レトロ自販機大国と呼んでも遜色はないほどに、レトロ自販機保有店がたくさんある群馬県。
全国でおよそ60店舗ほどのレトロ自販機保有店のうちの約10店舗が群馬県にあるのだ。すごすぎる。なぁ教えてくれ。どのような政治をすれば、どんな徳を積めば、こんなレトロ自販機あふれる地を創造できるのだろう…。
そんな中でも「ピットイン77」は名前がまずカッコいいし、外観がアメリカのレトロなドライブインみたいでしびれる。アメリカ大陸横断の途中に立ち寄る荒野のドライブインみたいだ。そんなところでハンバーガー食べたら最高だ。
そういう妄想を抱きつつも、ここを訪問した思い出を語ってみようか。
天ぷらそば・カレーバーガー
真夏の少し雲の多い夕暮れ、僕はここへとやってきた。その到着時の写真が、冒頭で掲載したものだ。
魅力的な店舗でワクワクはしているんだけど、実は僕のお腹の方はそんなにはワクワクしていなかった。なぜならば、ここに至る前に群馬県内のレトロ自販機保有店を4店舗ほど巡ってきたからだ。
群馬県のデメリットはそれだ。レトロ自販機保有店が密集しているのに、人間の胃袋は1人につき1つなのだから、いろいろ巡っていると胃がバーストする。なんとかしてほしい。具体的には、胃袋を3つにするとか。牛みたいに。
ここのレトロ自販機は豊富だぞ。
麺類自販機が2台、そしてトースト自販機にハンバーガー自販機まである。これら3種が揃っただけでとんでもないレアなフォーメーションなのに、麺類自販機が複数台あるって、それはもう崇め奉らうレベルなのだよ。
そんな中から、初回は天ぷらそばを食べてみることにした。上の写真の左側に写っている自販機がそれだ。ほかにうどんやラーメンもあったが、満腹に近いときにはそばが一番食べやすい気がした。麵が細いから。
思ったよりボリューミーなビジュアルのそばが出てきた。うまそうだが食べきれるかな?
かき揚げはそばの表面を覆いつくすほどの巨大さだ。そばの量も多いし、ダシは黒々としていてパンチのある味であることを予感させる。
結論、うまい。かき揚げは具材が多い食べ応えあった。かき揚げから染み出した油でダシはさらに濃厚となり、味濃いめが好きな人にはハマる味だ。そばも満腹でもスルスル入る。
満腹に近い状態ではあったが、同行者と2人で半分ずつなんなく食べきることができた。
次はハンバーガーを買おう。今ここで食べるだけの意のキャパはないが、麵と違ってハンバーガーならテイクアウトし、腹が減ったタイミングで食べることができる。
メニューはチーズバーガー・カレーバーガー・コラボバーガーの3種であった。コラボバーガーが何がというと、ハンバーガー+辛いソース+ハム+ピリ辛ガーリックマヨネーズだ。期間限定らしい。
コラボも気になったが、カレーバーガーを買って持ち帰ることにした。
これが後ほど食べたカレーバーガー。ハンバーグとカレーソースが入っている。
たぶん味はあなたの想像する通りだ。少しだけスパイシーだが万人受けしそうなカレーソース、そしてフニフニのバンズの組み合わせ。意外性は少ないが、これがうまくないわけがない。
外に出てみると、いい感じに夕焼けが空を染めていた。
おぉ、これは最高の瞬間なのではないかな。昭和レトロなドライブインには黄昏の空が似合う。
冒頭にも同じようなことを書いたが、この光景を見てアメリカのドライブインのようだと思った。
何がそう感じさせるのだろう?"ピット・イン77"の字体だろうか?平原の中にポツンと建つその姿だろうか?とにかく、心に刺さる光景だ。
僕の愛車も昭和時代にデザインさらたものなので、なおさらこのドライブインにマッチするよね。
こうして夕暮れの中、満ち足りた気持ちで再び僕は走り出す。
ラーメン・タルタルミートバーガー・ハムチーズトースト
2025年、僕は久々にピットイン77を訪問する。
暑くもなければ寒くもない、よく晴れて爽やかな春の午後だった。最高のドライブを堪能しながら、懐かしいドライブインを目指したのだ。
今回はここを目的にやってきたので、腹を空かせてある。前回体験できなかったトースト自販機や、もう1つある麺類自販機を使ってみたいという野望を抱いてやってきた。
写真が切れてしまったが、左側の"うどん・ラーメン"と書かれたパネルの麺類自販機。実はこれはうどんは売られていない。うどんが売られているのは向かって右に写っているほうの自販機であり、そば・うどんの選択ができる。
左側はラーメン専用の自販機なのだ。
ただし、ラーメンも2種から選択できる。普通のラーメンかチャーシュー麺かだ。チャーシュー増量でもたった50円しか違いがないのは良心的だね。
しかし僕は今回ここでラーメン以外にもトーストを食べたい。胃のキャパを大事にしたい。なのでラーメンを選択した。
ちょっと待て、なかなかすごいのが出てきた。チャーシューの量がエグいのだ。
これ、スタッフさんがチャーシュー麵を間違って普通のラーメンのところに間違ってセットしちゃった…とかじゃないよね?これが普通のラーメンなのであれば、チャーシュー麵は一体どうなってしまうのだろう?肉であふれるぞ、この丼。
チャーシュー、かなり分厚いのだ。荒々しいワイルドなチャーシューで噛み応えも抜群なのだ。うますぎる。
レトロ自販機のラーメンに入っているチャーシューって、丸くてぺらぺらで工場で一律に加工されたっぽいヤツだとかが多いイメージなんだけど、ここのはハンドメイド感にあふれている。これは嬉しい発見だ。
麺は中太ストレートでツルツル。スープはやや濃い目のしょうゆ味。ほかにメンマやナルトが入っている。オーソドックスで期待ドンピシャな味だ。
今回はいける。トーストとハンバーガー、両方いけると踏んだ。まずは前回未体験のトースト自販機から攻略していこうか。上の写真、向かって左がトースト自販機だ。
メニューはハムチーズと辛口ガーリックの2種類。どちらも350円だ。ラーメンが380円であったことを踏まえると、ちょっとお高めかな?
後者の方がレアなのだが、気分的には前者のハムチーズトーストの方がいい。ラーメンの後で辛口ガーリックは、味が濃すぎるものの連続で胃もたれしそう。
アッツアツの灼熱のアルミに包まれたトーストが出てくる。
中を見てみると、いい感じに焦げ目のついたハムじゃないか。で、上の写真ではチーズが見えていないが、実はハムの裏側にちゃんと存在している。チーズが接着剤の役目になっていて、パンをはがしたときにチーズがない側がはがれたために、上のような構図になったのだ。
薄くマスタードも塗られていて、見た目以上に味のハーモニーを楽しめた。
最後にハンバーガー自販機だ。
前回に期間限定だったコラボバーガーはなくなっている。その代わりタルタルミートバーガーとピリ辛ガーリックマヨネーズバーガーがあるぞ。後者は前回のコラボバーガーとほぼ同じようなレシピだね。いずれも350円だ。
じゃあ、タルタルミートバーガーにしてみようかな。
タルタルミートバーガーって、タルタルソースとミートソースとベーコンが入ったハンバーガーであり、このお店の人気商品なのだそうだよ。そう自販機に書いてあった。
パッケージ写真ほどにはミートソースは入っていない。パッケージ写真は毒々しいまでに赤いミートソースが流れ出ているので、もしそんなだったら大変だもんな。
タルタルとミートソースの存在はほのかに感じられる程度であり、ベーコンは正直よくわからなかった。でも、マクドナルドのハンバーガーしかり、少量でもソースが変わるとハンバーガーのイメージは激変する。なのでこれは確かに普通のハンバーガーとは別物だなって思えたよ。
3品食べるとさすがに満腹だ。しかしこれでレトロ自販機4筐体を使うことができた。やり切った気分。
ちなみに今回は食べていないが、うどんやそばは380円だったよ。
店内をちょっと紹介
最後の章では、店内の様子を少しご紹介していきたい。
このピットイン77は、1988年に創業したそうだ。昭和時代の最終盤にあたる年だね。それでももう40年近い歴史を持っているわけだが。
店名の「77」ってどういう意味だろう…って思ったが、結論から言うと明確な情報は得られなかった。一説には1970年代のドライブインをイメージしているから、「1977年創業」と思われるような数字を店名に付けた、とも言われているよ。
もともとはこの店舗は、群馬県内に数店舗残る「オレンジハット」というチェーンのドライブインだったそうだ。そこから独立してピットイン77になったのだね。…とはいえ、店内はオレンジハットと酷似しており、その違いはわからない。
その店内はこの手のドライブインによくある、半分がゲームコーナーで半分が自販機コーナーって感じだ。その境目に長細いテーブルが置かれ、ここで飲食できる形式。
ゲーム機もまたレトロなものが多い。僕はあまり詳しくないが、1990年代のものとかもザラにあると思われる。地元のおじさんやおじいさんたちが、これらのゲームに興じている。
向かって左のショーウィンドウの中には、そんなゲーム等の景品が陳列されているようだ。ペヤングソース焼きそば・お菓子類・ドラゴンボールのなんやかんやのグッズがちょっと見えている。
人間、何歳になっても焼きそばとお菓子とドラゴンボールは好きなんだな。すごくわかる、その気持ち。
前章まででは取り上げなかったが、自販機にはレトロな瓶ドリンク販売用のものもある。メニューはコーラ・ファンタ。HI・Cオレンジなどだ。
瓶にはさ、缶にはないロマンがあるよね。うまく表現できるボキャブラリーはないんだけど、これもまたレトロなエッセンスが含まれているからなのだろうと思っている。
僕はここで(内心)「レトロだレトロだ!」と大騒ぎの大はしゃぎをしているが、僕以外の人にとっては至極普通で日常の風景であるがごとく、時が流れていた。
しかしこの令和の時代にこんなドライブインがまだ存在していることが奇跡だよ。
だから「今この空間ですごせることにもっと歓喜せよ皆の衆!」と思いつつも、同時に「ここを日常としている人の平穏が今後も守られますように」とも思い、若干のジレンマを感じるのだ。
ピットイン77。昭和時代の残滓を感じるドライブイン。
あなたも、目まぐるしく動く時代の流れに飲み込まれそうになったら、1970年代の雰囲気を感じるこのドライブインにピットインしてみてはどうかな?
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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