「島根県は影が薄い」とか、「鳥取と島根の区別がつかない」とか、もうアホかと。
何を言っているんだって話。
ならば「日御碕(ひのみさき)」。今日はそれだけ覚えて帰ってほしい。
島根にはそれがあるんだ。
僕の大好きな岬である。
「山陰をドライブorツーリングするのだが、どこかおススメはある?」と聞かれたら、まずは日御碕に行けと言う。
「出雲大社」の参拝はその後でいい。
「鳥取砂丘」は確かにすごいけど、僕におススメを聞いた時点でこの回答は求められてないだろうし。
では、今夜は日御碕の話である。
神々の住まう出雲の国に聳える灯台と、荒々しい絶景の景勝地をぜひあなたにも好きになってほしいのだ。
出雲大社と一緒に行こうぜ日御碕
出雲大社であれば、みんな知っている。
島根県の観光スポットとしてTOPに君臨する知名度ではないかと思う。
「じゃあそれ以外に有名な観光スポットは?」と聞くと、少なくとも東日本の旅慣れしていない人は「うっ…!」と詰まるケースが多い。
(あるいは、出てくるとしたら「石見銀山」かな…)
何を隠そう、ガキの頃の僕がそうであったからだ。
しかし、学生時代に仲間と交代で車を運転しながら初めて訪れた山陰地方。
初めて訪れた島根県。
そこで日御碕の存在を知り、今もその思い出は深く記憶に刻まれている。
僕らはそこで日本海に沈む夕日を見た。
もう少しすると、みんな別々の人生を歩む。
そんな切ないタイミングで眺めは夕日は、ちょっと心に染みたよね。
さて、知名度最強の出雲大社から日御碕までの距離は、実は10㎞も無いのである。
信号も何もない海沿いの快走路を走って行くので、順調であれば出雲大社から10分ほどで到達できるようなスポットなのである。
だったら一緒に行ったらお得だよね。
僕は大体毎回そうしている。
日本1周目にそのように巡ったルートを、日本6周目においても踏襲している。
次章からは、何度も通った日御碕について、日本3周目~6周目の写真を散りばめながらご紹介していきたい。
駐車場から灯台への道のりのワクワク感
出雲大社から海沿いに続く県道62号。
その行き止まりが日御碕の駐車場である。
あれが「出雲日御碕灯台」。
200mほど離れたところに建っているのにこの迫力。
とんでもないところに来てしまったと、この時点で感じるのだ。
ちなみに左端が僕の日本5周目の愛車のHUMMER_H3だ。
この日は駐車場がガラガラで、愛車と灯台のコラボ写真が綺麗に撮れた。
ゴールデンウィークとかだとこの駐車場はいっぱいで、隣の臨時駐車場が使われたりもする。
駐車場の周囲、そして灯台に向かう道の脇にはお土産物屋や食堂などがある。
焼きイカを店頭で販売していたりもしてね、その匂いにつられてついつい買ってしまうのも賢い人生だと思っている。
あえてまずは少し古い写真。
駐車場の片隅には"もしもし灯台"という電話ボックスがある。
ネーミングからも外観からもお分かりの通り、灯台をかたどったものだろう。
かなり年季が入って塗装がボロボロだが、それも味わい深い。
こういうのが大好きなので、写真に収めておいた。
直近で訪問した2022年。
あ、塗装が新しくなった。嬉しい。
しかし"もしもし灯台"の文字が消された!悲しい!
あのかわいいフォント、この電話ボックスにとって重要だったのに!
しかしこの令和時代、ボロボロにもかかわらず電話ボックスが撤去されずに、お金をかけてメンテしてもらえたことに感謝すべきなのかもしれないね。
2022年の訪問時には、ドアに新しい貼り紙が掲示されていたのでそれを撮影した。
Q. もしもし灯台って、なんですか?
A. 昭和63年に、日御碕観光振興会のNTTに対する働きかけで造られた、灯台型電話ボックスです。いつの頃からか、「もしもし灯台」と呼ばれるようになりました。
あれ?
"もしもし灯台"の文字が消されてしまった以上、『もしもし灯台ってなんですか?』という質問すら生じないと思うのだが、どうなのだろう?
そして、『いつの頃からか"もしもし灯台"と呼ばれるようになりました』というか、電話ボックスに"もしもし灯台"と書かれていたから、みんなそう呼んだのではなかろうか?
それとも逆で、みんなが"もしもし灯台"と呼ぶからペイントしたのかな?
そうだったら面白いな。
Q. どうやって使うんですか?
A. 一応、公衆電話です。お金(またはテレフォンカード)を入れると、電話ができます。(以下略)
『一応、公衆電話です』の自信の無さに悲哀を感じる。何だこの感覚。
そして公衆電話がもう時代遅れなことを自覚しての、新たな活用方法の提案が涙ぐましい。
この文章を書いた人、好きだ。
灯台に向かう遊歩道には、昭和時代からあまり変わっていないんじゃないかと思われる商店がいくつか並ぶ。
こういうのどかな光景を見ながら散歩するのが好きだ。
この先に出てくる灯台も絶景もそりゃステキだけどさ。
本当に忘れちゃいけないのって、こういう道端にある一見すると「当たり前」と思ってしまうような風景なんだと思うよ。
そしてついに足元から登頂まで、その全容を見せた灯台に震えたまえ。
超ハイスペック灯台、出雲日御碕灯台!
その表記
出雲日御碕。
岬の名前は"日御碕"であるが、その灯台の名には"出雲"が付く。
一般的には岬の名が「〇〇崎」の場合、その灯台の名は「〇〇埼灯台」である。
ただし日御碕の場合は岬名・灯台名共に「碕」なのだ。
これは究極に珍しい。
名前に「碕」が付く灯台は、全国でもここだけなのだという。
青空に灯台。
とてもとても大きな灯台。これだけで絵になる。
頬が緩むのを感じられるほどに、すばらしい春の情景であった。
その高さ
この灯台の高さは43.65mある。
ビルでいうと14~15階くらいだろうか?
周囲に比較できるものがないからわかりづらいと思うが、見上げるような巨大さなのである。
"石造灯台として"、もはやそれは「みんなが思い描く灯台として」と脳内変換してもいい。
まずは灯台の極めてオフィシャルな情報を発信してくれる「公益社団法人_燈光会」さんのWebページでは、この出雲日御碕灯台が日本一高いと紹介されている。
厳密に言うのであれば、日本一高い灯台は大阪府の「大阪灯台」だと言われている。
高さは50mもある。
しかしこの大阪灯台は武骨なタワー状であり(コンクリ製なのかな?)、そして一般人は近寄ることもできない。
一応下にリンクを貼っておくが、「日本一高い灯台を撮影するために超ズームで狙う」以外の訪問用途は無いかもしれない。
そして、"かつて"灯台機能を持っていた建造物として日御碕灯台の高さを上回るのが、神奈川県にある「横浜マリンタワー」だ。
高さは106mもある。
ただしどうやら灯台として造られたのではなく、「灯台をモチーフにしたデザインであり、ついでに灯台機能も搭載した」って感じみたい。
実際に灯台として重要な働きをしたかと言えば、そうではない。
そして2008年マリンタワーのリニューアルを持って灯台機能は外された。
…というわけで、いろいろ屁理屈を言わないのであればこの出雲日御碕が日本一高い灯台だと表現していいと思うのである。
その価値
出雲日御碕灯台のすごいステータスはまだまだある。
なにがなんだかわからないが、とにかくすごそうな羅列である。
まずはAランク保存灯台について。
明治時代に造られて今も現役の灯台が、日本には67基ある。
これを保存灯台と呼ぶ。前提としてこの67基、全部すげー。
その67基をさらに価値の高い順に「A→B→C→D」と分類した。
その最強のAにあたる23基の中にこの出雲日御碕灯台が含まれる。
歴史的・文化的な保存価値が極めて高いということだ。
次に日本の灯台50選について。
これは1998年に行われた第50回灯台記念日イベントの1つで、海上保安庁が「あなたが選ぶ日本の灯台は?」みたいなアンケートがあったそうだ。
それのTOP50がこのように呼ばれている。
つまり、人気の灯台TOP50と思っていただいてよい。
なるほど。確かにこの巨大灯台はTOP50に余裕で入っていて然るべきですな。
そして世界灯台100選だが、これは世界各国の歴史的に特に重要な灯台100という意味だ。
Aランク保存灯台と似た意味を持つのだろうが、今回の舞台は世界だ。
従い、どうしてもここに叶う実力を持つ灯台はその中でも一握りとなる。
結論、日本の灯台で世界灯台100選に入っているのは5基ある。
もちろんこの出雲日御碕灯台。
それと千葉県の「犬吠埼灯台」・新潟県の佐渡ヶ島の「姫埼灯台」・静岡県の神子元島の「神子元島灯台」・島根県の「美保関灯台」だ。
まだまだヤベーステータスを持つぞ、出雲日御碕灯台。
第1等灯台についてである。
灯台のレンズ(つまりライト)は、大きい順に1等~6等、そしてそれ以下の等外という基準がある。
一番大きい1等レンズを持つ現役灯台は現役灯台ではわずか5基のみである。
この出雲日御碕灯台の他に、先ほども出てきた犬吠埼灯台・京都府の「経ヶ岬灯台」・山口県の「角島灯台」・高知県の「室戸岬灯台」だ。
飛びぬけて明るいと言われるその灯台、残念ながら僕は夜は見たことが無い。
いつか見てみたいものだな。
最後に、この灯台は日本で16基しかない登れる灯台、つまり参観灯台の1つなのである。
一般人が灯台に登れるって、すごいことなのだ。
上から見える景色はさぞかし良いことだろう。
登るには300円が必要であり、今までの僕はそれをケチって灯台の下からの景色に満足してしまって、灯台には登ったことが無い。
日本7周目ではぜひ登ってみたいものだね。
この章の合間合間でご紹介した通り、灯台周辺の歩いて行けるエリアの景色も絶景だ。
柱状節理の美しい断崖、ウミネコの繁殖地である「経島」を眺める「鳥見台展望台」…。
もう一度繰り返すが、日御碕は僕の大好きな岬なのだ。
最強のハイスペックステータスを持つ、日本一高い灯台。
その灯台が見下ろす絶景岬。
まだあなたが未踏なのだとしたら、2023年の晴れの日にぜひ!
以上、日本6周目を走り終えた旅人YAMAでした。
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