10月上旬の関東地方。
それは、夏なのかと言われればそうではないし、でも秋かと言われると不自然に暑かったりもする、時空の狭間なのかもしれない。
まぁ結論として、そんな時期に外でご飯を食べるとたまらなくうまい、という方向に持っていきたい。
連日コロナ禍のステイホームにテレワークで、囚人のような生活をしている僕にとって、久々に命の洗濯ができたのだ。
そんな思い出をブログに書かずして墓場に行けようものか。
埼玉県最西端の鉄道駅
予想最高気温は28℃。
車中泊明けの早朝こそ寒かったものの、朝の8時に迫る現時刻においては朗らかな気候となった。
これは半袖でOKだ。
というより、半袖以外の服は寝るとき用のジャージしか持ってきていない。
台風一過のこの陽気を、僕は全面的に信用してきた。
8時ちょい前にやってきたのは、「三峰口駅」である。
埼玉北部の羽生駅からここ三峰口駅までを結ぶ、秩父鉄道の終着駅であると同時に、埼玉県最西端の駅である。
秩父鉄道は、「秩父を走る"SLパレオエクスプレス"」と言ったほうがピンと来る方もいるかもしれない。
そして、駅名の由来は秩父の有名な神社である「三峯神社」の近くにあるという点なのだが、三峯神社の話はまた機会がございましたら。
昭和初期~中期を彷彿とさせるレトロな造形の駅舎。手書きの駅名板が味わい深い。
そして稲妻のようなエフェクトが経年を感じさせる、コカ・コーラの看板。
一転してアニメ調の看板と、その後ろのコロナ禍における新しい生活様式を促す看板が、令和を感じさせる。
新旧コラボだ。
これが、これからの時代なのかもしれない。
チラシ多めの駅構内。
そして、自動改札なんてものはない。
埼玉県内の鉄道で、PASMOにもSuicaも屈しないスタイルなのは、秩父鉄道だけだ。
切符を買え、ということだ。
しかも券売機もないようだ。対面販売である。最高だ。
僕は今回はドライブでここに来ており、電車に乗る予定もない。
実際に切符は買わないが、この光景を見れただけでも心はほっこりだ。
ちょびっと目線を右にズラそう。
切符売り場の正面に、簡素な待合スペースがある。
その向こうの扉からは、駅の正面の軒下スペースに行ける。
あるいは、ホームの裏側と言ったほうが良いのだろうか?…うまい表現が思い浮かばない。
まぁ続けての写真を見てほしい。
こんな感じだ。
ディズニーランドの「ウエスタンリバー鉄道」とか、こんなゲートだったような記憶がある。
ただ、それぞれのゲートにはチェーンが張られていて、ここからホームへは行けない。
上を見ると「SL改札」・「団体入口」というプレートが下がっている。
普段は切符売り場のすぐ脇からホームに行く手段のみで、繁忙時期だけこちらを開放するのだろうか。
さらに目線を右に向けよう。
皆様方のご推薦により認定を受けました、ありがとうございました。』
…っていう横断幕が設置されている。
関東の駅百選とは、「関東地方のエモい駅を100個集めようぜ」みたいな公募企画で、1997年~2001年までの4年間でちょっとずつ100個集めたのだ。
確かにこの駅は、選ばれて納得すぎる。
(そして、奥の方にチラッと見えている小さな蕎麦屋さんが気になる。)
SL転車台公園
駅から線路を挟んだ反対側に、「SL転車台公園」というのがあるらしい。
駅舎に掲示してある周辺MAPを見て知った。
最寄りの踏切まではここから200mほどあるらしいが、大した距離ではない。
なにより気持ちのいい秋晴れの朝なのだ。歩こう。
最寄りの踏切にて、線路の写真を撮ってみた。
遠くに三峰口駅が見え、さらにその背後に"三峰"の由来となる3つの山が聳えているのが見える。
ちなみに後者2つは、以前に廃村探索で行ったことある。懐かしい。
さて、SL転車台公園は、踏切を渡ってからまた駅方面に戻る方向だ。
上の写真だと、駅の入口は左奥であり、SL転車台公園は右奥部分となる。コの字型に歩くのだ。
はい、SL転車台公園だ。
写真左側の青い屋根が、三峰口駅だ。
さて、ここで知った少しだけ残念なお知らせだ。
この公園は、ほんのちょっと前までは「秩父鉄道車両公園」という名前であった。
かつて秩父鉄道を走った10両もの古い車両が展示してあったらしい。
しかしそれは老朽化が進み、2019年に解体撤去。公園も一時閉鎖。
リニューアルして2020年11月にSL転車台公園となったそうなのだ。
秩父鉄道車両公園時代にもここを訪問して見たかった。実に残念だ。
でも、新しい公園を見れてラッキーでもあるな。
SL転車台公園の開園記念日は、SLの写真がドーンと掲示されている。
なんとなくモザイクっぽい。
もっと寄って撮影してみようか?
フォトモザイクアートであった。
応募された秩父鉄道思い出写真、約1000枚が散りばめられて、大きな1枚のSLの写真となっていたのだ。ステキ。
そしてこれがメイン、転車台。別名ターンテーブルとも言う。
SLを方向転換させるための機能である。
ほら、前述の通りここは秩父鉄道の終着駅。
つまりはSLパレオエクスプレスの終着駅。
現代の普通の電車って両端がそれぞれ"頭"だからどっち向きにも走れるけど、SLは頭は1つ。
だから終着駅まで来たら180度ターンさせないと反対側に走ることができない。
なので、コイツが必要なのだ。
SLの先頭車両をこの円形のテーブルに乗せて、180度旋回させる。
そしたらあら不思議、反対側に走れるようになっちゃったわっていう算段だ。
ついでにこの位置で石炭を積んだり給水したりとするそうで、SL運行日の展開時間には多くの観光客が見学に来るそうだ。
あと、公園から見た三峰口駅もなかなかよかった。
では、また駅方面に戻ろうか。
ところで、戻りついでに見つけたのが、この看板だ。
熊谷起点の56.7(コロナ)km地点に線を引いた、とのことだ。
そして「みんなで56.7を乗り越えていこう」と書いてある。
あれ?
秩父鉄道は羽生起点のはずだけど、なぜこの地点計測では熊谷起点になっているのかな?
そして、どこに線を引いたのかな?
その場で線路を眺めたりキョロキョロしたけど、わからなくて。
踏切を越えて反対側に行って眺めてもよくわからなくて。
Webを調べたりしたけど、これについて記載しているサイトもなければ、実際に線を発見した人もいなくて。
まぁいっか…。
ちょうど終点三峰口駅に到着する電車を撮影しつつ、再び駅まで戻ってきた。
駅の立ち食い蕎麦屋
日が高くなってきたし、ちょっと歩いたし、なんだかんだで起きてから4時間近く経過したので、少しお腹が減って来た。
さっきちょっと気になった、駅舎内の小さな蕎麦屋さんに突撃してみようか。
暖簾がかかっているってことは、営業しているよね?
朝の8時前から営業しているのか、すごい。
暖簾情報によれば、店名は「駅麺屋」というらしい。
しかし食べログでは「三峰そば」となっている。秩父鉄道の公式情報では「三峰口駅そば店」となっているらしい。
何が正しいのかわからない。
そして、どうやらSL運行日や行楽シーズンのときのみの営業だそうだ。
貴重なチャンス、食べざるを得ない。
僕はガチな立ち食いそばに1人で入った経験は無いのだが、ここは店舗前のテーブル席を使って食べることができる。
これであれば僕も気兼ねなく突撃できる。
わりとデラックスなメニューで三峰山そばというのがある。
650円。
『令和天皇陛下献上 せきたの特挽地そば』なのだと記載されている。
よし、これにしてみよう。
おばちゃんにオーダーし、しばしテーブル席で待つ。
途中、「七味かけていいですか?」と聞かれたので、「はい」と回答した。
薬味までかけた状態で提供してくれたのだ。
ずっしりボリューミー。
特性かき揚げ・秩父こんにゃく味噌おでん・秩父特産しゃくし菜の油炒めがトッピングされているらしい。
かき揚げはタマネギとニンジンがメインだな。
こんにゃくと蕎麦のコラボは、なかなか不思議だな。
麺はやわらかめ。ダシは味が濃く、甘みが強め。
それぞれに個性はあるが、味のまとまりはあってうまい。
…てゆーか、味よりも僕は、このシチュエーションを楽しんでいる。
コロナ禍であまり出かけられなかった昨今。
先月末で緊急事態宣言も解除され、ようやく1人でフラリと車中泊で出かけ、快晴の朝に風に吹かれながら蕎麦を食べているのだ。
「自由だ!」って感じた。
「蕎麦だ!」っていうよりも、「シャバの空気だ!」みたいな感じで、蕎麦と共に綺麗な山の空気を吸いこんだ。
食べながらツーリングマップルを見たり、スマホを見たりしながらこのあとの行き先を考えるのも、忘れかけていたワクワクだ。
※ 群馬? ゴメン、それはまたの機会に。
束の間のバカンス
食後、僕は愛車の日産パオに乗り込んで、三峰口駅を出発する。
そこからほんの300mほどのところ、国道140号にぶつかるところに「白川橋」という橋がある。
最後に、ここからの眺めを見て行こう。
さっき駅に行くとき、「ここからの眺めは良さそうだな」って思ったのだ。
よーし、すっごい眺めだ。
下を流れるのは「荒川」だ。
あの、東京都心を通過して東京湾に注ぎこむ、あの荒川の上流部がここなのだ。
川面までは6~70mはあるだろうか。そうとうな高度だ。
遠くに見えている、谷を渡すケーブルのようなものにズームしてみよう。
はい、すごい。
これは「秩父ジオグラビティパーク」という、今年(2021年)にオープンしたアクティビティ施設のものだ。
あのヘロヘロした橋を命綱をつけて渡ったり、あのケージみたいなところからバンジージャンプできたりするらしい。
奥秩父。
豊かな自然と、のどかな駅。
なんという贅沢な時間。
しかしまだ今日という日は始まったばかりだ。
まだまだよろしく、大好きな秩父!
最近ちょっとゴキゲン斜めなパオのアクセルを踏み、僕は再び山間部を走りだす。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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