンションが上がるのは哺乳類として致し方ない心情であろう。

奥の方に連なるログハウス棟。あそこまでずーっと1軒の宿なのだ。渡り廊下でつながっているのだ。すんごい。
2025年現在は客室数は27部屋なのだそうだ。8畳ほどの気軽に寝れるだけの装備の部屋もあるが、僕らが泊まったように大規模な部屋もあるし、数年前には露天風呂つきの客室もできたそうだよ。

宿の前をちょろちょろと流れる鬼怒川。これが下流になるにつれてどんどん大きくなり、最後は利根川に合流して太平洋に出るのだ。ここは壮大な大河の、小さな小さな上流部分。長い物語の序章。

8:50ごろ、シャトルバスがやってきた。僕らは既に宿の前で待機していたので、早々に乗り込む。だから僕も行きのように補助席ではなく、窓際の席を確保することができたよ。

助手席にはトトロがいた。なるほどね、山深いとトトロいるもんね。僕も山ですごして心が清らかになったから、今ならトトロ見えるもんね。
こうして9:00にシャトルバス発車。同じ奥鬼怒温泉郷の1つである「加仁湯」の前を通りつつ、山の中の未舗装路をゆっくりと進んでいく。

数分後、最後に八丁の湯を見下ろせるポイント。さよなら、関東最後の秘境、鬼怒温泉郷…。
アプローチはやや大変なものの、唯一無二の体験ができた。またいずれ来ることがあるかもしれないし、無いかもしれない。だけども、きっと母親含めた家族で来ることはこれが最初で最後。その思い出が、大事なんだよ。

さぁ、僕は本格的にドキドキしていた。シャトルバスが発車してから20分。もうかなり標高も下がってきていると思われる。だけども周囲はまだ雪景色だ。
あと数㎞で女夫淵駐車場なのだ。雪、大丈夫か…??もし女夫淵駐車場も雪だったらどうする…?JAF?町から来てもらうのに1時間半はかかるだろうし、そのあとの行程も大き崩れるぞ…?
そしてさらに10分。女夫淵駐車場に着いた。

おぉぉ…!??これって、アウト?セーフ…?
シャトルバスの運転手さんにお礼を言いつつバスを降り、急いで愛車の元に向かう。

うーーん…、ギリギリでセーフ!!目の前1mに雪が残っていたが、1mであれば大丈夫!
いやぁ、シャトルバスの行程は大体雪景色だったんだけど、ここの1㎞くらい手前で急に雪が減少したの。ギリギリで雪の影響を受けなかった標高に入ったのだ。
上の写真の通り早朝であれば多少雪が積もっていたのかもしれないが、9:30現在でこの状態であればノーマルでも全然いける。車道には全く雪は残っていないし。
…というわけで雪山脱出!!古い車で、かつキンキンに冷えていたのでエンジンがかかるまで時間がかかった。念入りに暖機運転しておいた。
そしてのんびりと下界を目指し、1時間半ほどで今市の町に入る。季節は秋から冬に戻った。

あ、昨日の昼に見たSL大樹だ。併走してくれている。また見れて嬉しいよ。
それでは、おあとがよろしいようで。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報
- 名称: 八丁の湯
- 住所: 栃木県日光市川俣876
- 料金: 1泊2食約¥25,000
- 駐車場: なし。女夫淵駐車場から徒歩あるいは宿泊者限定シャトルバス
- 時間: チェックイン12:00、チェックアウト10:00