週末大冒険

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ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No.194【岩手県】僕は確かに虹色の山を見た!早朝の「焼走り熔岩流」を歩いた記憶と記録!

5月の下旬。だがそこは息が白くなるほどに寒かった。

時刻は早朝。

朝の5時を回ってすぐのことだった。

 

一面に広がる溶岩の向こうに聳える「岩手山」が、虹色に輝いた。

 

生物がほとんどいない、静寂の世界。

そこに忽然と聳え、虹色の灯りを放ったその山は、息を飲むほどに美しかった。

 

 

では、今回は岩手山のふもとに広がる「焼走り熔岩流(やけはしりようがんりゅう)」をご紹介しよう。

 

 

早朝の閑寂

 

車中泊ポイントにて、午前4時に目を覚ました。

こんなパン屋さんみたいな時間に行動を開始したのは、もちろん朝一で焼走り熔岩流を訪問するためである。

 

早朝を走る1

眠い目をこすりながら、山間部を走る車のハンドルを握った。

少しだけ開けた窓から吹き込む風は、ヒンヤリを通り越して普通に寒かった。

もう夏だというのに。

 

早朝を走る2

それらしき場所に到着した。

ここが焼走り熔岩流の駐車場だろうか?

 

結論からいうと、焼走り熔岩流自体は車窓から見えない上、付近の看板も少ないし駐車場への案内も特になく、わかりづらかった。

まぁでもこのとき僕が停めたスポット、「焼走り野営場」が一番スタンダードな駐車場なので、もしあなたがここに行くと言うならば覚えておいてほしい。

 

ちょっと離れたところには「岩手山銀河ステーション」の天文台も見えていた。

上の写真、中央の車の向こう側に見えているのがそれだ。

 

遊歩道へ1

熔岩流の遊歩道の入口までやってきた。

ちなみに車道や駐車場と熔岩流の間には木立があり、それが前述の通り車窓から熔岩流が見えない理由だ。

 

遊歩道へ2

これが遊歩道マップ。

要点は以下の通りだ。

 

  • 遊歩道は片道1km。ずっと熔岩流の上。
  • 熔岩流の中に展望台のような目標にできるスポットはない。
  • 1km先、遊歩道が終わった地点に展望台がある。
  • 1km先の終点からここまではまた歩いて戻ることになるが、車道もあるのでそこを歩ける。

 

理解。

それでは歩こう。

もう夏になるが、くそ寒いので真冬の装備でだ。

 

遊歩道へ3

まだ朝の4時台。

誰もいない、静かな荒野が現れる…!

 

 

灰色しかない世界

 

一歩熔岩流に入ると、そこは地獄のような光景だった。

熔岩しかない。

ひたすらに熔岩の広がったフィールドであった。

 

熔岩の世界1

その向こうに聳えているのは、この熔岩を吐き出した張本人、岩手山だ。

 

今から300年前の1732年、岩手山はハデに噴火した。ドバドバに熔岩が流れた。

それが冷えて固まったのが、ここだ。

 

地球の歴史ってすごく長いから、地球にとっての300年なんて、マジ最近である。

最近の話だから、熔岩の上にはまだ植物がほとんど生えていない。

熔岩剥き出しの大地がこれだけ広がっているのって、とても貴重なのだそうだ。

 

熔岩の世界2

「でも、最近噴火したといえば、あの山もあの山も直近数10年以内に噴火して大ニュースになって…」っていう考えが頭をよぎった。

 

いや、あえてそれらは書くのを辞めよう。

火砕流を伴う噴火には、悲しい要素が多すぎるからだ。

300年前の、ちょっとピンと来ないくらい昔のスポットがちょうどいい。

 

熔岩の世界3

で、これ悲しいお知らせなんだけどさ、熔岩の上を歩いたところで、何かすっごいイベントがあるわけではない。

ただただ、淡々と歩くのみだ。

歩き、歩き、歩くのだ。

 

熔岩の世界4

僕は一人納得した。

Webでの焼走り熔岩流の紹介も、実際に行ったという人のブログも、記事がとても淡白である理由を。

 

そっか、書くネタがなかったのだな。

変わりばえしない光景。

展望台も説明板も何もない荒野。

浮き沈みが一切ないもんな。

 

熔岩の世界5

ただ一面の灰色の世界。

足元の遊歩道も熔岩で形成されている。

熔岩は踏むとカシャンカシャンと軽石のような音を立てる。

 

風を遮るものがないからか、岩手山から吹き降ろす風がダイレクトに僕に当たる。

烏の鳴き声が聞こえる。

 

…うむ、実に地獄みが強い。

 

熔岩の世界6

足元もゴツゴツした熔岩なので、かなり慎重に歩かないと足首をグキッとやる。

歩きスマホなどしていたら、遊歩道終点までに10回くらい捻挫するだろう。両足では足りないレベルの犠牲だ。

 

この変わらない景色を眺めながら、溶岩の上を終点まで1km歩いてまた帰ってくるって、ちょっとシンドいな。

それこそ地獄の試練の1つのようだ。

 

熔岩の世界7

僕はちょっと考えた。

遊歩道を終点まで歩くのは辞めよう。そして駐車場に引き返そう。

 

ただし、このまま焼走り熔岩流を立ち去るのではない。

1㎞歩いた遊歩道の終着点にあるという展望台に、車で行こう。

 

熔岩の世界8

…こういうことだ。

早速車に乗り込み、展望台へと向かった。

 

 

熔岩にも苔は生える

 

展望台への車道であるが、県道233号を反れてからの最後の100mほどは、とても狭かった。

これ、早朝で全く車がいないからいいが、対向車が来たら擦れ違えなかったな。

 

遊歩道終点1

そして展望台が見えてきた。

すぐ脇に駐車スペースもあったが、2・3台しか停められないような規模だった。

 

終末の日中などであれば、僕の作戦は期待しないほうがいいかもしれない。

無難に1km熔岩の上を歩くほうがいいのかもしれない。

 

遊歩道終点2

上の写真でも見て取れるが、ちょうど木々の隙間から朝日が昇ってきたところだった。

時刻は5:10頃。

この時期は日の出がとても早くてワクワクするね。

 

遊歩道終点3

展望台は木々の中にある。

さっきの無味乾燥な世界から一転し、この木立と朝日は「生命って素晴らしい!」という気持ちを抱かせてくれた。感謝。

 

しかし、展望台はもうちょっとだけ待ってくれ。

実は遊歩道終点部分を少しだけ歩いたので、先にそちらのご紹介をさせていただきたい。

 

遊歩道終点4

遊歩道に説明板が1つあった。

ここいらの足元の熔岩に着目すると、灰白色の苔があるというのだ。

 

遊歩道終点5

これか!これが苔か!!

 

シモフリゴケかハイイロキゴケというそうだ。

そして説明板にある通り、桜島伊豆大島の熔岩に比べて熔岩の上に植物が生い茂るスピードがメチャメチャ遅く、それが珍しい事象なのだそうだ。

 

遊歩道終点6

面白い。

カビのようにも見えるが、言われてみれば苔なのかもしれない。

なんでこんな過酷な環境を選んでしまったんだよ、って言いたくなるような世界に頑張って生きている。

 

遊歩道終点7

この苔はなかなか親しみやすいビジュアルだ。

僕らの生活の中にいても違和感のないタイプだ。かわいい。

 

遊歩道終点8

その他、溶岩流には複数の鳥もいるそうだ。

 

「ポッポロリ、ピッピキピ」・「チョッピー、チリーチョ」…。

これまで生きてきてお目にかからなかった擬音だ…。

 

耳をすましたが、このときは鳥の声は聞こえなかった。

だから僕は「ポッポロリ・ポッポロリ」と自分で口ずさみながら遊歩道を展望台方面に引き返した。

 

 

レインボーマウンテン

 

ではでは、展望台に登ろうか。

 

虹色の山1

木製の立派な展望台だ。

階段の途中に「宮沢賢治」の石碑があった。

 

虹色の山2

"熔岩流"という作品だ。

 

なんか長文でくどくど書いていて、この場で全文を読んで理解するにはちょっとカロリーが足りなかったし、今ここでこの内容をブログにうまくご紹介するカロリーも足りない。

簡単に言うと『黒くてゴツゴツしてスゲーな!鳥いないな!わっ、苔が2種類生えてる!』っていう内容だ。

 

ま、ようするに言っていることは僕と一緒。違いは表現力の有無だけ。

そういうこと言うと僕、宮沢賢治さんの遺族に消されるかもしれないけど。

 

虹色の山3

展望台から前方を見ると、さっきちょこっとだけ歩いた遊歩道終点部分が見える。

遊歩道の周囲に灰色の苔が生えているのがここからでもわかる。

そして、熔岩の上に少しずつ日が差してきたぞー…。

 

ここでだ。

僕はちょっと目線の上の岩手山を見て「あれ?」って思った。

 

虹色の山4

 

!??

 

 

…そう思ったのだ。

虹とは上下が逆だし並びも多少違うが、下から赤・オレンジ・緑・黄色・青…のような配色となっている。

 

虹色の山5

山頂付近の雲の影の青、麓付近の朝日に照らされた赤。

これらのコントラストが奇跡的にこのグラデーションを生んだのだろうか。

 

日が昇るに合わせ、刻一刻とその様相は変化していく。

面白い!これはいいものを見た!

僕はキャッキャとはしゃいださ。

 

虹色の山6

もしかしたら珍しくないのかもしれない。

大騒ぎするようなことではないのかもしれない。

 

しかし、遥々旅をしてきた地で早朝に見た、この一瞬の現象は、僕の心には大きく響いた。

またとないこの時間を大切にしたい。

そう思った。

 

灰色の世界の彼方に、虹が架かったのだ。

 

まさに極楽。

今日もいい日になりますように。

僕は朝日に祈った。

 

そしてさらに山間部へ

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

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