スズキが販売している、「隼(ハヤブサ)」という名前のカッコいいバイクがある。
猛禽類のハヤブサが、時速300㎞で飛ぶことのできる空の覇者であることから、それをイメージして作られたバイクだそうだ。
なんたる気高きバイクよ。
さらに言うと、ハヤブサと同様に300㎞出せるモンスターマシンだ。
…と能書きを垂れたところで、実は僕はバイクの知識がほとんどない。
これもWikipediaさんからいただいた情報である。
しかし、僕は北海道を始めとした旅先で多くのライダーさんと交流し、酒を飲みかわし、彼らのバイク愛を聞いていたし、ツーリングの楽しさも聞いてきた。
僕は四輪派なのでバイクにまたがることは今後も無いだろうが、ライダーさんたちを尊敬しているし、勝手に仲間だと思っている。
そんな僕が、誠に恐縮ながらご紹介させていただく。
隼駅に行ってみた
冬が到来する直前の、変に暖かい日のことであった。
鳥取県をフラフラドライブしていた僕が、ここへやってきた。
国道29号に沿って走っていて、ちょうど目についたので訪問したのだ。
…とはいえ、前から存在は知っていた駅だ。
赤を基調としたノスタルジックな駅舎。たまらんね。
早速だが、車を停めて良かったと感じる。
向かってやや左あたりから、煙突が突き出ているのが見えるだろうか?
あのあたりがチャームポイントだな。好き。
ここの駅舎はなんと昭和最初期の1929年にできたものなんだそうだ。
もうすぐ100年、と言ってもいいだろう。
世界恐慌で全人類がヒーヒー言っていた頃、ここに誕生したのだ。
駅名標も、右から「驛隼」と書かれている。
駅が旧字体だ、カッコいい。
そしてこれ、きっと作務衣を着て頭にタオルを巻いた、無口で無精ひげの木彫り職人が黙々と彫ったんだと思う。
ステキ、渋い。(駅名標も職人も)
そんな歴史のあるこの駅は、国の登録有形文化財にも登録されているのだそうだ。
解像度が低くて申し訳ないが、ハヤブサのポスターもデカデカと外に向かって貼りだされている。
「ようこそ隼駅まつりへ!」と書いてある。
この祭りについては後述しよう。
では、駅舎へと入ってみようか。
わぁ、なんと落ち着く木のぬくもりよ。
木の本棚には「なかま文庫」と書かれていて本が収まっており、誰でも自由に読書を楽しめるようになっている。
こんな陽だまりの駅舎の中で読書できるなんて、最高かよ。
ハヤブサのポスター、中にも貼ってあった。
駅舎の中は半分資料館のようになっているのだ。
ハヤブサ、かっこいいな。
そしてバイクを追走してくる謎のマスコットキャラクターみたいなのは、なんだ??
人の気配がしたので、ホームに出てみた。
そこにいたのは、彼だ。
等身大の駅員さんの人形であった。
原則としてこの駅は無人駅であり、駅業務をしている生身の人間はいない。
彼のような無機質な人間ならいるが。
うむ、それが仕事をする人間の顔かよ。
完全に仕事とエンターテイメントを融合させてしまっている顔だ。
しかし名札を見ると「隼駅長 隼 雷太」と書かれている。
駅長だった!
偉いお方だった!!
ホームにはお客さんが1人いた。これも、物言わぬ人であった。
横の体重計みたいな機械はなんであろうか?
他にもいくつか、以前駅で使われていたと思われる古い機械があった。
これも秤のように見えるな。
そしてかすれた文字から「因幡船岡駅」と書いてあると推測した。
この隼駅の隣駅だ。
このときは開店していなかったが、駅内に「把委駆」という売店がある。
これで「バイク」と読むらしい。
うわ、昔の暴走族みたいなテイストだ。
このお店では、駅のグッズ・バイクの隼のグッズなどを取りそろえているらしい。
「聖地巡礼之証」もあるらしいぞ。
駅前の線路には「ブルートレイン」が停まっていた。
中に入ることもできるらしいが、このときはたぶん入れなかった。
ちょっと開業には時間が早かったか。残念だ。
ちょうど僕が立ち去るとき、ハヤブサと思われるバイクに乗ったライダーさんが2人、駅に到着した。
いいね、自分乗っている愛車と同じ名前のスポットがあるってステキだね。
しかもこうやって盛り上げてくれるだなんてね。
では、僕は再びドライブを再開し、鉄道沿いに東に走ろう。
隼駅まつりとは
隼駅の「隼」とは、この地域の昔からの名称である。
別にバイクのハヤブサと何か関連性があったわけではない。
しかし今や隼駅とバイクのハヤブサは、切っても切れない関係にある。
それを結び付けているのは、前述の隼駅まつりである。
僕はこの祭りは見たことも参加したこともないので、情報はWikipediaや上記サイトなどから収集させていただいた。
事の始まりは2008年。
バイク専門誌の「月間ミスターバイク」が、雑誌内で「8月8日はハヤブサの日。隼駅に集まろう」と呼びかけた。
雑誌の発売日は8月6日。
Xデーまで2日間というエクストリームすぎる告知であったが、当日には7台のバイクが来たそうだ。
この7名は、まさに歴史の幕あけの伝説の7名だな。すごい。
翌年である2009年から、「隼駅まつり」という名前がついたらしい。
ここからは快進撃。
- 第1回(2009年)…約250台
- 第2回(2010年)…約600台
- 第3回(2011年)…約300台(東日本大震災の影響だろうか…?)
- 第4回(2012年)…約500台
- 第5回(2013年)…約700台
- 第6回(2014年)…約1200台
ちょっと省略
- 第10回(2018年)…約2000台
- 第11回(2019年)…約2300台
ほとんど常に右肩上がりだ。何だこの盛り上がりは。
「ミスターバイク」のWebサイトから、第11回の様子もご紹介しよう。
鳥取県のローカルな町に、これだけのハヤブサがやってきたのだ。
ハヤブサだけでこれなのだから、他のバイク・他の交通手段の観光客・地元の人の参加なども合わせれば、本当に町おこし規模の大イベントなのだろう。
もちろん、これだけの台数と人数を小さな隼駅でさばけるはずもなく、規模が大きくなってからの会場は近くの「船岡竹林公園」となった。
駐輪場からはシャトルバスだ。
もはや「祭り会場には隼駅もなければハヤブサもいないのでは?」みたいにも思えてしまうが、まぁそういう問題でもないのだろう。
同じ趣味を持つものと祭りで出会うってのは、人生における至上のイベントだもんな。
うらやましいぞ。
終着は若桜駅
今度は路線にスポットを当てよう。
距離は19㎞しかない、短めの鉄道路線。
そこを、1~2時間間隔で列車が通っている。
地味に大変だったが、この周辺の路線図を作成してみた。
この若桜鉄道、すごいのだ。
近代化遺産に指定されているスポットが目白押しなのだ。
時間が許すのであれば、是非上記のリンクから「近代化遺産としての若桜鉄道(PDF:6710KB)」をご覧いただきたい。
駅舎・プラットホーム・鉄橋…。
いちいち立ち寄っていては、全然先に進むことができないほど、歴史スポットが密集しているのだ。
その中でも、終点の「若桜(わかさ)駅」は8つもの歴史スポットを兼ね備えている、まさにラスボスに不足なし、といったステータスを保有している。
しかも道の駅も併設だ。最強かよ。
では終点の若桜駅をチラリと見て、一連の観光を終了としよう。
あぁ、ちなみに若桜駅から2駅手前の「徳丸駅」付近に「道の駅 はっとう」があった。
一応ここにも寄っておいた。
「フルーツ総合センター」併設だぞ。
ところどころにフルーツをモチーフにしたキャラクターも展示されていた。
はい、「道の駅 若桜」だ。
さっきの道の駅 はっとうからは、わずか8㎞ほどであった。
道の駅から見て、道路の対面にあるモミジの紅葉が綺麗なのでちょっと写真撮影をしに行ったりした。
晩秋ではあるが、まだまだ綺麗だ。
道の駅の土産物屋の前に、老紳士の人形がにこやかに座っていた。
あれ??
アナタ、本来は隼駅あたりにいるべき人じゃないの?
なんでこっちに来ちゃったの?電車で来たの?
僕の脳内は疑問でいっぱいだったが、老紳士はただただにこやかに佇んでいた。
とりあえず道の駅の売店で栄養ドリンクを買い、飲んでおいた。
O型の僕は単純だから、プラシーボ効果も相まってすぐに回復する。
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さて、本題の若桜駅である。
近付いてみて僕は、思わず歩みを止めた。
駅はすぐ隣なんだけど、残念なことに道の駅との間にはゲートがある。
そして鉄道駅を見学するには有料だそうだ。数100円かかる。
躊躇したのだ。
そして、結論から言うと数100円を惜しみ、足を踏み入れなかった。
2021年現在だったら、見学していただろう。
しかしあのときは、ちょっとお金をケチっていたし、登録有形文化財に対しそこまでの興味はなかったのだ。
…しかしズルい僕は、タダでは終わらなかった。
無料ゾーンから有料ゾーンを覗けるスポットを見つけたのだ。
右端にはSLだ。「C12形蒸気機関車」というヤツだ。
その後ろのオレンジは、「国鉄DE10形ディーゼル機関車」だろう。
左の京急バス(神奈川県東部を走るバス)みたいなシルバーとブルーの車両は、現行のものだな。
今は、敷地外から眺めるだけだ。
しかし、いずれきっと僕もそこに立つからな。
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100年近い歴史を持つ隼駅の駅舎を目指してライダーが集まる隼駅まつり。
残念ながら、昨年に予定されていた「第12回隼駅まつり(2020年)」については、コロナウイルス流行の影響で中止となった。
今年、2021年は再開できるだろうか…。
ライダーに、旅人に、日本人に、そして世界中に人たちに幸あれ。
コロナウイルスを攻略し、誰もが出歩き旅立てる社会へ。
隼駅まつりのWebサイトを見て、そう強く思った。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報
- 名称:隼駅
- 住所:鳥取県八頭郡八頭町見槻中180-3
- 料金:無料
- 駐車場:あり
- 時間:特になし