ファンタジーの世界に出て来そうな木々が立ち並ぶ森がある。
大都会の博多駅からわずか10kmのところにある。
そのスポットの名前は「篠栗九大(ささぐりきゅううだい)の森」。
インスタ映えで人気が急上昇した折に僕もそこの存在を知ることとなるが、2023年にようやく訪問することができた。
時期があまり良くなくって、僕の撮った写真の評価は世間的には100点満点中の30点ほどであろう。
でも、それでも僕はこの光景を見られて楽しかったし、なにより森林浴をしながらの散歩ができて満足した。そんなささやかなエピソードを執筆させていただきたい。
最も効果的なアクセスは…
僕は篠栗九大の森がどういうところかあまりわからずにハンドルを握っていた。旅なんてそのくらいでいいんだ。ネタバレしていないほうがワクワクする。
ただ、こんな住宅街の中に目指す森があるのだろうか、と少し心配にもなる。
秘境のようなところを想像していたが、意外にも開けた場所にあるのかもしれない。
さて、大前提として僕は何を目的に篠栗九大の森を目指しているのかをご説明しよう。
はい、みなさんステキでございますな。
ご覧の通り、水の中に木々が映えているという幻想的な景観が臨めるのがこの森の特徴だ。
ただし2023年夏は猛暑続きだったのでそんな光景を見られる可能性はゼロに等しいと悟ってはいるが、ワンチャンこれを見たくって僕は森を目指しているのだ。
篠栗九大の森は、「蒲田池」を取り囲むような遊歩道で一周できるようになっており、一周2km強を40分ほどで散策できる。駐車場は2箇所にある。
上に掲載した水没林のみを見たいのであれば、北口駐車場がいい。森の中をズンズン進んだ先にある駐車場なので少し道は細いが、車を停めてしまえばハイライトの水没林までは徒歩5分もかからないだろう。
僕は何も知らずに道路沿いの南口駐車場にやってきて、その事実を知った。
そして少し考える。
結果、南口駐車場から歩こうってなった。水没林だけを見てもこの篠栗九大の森を知ったことにはなるまい。それは浅すぎる。まさに「木を見て森を見ず」だ。
南口駐車場から水没林までは800mほどだろう。大層な距離ではないさ。今日も猛暑だがまだ朝だ。そんなに苦ではないだろう。歩こう。
こうして僕の朝の散策がスタートする。
水辺の森のラクウショウを目指せ
まずは目指すはハイライトとなる水没林だ。
ここからは篠栗九大の森が正式名称として設定している"水辺の森"と表記するね。
さっきの地図を再度引用する。
南口駐車場から見ると水没林のある水辺の森はほぼ対角線。時計回りか半時計回りかどちらから行くか迷うが、半時計回りの方が若干近いそうなのでそちらを選択する。
地図の通り、序盤は車道を歩かねばならない。
まぁいんだけど、早速気温が上がってきてアスファルトからの照り返しが暑い。ホント2023年はおかしいレベルで暑いよね。
この道は、北口駐車場に向かう車も通るしハイキングの人も歩く道。駐車場は写真の左奥へ、歩行者は右に見えている分岐に入っていくのだよ。
ここで、今までは木立の向こうにチラチラとしか見えていなかった蒲田池が眼前に広がった。
17haの蒲田池。野性味あふれるビジュアル。
もともとは農業用水を確保しておくための溜め池だったのだそうだ。それを2010年に整備し、周囲に遊歩道を作り、こうして僕らが気軽に散策できるようになったそうだよ。
北口駐車場と水辺の森の中間地点くらいにある、もみじ広場。
森の中にポッカリ開けた草むらに、テーブルとイスが点在している。こんな広場がこの篠栗九大の森の中にはいくつかある。
もみじのシーズンには程遠いのでピンと来ないが、実はここにはモミジバフウとタイワンフウが植えられていて、秋には紅葉を楽しめるようになっているのだ。
今はスルー。暑くて日向には入りたくない。
ところどころに立て札があり、現在位置がわかる。
僕は最初に南口から北口まで歩いている。だからその分の400mほど、プラス北口からここまで500m歩いたというワケだな。賞味1km弱くらい歩いているかな。
そしてそのあとすぐに現れた水辺の森。
うん、「水辺ってどこかな?」って感じだ。写真右手は湿地みたいになっており、さらにその右には蒲田池がある。でも写真に写っている範囲には水は無い。
わかってたけど。カクゴしていたけど。
梅雨などの降水量が多い時期は、この木々が水の中に浸かって幻想的な光景となるのだ。
だけども前述の通り灼熱続きの2023年の初秋において、それを求めるのは難しいだろうなって思っていた。それでもいいじゃないか、この景色。
このちょっと不思議な木の名前はラクウショウ。漢字で書くと落羽松。
水辺でも育つし、ときには水の中から生えることもあるので、"沼杉"という別名もある。ようするにスギの木なのだな。
年を経ると根元が扇形に広がるのが特徴らしい。これによってファンタジーレベルが上がるよね。
もともとは北アメリカのごく一部のみにしか生息しないという樹木。ここにも植栽されてやってきたそうだ。
時期が悪かったかもしれないけど、いいものを見れたな。
ここでUターンしようかどうか僕は考える。
しかしこのまま進んで蒲田池を一周することにした。Uターンしても歩く距離は2・300mくらいしか変わらないもんね、きっと。だったらこの機会にちゃんと篠栗九大の森を堪能しておくことの方が大事だろう。
そもそもここは、九州大学の演習林
では、残りの行程を歩きながら篠栗九大の森についてご紹介していこう。
正直、僕個人の目線では水辺の森以外では超絶盛り上がるようなスポットは無かった。ゆっくりとフラットな感情で散歩するのにちょうどいい。
先ほど書いた通り、蒲田池はもともと人口の溜め池。その後、九州大学の演習林の一部となった。
ラクウショウを植えたのは1977年だったらしい。湿地での樹木静態の研修目的なのだそうだ。
2010年に綺麗に散策路を整備し、無料開放した。
2010年代の後半、SNSの普及で一気に有名になり、付近の道路が大渋滞したりもした。
平日の朝だからなのかもしれないが、僕の訪問時はとても静かであった。
一周2㎞の道で10数名とすれ違ったと記憶しているが、地元っぽい人が健康目的に散歩しているような雰囲気であり、みんな気持ちよく「こんにちは」と挨拶してくれた。
コロナ禍だとかでブームは去ったのかもしれないが、僕自身がよそ者だからなんともコメントに困る話だ。
ちょいちょい出てくる広場系スポット。僕にはどれも同じように見えてきてゲシュタルト崩壊した。
もちろんここには桜が植わっているらしく、春先にはピンク色に彩られることであろう。
しかしこの季節はここに限らずどの広場も緑一色なのだ。植物たち、大変に元気。
木立が多くて蒲田池をキチンと見えるスポットが少ないが、上の写真はそこそこ高台を歩いている。多少のアップダウンはある散策路だ。
ここで、森の入口の看板に記載のあった留意点をご紹介しよう。
ここは「水辺の森を散歩できる場所」であって、街の公園のように整備した場所でありません。
遊歩道は山道で、道には切り株や木の根なども残っていますし、滑りやすいところもあります。
安全には、各自が十分に注意して下さい。
…だそうだ。
山道ってほどでもないしスニーカーで余裕だけども、舗装された綺麗な道ではない。
サンダルやスカートとかはキケンなので避けたほうが良かろう。あくまで森歩きなのだ。
おそらくこなら広場近辺で、蒲田池を広く見渡すことができた。たぶん車道から最も遠いポイント付近。
こうしてみると鬱蒼とした森の中の自然あふれる池って感じだ。実際は相当に市街地だけども、そんな気分を味わえるのがすごい。
なんか、西表島の奥の方にこんなロケーションあるぞ、って感じた。
実際に暑いが、絵的にも暑い。
こんな光景をチラチラ眺めながら、南口駐車場に近づいていく。
迫力のある蒲田池を眺めるのが目的なのであれば、南口駐車場が良いのかもしれないな。
大きな栗の木を植えてあるくりのき広場もチラ見。
そして最後に出てくるネーミングスポット、マダケの林。
他の広場は「~という植物を植えていますよ」というテーマだったが、ここだけは「いい感じにマダケを伐採してほどほどの状態を保っていますよ」という説明だった。
マダケェ…。
およそ40分。一周の散策を終えてまた南口駐車場へと帰還した。
汗だくだよ、午前中から。
…涼しい春先や秋深まる時期であれば、気持ちいい散歩ができるだろう。
そんな天気の日にまた歩いてみたい。そいていつか、水の中に立つラクウショウを見てみたい。
都会のオアシス、楽しかったよ。
じゃあこれから博多にブランチを食べに行こうかね。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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