秋が深まってくると「雲海を見てぇなぁ…」とつぶやくのが僕からの時候の挨拶みたいなものなんだけどもね。
秩父市に発生する雲海夜景を眺めたいと毎年思っているのだが、どうにも成就しないのだよ。2019年から3回訪問して3回失敗している。
悔しい。僕もこんな光景を眺めたいし、写真に撮りたいのに。
成功してからブログ執筆しているようではいつまで経っても記事にならないので、もう失敗談を書いちゃおうと思うよ。
失敗は失敗で何がダメだったのか・注意点は何なのか、など参考にしてくれる人もいるだろうし、なんだかんだでその後に眺めた朝日が最高だったから日の出スポットとしてもアピールしたいし。
では、夜景雲海への夢を馳せて秩父へGo!!
雲海を見るための好条件とは…
雲海ってどこにどういうときに出現するのか。
そのメカニズム等を詳しく説明するのはメンドくさいし、そこまでキッチリ把握している自信もないので、すごく端的に書きたい。
- 前日雨で当日朝が晴れであること(つまり地面に水蒸気たっぷりで、それが朝に雲になる)
- 前夜と当日朝の気温差ができれば10℃以上であること(気温差で前日の雨が雲なる)
- 盆地であること(平野部だと風で雲が流れちゃうので、雲を堰き止める地形)
- それを見下ろせるような高い場所があること(なければただ雲の中にいるだけ)
つまりは1日の中でも気温差のある秋と春が、一般的に雲海シーズンと呼ばれているる。
場所については、首都圏の皆さんにとって最寄りの雲海スポットの1つは秩父盆地だ。
さらに秩父盆地は、その内部になかなかの規模の町がある。
仮に夜のうちに雲海が発生するならば、雲にその町灯りが写り込んで幻想的な雲海夜景となるという次第だ。雲海スポットは全国に数多くあるけれど、雲海夜景は秩父以外ではあまり聞かない。これは魅力的過ぎるぜ。
ではこの秩父盆地をどこから見下ろすのかというと、メジャーなスポットが2つある。
1つは「美の山公園」であり、もう1つは「秩父ミューズパーク」だ。どちらも小高い山から盆地を見下ろせる上、展望台のやや近くまで車で行けるので気軽にアプローチできる。
本編には両方とも登場するが、メインは秩父ミューズパークだ。広大な公園だ。本編で出てくる展望台に、参考までに赤丸をつけておいたよ。
ただ、シーズン中の週末は早朝の暗いうちから駐車場がミチミチになるので気をつけろよ…。
1回目:年末最終日
年末の深夜24時過ぎ、車は「美の山公園」への道を登っていた。
いや、すっげぇ道だな。斜度もすごいし狭いし暗い。まぁ運転しているのは僕じゃなくって旅友の「FUGA君」であり、僕は助手席でさっきまでウトウトしていただけなんだけどな。
こうして到着した美の山公園。駐車場のほぼ目の前が展望台なのが嬉しい。さて、どんな景色が広がっているのかな?
むぅ…。ほんのわずかにモヤが出ているが、雲海と呼ぶには控えめすぎる。夜景としてみるならばなかなかに綺麗なのだが、僕が見たいのは唯一無二の雲海夜景なのだよ。
その後、何度か外を眺めつつも車中泊する。でもなかなか雲が出ないねぇ。
幸い車の中はしっかりとした装備でポカポカに暖かいので、外は寒いが快適に夜を過ごすことができている。
朝の6時を回った。少しずつ東の空が明るくなってきた。しかし雲海は出ない。あぁ…、とりあえず夜景と呼べる時間帯は間もなく終わってしまうな…。
残念だが、そもそも年末の時期は寒暖差があまりなく「寒」のみに近い感じだから、雲海には適していない時期なんだよね…。ダメ元のアプローチであったが、やっぱダメか…?
6:20、「秩父公園橋」付近に雲が立ち込めてきた。
日の出前後は急に気温が上がってくるから、確かに夜の時間帯よりかは雲が出やすい。さぁ、雲が早いか太陽が早いか!夜景が夜景でいられるうちに急げ!!
僕はズルい人間である。意図的にカメラの明度を落とし、なるべく暗い写真を撮れるように調整している。僕は時間を司る存在になっている。神かな?
朝よ、まだ来るな。
ダメだ…。さっきに比べて雲の量が増えない。むしろ減ってきている。ほんの少しのモヤでも美しいのだが、僕が期待しているレベルと比べるとミニマムすぎる。
もう朝と呼んでいい時間だろう。この年最後の朝。つまりの大みそかの朝が訪れた。皮肉にも快晴である。
24時間後は初日の出。1日早いけども初日の出を待っているかのような気分になってきた。1年365日あるうちの1日の差なんて、天体レベルで考えれば誤差にしかならないよね。でも人間の営み的には今日と明日は天と地ほどの差があるけど。
秩父のシンボル「武甲山」もクッキリ見えてきた。そして秩父が周囲を山々に囲まれた盆地であることもよくわかるほどに明るくなってきた。
ちなみに大晦日の秩父市の日の出時刻は公式では6:53なのであるが、山々があるので実際に太陽が見えるのはもうちょっと遅い。そのあたりは続きを読んでくれ。
夜景の時間、さよならだ。わずかに残っている町灯りがいよいよ消えようとしている。
刻一刻と変化していくこの時間帯の景色が好きだよ。まだ日の出までは30分以上あるだろうが、立ち去る気にならない。結構寒いにもかかわらず。
ところで展望台にいる人数はこんな感じだ。スッカスカ。
これが美の山公園だからか、雲海が出そうにない日だからか、はたまた明日の初日の出に備えてみんなグースカ寝ているからなのかは不明である。
少なくとも明日はギュウギュウの満員御礼になるだろうな。
雲、出てきた。これがあと1時間早ければ、なんとか"夜景雲海"と呼んでもいいレベルだったかもしれない。でももう遅い。
夜間は雲海が出づらいだろうしね。朝に雲が出たから悔しがったところで、朝と夜とではまた全然事情が違うのだろう。
秩父公園橋付近はこんな感じ。フワフワとゆっくり雲が流れている。
そして時刻は7時を回った。山の稜線が光ってきた。間もなく日の出だぞ。
7:07、太陽が顔を出した。あぁ、最高。
雲海とか夜景とか、もうどうでもいいわ。この青空と太陽を拝めただけでも、なんて幸せな朝なんだろう。そう思った。
晴れ渡る秩父盆地。今日は丸1日ドライブをする予定なのだが、天気はバッチリになりそうじゃないか。
素晴らしいドライブ日和。清々しい朝の空気。早起きは三文の徳。
7:30になると盆地中央の市街地にも朝日が当たり、町が金色にキラキラと輝いたよ。
おはよう。僕らもみんなも、今日はいい大晦日になるといいね。
2回目:10月上旬
空が白んできた。ヤバい、遅刻遅刻!寝坊した!
10月初旬。雲海のシーズンは秋と春と言われるが、秋のタームが始まったかどうかくらいの早い時期に僕は秩父を目指していた。
5時すぎに秩父の町に入ったのだが、もう朝が訪れようとしている。これヤバい。こんなハズじゃなかったよ、我が人生。
実はね、ここから2・30kmほどで前の道の駅で仮眠していたの。
本当は一気に秩父まで来たかったんだけど、愛車の日産パオが急に調子を崩してしまってさ、ちょっと休ませていたのだ。ついでに僕も休んでスヤスヤ寝てしまってこの事態よ。
今回アプローチしたのは「秩父ミューズパーク」である。こっちの方が道がわかりやすく夜間でもスイスイ走れる。…もう朝だけど。そして駐車場もたっぷりだ。
ただ難点は、少なくとも僕が目指した展望台は駐車場からやや遠いということだ。ここに車を停めて…。
…そして上の写真の看板にも書いてある通り300m歩く。
この300mは見通しも悪いハイキングコースみたいな道だ。途中で景色が眺められるようなところではない。
薄暗い道をトボトボ歩いた。でも、これプラン通りであれば真っ暗な道を雲海夜景を見るために歩くところだったんだよね。懐中電灯必須だね。
5分ほど歩き、展望台が見えてきた。
これが展望台。巨大な吊り橋の主塔のようなデザインのモニュメントのある展望台。下から見上げたときの、展望台に佇む人々のシルエットが映画のワンシーンのようにカッコいいスポットんまのである。
ただ、思ったより展望スペースは狭い。横一列に立てるのはせいぜい15・6人ほどだ。それ以上来たら2列目・3列目と折り重なる感じになるであろうな。
展望台到着時間、5:25の光景がこれだ。まぁわかっちゃいたけど、既に夜景の時刻は終わっていたよ。つまり雲海夜景、今回も失敗。
盆地全体にうっすらと霞は出ている。秩父公園橋は、こっちからの眺めの方が立体感のある見え方になって好きだな。
稜線が赤くなってきた。日の出時刻を調べると、5:40だという。例によって山があるので実際の太陽出現は6:00前くらいだと予測しているけどもね。
せめて雲海がモクモク出てほしいが、どうなるか…。
ところで、今はコロナ禍である。一応万全の感染対策をして訪れた。1人だから誰ともしゃべらないけどもな。
看板にはマスク着用とソーシャルディスタンスを求める記載がある。ソーシャルディスタンスはわかるが、前述の通り狭いのであんまり離れられない。
だけども屋外でそこそこ風があるので、マスクを取って大声でしゃべらない限りは感染リスクはほぼゼロでは?今の日本、どこかテンパっててブレーキが効かなくなっているような気もするぜ…。
日の出の時刻が近づいてきた。展望台には20人ほどの人々が日の出待ちで集まっている。
誰もしゃべらないが、みんな同じ方向を見ているし同じものを待っている。同志だ。
町に色がついてきた。残念ながら雲は出現せずに霞がゆったりと流れているだけだが、しょうがない。雲海シーズン初期なのでまだ地球も本気を出してくれていないのであろう。つまりは寒暖差が足りないのであろう。
5:56、太陽が見え始めた。日の出だ。
雲1つない澄み渡った空がみるみる青くなっていく。周囲の人々がいっせいにシャッターを切る。みんなの心が高揚する瞬間だね。
まばゆいばかりに拡散する太陽光線。
僕って日の出を見るときには海岸線に出ることが多かった。水平線と太陽しか見えない場所で日の出を見ることが多かった。
だけども町の向こうからの日の出もいいよねぇ。町の朝が今始まるっていう様を感じ取れるんだもの。
活気づく展望台の様子。
ただ朝が来て太陽が昇っただけなのに、このはしゃぎっぷり。日常の中に普通に存在するファンタジックなイベント。そういうの、好き。
では、また機会があれば…!
3回目:11月上旬
「今日しかねぇだろ」って確信した。
2024年11月上旬の3連休。初日は全国的に土砂降りで、僕も北陸をドライブしたかったが諦めた。
だがその翌日は一転して快晴であり、気温も20℃以上までいくという。つまりは雲海発生の最高条件を果たしている。
前回と同じ秩父ミューズパークの展望台にやってきた。
時刻は5:30であり、既に空は明るくなり始めていた。いやー、失敗。町中のコンビニでおにぎり買っているうちに空が白んで来ちゃって焦ったよ。でもお腹減っていたんだからしょうがないじゃない!そんな目で僕を見るなよ!
あぁ、ちなみに上の写真では暗くってよくわからないと思うけど、アホみたいに混雑してます、この展望台。たぶん80人はいる。
8列くらいに折り重なっていて、僕は3列目くらい。肉眼では町は見えないが、上に手を伸ばせばスマホ画面には町は写る…くらいの状態。もっと後ろの人は「何が見えるの?町が見えるの?山なら少し見える。」って言ってる。絶望的。
そして雲海夜景は拝めませんでした。ご覧の通りスッキリ爽やかな町灯り。「雲海って何?」みたいな顔をしてやがる、秩父。
わかっていたよ、あの町中でさっきおにぎり食っていた時点で霧に巻かれていなかったんだから。
ちなみに秩父公園橋がエロい感じの色でライトアップされているが、雲海シーズン限定のイベントとして近年始まったそうだ。でもあんなにエロい色にする必要あったか。見ろ、エロすぎだろ、あの橋…。マジでエロ。
11月ではあるが、これだけの人数が密集しているので寒くはない。
寒かったら逃げようかなって思っていたけども、後ろに人がいっぱいいすぎていて逃亡も困難だし。仮に逃亡したらもうこの展望台で町を見下ろせるポジションには二度と立てないだろうし。
待っている間にWebで調べたところ、午前3時くらいまでは綺麗な雲海夜景が見えていたらしい。しかし風が吹いて雲が根こそぎ飛んで行っちゃったそうなのだ。
風速を調べてみると2mほど。あー、この程度でも雲は飛んじゃうよね…。風までは考慮に入れていなかった…。誤算だ。
そして同じように雲海を楽しみにしていたっぽい人が周囲にいっぱいいる。なぐさめ合おうぜ。でも日の出はきっと今日も素晴らしいよ。
あぁ、またもや夜景の時間が終わってしまった。
6時ちょい前、武甲山のふもとから雲がモクモク出てきた。もっと出て来てくれれば朝日の頃には雲海になるが、でもあれじゃあちょっと厳しいだろうなぁ…。
後ろの方から「雲海って、空の雲が足元まで下がってくるの?空にはちょびっとしか雲が無いから厳しいね」という声が聞こえてきた。それ、大間違いだぜ…。
この日の日の出時刻は6:07らしい。現在は6:20。つまりはそろそろ山の向こうから太陽が出てくるってことだ。
じょじょに空が明るくなる。ここに来てからすでに50分が経過しているが、そんなに寒くないし景色が刻一刻と変わっていくので全然退屈していない。
5:23、日の出。
周囲から歓声があがった。100人の人間が、狭い展望台の上でどよめいている。なんという一体感!!ライブ会場みたいだ!
100年以上前の人とかには想像できないだろうけどさ。2010年代以降の人間って、尊いものを見ると小さな板を両手で顔の前に掲げるらしいよ。そういう儀式?僕もやっちゃっているけど。
いったん車に戻って少々くつろいだあとの、7:10ごろ。
再び駐車場からハイキングコース的な道を300m歩いて展望台にやってきた。ちゃんと明るくなった秩父の町を眺めたいからだ。
最高ーー!!
この景色を眺められたら、もう寝不足も吹き飛ぶわ。今日も1日になるわ。
ミューズパークの駐車場近辺のイチョウも黄色く染まり出していた。
つい最近まで暑いくらいで、まだ半袖をしまいきっていないくらいなのだが、急に秋を感じとれる日々になってきたね。
この温暖化の時代だから、まだ雲海シーズンは続く。あなたも天気予報を調査の上で、雲海夜景を狙ってみてほしい。僕もまだあきらめない。
※この日の夜、見事な雲海夜景が出たそうで、僕は悔しがった。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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