今夜は明石名物の明石焼きについて語ろうか。
なお、現地の言葉では"玉子焼き"なのであるが、当ブログではわかりやすく"明石焼き"と呼ばせていただきたい。
さて、明石焼きとは何なのか。ひとことで言うと「ダシで食べるたこ焼き」みたいになるのかもしれないけど、個人的にはその表現はたこ焼きにも明石焼きにも失礼に当たってしまうほどにそれぞれ違う良さがあると思っている。
確かに見た目はたこ焼きっぽいが、以下のような明石焼きならではの特徴がある。
- ダシにつけて食べる
- 小麦でんぷんを使うのですんごく柔らかい
- 頑張って丸めようとせず、半球状
- タコ以外の具材は基本入らない
- まな板みたいなプレートで提供される
- 1人前がやたら多い
もちろんそれぞれのお店に特徴があるのだが、いろんなお店を巡って違いを楽しむのもまた面白いのだ。
僕は日本1周目のときに初めて明石焼きを食べて感動し、以来いろんなお店を巡った。たぶん20店舗くらい。片道600kmほどを走り、3ヶ月に1回くらいの頻度で食べに行った。
気に入ったに何度も行ってるけど、それでも延べ20店舗くらいは訪問しているかなぁ…。
その全部をご紹介したくってウズウズしているのだが、それをやっちゃうと僕もあなたも食傷気味になっちゃう。だから今回は厳選して1店舗のみ。
それがどこかというと、「ふなまち」だ。ご存じの方、今「うおぉ!」って言ったでしょ。明石焼きの老舗、レジェンド中のレジェンドだ。
そして僕が初めて食べた明石焼きのお店なのである。
旅の初心者、明石焼きに出会う
遠い遠い昔、日本1周目をしていた頃。
大学の先輩の「DIME」が西日本一周の車旅をしているというので、僕自身の空いた日程を見計らってちょっと応援しに行くことにした。
「明石海峡大橋」を渡って本州から四国に渡る予定が近づいているとのことなので、「四国に渡られると追いかけるのが面倒だから、その直前、つまり明石の町で待っていてくれ。そんで2日間だけ一緒に遊ぼう」と伝えた。
明石の町に何か目的や思い入れがあったわけではない。上記の通り、ただただ海を渡る前にDIMEを捕まえたかっただけだ。
1人、夜通し数100km車を飛ばして明石の町に到着し、朝にDIMEと合流した。お昼はせっかくだから2人でうまいものでも食べようってなった。
「明石焼きが名物だと聞いたことあるな」・「どっかいい店ないかな?コンビニでガイドブックでも見て探すか?」ってなった。当時はね、スマホ無い時代だったしアナログで確認する方がお互いに慣れていたの。時代だね。
「近くにあるふなまちというお店が有名らしい」という情報を獲得。早速そこに向かって食べることにした。
小さなお店だがすんなり入ることができ、そして明石焼きの驚愕のとろふわ具合に感動した。感動しすぎて翌日もう1店舗老舗訪問したくらいだ。
さらには僕とDIMEは「明石っていい町だな!他の仲間も誘ってまた旅行に来よう!」ってなり、その企画は3ヶ月おきに2年ほど続いた。ふなまちにも何度か来た。
当時のふなまち訪問時の具体的な味の記憶はあまりない。しかし乳児のときの記憶が無くても親から愛されていればその後の人生や親との関係性に関係するように、僕と明石焼きの関係も良好なのがそれを物語っている。
明石の町のもう1つ狂おしいほどに好きなポイントには世界一の長さの吊り橋である明石海峡大橋があるのだが、これについて語り出すと寝不足になっちゃうので、いつか独立した記事に執筆しよう。
2024年、久々のふなまちへ
超行列店だぞ、油断するなよ
日本7周目の2024年。春ではあるがまだまだ寒い小雨の中。僕は明石の町にやってきていた。
明石城跡が懐かしい。日本1周目~2周目で明石焼き屋めぐりをしていた当時、その合間に散策したりしたよなぁ。そのときのメンバーが今とても身近にいるのだが、一緒にここを歩いたことなんてもう覚えていないだろうなぁ。
…と、こんな風に書くとすごく久々に明石の町に来ているように思われてしまうかもしれないが、そんなことはない。日本1周目から6周目までまんべんなく来ている。
むしろ年1回に近いペースで明石海峡大橋を眺めている。
ただね、ふなまちはすっかりご無沙汰だったのだ。日本2周目以来来ていない。
なぜなら初回訪問時から2・3年ほどたった時点で相当な有名のため、数10分~1時間待ちなどがざらだったからだ。その待ち時間までを旅の行程に組み込むことは当時の僕らには難しく、ふなまちはチラッと覗いては諦めるお店となってしまっていた。
明石の町は懐かしくないが、初回にDIMEと「明石焼きってどんなのだろう?」って反しながらふなまちを目指したときのことが懐かしいのだ。久々に1人で向かう僕の心は、なんだか当時に戻ったかのようだ。
これは退店後に道路の向かいから撮影したものであるが、これがふなまちである。あぁ懐かしい。歩道全体を覆うお店のひさし。そうだった、こうだった。
週末は2時間以上並ぶことも多いと聞いているので、平日の10:30開店より少し前くらいに来れば大丈夫だろうと考えたが、数分遅れた。
僕の前に待っている人は3組だった。まぁ上々であろう。
歩道沿いにはロープが張られている。以前はこういうの、なかったな。そして10mくらいの場所には『このあたりで待ち時間は2時間位になります』と書かれていた。恐ろしい話よ…。
以前から有名だったが、こんなにも並ぶお店だっけ…?
そもそも明石焼きって、近所の人が気軽に来てファストフード感覚で食べたり持ち帰って家でのんびり食べたりするものだった気がするけど。
だから僕が明石焼きめぐりをしていた頃は、食べていると頻繁に近所の人がテイクアウトでやってきていたけども。この行列ではそれも困難だよなぁ、きっと。知名度が上がって観光客がすごく増えたのかなぁ?
お店の前から見た、2時間待ちのコーンまでの距離はこんな感じ。一見すると大した距離じゃないかもしれないが、お店のキャパが少ないのだ。
テーブルは2つ、うち1つは2人掛け。もう2つは4人掛けで、2人ずつを区切るパーティションがある。つまりは最大6人入れるのかな?従い回転率が良くはない。明石焼きのみならずお好み焼きなども時間差でオーダーしたり、お酒飲んだりしたら結構な長居になっちゃうだろうし。
結論から言うと、僕は店内滞在時間は20分ちょいだった。さっさとオーダーして焼き上がりを待って、1人で黙々と食べて20分ちょいだ。
複数名での訪問であれば30分はかかるだろう。つまりはテーブル3卓で1時間6組しか捌けない。そう考えると2時間待ちは普通かもしれないね。
10:50、続々と人が並び始めた。ファミリー層も多く大人気だ。ここから並ぶ人は相当待つことになるのだろうな…。
10:55ごろ、店員さんから声がかかり中に入れることとなった。それでは突撃!!
とろふわの衝撃は今も昔も
ついに暖簾をくぐるときが来た!あえて何年ぶりとかって書かないが、相当久々だ!懐かしくって泣きそう!!
席に着くとノールックで玉子焼き(明石焼き)をオーダーした。決まってるだろ、そんなもん。
2人だったらもう1品頼むことも可能だが、1人だと明石焼きだけでいっぱいいっぱいになるんだからな。覚悟が必要。
そしてその後ゆっくりメニューを見た。明石焼きは20個入りで750円だ。最初にDIMEと来たときは500円を切っていたかもしれないが、相変わらずすごくお得な価格設定だ。
他にはお好み焼きやモダン焼きがあり、大阪チックなメニューが並ぶ。
僕の席からの眺めはこんな感じだ。厨房と客席の境界がほぼないオープンワールド的な世界だ。そして2人の店員さんが一心不乱に明石焼きを焼いている。
ちなみにお好み焼きなどのオーダーが入った際には中央の大きな鉄板を使って調理をする。
明石焼きの特徴は、千枚通しでタコをひっくり返すのではなく、菜箸を使う点だ。そして焼きあがったら1つ1つをピックアップするのではなく、鉄板にまな板をかぶせて鉄板ごとひっくり返す。
なのでご覧の通り鉄板の並びがそのまま、まな板の上に再現される。
はい、出来上がりましたねー、美しいですねー。右側にスタンバイしているのがダシ汁だ。少し温かい状態で提供される。これに浸けて食べるのだ。
口入れたとたん、「じゅわーっ!」って感じで強烈なうまみが口中に広がる。とろとろで優しく、歯を使う必要が全くない。アツアツなので「ほ、ほわぁ…!」って小さく声が出る。うますぎる。うまみの爆弾だ。思わず口角が上がる。微笑みを抑えられない。
玉子を多く使っているので地元では"玉子焼き"なのだ。玉子の風味がさっぱりしただしの中にも濃厚な味わいを演出してくれている。絶妙。
箸でギリギリ持ち上げられるくらいの柔らかさ。口に入れると溶けてなくなってしまうような儚さ。しかしタコの歯ごたえがプリップリ。なのでポンポン食べられてしまう。うまいうまいとつぶやきながらどんどん食べる。
ただ、ソースは使っていないとはいえ、そこそこ塩分あるよね。水もガブガブ飲む。後ほどの話だが、退店後にも水をガブガブ飲んだほどだ。それでもうまい。それがうまい。
半分食べた。なかなかに胃に溜まってきた。
年季の入ったまな板には、明石焼きの残影が残っている。何千回も何万回も、きっとここに明石焼きを乗せてきたのだ。ふなまちの歴史がここに刻まれている。
ちゃんと完食した。最高の満足感だ。
江戸時代後期に生まれた明石焼き。たこ焼きよりも歴史の古い明石焼き。それを提供するふなまちは創業66年だ。すごい老舗なのだ。
歴史あるこのお店をまた再訪できて心から嬉しい。
しかも僕のドライブの原点に近いところにいるお店だものな。僕が証を好きになったきかっけの1つであるお店だものな。これからも長らく続いてほしいね。
退店すると行列は一気に伸びていた。
みんなこの味を求めて長時間並ぶのだ。その理由も納得だ。僕もまたいつか、忘れたころに再訪しよう。ここに帰ってくれば、懐かしい仲間との思い出にまた浸れるから。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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