「立山黒部アルペンルート」。
世界有数の山岳観光ルートであり、さまざまな乗り物を乗り継いで長野側と富山側を行き来できるようになっている。僕も何度か訪問し、全線攻略済みだ。
上記は以前、黒部峡谷トロッコ鉄道の記事にて使用した立山黒部アルペンルート近辺の地図である。
トロッコ列車観光に興味がある方は、上記のリンクから過去記事を辿ってみてほしい。ひとことで言うと僕がトイレをガマンする記事なんだけどな。
でもそれ(トイレの話)はさておき、2024年はアルペンルート近辺にとって激動の年になっているのではないかと思う。
- 日本最後のトロリーバス廃止
- 黒部湖遊覧船ガルベの廃止
- キャニオンルート(2024年新エリア)の開放の次年度延期
「1」については悲しいけれども時代の流れだ。よりエコな電気バスになる。
「3」については今年の元旦に生じた能登半島を震源とする大地震の影響が大きい。
「2」については…。それを今回、思い出と共に語ろうか。
何もかもが最高すぎる1日
先ほどトロリーバスの廃止について触れたが、実は2018年まではトロリーバスはアルペンルート内に2つあった。「扇沢~黒部ダム」の間を結ぶ、現在は電気バスとなっている区間だ。だからこの年も"トロバスラストイヤー"と呼ばれていた。
さて、本題のガルベの話に入る前に、駆け足でそこまでの経緯をお話ししよう。
朝の6時台の長野県扇沢駅である。ここからアルペンルートが始まる。もう期待で胸がいっぱいだよ。
こんなにも晴れているんだもん。そして、栄光ある1便のチケットを昨日Webのキャンセル待ちで偶然にも入手できたんだもん。
1便と2便では行程に大きく差がある。ほぼ誰もいないスッカスカの黒部深部に足を踏み入れ、なるべく早く最高標高ポイントの室堂に行かないと、各交通機関ドチャクソに混雑してしまうのだ。
7:30に扇沢駅を今は亡きトロリーバスで出発するチケット。2024年現在も僕の宝物だ。右側には1996年まで活躍した先代のトロリ―バスがプリントされている。
トロリーバス。名前もバスだし姿もバスっぽいけど、ジャンル的には電車だ。無軌道、つまりは線路を走らないタイプの電車だ。その証拠として電車と同じように屋根の上から絶えず電機の共有を受けているのだ。
トロリーバスで暗いトンネルを通過し、長野県から富山県の黒部ダム手前まで行った。
とにかくどの写真も最高すぎるので、それらを全部掲載したら切りがない。なので厳選して数枚だけ掲載する。これらはいつか機会があったら「黒部ダムの記事」・「黒部平の記事」・「室堂の記事」…みたいな感じに分けて執筆したい。
ひとまずダイナミックな黒部ダムを横目で見ながら小走りで通過し、行列しやすいケーブルカーにサクッと乗車。
さらには黒部平をチラリと眺めた後に最大のボトルネックとなるロープウェイに乗車。この時間にここまで抜ければあとは大丈夫かな?
最後に2024年廃止となるトロリーバスに乗り、最高所の室堂に到達した。
7月の下旬、世間では災害級の猛暑と言われていたが、こんなにも涼しくて雪も残っている。「みくりが池」などゆっくり眺めながら散策した時間は至高だったぞ。
これまでも室堂には何度か来ているが、こんなにも晴れ渡ったのは初めてだ。一生大事にしたい思い出。
そして昼前に下り始めれば、対向はギュウギュウの行列だがこっちはスカスカよ。スイスイと帰路に就く。帰路につきながら前半にすっ飛ばした黒部平や黒部ダムをじっくり観光するのだ。
黒部平ではランチもしたしソフトクリームも食べた。心も体も大満足だ。
そこからさらに下って黒部湖と黒部ダムのエリアまで来た。ここからトンネルを抜けると長野県の扇沢駅になるので、ここが最後の観光ポイントなのである。
さぁ、ダム見学と…湖を遊覧するガルベに乗ろう!!
日本最高所の遊覧船ガルベへ
さて、遊覧船ガルベが航行する場所についてご説明しておこう。
冒頭のMAPを再掲した。黒部ダムによって形成されている黒部湖、そこを走るのが遊覧船ガルベなのだ。この湖面の標高はダムの満水時で1448m。日本一高いところを航行する遊覧船だ。楽しみ。
しかも上の図で示した乗り物はほぼすべて(観光も兼ねているとはいえ)移動のためのものであるが、ガルベだけは観光用に全振りしている。純粋に楽しむだけの時間があるって贅沢よ。
黒部湖のイメージがわかる写真をもう1枚。
誰もが見たことあるであろう黒部ダム。それを見下ろす展望台にヒーヒー汗をかきながら登ったときのものだ。時系列は前後するが、ガルベ乗船後のもの。
余談だが朝一はトロリーバスを降りた後に写真の左端から出てきて、ダムの堰堤を早歩きで横断し、写真右奥からケーブルカーに乗った。
向かって左側、広大な湖が黒部湖なのである。これを執筆時に気付いたのだが、湖の中央に小さな船がいるね。これ、ガルベ?
…というワケで高低差の大きいアルペンルートにおいて、ガルベは黒部ダムと同じ高度のエリア。
だけどもちょいと乗り場が離れているんだ。多くの人はこのエリアを「トロリーバス~黒部ダム~ケーブルカー」というように歩いているが、そこから少し反れてトンネル内を歩かねばガルベの乗り場には到達できない。
だけどもさ、ディズニーランドとかにもこういう乗り場が袋小路的なアトラクションがあるじゃない。返ってワクワクする。
ディズニーランドだったらこのあたりで「あと90分」みたいなプレートが出てたりすると思う。でもここはスッカスカ。
わかる?赤丸で囲ったとこが黒部ダムの裏側。写真映えするのは反対側の水を大量放出しているところだけど、これはその背中部分の水を必須に貯蓄している部分だ。
写真左端に小さな滝が見えているのもなんだかほっこりするね。ガルベに乗るだけではない、ガルベに乗る人しかほとんど見ないような、こういう黒部の別角度が見られるのも嬉しいじゃないか。
ガルベの乗り場が見えてきた。その背後には先ほどと同様、黒部ダムの堰堤が見えているね。お客さんはそんなに多くは無さそうだ。余裕で乗船できるぞ。
ちなみにだがガルベは1日8便、9:35~15:00まで40分から1時間間隔で航行している。乗る際にはちゃんと時刻を調べておくとよいよ。僕は13:00の便に乗った。
乗船時間は約30分で、料金は1200円だ。
これは下船時の写真。小さな船で店員は80名。
スペースは2種類ある。1つは屋内でちゃんと座席に座り、天井まで設置されている開放的な窓から景色を眺める方法。もう1つは船の後部が2階建てになっているのが見えると思うけど、このふきっさらしのスペースに立って臨場感を味わう方法。
僕はもちろん後者なのだぜ!座っている場合かよ!
開放感抜群のガルベとお別れ
2024年6月、ガルベの運行終了が発表された。とても悲しい気持ちになった。
背景などをご説明しつつ、航行写真をお見せしていきたい。
なぜガルベは廃止されてしまうのか。その理由は大きく2つある。1つは乗船客の減少、もう1つは船自体の老朽化なのだそうだ。
まぁ確かにすんなり乗船できたし、展望デッキもご覧の通りスカスカだったしな。おかげさまで自由気ままに動き回り、いい写真をたくさん撮れたしとっても気持ちのいい航海だったぜ。
絶景すぎる。もちろんどこから見てもアルペンルートの景観は最高なんだけど、水面スレスレの位置から船に揺られながら見る山々って独特なのよ。こんな体験がもう今後できないなんて、寂しすぎる。
ガルベの運行は1969年にスタート。現在のガルベは2代目で、2000年から導入しているのだそうだ。
2003年度には約5.5万人が乗船したそうだけど、団体客の減少などから2023年度はわずか1.8万人だったらしい…。やっぱコロナの影響からの回復も大変だったのかな…?
もう1つは先ほど記載の通り船の老朽化であり、エンジンのメンテナンスのための部品調達も困難になってきたそうだ。
全く新しいデザインで1から造ればそんな悩みも無いのだろうが、もう1つの原因である利用客の減少のあり、そういうコストは捻出できないのであろう。
でも決して観光客が減っているわけではないと思うんだけどな…。アルペンルートは国内では類を見ない大規模山岳観光で、いろんな乗り物に乗れる楽しみがある。
冒頭で書いた通り黒部峡谷のトロッコから黒部ダムまでを繋げる「キャニオンルート」も2025年度に観光化されるというし、さらに注目が集まっていると感じる。
にもかかわらずガルベが引退してしまうのは、やっぱ交通手段ではないことと、乗り場が少しルートから離れていることが原因じゃないかなぁと思うんだ。
プロモーション次第ではもう少しどうにかなるかもしれないし、観光客もこうやってゆっくりプカプカする時間の余裕を捻出できればな…て思うよ。いや、いつもはせわしなく走り回る僕が言うのは全くもっておこがましいんだけどさ。
終盤、短い間だが座席の方にも座ってみた。廃止されることを考えれば、貴重なワンシーンを撮影できてよかったと思っている。
なかなかにギュウウギュウだな、こっちは。みんな屋内が好きだったのだ。
屋内は天窓からギャンギャンに光が降り注ぐので、温室のように暑い。むしろ外の方が爽やかで気持ちいいと思うのだがね。だけどもこの窓枠越しの世界もいいよな、とは思う。
そんなこんなで30分、およそ1.5kmの航海を終えて元の船着き場へと戻った。楽しい時間だった。船の観光っていいよね。独特の感覚。
さて、ガルベの運行は2024年11月10日が最後である。55年に及んだ歴史の終幕まであと2ヶ月を切っている。
ラストイヤーということもあり、週末は大体満員が続いているそうなのであなたがもし行こうと思っているならば、計画にゆとりをもって行ってほしい。
僕はもうガルベに会うことは叶わないが、最後まで安全かつ楽しい航海が続くことを祈っている。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報