日本最南端、八重山諸島。
ただでさえ常夏なこの島々だが、そこで昼間からオリオンビールを飲むと、さらにフワフワした気持ちになって、まるで夢の中だ。
いいじゃないか、たまのバカンスなんだろ?
ちょこっとビールを1杯ひっかける。
それだけで、ほど良い幸せが手に入るのだ。
その石垣島の「離島ターミナル」から徒歩1分の魚屋さん「マルハ鮮魚店」で粋に飲めば、もうあなたは八重山マスターだ。
追憶の与那国
今回は石垣島のマルハ鮮魚店の記事なのだが、初訪問時から2・3日さかのぼりたい。
日本最南端、国境の島である与那国島。
ここに僕は4日間滞在していた。
その島の宿で知り合い、3泊一緒だった旅友の荻窪君(仮名)と毎晩楽しく飲み明かした。
死ぬほど飲んだ。
2人でアルコール度数60度の泡盛をストレートで空けた翌日は、二日酔いでマジ死ぬかと思うほどに苦しんだが、その日の夕方にはまた飲んだ。
同泊者全員でハデに飲み会を開催したりもした。
与那国島の記憶は、酒の記憶。
その荻窪君にもらった情報が1つある。
そう、あれは僕が「石垣島の離島ターミナルで次の便を待つときって、手持ち無沙汰だよな」とか話したときだった。
「マルハ鮮魚で飲むといいよ」というアドバイスをくれたのだ。
なるほど覚えた。必ず行く。
こうして与那国島滞在4日目の昼、僕は島を離れる。
中途半端な時間なので、宿には同泊者もほとんどいない。
同じく宿で知り合った旅人の"ダイバー姉さん"と2人だけの静かな島抜けになるかなって思っていたが、ギリギリのタイミングで自転車に乗った荻窪君がやってきた。
僕を見送るため、息を切らせてやってきてくれた。
わざわざ来てくれてありがとうな。
そして4日間、楽しかったよ。またどこかで会えたらいいね。
荻窪君に別れを告げ、僕とダイバー姉さんは空港へ行く。
与那国島を発った飛行機は、いったん石垣島の石垣空港に着陸するのだ。
その後、石垣空港から那覇空港までの飛行機に乗り換えるのだが、乗り換え時間が3時間ある。
さてどうするか。
レンタカーを借りて石垣島をドライブするプランも考えたが、快晴とはいいがたい天気であり、そこまでのモチベーションは無い。
では、離島ターミナル周辺で酒飲んでダラダラするか。
早速マルハ鮮魚に行ってみるか。
コーラルリーフに囲まれて
マルハ鮮魚店。
そのお店は離島ターミナルから徒歩1分の距離にあるのだが、先に離島ターミナル付近の天国っぷりをご紹介しよう。
店舗と海を同時に写真に収めるのが困難なので、まずはあなたに店舗周辺の世界観を認知してもらいたいのが狙いだ。
別名"離島桟橋"。
僕の出会った旅人は、こっちの呼び名を使う人が多かったが。
石垣島南部にある、八重山の島々への便を司るプラットホーム群である。
「竹富島」・「黒島」・「西表島」・「鳩間島」・「波照間島」・与那国島…。
全部ここから船が出ている。
僕もここから夢を乗せて出航し、いろんな島を巡った。
巨大な波に襲われて、ちょっとシャレにならない危機に見舞われたこともある。
結構率が非常に高い波照間便の最新情報をヒヤヒヤしながら見守るのは、毎度のことだ。
当然挫折もあるし大どんでん返しもある。
人生ってのは、そういうものよ。
そんなエピソードはさて置き、見てほしいのはこの海の色だ。
本州ではちょっとお目にかかるのが難しい色。
沖縄本島の海もすごく綺麗だが、それよりもまた一段と青いのだ。
同じ日本なのが信じられない世界。
数10分から1時間前後の、珊瑚礁の上を疾走する船旅。
それらの船は、基本的にどれも石垣島の離島ターミナルとの往復である。
複数の島に行きたい場合、必ず石垣島が中継点になるというワケだ。
まぁ例外が無いわけではないけれども。
そんな中で、A島から戻ってきてB島への船が出航するまで少し時間がある。
どうしますか?…っていう悩みだ。
これが冒頭で僕が荻窪君に相談したことだ。
「離島ターミナルの受付施設を、海に向かって左に出て徒歩1分」というのが、荻窪君の答えだ。
ちょっと今回は例外的に船ではなくって飛行機で与那国島から帰ってきてしまった僕だが、離島ターミナルに戻ってきた。
そして言われた通りに歩く。
一瞬で見つけた。
海ギリギリを通る道に面した店舗に掲げられた、青い「まぐろ」の看板。
あそこに違いない。
魚屋さんで飲もうぜ
マルハ鮮魚は、文字通り鮮魚店である。お魚を売っている。
だけども店頭には簡素なプラスチックのテーブルとイスが設置されており、ここでイートインすることも可能なのだ。
4人掛けテーブルが3つある。
ここでお酒好きの僕やあなたは、もう気付いているかもしれないが、このお店にはワクワクするような掲示物が貼られている。
「おさしみ」…じゃないよ。
「生ビール」の方だ。魅惑的な響き。
ここでは生ビールも売っているのだ。ゴクリとしちゃうよね。
いかんせん、じっとしていても汗をかくような常夏の島。
真冬だって長袖着ることはあっても、外でご飯食うくらいなんでもないくらい温暖な気候の島。
体は常にビールを欲していると言っても過言ではない。
ガラス戸にも「生ビール」・「生ビール」と、サブリミナル効果のように訴えかけてきている。
頭上にはオリオンビールの提灯だ。奥のガラスケースには手書きで「さしみ」の文字が見える。
もう祭りの準備は整っている!!
僕はお店に入り、お刺身のケースを覗いた。
しかし悲しいかな、もうお刺身はほとんどない。
天ぷらみたいな惣菜類が少し残っているだけだった。
荻窪君の「昼くらいになるともう売り切れちゃっていることもあるよ」という言葉が思い出された。
なんてこった。
悲しみに震えながら店員さんに質問してみる。
「今、お魚が港から来たところだよ。ちょっと待っててもらえればすぐに捌きますよ。」
とのことだ。
ワッショーイ!!
待ちますとも。
ビールを飲みながら待ちますとも。
仕入れたての新鮮な魚を食べれるのなら、かえって嬉しいよ。
オリオンビールをオーダーし、僕はテラス席に腰掛ける。
数分で刺身が登場した。
プラスチックのなんかのフタに乗せられた、シンプル&ワイルドな登場のしかたであるが、それがまたいい。素朴イズ・ベストだよ。
あー、幸せー!
昼間っから刺身食って酒飲んでほろ酔いでさ!
ちなみにこのとき世間は冬なのに、ここではオープンテラスで暖かい風に吹かれてヌクヌクできているんだぜ。
横の席では地元のおじいさん2人がプチ宴会をやっており、店のラジカセからは陽気なBGMが流れている。
お刺身500円、ビール500円で合計1000円だ。
いいな!ここ最高だな!!
※ このあと別のお店で二次会しちゃいました。また飲んじゃいました。
最南端への景気付け
ちょっとだけ時間が流れた。
また僕は石垣島の離島ターミナルに来ていた。
これから日本最南端の波照間島に行く。
しかしその船便までは2時間ある。
その2時間で竹富島か黒島かを往復することも考えたが、ちょっと厳しいかな…。
…じゃあまたマルハ鮮魚行けばいいじゃない。
僕はもう既にビール脳になっていた。
今回はマグロのなかおちがドッサリあった。よしっこれにしよう。
それともちろんオリオンビールくれ。
気温は3月なのに27℃だ。ビールの季節だ。
よく同僚など身近な人からは「オリオンビールは薄い」って聞くけどさ。
本州で飲むのと沖縄で飲むのは違うの。
沖縄のこの常夏の中で麦茶のようにグビグビ飲むならオリオンビールなの。
その土地で食べられたり飲まれているものには、ちゃんと理由がある。
どこまでも青い海を眺めながら、昼間から一杯。
最高じゃないか。
メッチャクチャ早起きして羽田空港から一便でやってきたこともあり、寝不足で酔いが回るのが早い。普段の3倍酔う。
最高。ととのった。
もちろんマグロの刺身もうまい。
一品だし量が多いので少し飽きが来る気もするけど、それでもビールが進むのだ。
これから向かう最南端の波照間島への航路の安全を祈願し、飲む。
以前は船が壊れたり、知り合った旅人が乗った船が沈没したりといろいろあったが、今回は大丈夫かな?
滞在時間はわずか。
サクッと飲んでサクッと去る。粋に行こうじゃないか。
まだまだこれからの旅はオリオンビールに溺れるのだから。
※ このあと別のお店で二次会しちゃいました。また飲んじゃいました。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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