爽やかな春真っ盛りの日本列島。
そんな青空の下ではためく白いTシャツ。
それはまるで洗濯洗剤のCMみたいなシーンだが、あれはフィクションではないんだ。
高知県に実在するんだ。
それを見に行った2022年春の思い出を語りたい。
あの頃の夢を叶えるために
あれは遥か昔、僕が学生時代の仲間と四国を初めてドライブしていたゴールデンウィーク。
メンバーの一人がウェブ検索だかガイドブックを見ていたか忘れたけど、「高知県には砂浜にTシャツをいっぱい干すアート展があるらしいぞ。行きたいなぁ。」と言った。
僕は「ちょっと難しいかも知れないけど、四国ほぼ一周したあと時間があったら行こうな。」と答えた。
この計画は実現しなかった。
四国一周直前、車をパンクさせてしまい、その対応で大幅な時間ロスとなった上に、モチベーションも地に落ちたからだ。
無念。
時は流れて2022年のGW。
四国は幾度となく走っているが、GWに来たのはあのとき以来だ。
高知県の海岸線沿いを東から西に向かってダラダラ走っていたときだ。
ふと、今書いた日本1周目のほろ苦い記憶を思い出してしまったのだ。
「あぁ、そんなこともあったなぁ。そういえばTシャツアートってどこでやっていたんだろうなぁ。」って思った1分後。
「← Tシャツアート展」の看板が出てきた。
奇跡か。すぐにハンドルを切る。
「道の駅 ビオスおおがた」。
あれ?Tシャツはどこ?
どうやらちょっと勢い込みすぎた。
Tシャツアートはもっと奥の方でやっているらしい。
ハンドル切った先にすぐ道の駅があったから「ここが会場か!そっか!」って早とちりしてしまったのだ。
ただ、道の駅から眺める砂浜はなかなかよかった。
穏やかな四国の海ってこんな感じだよな、うんうん。
さて、Tシャツを見に行かねば。
歩いて行った方がいいのか車で行った方がいいのか迷ったが、車に乗り込んだ。
結論から言うと、車で正解であった。
なにせ道の駅ビオスおおがたから砂浜美術館までは2.2kmある。
歩けない距離ではないが、砂浜美術館と間違えて道の駅に駐車してしまった人間の心を折るには充分な距離であるからだ。
何もない草原をしばらく走ると、遥か前方に模擬店が出ており、人々が集まってドンチャンしているのが見えた。
あそこが会場かな?
路駐している車もあったが「ちゃんとしたところに停めたほうがいいよね」と思いつつ進んでいくと、駐車場はあったものの満車。
そして会場通過。
ずーっと通過。
…どこまで行くの?
途中でところどころ、小さな路肩に停めている車やムリヤリ畑ギリギリに停めている車もいたが、ずっとまともな駐車場スペースが無く1㎞走ってしまった。
辿り着いたのは、「海のバザール」という施設の駐車場。
ここは余裕でガラガラだった。
Tシャツアート展まで1㎞。喧騒は遥か彼方だ。
歩くか…。
メタ的な説明をすると、アホみたいに快晴の続くこのゴールデンウィークにおいて、この日は珍しく雲が多めであった。
そして変に蒸していた。
前日1人で酒を飲みまくり、ちょっと頭が重かった。
こうしたことが重なり、なんだかゲンナリした気分であった。
「1㎞歩くなら辞めようかな」とも一瞬思った。
でも歩いたのだ。
あのときの夢を、仲間の悲願を叶えるために。
会場でニラ焼きそばを食べる
会場に着いた。
なんだか簡素なロープで囲まれていて、スムーズに入ることができないロケーション。
有料?手続き必要?
なんだか嫌な予感がしてしまった。
ただ、実際はコロナ対策であった。
受付で検温やマスクをしていることを確認されたら、異常なしを証明するリストバンドを巻かれ、無事に会場入りできた。
会場内は芝生のあるのどかなエリアと、模擬店の立ち並ぶ賑やかなエリアで構成されていた。
コロナ禍だからみんなマスクだけどさ、なんだか春ポカポカの中でのこういうイベントは、見ているだけでホッコリするよね。
前述の通りもともと少しお疲れだった僕、ここまで1㎞歩いてさらに汗かいてヘトヘトだったんだけど、この光景には思わずニッコリだよ。
立ち並ぶ模擬店。
これまで全然お腹も減っていなかったが、途端に何か食べられそうな気がしてきた。
なるほど散歩って大事なんだな。
せっかくだから何か食べて行こう。
高知県らしいものー…。
そして僕好みの、ちょっとジャンクなものー…。
1人でこんなお祭りの中にいるのは少しだけ気が引けるが、ズンズン進んでいく。
おぉ、これにしようか。
高知県の四万十ポークと、高知のニラを使った焼きそばだ。
『特製の出汁で豪快に蒸し焼きにします』と書いてある。
豪快ってなんだよ。似た目とか味とかではなく、アクションをアピールしている。
これ、いい。どうぞ豪快に蒸してくれ。
はい、ゲットした。
付近のベンチなどは全部埋まっており、ウロウロしているうちに砂浜方面まで来てしまった。
そこで見つけた切り株に座って、海を見ながら食べようじゃないか。
うま。
極太面で濃厚なソース。それに紅ショウガとシャキシャキのニラがアクセントになっている。
これは箸が止まらないぞ。
僕は1人、海辺で焼きそばをバクバク食べた。
至福の時間であった。
砂浜にTシャツ舞う
では、本題のTシャツアート展である。
模擬店等が出ているお祭りゾーンから砂浜ゾーンに入る際に受付がある。
どうやら協力金300円が必要とのことだ。うむ、払う。
これは砂浜から受け付け方面を振り返った図だ。
砂浜郵便局という臨時出張所がいい味を出しているねぇ。
受付でもらったパンフレットによると、前日の通りもともとはゴールデンウィークに開催しているこのイベント、コロナ禍の影響でうまく開催できない年が続いていたんだって。
ようやく今回、3年ぶりに本来のゴールデンウィークに開催できたのだそうだ。
そのTシャツアートがこれだ。
砂浜に整然と並ぶ、白いTシャツ群。実に1000枚もあるということだ。
その1枚1枚にオリジナリティあふれる絵が描かれている。
こんなイベントが2022年5月1日~5日のたった5日間だけ行われている。
それに偶然気付いたのは、もはや奇跡かもしれないな。うれしい。
これらの絵柄は、全て一般公募によるデザイン。
写真でも絵でも、好きなものを送ればTシャツにプリントされて、このように飾られるのだ。
ワクワクするね。僕も子供時代にこんなの知っていたら嬉々として絵を描き、送っていただろうな…。
1枚1枚、どこかの誰かの夢が詰まったTシャツ。
そのTシャツを見ながら砂浜を歩くのが楽しい。
1枚ごとの絵を見るのもいいし、ちょっと離れた場所からTシャツ群や砂浜を1つの作品として見るのもいい。
ミクロでもマクロでも楽しめる世界。
実はこの砂浜、「砂浜美術館」という4㎞の砂浜を使った、れっきとした美術館なのである。
ただし美術館としての建物は存在しない。
館長さんもいるし年間プログラムもあるけど、建物が無い美術館。砂浜だけの美術館。
この砂浜では、今回のようなイベントや演奏会をやったりもする。それもアート。
夏の緑も、沖合のクジラも、浜への漂着物も、みんなアート。
砂浜という巨大なキャンバスで行われる全ての出来事がアートなんだな、ここ。
おや、なんだこの空間は。
手前の立て札には「Welcome to Sand art Wedding」と書かれていた。
そっかそっか。
今日ここで誰かと誰かが挙式するのだな。それは実にハッピーだ。お幸せに。
春はきっとみんなが幸せな気持ちになれる季節。
ちょっとお疲れモードだった僕も、ここですっかり元気になった。
僕の旅はまだまだ続く。この日はまだ序盤。
ここでもらった元気を今後の旅に生かしたい。
…さて、このイベント、2023年の開催も間近である。
2023年は5月2日~7日で開催されるぞ。
ゴールデンウィークに合わせた貴重なイベント。晴れていれば爽快この上ないイベント。
四国を訪問する方は、ちょっと立ち寄ってみてはいかがだろうか。
きっと爽やかな気持ちになれるから。
以上、日本6周目を走り終えた旅人YAMAでした。
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