「筑波山」の山麓には、「ガマランド」というテーマパークがある。
テーマパークという単語を使うのを憚られるほどに、世紀末でカオスなスポットである。
「生ける廃墟」とかって単語がよく似合うスポットである。
まさにテーマパークのゾンビ。
ゾンビのテーマパークではないよ、「テーマパークのゾンビ化」。
存在そのものがゾンビなテーマパーク。
これらの詳細を取り上げていては、いくら時間があっても足りない。
今回は、ガマランドの中で最大…、いや、唯一のアトラクション??
…そんな位置づけの「ガマ洞窟」をピックアップしてご紹介したい。
とりあえず、あなたもガマランドがマジな廃墟になる前に、ガマ洞窟は行っておいたほうがいい。
人生が豊かになるから。…たぶん。
チケット購入
テーマパークに行くと、「どのアトラクションに行こうかな?」とワクワクするに違いない。
しかし、ガマランドには選択肢が少ない。
ガマ洞窟しかまともな施設が残っていない。
しかしそのガマ洞窟が強烈すぎる。
残念ながら選択肢は他にないものの、ワクワク感だけは本物である。
僕は今、最高にワクワクしている。
ガマ洞窟入場の方は売店にて入場券をお求めください
ここが洞窟入口である。
黄色い暖簾(?)と立て看板に、ほぼ同じメッセージが書いてあるが、どちらも見づらい。今一歩、工夫を…。
そして、ガマ洞窟は有料である。
ガマランド唯一の有料施設。料金は500円。
隣接する、唯一の有人施設である売店で料金を前払いする必要がある。
売店のおばちゃんに料金をお支払い。
売店はすんごい昭和レトロ感を醸し出していた。
ガマ洞窟
無事通れれば どんな災害も まぬがれるでしょう
(通ってみてネ ラスカルより)
「ま、ガマ洞窟自体が災害だけどな…」っていう感情を押し殺しつつ、ふんぞり返るタヌキの頭を撫でておいた。
では、ガマ洞窟突撃。
エントランスホール
黄色い暖簾を「よ、飲んでるかい?」って居酒屋に入ってくるおっちゃんのようなノリで押し上げ、洞窟に一歩足を踏み入れる。
お客様へ
入場料の払い戻しはいたしません
入口から入ると同時に、この注意書きだ。
「なんだこのくだらない施設は!500円返せ!」
そんな戦いが過去何度も繰り広げられたことを想像させる。
ところで、書くなら入口より手前に書いておけばいいのに。
料金払ってから掲示しても遅くないかな?
まぁ僕は後悔なんてしないけどね。ここには500円以上の価値があると確信している。
『別世界に入ってみよう』のスローガン。
別世界というか、なんというか…。
やさぐれた一家が住まうボロアパートの玄関みたいな雰囲気になっている。
正直、戸惑いを隠せない。
使い古したウサギのぬいぐるみに、造花。ヘタクソな逆ハート(?)の切り抜き。
ビニール袋の中の消化器。おっちゃんの人形の上半身。
この世界観をうまく表現できるボキャブラリーが無いのが悔しい。
ホント、カオスな一家のアジトとしか言いようがない。
あぁ、これ。
昭和の台所の入口にかかっている、ジャラジャラしたアレだ。
正式に言うなら木製暖簾だ。
あるいは、映画「レオン」で「ゲイリーオールドマン」がベートーベン聞きながら一家皆殺しするときに、ジャララ…っと開けるヤツだ。
まだ洞窟に入って4mなのに、ネタが多すぎるぞ。
では、次なる部屋である、台所(?)に入ろう。
暗闇のストレート
暗ッ。
ほぼ何も見えない。
目を凝らす。
『入場券は必ずお求めください』
おどろおどろしい字体で、まだこんなことを書いている。
お金の恨みは恐ろしい。
ちゃんとチケット購入してよかった。
そして、ちょっと気になったのでフラッシュ撮影をしてみた。
どうせお客さんは皆無だし。
うーん、チープだ。
そしてまた暖簾だ。暖簾には、泥遊びした人の手形みたいのが大量についている。
足元には、着物を着た鳥かなんかのぬいぐるみ。
はい、では2つ目の暖簾をくぐろう。
暗いなぁ。とにかく暗い。
手探りで狭い廊下を歩いている。
左右の壁にはブラックライトで絵が描かれている。
オバケかな?
そしてその周囲には無数の人魂が飛んでいるようなペインティングだ。
「あぁ、ここの創造主はお化け屋敷を作りたいんだな」って、初めて思った。
ここまでは、何を作りたいのか全くプロファイリングできなかったので。
…クソォ。
この1枚の写真だけで、どれだけのツッコミどころを用意してくれているんだよ。
どれだけ多岐にわたる世界観を融合させているんだよ。
このセンス、悔しい。
- 無造作に吊り下げられる着物
- 「巨大イノシシ」を示す蛍光プレート
- エロい紫色のブラックライト
- 注連縄
- 影絵で造ったネコっぽい獣の横顔
- イカつい系のカーアクセサリーメーカー「DAD」のタオル
スゲーな。
このメンバーが一堂に会する場なんて、ここ以外にないよ。
「アベンジャーズ」みたいな感じになっているよ。夢の共演。
フラッシュ焚いてみた。
着物と「DAD」がよく見えるようになった。
「DAD」の下に吊るされているのは、「ディズニーシー」の浮き輪マンじゃないか。
ポートディスカバリーから持ってきたのか?
あと、正面奥に「鍋島の」って書いてある札がある。
「鍋島の猫」って書いてあるんだろうな、あれは。
確か戦国時代に九州で勃発した化け猫騒動だ。ネタがレア。
次に、吊るされたピンクの着物を潜ったところで写真を撮ろう。
「DAD」、風呂上りみたいに手ぬぐいを頭にかけている人、般若心経、ネグリジェ。
…ネグリジェ!??
ところどころにパワーアイテムを配置してくれる。
なんだか、ちゃんと怖いものがあると安心する。
でも、よく見ちゃダメ。
「手ぬぐい?バスローブ??」って、また情報処理が追い付かなくなるから。
ふんわりと、視力0.01くらいの設定で世界を見たほうが、人生楽しいって。
イノシシとヘビ
次は、巨大イノシシ行こう。
道は二手に分かれているので、まずはイノシシを紹介する。
「DAD」のT字路を左に曲がる。
とにかく暗い。手探りだ。
ちょっとさ、またフラッシュ焚いて撮影してみよう。
そう来ましたか。
フジカラーの立て看板(?)がこんなところに。
昔、写真屋の店頭とかでよく見たヤツだ。
「写ルンですあります。」とか書いてあるけど、絶対ないだろ、こんな洞窟内に。
イノシシの看板に導かれるまま、緩い階段をのぼって行き止まりまでやってきた。
登り坂だけども天井の高さは変わらずで、なんだか非常に圧迫感のある空間。
手前には岩がゴロゴロ。
そして、岩の上に「ヘビの谷」と書かれた木片が無造作に投げ出されている。
その奥には檻。この中にイノシシがいるのかな?
横にはプレートが掲げられている。
猪明神
(猪突猛進)
入試突破
合格祈願
家内安全
猪突猛進でいいのか、それら?
まぁ勢いって大事だからいっか。
檻を覗いた。イノシシいた。剥製だ。
暗闇で見るイノシシって割と怖いことを知った。
「つくば山産」って書いてあった。ここで捕れたのか。
改めて、ヘビの谷を見てみよう。
「ヘビの谷」と言うからには、それはもうヘビがウジャウジャと蠢いているのかと思いきや、1匹丸まっているだけだった。
隣にはタバコの吸い殻がギッチリ詰まったネットが置いてあった。どういう魂胆??
暗黒ブティック
来た道を戻り、DADのT字路を反対側に行く。
相変わらず真っ暗。
ところどころ原色に光り輝いている。
ディズニーシーのマーメイドラグーンを限りなく陳腐にしたら、こんな感じになるかな?
あ、いや別にガマ洞窟が劣っているとか言いたいわけじゃないよ。
どっちも正解よ。なんだったら僕、こっちのほうがワクワクするよ。
「アヒャヒャヒャヒャ…」とか聞こえる笑い声を聞きながら、ふと横を見るとオバケ…!
ではなくって、なんかスウェットみたいなヤツだった。
キティちゃんのぬいぐるみに、またまたリラックスできそうな部屋着がチラホラとディスプレイ…。
なんだここ。
ファンシーテイストになってきた。ブティックみたいになってきた。
真っ暗でよくわからないが、緑色の台座の上に野球帽が乗っているのがわかる。
その左下にも、同じく帽子があるようだ。
よし、フラッシュ撮影してみよう。
帽子帽子帽子…!!
兵隊さん、帽子の上に帽子被っているよ。
手にはおそらく槍を持っているのだろうが、帽子とタオルに埋め尽くされていて原型がわからない。
帽子を粗末に扱うとお仕置にやってくる妖怪みたいなことになっている。
狭い通路の頭上では、あったかそうな冬着を着たミイラが首を吊っていた。
その後も、布切れを見学しながら奥へ奥へと進んでいく。
なんだか赤いゾーンが出てきた。
中央にかわいい女の子が鎮座していた。
右には首の無い着物を着た人がいたり、よく見ると帽子がおいてあったり、「安達ヶ原の鬼婆」と書いてあるのであろう看板があったり。
安達ヶ原の鬼婆伝説は、茨城じゃなくって福島だけどな。
でも、この赤いゾーンの世界観は嫌いじゃない。
むしろ一番好きな空間だった。
ガマのいる洞窟
「ガマ洞窟 ⇐ 足元に気をつけて下さい」
看板見て吹いた。
足元に気をつけるのは、今に始まったことではない。最初の最初からだ。
そして、「ガマ洞窟 ⇐」って、じゃあ今まで僕がいたのはどこだったのだ。
そういえば、ガマ洞窟なのにカエル全くいなかったな。
「ヘビに食べられたのか?」とか思ったりもしたけど、ヘビ1匹だけだったし、やせ細っていたので、カエルを食べてしまったとは思えない。
あ、左端にいるの、ドラえもんだ。
なんか安心する。
インドを一人旅していたら、偶然同じ県の出身の日本人に出会ったときみたいな気持ちだ。
しかし、ドラえもんの右側1mには「死」の文字。
ドラえもんに出会ってほっこりしていた心臓を、キュッと掴まれた気分になる。
次は「殺」だ。
文字のチョイスが小学校中学年くらいだ。
「死とか殺とか、強そう!悪そう!」みたいに。
ちなみに小学校中学年の僕も、そんな感じだった。(大学生くらいまでそんな感じだった気も。)
オバQか。かわいいぞ。
最後にオバQに見送られ、さらに奥へと歩を進める。
おぉ、なんかフェンスの向こうに怖い生首がある。
モロに目が合った。
生首マネキンのラッシュ。
ガマを見せる気はさらさら無いらしい。
…と、諦めかけた矢先だった。
うお、なにこれ。
狭い通路を3分の1くらい塞ぐ、巨大な物体が壁面にへばりついている。
これ、カエル?
ゴーカートくらいのサイズあるけど、カエル??
RPGとかで、主人公パーティーが洞窟で突然モンスターにエンカウントする気持ちがよくわかった。
フラッシュ撮影してみた。
ご名答、カエルだ。
ここに来てガマ洞窟の主、ようやく登場。
そっか。ダンジョンの主は最深部で待ち構えていたのだな。
なんか鼻血出ているけどさ。
なんか顔の上にヒヨコ乗っているけどさ。
しかしカタルシスを感じた。
「おぉぉぉーー!!」ってなった。
さぁ、この冒険もエンディングが近いはず。
相変わらずコートや帽子などのアパレル系が不意打ちしてくるが、もう場慣れしているので動じない。
「暗闇の洞窟にコート?それが何か?」くらいに落ち着き払っている。
廊下の隅で、小さめのカエルが寂しそうにしていた。
とはいえ、柴犬くらいのサイズだから、実在していたらちょっとイヤなサイズだが。
お供えされている、勝ち組のカエル。
軽く神々しい。
お参りしておいた。
ゴールだ。
全てが名残惜しい。
「払い戻しいたしません」・ジャラジャラ暖簾・写ルンです・DAD・イノシシ・アパレル・オバQ・ガマ…。
走馬灯のようによみがえる。
頭上のわずらわしいシャワシャワしたビニールの断片を払いのけ、最後の暖簾をくぐる。
土産物屋。
最初に戻ってきた。
ゲームの無限ループみたいな感覚に苛まれつつも、20分前と比較し一回り大きい人間になった自分に気付く。
なんと素敵で意味ある20分だったろうか。
500円で人生経験が格段に豊かになった。
相変わらずの曇天が、心なしか明るく見えた。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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