知多半島の先端付近にある「聖崎公園」ってさ、大きな声では言えないんだけども、どこか変でちょっとユニークなのだ。
弘法大師にまつわる1200年ほど前からの歴史があり、さらには絶景も眺望できるナイスなスポットなのだが、ほんの少し違和感を感じる程度に僕らの軸からズレているように思うのだ。しかもそれは、いい意味で。

もう、海の中の岩礁に建つ弘法大師の像を見ただけで、僕は「こういうの好きだよーー!」って叫びたくなった。一人旅で叫んだら変な人なのでガマンしたけど。
…じゃあ、今日はそんな聖崎公園を訪問したときのことを書きたい。
知多半島をツーリングとかドライブする人、ここもきっと立ち寄りやすいからちょっと休憩がてら海の中の弘法大師を眺めていこうよ。
南無大師遍照金剛
知多半島をドライブしていてふと目に入った、聖崎公園の看板に沿ってハンドルを切った。存在は知っていたものの、今まで訪問したことはないし、どういう場所かも知らない。
余裕のある日程のドライブなので、フラッと立ち寄るのもおもしろいなって思ったのだ。

わぁ、なんか漁港へと続くローカルな道沿いに南無南無した幟がいっぱい出てきた。
正確には『南無大師遍照金剛』って書いてある。この角度では幟が裏から見えているので、卍マークがハーケンクロイツになってしまっていて、ちょっと胸がザワザワした。

南無南無ゾーンを振り返った。
遍照金剛っていうのは、弘法大師を指す言葉。南無大師遍照金剛とは、その弘法大師を敬う言葉。なるほど、ここは弘法大師にゆかりのあるスポットということだな。

そんな神聖なスポットと思いきや、バーベキュー場もある。しかもガーラントで飾り付けられていてかわいい。日本仏教のレジェンドである弘法大師も好きだが、炭火で焼いたお肉も好きだよ、ってことだ。その通りだと思う。

駐車場は、半分漁港みたいなところで駐車枠もなく広々しており、ワイルドにどこでも停められそうな立地であった。早速知多湾の眺めが良くって来てよかったと嬉しくなった。僕の愛車の日産パオも映える。

風が気持ちいいので車内でコーヒーを淹れてみたら、さらに最高だった。海を眺めながら屋外で飲むコーヒーは格別だ。旅はこういうことをするのが楽しい。

では、公園内を散策してみようか…。
どうやら園内に入ってすぐに道は2つに分岐する。1つは右側の階段を上って高台に行くルート。もう1つは海沿いにまっすぐ直進するルートだ。
ここに園内MAPがあるので掲載しよう。

見づらかったら適宜拡大してね。
海沿いにまっすぐ行くと、海の中の「弘法大師上陸像」というのを眺められるらしい。
階段から上に行くと、森の中をズンズン進み、展望台があったり広場があったり「聖平和観音」っていうがいたりするらしい。
どっちも行こうと思うのだが、まずは海沿いを進んでみることにしようかな。
弘法大師上陸像
しばらく歩いていると、左手にすごいもんが見えてきた。

これだ。…つっても、何を指しているのかわからないよね。
沖に浮かんでいるひときわ大きな岩礁に着目いただきたい。その上に誰か立っていることに気付いていただけたのなら、僕の今夜の使命は無事に果たされるのだが。
ちょっとだけ拡大してみようか。

あれが弘法大師上陸像だ。1つ前の写真では、まずはどのくらい沖合にあるのかを感覚的にご理解いただきたかったので、あえてズームせずに撮影したのだ。結構遠かったでしょ?
言われなければ気付かずスルーしたかもしれない。「なんか海から視線を感じるなー…」くらいの違和感しかなかったかもしれない。それほどに離れた距離だ。

さて、なんでこの公園のあんなところに弘法大師がいるのか。それはこの近くの説明版に書いてあったので、その内容をご紹介しよう。
まず前提として、ここ聖崎は弘法大師が尾張の国に上陸した最初の地なのだそうだ。西暦814年、三河から船でここまでやってきたんだって。

1984年、弘法大師が入定、つまり死去してから1200年が経過した節目の記念事業として弘法大師像をあそこに建てたそうなのだ。
海から船でやってきたのだし、ちょうどいい岩礁があったからあそこに建てたのだろうが、こうしてみると弘法大師は船ではなくって海からトコトコ歩いてやってきたみたいな図になっているね。
なんかゴジラが海からやってくるみたいな感覚だ。ところでゴジラってなぜ毎回海からくるのだろうね。

もう1つ説明版があったので掲載しておく。
これによれば、毎年春に"お身拭い"という、弘法大師像の体を掃除するイベントがあるそうなのだ。大潮の干潮時には歩いてあそこまで行けるそうで、そのタイミングを狙ってやるんだって。
なにそれ面白い。歩いて近くまで行ってみたい気もするけども、でもやっぱ海の中に立っていた方が見栄えがするので、初回である今回はこの様子を見られてよかったと思うよ。
ただ、もうちょっと弘法大師をよく見たいかな…。さらにカメラをズームにする。

わわわわわわ…!!
弘法大師からビンビンと何本かの針金のようのなものが出ている。
湯気?オーラ?毛?何を表現しようとしているの?それとも避雷針?
…いや、たぶん全部違うな。鳥とかがとまらないように対策をしているのだろうな。銅像とかってだいたい頭に鳥がとまり、そして糞をされるのがセオリーだからね。神聖な弘法大師像にそんなことはさせないぜっていう心意気だよね?あるいは、お身拭いの手間をちょっとだけラクにさせる作戦だよね。

これは遥拝所だね。ぶっとい石柱で作られており、古代遺跡のような貫禄がある。
その屋根の上を見てほしい。なんか小さいものが点々と並べられている。目を凝らすと人形のようだ。カメラを使ってさらにズームしてみようか。

わー、なんだこれー!修験者装束の人たちが等間隔で並んでいるー!
よく見ると"同行二人"と書かれている。つまりは四国八十八箇所参りをするお遍路さんの姿ってことだね?同行二人って、「八十八箇所参りは1人じゃなく、その近くにはきっと弘法大師が寄り添ってくれているよ」っていう意味だもんね。その記念のものなのかな?
展望台と聖平和観音
じゃあ、次は展望台への道を上って行こう。

展望台までは150mだそうだ。地図で見ると結構な距離のようにも見えたけど、大したことはない。展望台には願いの鐘というのもあるそうだな。では登ってみよう。

すぐにこのような開けた広場に着いた。
ところで木製の案内板の足元の部分をよーく見てほしい。今度は白くて小さな観音様がそこにいるんだよ。なにこれなにこれ…。なんとも奇妙だよ、聖崎公園…。

わわっ…!さらには杭の上にも観音様だ。
こんな斬新な発想、初めてお目にかかったぜ。どんだけ観音様を設置したいんだよ。数が多ければいいのかよ。それとも、まとめ買いすると安いパックだったのかよ。夜にこんな光景を見たら泣くぞ、僕は。

そういえば、最初の案内MAPによれば、この先に聖平和観音がいるんだったよな。それがラスボスで、こいつらがその前座って感じなのか?
そう考えるとモンスターのはびこるダンジョン攻略みたいでワクワクしてきた。いや、そういう考えは非常に罰当たりなんだけど。とりあえず装飾品にやたらと丸いものが多くて不思議なミニ観音。

まずは観音像ではなく、展望台だ。登る登る登る。小さなザコ観音たちに追われるように、僕は山道を駆け上って行った。さぁ、木漏れ日の中の太陽がどんどん近づいてきたぞ。

展望台が見えてきた。展望台には"願いの鐘"も設置されているらしい。しかし説明版に『平和の鐘・幸せの鐘・祈りの鐘とも言われています』と書かれていた。
…紛らわしいな。統一しろや。あるいは、地元の人たちが「えーっと、あの鐘の名前は何だっけ?祈りの鐘だっけか?」みたいにフワフワした記憶から間違って呼んでしまった事例をすべて取り上げているのか?否定しろや。「間違えんなよ」って言えや。

これが願いの鐘だ。もしくは平和の鐘だ。もしくは幸せの鐘だ。もしくは祈りの鐘だ。
鳴らしてみると、あなたの想像通りの音が鳴った。いろいろご利益がありすぎてハードルが上がっていたが、音色は普通だ。

そして展望台なのだから、当然景色も良いのである。
ほら、足元にもここから何が眺望できるのか書いてある。デフォルメされすぎてて現実の景色との照合がしづらいし、願いの鐘だか平和の鐘だかのロープ部分がモジャモジャしすぎてジャマだけど。

三河湾が一望できるいいロケーションだな。海も空も澄んでいて青い。風も心地よい。ここまで登ってきて良かったと、心から思える光景だ。
ちなみにここ聖崎は、左右を小さな岬に挟まれている。向かって左側は「鳶ケ崎」といい、上の写真で左端に見えているのがそれだ。いい感じに景色に対しアクセントになっている岬だね。

反対側の岬は「長谷崎」。巨大なビルがそびえているのが特徴的だ。
あの一帯は「チッタナポリ」というリゾート施設なのだそうだ。ネーミングからして、イタリアのナポリをイメージしているのだろう。すごく立派ではあるけれども、今の僕にはあまり縁のないスポットかな…。
それでは、最後に忘れずに聖平和観音を拝んでいこうね。展望台からちょっと下った芝生広場の奥にいるよ。

あれが平和観音だ。広場の隅っこ、もう茂みギリギリのところにいる。弘法大師と比べ、ずいぶん控えめなロケーションにいるのだな。
足元には観音を設置するに至った説明が書かれていた。
第二次世界大戦において遠方に赴き犠牲になった人たちの鎮魂、そして戦争を二度と繰り返すことの無いよう願い、1955年に聖崎山頂に親世観音を建立したのが始まりだそうだ。なので聖平和観音と命名されたのだね。

…で、その後の経緯は書かれていなので不明なのだが、これは1955年に設置された観音様ではない。
2004年にここ聖崎公園を整備した際に伴って新聖平和観音像が造られた。それがこれだ。初代観音像は引退してしまったそうなのだ。それでも、初代の意思をちゃんと受け継いでいるから、尊いことには変わりないよね。

ちょいとセンスが不思議な部分もあったけど、いろんな思いが散りばめられた絶景の公園だ。そういうのをひっくるめて知ることができたのは、いい体験だったと感じたよ。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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