富山を代表する珍スポット「まんだら遊苑」をご存じか?
たった400円で地獄と天国を充分すぎるほどに満喫できる、かなりクオリティの高いスポットだから、珍スポットマニアじゃなくてもファミリーでもカップルでも楽しめるんじゃないかと思う。
僕は昨シーズンに1人で突撃したのだが、1人でもなかなかに楽しめたぜ。
まんだら遊苑は「立山博物館」という広大な施設に11個あるスポットの中の1つである。北陸を代表する山である立山を信仰する精神をかたちにした立山曼荼羅の世界観を模した壮大なテーマパークだそうだ。
しかもここね、「芦峅寺(あしくらじ)集落」っていう集落をほぼ丸ごとテーマパークにしているらしい。すんごい。
僕、まんだら遊苑が開館する9:30より前に到着したので立山博物館内の他の施設を除いたり園内を散歩しながら立山連峰を眺めていたんだけど、そこまで書くと冗長になってしまうので全部カットね。
それでは立山博物館の目玉、まんだら遊苑にGoだ!!
地界 ~ ここに地獄が口を開ける ~
閻魔堂は最恐だ
9:30になってOPENすると同時に受付で400円を支払い、まんだら遊苑の敷地に足を踏み入れた。
そういや受付小屋のすぐ裏の紅葉がとっても綺麗だったよ。12月から3月までの4ヶ月間は冬眠する施設の、今シーズン最後の姿。美しいじゃないか。
これから地獄に足を踏み入れる僕にとって、現世最期に見る景色か?
工場地帯の隅っこみたいなガショガショな鉄っぽいテイストの建物の、小さな重厚な扉が口を開けている。中からは「ルオォォォー!!」みたいな不協和音が響いてくるんだけど、しゃがみつつここから中に入っていく。
現れたのは深紅の世界。ここは地獄百景というらしい。各種地獄が連なっていた。そして少しだけお香のような香りがし、むわっと暑い。なんだかリアル。
まぁ上の写真を見るとただの赤いだけの部屋に見えるかもしれないが、フラッシュがビガビガしているし阿鼻叫喚が響いているしで、徹夜明けにデスメタルのロックバンドのライブにきているような感覚になるんだからね。朝9:30から大変でしょ、僕。
あら、見てよ、鐘がある。音界閻魔という、閻魔様の怒りの声を表現している鐘らしい。
そうなの?鐘って朝夕を知らせる日本の原風景とか、新年を迎えるにあたって煩悩を取り去る意味じゃないの?ここでは地獄の咆哮を指すらしいぞ。
はい、たった9秒なのであなたもぜひ動画再生してほしい。クレイジーなまでにスパークする世界がおわかりいただけただろう。
鐘楼をついたことはことは今までも何度かあるが、こんなロックンロールな鐘つきは初めてだ。
そして次、擦れ違い絶対不可能なほどの狭い小道に入っていくんだけど、そこも動画を撮影したので見てほしい。ただし閲覧注意かもしれぬ。あまり暗闇で見るなよ。精神持ってかれますぜ。
前半のバッチバチな黒いフラッシュ、実際も大体あんな感じのものなんだけども、スマホが想定外すぎる世界を捕えきれなくって若干バグり散らかしたような映像になってしまっているな。
そして後半、耳をつんざくような阿鼻叫喚がすぐ自分の左右の壁の中から聞こえる。今にも壁の穴から手が伸びてきて肩を掴まれそうだよ。そしたら行く先は無間地獄か…。
屋外に広がる地獄
赤い小道の進行方向の隙間から外界の光が差し込む。そちらに向かって一直線に歩いた。
ふぅ。赤い世界を抜け出て仰いだ空は、さっきまでより3倍青く感じるなぁ…。
すぐそばには針山地獄だとか物騒なものがいくつかあるんだけど、さっきの赤い世界よりずっとマシ。チラリとそれらを横目で見ながら、僕の足はフラフラとあそこに見える空中に張り出した橋へと向かった。
川に突き出したこの橋は精霊橋という名前で、公式Webによると八寒地獄の最も恐ろしい地獄をイメージしてあるのだそうだ。
しかし僕にとっては清々しすぎるよ。富山の晴れ渡った秋の朝の神聖な空気、地獄と結びつけるには少々無理がありすぎるのだよ。
足元はスカスカであるが、なんかそこから紅葉が見えているしね。紅葉を足元に見下ろすのって新しいよね。20mほどでその橋の先端まで到着した。
先端には鐘が取り付けられていたので鳴らしてみた。現世に還れるための救済の鐘なのだそうだ。よーし、これで地獄とはオサラバなのだな。
ところでこの橋の先端からの眺めが最高だから目に焼き付けておくぞ。
これは「常願寺川」。この上流を辿るとさ、支流となる「称名川」と合流しているんだよ。この名前で多くの人がピンとくるだろうけど、そこには日本最大の落差の滝である「称名滝」があるんだよ。
つまりは今僕の目の前を流れているのは、称名滝を落ちてきた水。わぁ、なんかロマンあるぜ。
もう現世帰還の鐘を鳴らしてしまったので本来であれば順序が逆なのかもしれないが、橋の先端でUターンを余儀なくされているのでもう一度地獄が目に入る。
これは血の池地獄だ。確かに赤いが大分県の「別府温泉」で天然物のスゲー血の池地獄を見ていると、「このくらいゴクゴク飲んでやるよ」くらいな強気が生まれてしまう。
池の片隅がパワフルにブクブクしている。水の汚染に怒っている水泡鬼という鬼なのだそうだ。
なんだそのエコロジーな鬼は。「環境を破壊しちゃダメだよー」と言っているのか。生活排水をそのまま流したら消滅してしまう鬼なのかな。森の中の清らかな泉にしか棲めない精霊みたいな儚い存在の鬼だなぁ…。
5つ並んだ蓋は水窟鬼という名前の地獄。『窟を覗け。八寒の地獄の音、匂いが漂ってくる』と手前の説明版に書かれていた。
まんだら遊苑の地獄ってさ、五感全部を攻撃してくるよね。それが良い。行かなきゃわからない発見があるのだ。
で、このマンホールみたいな蓋を押す。結構ヘビー。
そうすると中に土管のような無機質な空間が現れる。鼻センサーを全開にするとなんとなく焦げくさかったり、ミントみたいな感じだったり、芳香剤みたいだったり。
あと、土管みたいな形状だからかもしれないけど「クォォ…」という音が反響している。これが地獄の音?
あくまで鼻と耳で感じる設備だから、奥に目を凝らすものではないな…。なんか黒い禍々しいものが詰まっていたけども。
それじゃあ以上で地獄ゾーンはおしまい!!
陽の道 ~ なんだか変な疑似登山 ~
続いてのゾーンは「陽の道」だ。天界に向かうためのルートなのだそうだ。
そしてそのルートは2つある。立山登山を疑似体験できる"立山登山の道"と、鳥のさえずりや木々のざわめきを体感できる"水辺の道"だ。
しかしこのゾーン、平たく言えば木立の中の道と水辺の草むら。後者は晩秋の今であれば蚊も少ないかもしれないが、なんかまだ草がうっそうとしていてワクワク感が控えめ。消去法で前者で行こう…。
香り三十三観音。岩の上になんだかファンシーなボールが置かれている。
立山への登拝路に道標として三十三観音が設置されていたんだそうだけど、それになぞらえて、この陽の道の33ヶ所にあの白いボールを置いたんだって。
よーし、なんだかよくわからなくなってきたぞー。説明されたままをブログに書くだけのロボットになってしまったぞー。
ところどころに立山のオブジェがあり、現在地がどのあたりを現しているのか書いてあるようだ。
細かい文字で立山信仰についての説明書きもあるが、ちょっと読むだけのモチベーションは湧いてこない。これは後から後悔している。なぜならこのまんだら遊苑についてWebで語る人は、ほとんどが最初の地界と、このあと現れる天界について語っているのだ。
スポットの当たらない陽の道について力説してこそ、コア・コンピタンスを得られたのによ。
途中には休憩できる石のベンチや東屋もあったりしたが、全体的に苔むしていてちょっと座りたくない感じ。数100mほどで休憩するほどの距離でもないので、サクサク次へと行こう。
おっとこれは称名滝と書かれているぞ…!
日本TOPの名瀑を、ちょっと濡れた黒い柱で表現するとはどういうことなのだろう…。しかも2本。意味不明。
おいこれさ、強烈に愛知県の「日本列島公園」だぜ…!ここまでなんかデジャブを感じるなって思っていたけど、あそこだった…!!
…というわけで日本列島公園のリンクを貼っておくから、パラレルワールドの日本に迷い込みたい人はそっちへどうぞ。でもちゃんと帰ってきてね。(←ダブルミーニング)
姥石。老婆が石に変えられてしまったという伝説のスポットだそうだ。うむ、現物を知らないのでなんともコメントしようがない。
ただ、前方にはどうやらこの陽の道のゴールであろう小高い建造物が見えてきた。あそこが立山の山頂だと信じて進む。
はい着いた、立山山頂ーー!!
…いや、ちょっと待て「須弥山」って書いてある。インドの仏教で、世界の中心にそびえるとされている山だ。
待て待て待て、立山どこ行った。僕は今までどこの山を登っていたのだ?ここまでのルート、陽の道を振り返る。
これが須弥山から眺めた陽の道の全景だ。向かって左の日影部分が疑似立山登山ルート、そして右の木立のさらに向こう側が水辺の道ルートだ。
おっかしいな、立山の山頂はどっかにあったのか?もっとも、山である立山を平地に再現しようとした時点で無理は否めない。テンションなかなか上がらない。
そして人工物をゴールにドンと建てたのにそれが立山ではなかった時点でなんとも締まらない。
…このクオリティ、僕は好きだぜ。
凝りに凝った地界もいいけど、空回りしちゃっている陽の道の方が"正しい珍スポットの在り方"だ。知らんけど。
さてさて、そしてこの須弥山は正確に言うと次の天界のものらしい。
じゃあ天界ゾーン、行きますか!!
天界 ~ それぞれの思い描く天国 ~
アート溢れる不思議世界
須弥山の下に降りていく道があり、コンクリートの地下空間へとたどり着いた。天界窟というらしい。
そこには重厚な金属の扉が7つあり、それぞれの部屋にはアーティストによる展開をイメージした作品が展示されている。いきなり現代アートの美術館みたいになった。
アートな天界というか、アートな展開というか、とりあえずまだ思考がそこにたどり着かないんだけど、考えてみればまんだら遊苑に来てからずっとこの展開で振り回されっぱなしなのでもう慣れている。
まずは壱號窟、"せんまんなゆた"。
どれも共通しているのがインスタ映えする作品だということ。実は最初の地界もここ天界も、2019年ごろまでは撮影禁止だったのだ。しかしコロナ禍で情報発信を強めなければと思ったためか、一部の作品を除いて写真撮影を解禁してくれている。ありがたい。
弐號窟の"天界窟"。壁から滴り落ちた水流がジワジワとタイルに広がってきている。
何を意味するのかはよくわからないが、自宅のお風呂やトイレがあふれてこういう事態になったら地獄だと思う。だけども天界なのだ。
天国ではどうにか思考逆転させて、水道トラブルを喜んでいるそうだよ。じいちゃんばあちゃん、いつか僕がそっちに行ったらまずこの件を詳しく教えてくれ。
参號窟の"天界窟"。弐號窟と作品タイトル名が被ってやがる。なんてこった。これまたちょっとした地獄じゃねぇか。
クリップを無理矢理ねじまげたようなものが永遠に続いていて目で追い続けたくなってしまう系のアートだ。
四號窟の"微界音"。らせん状に連なる薄くて黒い壁。
…ん?なんかもしかしてかすかに音が鳴っている?だから微界音という作品名?
五號窟の"CE QUEL’AMOUR ME DIT(愛が私に語るもの)"。タイトルが長い。
真っ黒い空間を円形のオブジェで囲ってある。うむ、これが天国が地獄か聞かれたならば、初見の僕は地獄だと答えるであろうな。
六號窟の"天界窟"。また作品名が被ったー。3回目。7作品中の3作品が天界窟というのはなかなかに芳ばしい結果となってしまっているな。
最初にアーティストにオーダーするときに「まんだら遊苑の天界窟ってところに展示する作品を作ってください」と言ったのだろうが、その際に「作品名は天界窟以外にしてね」って伝えておけばスマートだったかも。
上の写真はコンクリートの地下空間からの、作品ブースへの入口となる鉄扉。
六號窟は、白い砂利、黒い鎧戸、赤い光…。わからん。それ以上を表現するボキャブラリーを持ち合わせてはおらん。
七號窟は"天衣の記憶・一滴の消息"という作品だったが、これだけは撮影不可だった。中身が空っぽの無数の天使の外殻が空中に設置されていて、とてもシュール。天使なのになんだか恐怖を感じた。
これが結構インパクトあったのだが、写真に残せなかったのは少しだけ残念。
そして精神世界へ…
まんだら遊苑も終盤に近付いてきたぞ。なんて壮大な物語。これで400円なんだからな。
次は「奏楽洞」というゾーンだ。
『ここをを澄まして天の音楽を聴け』と書いてある。なんかまんだら遊苑って、いちいち命令口調なのな。天国なのに命令されるのな。
でも上司から命令されてその通りに動くことに心の安寧を感じるジャパニーズ・サラリーマンにとってはそれがいいのか?それでいいのか?
天界の8種類の楽器が用意されており、それを自由に奏でられるというものだ。
ここからの各ゾーンには専用のスタッフさんが常駐しており、説明してくれる。だけども1人で楽器を弾くのもちょっと恥ずかしいな。「ふーん」とか言いながら一通り楽器をポコポコ叩いて回った。
暗いトンネルをしばらく歩いた先に現れたのは巨大なホール。そこにスッポリと収まっている円形のオブジェが天卵宮だ。これには入口があり、中にも入れる。
スタッフさんが「内部は母親の胎内をイメージしており、座ったり寝転んだりして瞑想したり原点回帰したりしてみてください」と言っていた。
中はま白い円形ドーム。しかし1人でポツンとここにいるのは、ちょっといたたまれない気持ちになるわ。
天遊桟敷という空間。透明な床とネットを通して、足元には先の8種類の楽器を演奏したホールが見えた。
ここにはところどころに円柱の大きな筒があり、そこに頭を突っ込むと万華鏡のような映像と香りを体験できた。
このネットは天衣をイメージしており、乗ると浮遊感を楽しめるという。
靴を抜いてここに上がるのだが、足の裏イテーイテー。浮遊感というか絶望感しか感じなかった。そもそも天衣って乗るもんじゃないっしょ。
近くにいた子供はキャッキャしながら身軽に飛び回っていたけどな。さすが子供。
最期は「闇の道」である。現世に還るためのトンネルであり、正確に言えばここまでの地界・陽の道・天界に続く4つ目のエリアなのだが、短いし天界に続いているので天界の章に含めちゃう。
まずは闇への入口にある銅鑼を景気よく鳴らそうか。さよなら、まんだら遊苑。
…ところでここに来てから何度僕は楽器(鐘など)を打ち鳴らしているのだろう…??
では、僕が闇の道のを歩く最後の動画だ。映像ではわかりづらいかもしれないけど、途中でマジに真っ暗な部分があり、結構な距離を真っ暗な中で歩かないといけなくってハラハラしたよ。
そして最後に現世への扉が開き、久々に太陽を拝むことができた。
出た先は「陽の広場」という名前だ。この大きなミミズのようなトンネルが、さっき歩いてきた闇の道。距離、長いでしょ?
こうして地獄からの長い長い旅路を終えて、僕は無事に現世に帰って来たのだ。
冒頭でも述べた通り、まんだら遊苑は広大な立山博物館の施設の1つ。
その他についても最後にダイジェストで触れようかなって思ったけど、記事が長くなり過ぎちゃうし、せっかく現世に戻ってきた感動が薄れちゃうから、この物語はここで終わりとするわ。
2024年の営業はあと2週間ほどのまんだら遊苑。
あなたが駆け込みで行くには難しいかもしれないけど、そうであれば来年の予定に加えておいてほしい。なんだか心がデトックスされたよ。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報