もうすぐ2021年も終わりだ。
あなたも2022年の初日の出をどこで見ようか考えているに違いない。
初日の出イベントの企画にワクワクすると同時に、「あの日の出を待つ間の寒さが身に染みるんだよな…」とジレンマを感じているに違いない。
あの日の出を待つやきもきした時間も醍醐味なのであるが、確かに年々寒さが身に応えるのも事実であろう。
かといって、眺めのいいホテルの一室を予約するのは、お財布事情的に苦しいだろう。
さて、首都圏在住の方にフォーカスした記事になってしまうかもしれないが、朗報だ。
暖かい場所から絶景の初日の出を安価で見れる技がある。
お値段、1100円(2021年現在)!!
東京湾フェリーーー!!!
航路は上記の通り。
今でこそ「東京湾アクアライン」を使って車でスーッと東京湾を横断できるが、一昔前までは三浦半島と房総半島を繋ぐ重要な交通手段の1つだったようだ。
そしてこれが、今までいろんなところで初日の出を見てきた僕の一押しのプランである。
闇夜の港
元旦。深夜2時の久里浜港にやってきた。
出航は6時50分だそうだ。まだ5時間近くある。
真っ暗。
真っ暗すぎて、車もどこに停めたらいいのかよくわからない。
なので適当に停めた。たぶんここが駐車線。
フェリーターミナルの建物も、停泊しているフェリーもほぼ真っ暗。
上の写真は補正したからなんとか見えているけれど、肉眼だとほぼ真っ暗。
本当にこの数時間後に営業を開始するのか不安になるレベルの暗さ。
ぶっちゃけ不安しかない。
このあと、不安すぎて車内でグーグー寝てしまった。
なんかアナウンスがかかったので飛び起きた。
時計を見ると5時10分であった。
アナウンスの声が割れすぎていて、何を言っているのか全然聞こえなかった。
寝ぼけまなこで「今、なんつった?なんつった?」とキョロキョロする。
車窓から見てみると、もう建物もフェリー自体も灯りが付き、煌々と輝いている。
愛車のHUMMER_H3の周囲は、他の車でビッチリだ。
大型バスもたくさん停まっている。
すげー。3時間寝ている間に祭り準備が整ったってヤツだ。
新年が動き出す!!
アナウンスは全く聞き取れなかったが、ボチボチ窓口に行ってみたほうがいいと判断。
現時点でどのくらいの人が待機しているのか見に行こう。
受付まで来ると、チケットの販売が開始されていた。
実はこのプラン、事前予約ができない。当日販売のみだ。
なので窓口が開いたらすぐに買おう。
買うチケットは片道でも往復でもない、遊覧だ。
これがとても大事。
はい、これ。
ご覧の通り2017年元旦の情報でちょっと古いんだけどさ、2022年も同じプランが存在しているから気にするな。
遊覧って何かと言うと、ここから出発する千葉県の金谷港で船を降りれないのだ。
そのまましばらく待ち、また久里浜港に引き返す。
車は久里浜港に停めてあるからな。車の元に戻らねばならないから。
もちろん車も一緒に千葉に連れて行くことも可能だが、それだと高価になるしな。
たった1100円で久里浜と千葉をフェリーで往復してくれる。
ありがたい価格帯だ。
しかも無料で甘酒の配布までしていた。
なんというホスピタリティー。なお、僕は甘酒は飲めない。
「さて、チケットを買ったからにはもう乗船は約束されたのだろうな。では車内で先ほどの夢の続きを…」って思ったら、「チケットを持っていても先着順なので気を付けて下さいね」とのこと。
つまり、せっかくこの券を購入したのに、先に並ぶ人が多数出てしまったら始発便に乗れないのだ。
マジか。
乗船口の方を見ると、既に数10人が列を作っている。
では並ぼう。
5時50分、車内でしっかりと装備を整えた僕が、乗船待ちの列に並んだ。
6時10分、つまり出航40分前。
乗船が開始されたようだ。
ボーリングブリッジの行列が動き、船内へと入ることができた。
座席は自由席だ。
さーて、どこに座ればいいと思う??
朝焼けの乗船
まずは座席の確保だ。
これ、重要なポイントだから聞いてくれ。
フェリーの最前部。
ここは前方全てがガラス張りのすごい席だ。
早くから列に並んでいた人たちは、こぞってそちらに突撃して行った。
僕が乗り込んだころには、最前列はとっくに埋まっていた。
そりゃそうだ。
座席の目の前が窓なのだし、そしてフェリーは三浦半島から東にある房総半島に向かうのだ。朝日に向かって進むのだ。
そりゃ特等席になるよな。
2番手に甘んじた僕は、その少し後ろの左舷の窓際に座った。
4人掛けのボックスシートだ。
ちょっとしたミニテーブルまで付いていて便利だ。
座席の位置は、上図の赤丸くらいの場所だった。
とりあえず窓際席を取れてよかった。お客さんはどんどん入ってきて、瞬く間に満席となった。
座席がなくってウロウロしている人も結構いる。
座席から東の空を見ると、徐々に空が白んできていた。
神奈川県の元旦の日の出時刻は大体6時45分。
あと30分ほどで水平線から太陽が昇る計算だ。
ワクワクしてきた。どこかに旅立つわけでもなく、またここに戻ってくるというのに。
この船のエンジン音が、気持ちを高揚させるのだ。
日の出の瞬間もいいけど、空の色が好きなのはやっぱこの夜明け前だなぁ。
神秘的すぎる。
では、座席も確保できたことなので、ちょっと船内をフラフラするわ。
デッキに出た。
ここはまだ空き座席がある。しかしバチクソ寒いヤツだ。
これからこの船は、真冬の夜明けという一番寒いシチュエーションの中を、風を切って航海に出るのだ。
相当に屈強な猛者でないと耐えられない。温室育ちの僕には無理。
だが、世の中には強い人もいっぱいいる。
最上階デッキはそれなりに賑わっている。
みんな覚悟を決めた顔をしている。かっこいい。僕はここにいる自分以外の全員を尊敬しよう!今ここに讃えよう!
朝が近付いてきた。
6時25分、出航まであと25分、そして日の出まであと15分だ。
さぁ、ここで僕は限界である。
暖かい船室に戻ろう。出航までは持参した温かいお茶を飲み、そしてヌクヌクしながら出航シーンを見るのだ。
心に決めている。それが新年の抱負だ。
洋上の初日の出(1回目)
6時50分、出航。
空はずいぶん明るくなってきた。既に房総半島の向こうには太陽があるはずだ。
そんな中、新年第1便が出航する。
陸地には、浜辺で初日の出を待つ人たちが見える。
寒そうだ。
昨年までの僕の立ち位置は、まさにあっち側であった。
しかし今年の僕はひと味違うぞ。
たった1000円ちょっとで、暖かい船室から大スペクタクルを眺められるのだ。
気分もセレブである。
右奥の船、おわかりいただけただろうか。
あれは房総半島側の金谷港から久里浜港に向かってくる船だ。
東京湾フェリー同士が擦れ違う。
ちなみに「金谷⇒久里浜⇒金谷」の遊覧チケットよりも、僕が今回使った「久里浜⇒金谷⇒久里浜」の遊覧チケットの方がお得な要素がある。
これについては後述しよう。
僕の座る左舷側の席、進行方向ギリギリ見えている山の稜線が燃えてきた。
あそこから太陽が昇る…!
つまりさ、前方のガラス張りの席は取れなかったけど、ここから座ったまま初日の出を見れてしまうのではなかろうか?
7時ジャスト。出航から10分。
もう間もなく太陽が上がるぞ。
既に出てきていいタイミングなんだけど、この船は房総半島に接近していくから山の稜線がどんどん上がっていく。
つまり太陽はそれ以上のスピードで昇らないと、山の上に出ることができない仕組み。
ちょっともどかしい数分を過ごしたが、7時4分、ついに御来光!!
あけましてーーー
おめでとうございます!!
船内から歓声が上がる。
これは僕も知らなかったのだが、結果として僕の座っている左舷の席が特等席だった。
初日の出の瞬間は、船は大きく太陽に左舷を向けていたのだ。
なので僕の席の周囲にも多くの立ち見客が集まり、みんなで写真を撮りまくった。
なんか一体感が生まれた。僕を中心に。
トロトロの卵の黄身のような太陽だ。
たまらん。トーストとコーヒーがあれば最高の朝食になりそうな卵だ。
水平線上には少し雲があったが、それもまた粋な演出と言えよう。
神々しい光が船内まで長く射し込んでくる。
あぁ、明るい。そして暖かい。
長いこと初日の出ドライブを続けてきたが、こんな室内でヌクヌクと初日の出を見れたのは、史上初だ。ありがたい。
デッキに出る必要すらない。この席の眺め、最高だから。
このタイミングで船は少し進路を変え、前方のガラス張りの席の正面に太陽が見えるようになった。
「ファーストクラスの方々、お待たせ!」って感じだ。
とりあえず充分に初日の出の写真を撮ったから僕はOK。満足した。
…と思いきやだ。
日没。
7時13分、つまり日の出から9分で太陽は房総半島に沈む。日本一早い日没?
船内のテンションが急に下がったのが空気でわかる。
日没から9分後の7時22分、フェリーは金谷港に到着した。30分ほどの船旅であった。
まだ日の出前の静かな金谷港だ。なんか時間が巻き戻った。
ここで片道切符の人たちは降りていく。
遊覧チケットの僕は、船を降りることはできないので、次の出航までの10分ほど船内待機となる。
さてさて、これで初日の出を見れてしまったわけだが、遊覧チケットの底力はまだこれからだ。
復路に期待せよ!
再び日は昇る(2回目)
10分の停泊時間で、僕は再びデッキに上がった。
目の前には絶壁の「鋸山」だ。右端にロープウェイも見えている。
太陽はこの山の陰なので、地上に日があたるのはまだまだ先だろう。
一方、西側の景色だ。
既に日が当たって明るくなっているのがわかる。
少しコントラストをいじった写真だが、左端に「富士山」が見える。
絶景だな、これ。
正月早々、おめでたい光景だ。
…ところでだ。
乗客の中の結構な人数が、金谷港で降りてしまった気配だ。
そして金谷港から新たに乗って来た人は少ない。
つまり、船内の人数は結構少ない。
これまでは座席確保のためにも航行中は自席にいたのだが、もう復路はデッキに出ていようかな?
往路と比べて気温も明らかに上がってきている。
テンションも上がってきている。
つまり、寒さに耐えられる。
7時35分。金谷港から出航。
そしてーーー!!
7時39分、2回目の初日の出!!
1回目とは違うぞ。
既にある程度高い位置まで昇っている太陽は、「ピカーーーッ!!」って感じに力強く僕らを照らすのだ。
さて、ご理解いただけただろうか?
タイトルにもある『初日の出は2度現れる』とは、このことを指している。
そして、東京湾フェリーも、久里浜からの遊覧第1便をこのようにアピールしている。
逆の「金谷⇒久里浜⇒金谷」では、洋上から見れる初日の出は1回のみなのだ。
よりドラマチックな船旅をしたいのであれば、久里浜発がいいかと思う。
いいわー!これ、いいわー!!
デッキの最後部から見える、フェリーの通った後の軌跡がたまらない。
朝日から延びるように見事な曲線を描いていて、カッコ良すぎる。
往路に比べても、デッキに出ている人の数が違うと感じた。
多いのだ。
みんなこの爽やかな海風を感じたいのだ。
寒さなんかは吹き飛んだのだ。
それが、2回目の日の出の威力!!
そして、明るくなった復路には人間だけではない仲間も増えているぞ。
それはカモメたちだ。
カモメと共に航海だ。
なんて絵になる風景よ。
カモメたちと一緒に富士山に向かっているんだぜ、僕ら。
確かに、1回目の初日の出もすごかった。
荘厳で神々しく、思わず手を合わせたくなるような朝日であった。
しかし2回目は、1回目にない良さがまたある。
「ヒャッホー!」と新しい1日の始まりを祝って踊りだしたくなるようなテンションだ。
気分は船上パーティーだ。
だからね、あなたももしこの東京湾フェリーで初日の出を見たいと思われるのなら、ぜひ遊覧チケットにしてみてほしい。
この時間の航海、最高なのだ。
2回楽しめるのだ。そして何度も言うが、1000円ちょいなのだ。
写真内の方々の顔はマスキングしているが、みんな笑顔だ。そして元気だ。
浜辺で初日の出を待っていたのであれば、今頃はもう初日の出を見終わり、近所のファミレスか車の中で「寒かった…」とか言いながらお茶飲んで温まっているだろう。
しかし僕らはさっきまで暖かい船室にいたから、今も元気なのだ。
これ、大事。楽しめる時間が長い。
途中でデッカいタンカーみたいな船が急接近して来たりした。
上の写真はちょっと離れたタイミングでの撮影だったので、本来はもっと近くまで来た。ビックリした。
なんだったのだろう?
真っ暗な時間から、光り輝く時間まで。
いろんなイベントが詰まっている。全く飽きさせない演出が、ずーっと続いている。
もちろん富士山も綺麗だ。みんな見ている。
東京湾からの富士山って、こんなに大きく見えるんだな…。
こうしてフェリーは、久里浜港へと帰還する…。
良い年になりますように
真っ青に晴れ渡った久里浜港に、船がゆっくりと入っていく。
海はコバルトブルーで、鏡のように穏やかだ。
なんという気持ちのいい正月だ。
これが、今年を象徴するような光景であってほしい。
最後にデッキから房総半島側を振り返る。
日は高く登り、そしてカモメたちが別れを告げるように旋回している。
8時12分、久里浜港着岸。
6時50分から1時間半ほどの航海であった。
フェリーを降りた。
1時間半前まで確かに僕はここにいたはずなのに、違う世界に降り立った感覚だった。
明るい世界。
新しい年が始まった世界。
そう感じた。
愛車の元に戻り「今年もよろしく」と声を掛ける。
今年も1年、一緒に日本中を巡ろうねって。
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新型コロナウィルスとの闘いが2年になろうとする、2021年12月…。
このときの初日の出を懐かしむとともに、来年こそは平和な年になってほしいと切に願う。
少しずつ観光地にも人が戻り、僕らは外で過ごす楽しみを思い出しつつある。
ご予定許せば、あなたもぜひ東京湾フェリーでの日の出にチャレンジしてみてほしい。
あなたにも、そして僕にも、2022年幸あれ!
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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