僕は日本国内の一般人の行ける東西南北端を制覇しているし、本土の東西南北端も行っているし、北海道・本州・四国・九州それぞれの東西南北端も踏んでいる。
そんな特異な性癖を持つ僕であるが、実は鉄道駅の本土東西南北端も踏んでいるんだよ。車旅の人であり、乗り鉄でも撮り鉄でもないのだが、どうやら”端鉄(はじてつ)”だったみたいだ。なにそれ。

そんな僕が本土最西端の鉄道駅である、「たびら平戸口駅」を訪問した時の話でもしよっか。
そういやここ、2015年から2020年くらいまでは巨大なカマキリのオブジェも設置されていたよね。あれはすごかったなぁ。また会いたかったなぁ…。
日本最西端の駅…?
たびら平戸口駅は日本最西端の駅なのか。いきなりアイデンティティを疑うような角度からのお話だが、まずはそこからだ。

たびら平戸口駅。「あともうちょっと西に行けば平戸島だぜ…!」って立地の国道204号から一瞬だけ反れたところにある駅だ。
ちょっとだけ反れるというポイントと、僕はそんなに駅には興味を持っていないという点から、何度も平戸島には行っているのにこの駅を訪問したことは3回ほどしかない。
でもこのなんだか昭和を感じさせるデザイン、妙に好きだよ。

駅の敷地内には『日本最西端の駅』と書かれた立派な標柱が立っている。後ろの看板にもそのように記載されている。しかしこれには異論があるのだ。
2003年まではこのたびら平戸口駅は誰もが認める日本最西端の駅であった。
ただこの年、沖縄県で「ゆいレール」が開業したのだ。那覇空港を起点とするモノレールだ。
モノレールは普通鉄軌道方式じゃない。宙に浮いているので軌道を走ってはいない。それにほかの都道府県とも接していない。そういう理屈から、今もこの駅は日本最西端の駅を名乗り続けている。

うーん…。僕個人はこの事態をどう判断すべきか。このやたらと九州だけがマッチョで沖縄県の存在しない日本地図を見て、どう判断すべきか。
「駅」という定義であれば、鉄道駅であろうとモノレール駅であろうと「駅」なので、日本最西端の駅と名乗ると、ゆいレールとケンカしちゃうかもなって思う。だから「駅かどうか」というところに争点を置くとよろしくない方向に向かっていくと思う。

次に、「日本最西端」ってフレーズにフォーカスを当てたい。当たり前だけども沖縄県も日本に含まれるので、沖縄を無視した定義にはできない。
だけども、「本土」っていうくくりにしたらどうだろうか?僕の大好きな「離島航路整備法第2条第1項」に基づけば、本土の定義とは北海道・本州・四国・九州を指すんだ。ここに沖縄県は含まれない。沖縄県は島に分類されるのだ。
だから「本土最西端」って名乗れば、ゴタゴタする事態を大幅に抑制できる上、「最西端」ってことでなんだかすごそうなステータスも維持できるんじゃないかな。

…って思ったらさ!
2015年にこの駅、愛称を「日本最西端の駅」に正式登録した!全然沖縄県に譲る気がない!むしろ牙を剥いている!なんなんだこの無駄なバイタリティー!バカヤロー、こうなったら僕も応援するしかなかろうて!!
上のパネルには、日本最北端の稚内駅、日本最東端の東根室駅、日本最南端の西大山駅の情報も掲載されているね。ただし注意点なのだが、最東端の東根室駅は今年2025年の3月に廃止されてしまい、現時点の最東端は根室駅だからね。
この写真はそれより以前に撮影したものなので、まだ東根室駅が現役だったのだ。

…という、血の気の多い駅なんだ。これが好きなんだ。
巨大カマキリが襲来する
じゃあ次は、駅の横に超巨大なカマキリのオブジェが設置されていたときのことを書こうと思う。あなたは「なぜにカマキリ??」って思っているだろうが、そのあたりも説明するから読んでくれ。

これは2回目の訪問である2015年のことだ。
特に駅にそこまで興味を持たない僕が「まぁ2回来たところで何か変化があるわけでもないしなぁ…」とつぶやきながら目線を少し左に移したときだ。とんでもないパニック映画的な光景が目に飛び込んできたんだよ。

駅前に停めてある貨物車両を占拠する巨大なカマキリ。
想像よりもデカいしリアルだろ?右側に写っているマネキンが人間サイズなので、それと比べれば巨大さがわかると思う。余裕で捕食されるレベルの危険度だ。

かっこいい。オブジェとしてのクオリティもさることながら、カマキリってのはその造形自体が素晴らしいのだ。だから僕は小さい頃からカマキリ大好きだし、大人になって触ることはできなくなっちゃったけど、カマキリの絵を描くのは相変わらず好きだ。
こんなデザインを造った神様は偉大だと思うよ、うん。

そして、その巨大カマキリに、普通サイズの虫取り網で応戦するヘルメットの男性。
逆光で虫取り網が白飛びしてしまったが、虫取り網の武器としての攻撃力はかなり低めなことは周知の事実だ。かなり無謀。ヒヤヒヤするぜ。

どうした?なにごと?そんな無表情で巨大カマキリにちょっかいを出せる強メンタル、僕も見習いたい。
よく見るとヘルメットには「松浦鉄道(株)」と書かれている。なるほど、このたびら平戸口駅を有する路線の鉄道会社の職員だったか。突如現れた巨大カマキリを追い払いにやってきたのだろうか…?

…と思いきや、彼の腰には虫かごが。その中には通常サイズのカマキリ・クワガタ・テントウムシなどが入っている。
あ、巨大カマキリを追い払いに来たんじゃないや、これ。普通に昆虫採集の一環として巨大カマキリを狙っていたということか。業務中に。なんて強者だ。

作品名は『カマキリ龍来』となっている。よく見ると第弐弾と書かれているので、第壱弾あったのだろう。どんな作品だったか気になるが、Webで調べきれなかった。近所の人、教えてほしい…。
この作品は駅の観光PRのために2014年に作成されたらしい。
ここ田平って、昆虫の町なのだ。昆虫写真家の「栗林慧さん」の故郷だから、昆虫をアピールしているのだ。「道の駅 昆虫の里たびら」も大きなカブトムシがいて、毎回僕は写真撮っているしな。
そんなわけでこの駅でも昆虫アピールしようってなり、それはがカマキリとなり、そんでこんな作品になったそうだ。2020年ごろに撤去されたそうだが、第参弾はまだかなって期待しているぞ。
駅の隅々を見てみよう
じゃ、直近である日本7周目の訪問記録から、もう少し詳しく駅の様子をご紹介するか。

9月の19時ちょっと前くらいに到着した。西日本だから本州に比べるとやや日没が遅いとはいえ、もう真っ暗に近い状況であった。
でも闇の中には相変わらずレトロで風合いのある浮かび上がっていて嬉しい気持ちになる。いいなぁ、このデザイン。なんとも表現できない、平成初期くらいのセンスを感じるのは僕だけかな?

『日本最西端の駅』の標柱も変わりなく立っている。沖縄県のゆいレールに最西端の座を渡す気なんてさらさらないのだ。ここが日本最西端に決まっている。

駅舎からホームに至る部分。おぉ、これはかつて駅員さんが切符を切ってくれたりしていたブースだな。懐かしい。ラッシュ時の駅への入場や退場の管理を駅員さんが実施し、1人1人の切符を確認していただなんて、今では信じられない光景だよね…。
今は無人駅なのでそのままスルーしてホームに行くことができる。

これがホームだ。19時ちょい前という、都心であれば朝の次くらいに込み合っていそうな時間帯であるが、誰もいない。トワイライトタイムに別の時空に迷い込んでしまったかのように静かだ。
それがいい。旅情ってのは、こういう風景から摂取できるよね。

待合室もとても静かだ。ガランとしている。カラフルなプラスチックの椅子がかわいいよね。
あと、ちゃんぽんのお店があるってのが長崎らしさを感じさせてくれる。ここでちゃんぽんをオーダーしたら、待合室内の椅子に座って食べるのか?そういうの、やってみたい。いつかまた訪問する目的ができたぞ。

さらには、駅舎内には鉄道博物館もある。旧時代の鉄道関連の機器やグッズなどを展示している小さな施設だね。ここは19時時点ではもう閉まっていた。18時閉館なのだ。
かつて日中に訪問した際に中を見たことがあるので、閉まってはいたが諦めがつく。…とはいえ、内部の写真を撮ったことはないんだけどな。中にはどんなものが展示されていたんだっけ…?これも次回への宿題とするか。

こうして1人静かな駅見学が終わりを告げる。
にぎやかな駅もいいが、静かな駅もまたいい。いつか鉄道旅をして、こういう駅のホームでなかなか来ない列車をノンビリ待つのもいいかもな。そう思った。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報