週末大冒険

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ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No.383【大阪府】1杯11万円!スプーン1口2500円!「ザ・ミュンヒ」で幻のコーヒーを飲む!

あなたはコーヒー1杯にいくらを払えるか。

僕の場合は700円を超えると「おっ、なかなかの自信ですな」って思う。1000円を超えると、その反動でその日の夕飯がひもじくなるであろう。

 

スマホを見るあなたはもしかしたら「ふふん、YAMAもまだまだだな」って思うかもしれないが、じゃあ「コーヒー1杯で11万円」って言われたらポンと払えるか?

1万円じゃないぜ、11万円だぜ。1万円でも清水の舞台から飛び降りるだろうに、11万円だとさらにケタが違って脳がバグるであろう。

 

 

さて、僕はこの超高額コーヒーを提供する「ザ・ミュンヒ」というカフェを訪れる。超高額コーヒーをほんのひと口だけ味見するのだが、ひと口で充分すぎるほどのインパクトがあった。

 

 

さらに、4500円というなかなかのお値段のコーヒーもいただいた。これまた他では味わえない体験であった。冗談ではなく、コーヒーというものの概念が変わった。

そんなオンリーワンの喫茶店での体験談、ぜひ聞いていただきたい。

 

 

日本に1台のバイク、ミュンヒ

 

八尾市の住宅地。大きなビルも大きな店も周囲に無く、でもフラットな土地に綺麗な一戸建てが続いていて住みやすそうだな、って思った。

 

ミュンヒ1

その一角にあるのがザ・ミュンヒというコーヒー専門店だ。

おじいさん1人で営んでいるというが、Webで調べたところ営業時間はなんと6:00~翌3:30。1日の営業時間が21時間30分だ。ブッ壊れているじゃねぇか。しかも基本的に年中無休だ。

「マジかよ、Web情報の誤りだろう」と思って事前にお店に電話をしてみたが、ずっと呼び出し音が鳴り続けていた。かなり不安だ。

 

ミュンヒ2

お店に到着した。どうやら営業中のようで安心した。

『熟成珈琲超濃厚エキス専門店』・『エスプレッソ以上の超濃厚なコーヒーは最高の料理です』・『名車と熟成珈琲 自家焙煎の店』・『珈琲だけの店』…。

真相はまだ謎だが、普通じゃないことは充分に理解できただろう。深呼吸をしてからドアノブに手を掛けた。

 

ミュンヒ3

これがほぼ店内の全景である。撮影者である僕の立っているところが、窓際の4人掛けの席。全部で20人ほどのキャパのお店だ。

店内に入るとオーナーのおじいさんが「こちらへどうぞ」と4人席を案内してくれたので、ここに座った。ちなみにこの日は平日の夕方であり店内滞在時間は1時間半ほどだったが、他にお客さんは来なかったぞ。

 

ミュンヒ4

これは水出しコーヒーの器具だよね?スケールが大きくアンティーク感も満載で目を奪われるよ。じっくり時間をかけて抽出という行程にもロマンを感じる。

 

…だが、この店内で最も目を奪われるのは、たぶんこれじゃあない。それはアイツだ。

 

ミュンヒ5

"ミュンヒ"。すんごい大型バイクだ。この店名の由来ともなっているバイク。世界に5台、そして日本にはこの1台しか存在しないと言われている伝説のモンスターマシンだ。

 

オーナーさんが1981年に入手してこのお店を開店すると、たくさんのライダーさんが見に来る繁盛店になったんだって。でも「数年するとブームも収まっちゃうかもなぁ」と思い、コーヒーの道を究めることとしたそうだ。

コーヒーの道をどう究めたのかは、また後の章で語るね。

 

ミュンヒ6

これらの写真は、オーナーさんがコーヒーの準備をしている間に許可を得てお店の中を見てまわり、撮影させてもらった。

残念ながら僕はバイクに疎くって、そんなにバイクの価値をわからないのが悔やまれるところだ。

 

 

1時間以上かけてドリップするコーヒー

 

少し時間を巻き戻そう。座席に座った僕に対し、オーナーさんは「さてどうしましょう?」とメニューを見せてくれた。

 

超濃厚コーヒー1

よかったら上の写真、拡大してみてほしい。一番安いもので2500円、そして高いもので8000円だ。

 

マニア向き

  • 全てぬるいめの創作抽出(想定外)コーヒーです。
  • ネル出しにつき時間をかけることによってかえって酸化しにくいコーヒーになります。

 

自分で「想定外」って言っちゃったよ。わかってらっしゃる。しかし僕もそれを味わいたくって来ているのだ。

でも全部想定外メニューだ。この中のどれを選ぶべきか…。

 

超濃厚コーヒー2

オーナーさんが言う。「急いでいる人であればすぐにドリップできる安価なコーヒーもある。ただしこのお店のウリは時間をかけて抽出する究極のコーヒーなんだ。」

うん、そのためにここに来た。

 

「では、"苦味の苦味の甘味"ではどうでしょう。おちょこ1杯くらいの量だけども超デミタスで150グラムの豆を使い、4500円。抽出時間は50分~1時間くらい。

よし、じゃあそれだ。単語1つ1つが規格外で全然ピンと来ないけど、全て任せた。

 

超濃厚コーヒー3

しばらくするとオーナーさんが大きめのボウルを持ってやってきた。「これが1杯分の豆。これを使って抽出していくからね」、とのことだ。

多いな…。普通の喫茶店であれば店内にいるお客さん全員にコーヒーが行き渡る量なのではなかろうか。

 

これが150グラムだという。普通コーヒー1杯だと豆の量は10グラムほど。

オーナーさんは「だから4500円だけども、15杯分の値段だと思うとそんなに高くはないんだよね。」と言う。

いや、原価やビジネスの目線だとそうかもしれないが、飲む側の立場だとなかなかにエグい価格ですぜ。

 

超濃厚コーヒー4

僕のテーブルの隣にネルのホルダーが置かれ、オーナーさんは厨房へと帰って行った。

奥の方から「ガガガ…!バリバリバリバリ…!」と豆を挽くサウンドがずっと聞こえていた。さすが150グラムなのだ。

 

超濃厚コーヒー5

「この新聞記事とか読んでてくださいな」と言われたので、ザ・ミュンヒについて書かれた新聞を読んでおいた。今年(2024年)の2月12日のものだ。画質高めで撮影したから、スマホの前のあなたも読んでおいてほしい。

なるほど、抽出に4時間かかるコーヒーもあるのか。果てしないな。コーヒー待っている間に普通のコーヒー3杯飲める。

 

超濃厚コーヒー6

ネルが横のテーブルにセットされた。「長い時間待たせちゃうからね、お客さんのすぐ前で抽出するのですよ。」とのことだ。ブロガーとしてもありがたい。いちいち写真を撮らせてもらった。

 

ただ、1枚写真を撮り損ねた。最初、このバカデカいネルに豆がこんもりと山盛りになっていたのだ。それをオーナーさんがギュッと押さえつけて圧縮したのが上の図だ。

もうネルの中、豆でパンパンなのだ。すごい光景だ。

 

超濃厚コーヒー7

オーナーさんはそのたっぷりの豆の上にお湯をチャチャッと一振りすると、またどこかへと消えていった。それを何回か繰り返した。

ご覧の通り、ネルの下にサーバーもカップもない。その程度の湯量では到底コーヒーはドリップできないので、まだ下には何も置く必要はないのだ。

「最初の1滴まで大体30分ですからねー…」って言ってた。スケールが違う。

 

超濃厚コーヒー8

ときどき戻ってきてチャチャッと水やりしては、厨房に帰っていく。あるいはじっくりと座ってコーヒーを観察する。

それをジッと見守る僕。店内にはこの2人のみだ。すごく奇妙な時間が流れている。

 

そのうちネルの下に小さな小さなカップが置かれたが、まだここに雫が落ちる気配はない。旧東ドイツ製のマイセンのカップらしい。貴重だぞ。

 

超濃厚コーヒー9

「こんなふうに手間がかかるから、お客さんが重なったときとかはこの方法では提供できないんですよ。あらかじめドリップしたものがあるから、それをもう少し安い価格で出すの。でもね、こうやってドリップしたコーヒーは酸化しないから味に違いはないんですよ。」と言う。

他のお客さんがいなくって良かった。マンツーマンドリップ、体験出来て良かった。

 

超濃厚コーヒー9

他にもオーナーさんとはいろいろ話した。なにせドリップ時間だけで1時間だったのだ。オーダーしてから飲むまでは1時間10分かかったのだ。そりゃいろいろ語り合ったさ。

とてもすべては書ききれないが、このあとの記事内でそれをポツポツ入れ込んでいくね。

 

コーヒーをドリップし始めて20分後、ようやく最初の1滴がポタリと落ちた。マスターが、「おっ、落ちましたね」と言い、僕は「えぇ、落ちましたね」と返答した。

なんか春になって「おや、土地からフキノトウの芽が出ましたね」みたいなテンションで、2人で微笑ましく言葉を交わした。

 

超濃厚コーヒー10

ネルの中を上から見るとこんな感じだ。わけわかんないくらいに粉まみれ。これら全部抽出の役に立っているのかな、ってくらいに粉だらけ。

そしてポタリ、ポタリとドモホルンリンクルみたいに1滴ずつ丁寧に抽出されている。見つめていると人生を考えてしまいそうな時間だ。

 

 

抽出開始から1時間が経過した。

おちょこのようなサイズには、40ccほどのコーヒーが溜まった。「さぁどうぞ」とオーナーが言う。とうとうそのときが来たのだ。

 

超濃厚コーヒー11

4500円のコーヒー。今までの人生でダントツ一番高いコーヒーであり、今後の人生でもこれ以上はおそらくないであろう。

 

ひとくち飲んでみた。

おい、これヤベーぞ!!全然今までのコーヒーとチぞ!!オヤジ、おまえコーヒーにいったいどんな魔法をかけた!!?…って思った。

1時間かけてドリップしたので、当然ほぼ常温のぬるいコーヒー。15杯分のガチに濃厚でブラックのコーヒー。

ほんの少し口に含むと、トロリとしたような口当たりで「あれ?クリーム入れたかな?」って感じにまろやか。そのあと遅れて角の無い上品な苦味がやってきた。

 

超濃厚コーヒー12

「えっ…!?」って感じだ。こんなにも丸い味わいなのか。力強さと優しさって、両立するのか。

すごく安易な表現をしてしまうと、それはコーヒーゼリーにクリームをかけた1口目のような感覚だ。苦いのにマイルド。あれを100倍昇華させた感じ。

こういう世界があるのか…!スゲーぜ。

 

オーナーさんは目の前に座ってその様子を眺め、「いろんな豆、いろんな焙煎方法で試したんだけどね、この抽出方法でこういう味わいになるのはほんのわずかなんだ。他のお店でマネしようとしてもこうはならない。」と淡々と語っていた。

 

そうだろうね。そしてこのコーヒーはガブガブ飲むものではない。厳選されたほんのわずかな量のものを"嗜む"ものであるな、って感じた。

正直少し疑っていたが、値段に見合う価値があると感じた。

 

 

1杯11万円、1口2500円のコーヒー

 

おっと、僕はまだ帰らないぜ。この喫茶店を知る者は、このコーヒーによってその情報を得たのであろう…っていう有名なコーヒーがあるのだ。

 

最高額コーヒー1

"元祖熟成樽仕込み氷温コーヒー26年物"!!

価格は40CCで11万円だ!!おちょこサイズで11万円!!

 

これをこの量で飲むには予約が必要である。僕の場合、予約していないし11万円も払えない。

しかしメニューをよく見てほしい。"おためしコース"としてスプーン1杯2500円なのだ。もう金銭感覚崩壊しているから「2500円?さっきのより断然安いな、くれ!」ってなった。

 

超高額コーヒー2

小さな樽が出てきた。「H7年6月」と書かれている。1994年製だね。ちょうど30年前だ。マイナス3℃で管理しているらしい。

オーナーさんは片手でそれをヒョイと掲げながら「これは冷蔵庫の中でコーヒーをずーっと放置していて忘れてしまってさ、捨てるしかないけどもったいないから味見してみたらとてもおいしかったことに着想を得て…」とか語っているけど、「おいおい貴重なんだから片手で雑に持ちながら話すなや」って内心ハラハラした。

 

そしてその前に、博物館に展示されていそうな金色のお皿とスプーンが置かれた。

 

 

動画もご紹介しよう。なんとなく、すごく濃厚であることがおわかりいただけるかと思う。ポタポタと金色のスプーンでそれを受け止めるオーナー。

 

超高額コーヒー3

たっぷりとたまった。表面張力で盛り上がっている。なんだかプリプリで柔らかそうなコーヒーだ。これで2500円。

 

小皿を持ち上げ、こぼれないように気をつけながら口に含んでみた。

…なるほど!

 

正直に言うね。これ、おいしいとかまずいとかとは、また違う次元にあると感じた。

少しツーンと来るようなこの感覚は、ワインに近い。樽の中で熟成されたがゆえのテイストだろう。しかし僕個人としては、樽の風味が移りすぎてしまっているようにも感じた。

 

超高額コーヒー4

やや酸味が強くなり、発酵したような感覚の味わい。コーヒーとワインの中間くらいの味わい。面白い。

…が、少量で良い。これを40㏄飲めと言われたら結構キツい。この程度味わって「へぇー」と言えるくらいがちょうどいいかなって思った。

 

「これ、11万円払って1杯飲んだことある人はいるんですか?」って聞いてみた。するとオーナーさんは1冊の雑誌を見せながら語ってくれた。

 

超高額コーヒー5

ほんの数人ほどいるそうだが、直近ではアラブの方の王族の人だったかの1人。

外国人ユーチューバーがこのお店を取り上げてバズったことで知ったらしい。令和時代になり新たな天皇が誕生する式典に招かれたこの人は、式典後に大阪までやってきてこのコーヒーを1杯なのだそうなのだ。

なんという逸話だ。「天皇陛下⇒コーヒー」。世界でも類を見ないコーヒーなのだろうね。

 

超高額コーヒー6

昨今の物価高で、数年前までは10万円だったこのコーヒー、今では11万円。スプーン1杯も2000円から2500円になっているぞ。

あなたがもし興味あるなら、さらに値上がりしないうちに急ぐがよいですぜ。

 

 

ミュンヒは21時間、あなたの来訪を待っている

 

オーナーさん、僕にいろんなものをくれた。まずはオーダー直後に「お店のステッカーだよ、どうぞ」とこれをくれた。

 

ミュンヒの贈り物1

ありがとう、いい記念になるよ。

それと、スプーン1杯2500円のコーヒーをオーダーしたところで「以前TVに出たときの様子を録画したDVDもあるから、それもあげる」と言われた。

 

ミュンヒの贈り物2

DVDには『2015年3月2日放送 バイキング』・『坂上 vs IKKO目利きバトル 衝撃の超高額コーヒー』と書かれている。僕はTV番組とか芸能人には疎いのでピンと来ないのだが、何かの折に見てみよう。

 

あと、一緒に写っているメニューもいただいた。最初は「Googleの口コミでいい感じのコメントをしてくれたら…」みたいに言っていたが、最後は「まぁいいや。あげる。」と言われた。すごい包容力。

 

ミュンヒの贈り物3

それとね、スプーン1杯2500円のコーヒーを一滴ティッシュに垂らすとラップでくるみ、「これ1日は香りが持続するからよかったら部屋に置いてみて」と言われた。

む…!ゴミと間違えて捨てないように気をつけます!!

 

ミュンヒよ永遠に1

冒頭記載の通り気になっていたので「営業時間が6:00~3:30ってどういうことですか?」って聞いてみた。

すると「奥の部屋にいることもあるけどもやっているよ。お店を閉じていると寂しい気分になるから、ひとまず来たら対応するよっていう意味。私はちょっと仮眠すれば大丈夫なの。」という超人的な回答が返ってきた。

深夜バスで東京からやってきて、未明にここを訪問した人とかも数人いるらしい。

 

「でもね、2024年になってからは月火水曜日は21時ラストオーダーにしたんですよ。体力的な問題もあるから…」とのことだ。

そりゃそうだ。お体を大切に…。

 

ミュンヒよ永遠に2

「まぁ営業しているか気になったら電話してくださいな。そして遠いだろうけど、また来てね。」とオーナーさんがほほ笑んだ。

外に出ると、すっかり夕方の雰囲気が町に満ちていた。

 

ミュンヒよ永遠に3

そうそう、「ウチのコーヒーはこんなだけど、いろんなコーヒーがあっていいと思う。自分もいろいろなコーヒー店に行ったが、そうだなぁ横浜の「emo」はいい店だったよ。」と、そんな情報もいただいた。

 

伊勢佐木町emo

だからご紹介いただいた、横浜伊勢佐木町のライダーさんの集まるお店emoにも行ったのだが、その話はまた機会がございましたら。

 

ミュンヒよ永遠に4

夕暮れの静かな住宅地。もう春は目の前だがさすがにこの時間は寒い。

ポケットに手を入れ、指先がラップに触れた。ラップを少し開いて中のティッシュの匂いをかぐと、あの濃厚コーヒーの香りがフワリと鼻腔をくすぐり、「あぁ幸せな時間だったな」と頬が緩んだ。

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: ザ・ミュンヒ
  • 住所: 大阪府八尾市刑部2-386
  • 料金: 苦味の苦味の甘味¥4500他
  • 駐車場: なし。付近のコインパーキングを使用のこと。
  • 時間: 6:00~3:30(月火水は21:00ラストオーダー)