「忠犬ハチ公」。
日本史上において数多いる飼い犬の名前の中でも、トップクラスの知名度を誇る犬ではないだろうか。
ハチ公は1923年に生まれた。つまり2023年の今年は生誕100周年なのである。
なんとめでたい。人間であれば百寿だ。
犬であればなんなのか…というか、ハチ公が死んでしまって既に悠久の月日が流れているが、この生誕100周年の記念に僕もハチ公に関する記事を執筆したい。
僕らのよく知るハチ公像は2つ存在する!!
…っていう切り口から語ろうか。
渋谷駅前はスクランブル
大都会、渋谷駅に舞い降りた。
いや、最近の話ではなくって数ヶ月前のまだちょっと寒い時期の話なんだけど、とりあえず舞い降りた。
知っているようで知らない様相の町、渋谷。
だってさ、永遠に駅工事していて、どんどん景観が変わっていくのだ。毎回新しい。そしてビルが多い。
「ハチ公前に行くのだ」という使命感を持って歩いた。
ハチ公像は待ち合わせ場所の定番である。僕は待ち合わせる人もいないロンリーな存在であったが、それでもハチ公像を目指して歩いた。
ただ単にハチ公に会いたかったのだ。
ハチ公、いた。
ハチ公前広場はそんなに以前とロケーションが変わっていないなって思った。
相変わらずハチ公は人気であり、一緒に記念撮影している人も多い。外国人も興味深げにハチ公と写真を撮っている。
周辺に座っている人たちは、そんな様子をボンヤリと眺めている。
そんな中で僕がハチ公の撮影をするのはなんだか気恥しく、ちょっと躊躇した。
こんな写真しか撮れなかった。
ハチ公がここにいる理由は、ご存じの人も多いとは思うけど、ご主人の帰りを待っているのだ。
産まれた翌年、ハチ公は東京帝国大学農学部の「上野英三郎博士」に飼われることになった。しかしさらにその翌年、博士は急に亡くなってしまったのだ。
以降、ハチは博士が通勤で通っていた渋谷駅に通い、帰ってくる博士を待ち続けたという。
まぁ「博士を待っていたのではなく、駅前の焼き鳥屋さんからのほどこしが気に入って通っていたんだよ」みたいな情報もあるけど、ここは一緒にハートフルな方に舵を切ろうぜ。
銅像となって、ハチはもう100年近くここにいるのだね。
その間にどんどん渋谷は変わっていっているよ。ラストダンジョンみたいになっているよ。
こりゃ博士が帰ってきたところで永久にダンジョンから抜け出せないんじゃないかってくらいのスケールだ。さすが渋谷だ。駅もすごいし人もすごいし。ハチ公をゆっくりと撮影もできなかったし。
そんなあなたに朗報である。
ほぼ同じハチ公像をゆっくりまったりと撮影できるスポットがある。
秋田県に。
大館駅のハチ公像
おっとここで注意点だ。
僕は大館駅前のハチ公像を見るドライブを3回実施しているので、それらの写真を混ぜ込んで掲載する。2023年の写真ではないので注意してくれ。
何より2023年現在、大館駅はリニューアル工事のクライマックスだ。僕の写真とはちょっとロケーションも異なる。
このようなちょっとレトロな駅舎もキュンキュンするが、ピカピカの最新鋭の駅が出来上がりつつある。
この工事にあわせてハチ公像も2020年に少しだけ移転した。
ちょうどコロナ禍だったので僕は移転後のハチ公には会えていなんだけど。
それでも大館駅前であることには変わりないから、気にせず記事を執筆するぞ。
複数回訪問しておいて、ほとんど全く同じ構図の写真しか撮らずに恐縮だが、大館駅なのである。この前にハチ公像がある。
ほら、ハチ公。
見れば見るほど渋谷駅前のものと似ている。
それもそのはずである。同じ型から造られた完全に双子だからだ。同時に2つ造られ、それぞれ渋谷駅と大館駅に設置されたのだ。
でも、なんで大館駅にハチがいるのだろうか。
ここには博士は帰ってこないのに。渋谷から電車を寝過ごして大館駅まで来ちゃうことも想定できないだろうに。
その答えは、「ハチは秋田で生まれたから」だ。
今から100年前の1923年、ハチは秋田県の二井田村で生まれた。現在の大館市だ。
ここはハチの出身地だったのだ。
話は少し反れるけど、秋田県は秋田犬のふるさとだ。ネーミングからして当然かもしれないけど、そうなのだ。当然で必然だ。そしてハチは秋田犬だ。
駅前にもこのようにハチ公のふるさとをアピールする看板があった。
県内には複数個所、秋田犬を見学できるスポットもある。
これは田沢湖の湖畔にある「田沢湖共栄パレス」の秋田犬見学所で撮影させていただいたものだ。正直犬種には詳しくないので見てもよくわからかったが、秋田犬だ。少し大きめ。おとなしめ。
複数の犬の写真を撮ったが、どの子もアンニュイな顔をしているので、カメラを持つ僕は戸惑った。
しかし犬を飼ったこともないし触れたことも無いので、正解がわからない。お互い目線も合わないまま、僕と秋田犬との邂逅は終わった。
とりあえず何が言いたかったのかというと、ハチは秋田犬であり秋田出身だから、ここに像があるのだ。
ハチが生まれた翌年の1924年、上野博士が「なんだか秋田犬を飼いたくなった」と言うので、ハチは大館駅から20時間電車に揺られて上野博士の家に行ったのだ。
ハチの生涯を振り返る
大館駅前のハチ公像の写真を並べながら、ハチの生涯を振り返ろう。
前述の通りだが、1924年に上野博士に飼われるようになったもの、翌1925年に博士は脳溢血で急死してしまう。
その後いろいろあるけど、ハチは新しい飼い主の元から渋谷駅に通っていた。
「何だこの犬は」って感じで虐待されたり捕まったり大変だったらしい。
博士の死から8年後の1933年、日本犬保存会の会長さんが、健気なのにボコボコにされるハチのことを新聞に投稿した。
すると日本中で「すばらしい犬!」って感じでかわいがられるようになったのだ。
翌年1934年に銅像作ろうぜっていう運動が巻き起こり、すぐにハチ公像ができた。
ハチ自身もその除幕式に参加したそうだ。
そしてその翌年、ハチ公は渋谷駅近くで死んでいるのを発見されることとなる。
ひとあし遅れて大館駅にも同じ型で造ったハチ公像ができるんだけど、そのどちらも戦時中に金属類が足りなくなったという理由で撤去され、溶解されて二次活用されてしまったようだ。
僕らが目にしているは、2代目ハチ公像だ。2代目は渋谷と大館でほんの少し違う。
渋谷がシニアタイプで、大舘がヤングタイプなのだそうだ。
その特徴は、渋谷は老年期のハチの特徴である左耳が垂れた状態、大館は若い頃のハチがモデルで両耳共にピンと立っている。
渋谷側はちゃんと写せていなくって申し訳ないが、比べてみると面白いぞ。
大館駅のハチ公像には、生年や両親の名前まで刻印されている。
渋谷の方にもこのような記載があるのかもしれないが、いかんせん人が多すぎてそこまで注視できない弱い僕がいる。
ハチ生誕100周年
ハチが生まれて100年が経ち、2023年は渋谷と大館で「HACHI100プロジェクト」っていうのが開催される。
いや、既に執筆時点の9月には「ハチ公生誕100年フェスティバルin渋谷」は終わってしまっている。8月5日・6日だったそうだ。
しかしまだ「ハチ公生誕100年フェスティバルin大館」があるぞ。11月11日・12日なのだそうだ。
まだまだ秋田はアツいな!11月だけどもアツいな!
それと同時期、10月末には大館駅が大幅リニューアルされる。
既に8月には新駅舎がお目見えし、今は最後の内部工事をしているみたいだ。
ほんの少し離れたところに移設されたハチ公も、新しい大館駅を見守っているという。
ところで上の写真の「秋田犬の像」はどうなったのかな?まだ同じ位置にいるのかな?
秋田犬のファミリーの像、これもかわいい。
大都会渋谷。その駅前で主人の帰りを待つハチ。
僕らにとってはあまりに当たり前の存在になってしまっているのかもしれない。
だけども100周年のこの時期に、改めてハチのことを知り、イベントがあることを知るのもいい機会かもしれない。
100年経って変わっていくもの、変わらないもの。少しだけそういうことを考えてみてもいいのかもしれない。
まぁ時代が変わろうと町が変わろうと、人と犬の絆って太古から変わらないのだね。
犬を飼ったこともない僕が言うのもどうかと思うけど、ハチ公は今後も人と犬の絆のシンボルであり続けていてほしいぞ。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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