「白糸の滝」というのは全国各地にいくつかあるが、静岡県富士宮市の白糸の滝のお話である。
ここの白糸の滝が絶景なのを知っている方は多いと思う。
無数の小さな滝が織りなす、白い水流のヴェールのような瀑布なのだ。
僕も過去何度か訪問し、スゲースゲーと叫んだ声すら滝の音に飲み込まれるような絶景に感動したさ。
ここに紅葉真っ盛りのシーズンに行ったらどうなるか。
恥ずかしながら、初めて紅葉シーズンに行ったのは昨年である2021年11月であった。
そしてすごかった。
陳腐な言葉を並べても説得力がないので、まずは写真を1枚掲載しよう。
はい、100点!!
ちなみにもうちょっと到着時間が早ければ写真の右下部分の影も無くなるので120点!!
あと、写真右上の「富士山」が雲に隠れていなくって完全に見えていたら200点!!
…というワケでマイナスファクターも少々あるものの、すごく満足できる時間を過ごすことができた。
今回はその、紅葉時期の白糸の滝に絞って執筆する。
近道一番駐車場
白糸の滝には、いくつか駐車場がある。
なんて言うのかな…、観光地のオフィシャルな駐車場ではなく、おじさんおばさんなどが「安いよー」・「ここだよー」みたいな感じで呼び込んでいるような、ちょっとレトロな形態の駐車場ってイメージだった。
それらの駐車場の場所をまずご紹介しようか。
ゴチャついたマップになってしまってすまない。少し整理しよう。
- 白糸の滝観光駐車場(¥500)…ちょっと高いが、ショップなどへのアクセス良好
- 終点駐車場(¥300)…音止の滝・白糸の滝に近いが、観光客が多く歩く狭い道を進む必要あり
- 旧白糸ガーデン駐車場(¥300)…すべてがノーマル
- 近道一番駐車場(¥300)…白糸の滝にやや近いが、ショップにはやや遠い
- 白糸自然公園駐車場(¥0)…すべてに対し桁外れに遠いが、歩ける距離だし無料
今回、僕は「近道一番駐車場」に停めた。
この駐車場を選んだの、なかなかユニークな選択肢だったかもなって思った。
まずは名前がユニークだしな。
駐車場から車道を挟んだ対岸が白糸の滝の敷地だそうだ。
その車道を渡るとき、さっきまで隠れていた富士山の登頂が見えて「おぉぉ!」ってなった。
富士山、ほんのちょっと頭が出ているだけでも、なんて雄大でなんて魅力的なのだろう。
すごい存在だ。富士山が嫌いだという日本人はなかなか見かけない。
ただし僕は近道一番駐車場を信用していなかった。
『白糸の滝がすぐ見えますよ』みたいに書かれていたが、この界隈で一番賑わっている「白糸の滝観光駐車場(¥500)」からはそれなりに離れている。
こういう観光地って、みんな口々に「ウチが一番近い」って言っているイメージだ。
だから疑わしい。
歩くこと2分ほど、いきなりこんな絶景が眼下に現れた。
マジか。近いしすごい。
疑ってゴメン。
白糸の滝展望台
すごいすごい!!
近道一番駐車場からすぐに白糸の滝を眺めることができた。
そのスポット名は「白糸の滝展望台」というまんまなネーミングである。
さきほどのMAPに、世界一下手な白糸の滝の絵を追加してみた。
白糸の滝は、向かって左側が正面である。
近道一番駐車場から歩いてきた僕は、いきなり展望台からその正面を見ることができた。
一番栄えている駐車場は白糸の滝観光駐車場であるが、そこから歩くよりも断然近い。
それに、白糸の滝観光駐車場に車を停める多くの人は、展望台まで来ないのだ。
白糸の滝観光駐車場に車を停める人は、「ここ」って書いたところが大体ゴールになる。
展望台にメッチャ近いように見えるが、実は展望台の方が遥かに標高が高い。
だからみんな展望台まで上がってこないんだよね。
何を隠そう、今までの僕がそれだ。
だから、今回初めて近道一番駐車場に車を停め、この景色を見ることが出来て感動した。
写真の右上の隅を見てほしい。富士山も見えている。
白糸の滝と富士山の写真を同時に撮れるのは、地上ではここだけだ。
しかし「失敗したな」って思った点が2つある。
1つは到着時間が遅すぎた。
あと2時間くらい早ければ、上の写真の大部分は日が当たっていただろう。
影が多くなってしまい、滝が見えにくかったのがマイナスだ。
あともう1つ、展望台の写真を引きで撮ればよかった。
記事にするにはいささかわかりづらかったよね、ゴメン。
展望台と言っても何か塔があるわけでもないし、丘を登るわけでもない。
遊歩道の脇が深い谷であり、遊歩道から谷底を見下ろしたのだ。
これは展望台に掲示してあった写真である。
はい、プロってすごい。素人惨敗。
ただ、展望台は狭いので狙えるアングルは1つだ。
天気と日当たりと紅葉の時期だけしっかり合わせれば、あなたも似たような写真を撮れるかもしれない。
お鬢(びん)水
白糸の滝展望台から、ほんの100mほど近道一番駐車場方面に戻る。
そこに「お鬢水」というスポットがある。
どういうところなのか想像がつかなかったので、先にわかりやすい白糸の滝展望台を見たが、心を満たされたのでお鬢水に戻ることにした。
遊歩道が分岐し、ちょっと木立の中に入っていくイメージだ。
そこのモミジの色付きが最高で、これを見ただけでも「お鬢水を目指してよかったなぁ」と思えるほどだった。
日本の秋って凄まじいよな。
世界が赤く燃えるように色付く。
1年からしたらこの時期は一瞬かもしれないが、劇的なイベントだとしみじみ思う。
これがお鬢水だ。ようするに池、だね。
窪地に当たる部分なので既に日陰であるが、水は結構澄んでいそうな気配だ。
そして池のふちには石碑などが並んでいる。歴史あるスポットの気配。
スケール感は、左端の人間と対比してみてほしい。
脇の説明板に由緒が書かれている。
ここは白糸の滝の崖面のほぼ中央部。川の本流が落下する部分の上に当たるらしい。
鎌倉時代に初代将軍の「源頼朝」がここで水面を鏡代わりにして髪型をセットしたのが、名前の由来だ。
水面を鏡代わりにするには、当然水面の正面に行かねばならないよね。
この池の大きさと深さを鑑みると、なかなかにチャレンジングなヘアセットだったと思う。
池の中にズブズブ入って下半身ビッショリか、後ろから部下に落ちないように支えてもらいながらのスリリングなひとときか。
まぁどっちでもいいけど。
そして当時もちゃんと鏡あるんだから、部下は鏡を用意しておいた方がいい。
…というのが非常にヤボな横槍だということを、僕はもちろん知っている。
数100年以上前の逸話なんて、事実とか理屈ってレベルではない。
むしろロマンと神話の物語なのだから。
さて、僕はお鬢水から流れ出る水の行方を目で追う。
これ以上は危険なので立入禁止だが、水流の先には深い谷があるようだ。
木立の隙間に目を凝らしてみよう。
うおぉ、あれはもしかして白糸の滝の端っこか!?
お鬢水も、滝の一部となってあそこから滑り落ちていくのだろう。
白糸の滝の一端を垣間見ることができたのだな。
滝正面と滝見橋
白糸の滝展望台から、急な階段をしばらく下る。
そうすると、滝壺と同じ目線に設置された遊歩道に出ることができる。
前述のMAPを再利用する。
「ここ」と書いた部分にやってきた。ここまでは過去の僕もアプローチ済みだ。
水流のカーテン。
そのパノラマを眼前で見ることができるのがここだ。
あれ、確か昔は写真の左端に当たる部分に古びた土産物屋があったよね?
そういうのが撤去され、とても綺麗なテラス風の遊歩道になっているな。
少し残念なのは、もう滝の半分近くが日影になっているという点だ。
さっき展望台から眺めたときよりも、さらに日影が浸食してきている。
こう書くと夕方の訪問のように聞こえるが、実はまだ13時台である。
晩秋の日は短い。昼前の訪問がベストである。
それでも、この陰と陽のコントラストは美しい…。
とめどなく流れる水。不思議。
炎の揺らめきと一緒で、いつまでも眺めていたくなる。
…おっと。
しかしそんなにゆっくりとはしていられないぜ。
「滝見橋」という絶妙なネーミングの橋から、完全に日影になる前に白糸の滝を眺めたいじゃないか。急げ!
これが滝見橋!
この写真ね、実は僕の2m左まで日影がやってきていて、「早く写真を撮ってくれー!もう闇が僕のすぐ近くまで浸食してきているー!僕が飲み込まれる前に早く!!」って、中二チックなファンタジーストーリーみたいなセリフを吐いていた。
いや、しかし実際マジでギリギリであった。
無数の滝が、川の本流に流れ込んで合流している様子が手に取るようにわかる。
滝の構造を把握するのであれば、ここが一番のスポットかもしれないな。
そしてさっきのお鬢水は、この写真の一番奥の崖の上だな。
それでは、滝見橋の先の階段を昇ろう。
つまりは白糸の滝展望台のあったのとは反対側の崖。
そっちのほうにこのエリアのもう1つの滝、「音止(おとどめ)の滝」があるのだ。
見上げる紅葉が目に眩しい。
途中、滝見橋と白糸の滝を同時に見下ろすことができた。
白糸の滝、これにてラストショットである。
「Mifujiya Coffee」
階段を昇った先は、カフェや雑貨屋などが並ぶ綺麗なストリートである。
うむ、すっごい綺麗になったなここ。
昔の記憶では、昭和っぽい土産物屋が軒を連ねていた記憶だったが。
冒頭のMAPを再掲載しよう。
音止の滝のあたりまでやってきた。
…が、音止の滝については次項で書こうと思う。なぜならば… ―
オシャレなカフェを発見してしまったのだ。
「Mifujiya Coffee」という店名。
カフェなんてする予定ではなかったが、急にコーヒー飲みたくなっちまったじゃないかチクショウ。
そして今日は晩秋なのにポッカポカ。
外のテラス席でコーヒー飲んだら最高じゃないかよ。
あぁ、なんて恐ろしいことを思いついてしまったのだろう、僕は。
じゃあもうカフェに入るしかないだろう。
自家焙煎とか書いてあるし。なにそのキラーフレーズ。ちょっと僕に飲ませろ。
メニュー台もやたらオシャレだ。
2人なので"富士山アイスコーヒー"と、"音止の滝ブレンドコーヒー"をオーダーした。
そうなのだ。11月も下旬だがこれだけ暖かく、しかも階段を昇った直後だからアイスコーヒーがいいのだ。
店内、いい雰囲気だな。
コーヒー関連の雑貨も取り扱っている様子。
コーヒーを淹れてくれるのを待つ間、いろいろ見させてもらった。
店内には薪ストーブもある。
これから冬を迎えると、あそこに火が入るだろう。
中の席もいいが、ガラガラである。
お客さんはみんな外のテラス席にいるのである。
僕もそうする。冬になる前にせいいっぱい光合成しておきたいじゃないか。
はいステキ。
ここはカフェの敷地であり、カフェの店内を経由しないと行けない場所。
つまりはメニューをオーダーした者のみが入れる世界だ。
カフェテーブルが点在しているし、お店の軒下の日影もに席がある。
あと、この写真を撮っている僕の後ろにもカウンター席がある。
軒下の席に座った。ほどよく日が当たっていた。
そして2つの席が、まるで映画館の座席のように並んでおり、その真ん中にドリンクを置く小さなテーブルが取り付けられていた。
すっきりした味わいの富士山アイスコーヒー、ほっとする音止の滝ブレンド。
どちらも富士山の湧水を使っているとのことだ。
ホットもアイスもどちらも楽しめる気候であり、そしてどちらもおいしい。
ゆっくりと、日が西に傾いていくのを眺めながら、カフェタイムを楽しんだ。
幸せなひとときだ。
音止の滝
白糸の滝とセットで楽しめる、音止の滝。
ここに来たなら見たいところだ。当然だ。
ちなみにこれが、過去に僕が見た音止の滝だ。
白糸の滝とは一転して、豪快なイメージの滝である。
前章でカフェをしたときから、数分時をさかのぼる。
さーて、滝を見られる場所はどこだったかなぁと遊歩道を歩いていると…。
わわっ!なんだかチープですぜ!
でも確かに横には『音止の滝』と書かれている。
既存のしっかりした丸太風の柵がある部分に対し、とりあえず数10cm高さを稼ぐためだけのために、鉄パイプでとりあえず感の高いお立ち台を作っている。
なにこれ?こんなだったっけ?
コロナ禍だしお立ち台のサイズ的にも、1組ずつしか滝を眺められない。
なので必然的に行儀のいい列ができていた。
そして数組分待ち、僕もお立ち台に登る…。
見えねーー!
眼前のモジャモジャが、果てしなくジャマーー!!
それに、さっき掲載した過去写真と比べるとちょっとアングル違うよね。
どうした?過去に眺めた展望台はどこ行った?
それっぽい場所はあるが、お土産物屋の敷地内であり、お土産物屋ごと立入禁止のロープが張られている。
はて??
まぁしょうがないかと遊歩道を歩いていて、そのとき発見したのが前章のカフェ、「Mifujiya Coffee」である。
実はこのカフェに入った目的は、もう1つあった。
音止の滝のほぼ真上に敷地があるのだ。
Webサイトにも『日本で唯一滝の真上で珈琲が飲めるお店です』って書かれている。
上の写真、赤囲みは音止の滝の石碑である。
向かって左手、カウンター席に座るカップルたちは、真下の滝を見下ろしながらコーヒーを飲んでいるのである。
僕も滝を見れる可能性があるならカフェしようぜ!…ってなったのだ。
そう、あくまで「可能性」と書いた。
なぜなら、滝の真上の敷地から、滝がちゃんと見える可能性は低いだろうと考えたのだ。
さっきのお立ち台からのアングル、モジャモジャがなくっても滝が見えるギリギリであろう。
これ以上滝の起点に近づいたら、ちゃんと見えようはずもない。
では、答え合わせだ。
うむ、予想通りギリッギリ!!
せいいっぱい首を伸ばしてこのレベルだ。
しかし確認できただけでも成果があったじゃないか。
今回はこれで良い。
ちなみに音止の滝、さらに遠いところから遠望する「音止めの滝裏展望台」というのがあるのだが、僕自身は行っていないので気になる方はご自身で調べてほしい。
…再び近道一番駐車場。
スタッフのおじいちゃんとお話ができた。
音止の滝は2011年の東日本大震災後、地盤が一部崩れてしまったのだそうだ。
それで危ないので立入禁止になっているとのこと。
なるほど、あの地震はここまで影響があり、そして10年以上経った今も展望設備が再建できないということか。
そういえば、白糸の滝はさておき、音止の滝は長いこと見ていなかったな。今回初めてこの経緯を知った。
白糸の滝。
富士山が「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」として世界遺産になったとともに、ここも世界遺産となっている。
2022年11/26・27は、白糸の滝展望台で紅葉ライトアップも行われる。
あなたも興味があったら滑り込んでみてはいかがだろうか。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報