週末大冒険

週末大冒険

ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No:016【徳島県】国内3つのみの人力ロープウェイ「野猿」!!腕力だけで谷を渡ってみた!

野猿(やえん)」。

それは動力を持たず、人間の力のみで動くロープウェイ。

ハーレーダビッドソンに対する、ママチャリのこと。

F-15 戦闘機に対する、鳥人間コンテストのこと。

 

そんなアナログマシーンが、四国内陸部のとんでもない山奥にある。

まさに仙人とか住んでいそうな山奥に。むしろ仙人も遭難してそうな山奥に。

 

何を隠そう、そこは日本三大秘境の「祖谷(いや)」エリア。

 

これは、そんな野猿を自分自身で運転するために、遥か四国を1人で目指した男の物語である。

 

 

 

幽寂なる剣山エリア

 

つるぎ町を南北に走る国道438号はマジでヤバい。「剣山」を目指してこの道を上っているのだが、果てしない上にクネクネだし、道は狭いし雨が降ってきた。

 

 

国道とはいえ、このレベルのクネクネだもんな…。

上の地図をご覧の通り、拡大しても縮小しても、見えるのはクネクネ道ばかり。

 

四国の山間部の国道は、基本的にこんな感じで時速20~30㎞くらいしか出せず、すれ違いもできないほど狭いようなところが多い印象。

…だから好きなのだが、四国山間部。

 

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山間部1

ときどき「集落だ!」ってなってもこんな感じだったり。

そういうところをひたすら僕は旅している。

 

ところで、そんなアドベンチャーゾーンで先ほど僕の愛車が動かなくなったよ。

まだ納車から数日目なのに。

 

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山間部2

そう、ここで。こんな何もない山道の途中で。

写真の左側には「高越大権現」という渓流の絶壁に造られた社があってさ。それを見るために車をわずかな時間駐車したのだ。

もちろん、地球に優しい男なのでエンジンは止める。

 

そして再び車にエンジンをかけようとしたら、数分前までブヒンブヒン唸りながらも山を登っていた愛車が、うんともすんとも。

 

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山道2

マジやってくれたぜ、ここの神。どうしてくれるんだよ。

助けを呼ぼうにも、周囲は集落も車も人もいないぜって感じ。

 

とりあえずかろうじて電波はあったので携帯電話からJAFに連絡し、住所登録地から遥か離れた四国のとんでもないところで車がイヤイヤ期で全く言うことを聞いてくれなくって困っている旨を興奮気味に告げた。

 

現在地を把握してもらうの、大変だった。

JAFのレスキュー車がここまで来るのは、すごい時間かかるみたいだ。絶望だ。

 

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山道3

とりあえず川のせせらぎを見ると、少しだけ心が落ち着く。

 

納車からまだ1週間も経っていない車だが、実は製造されたのは平成元年

年齢だけ言えばレトロカーに属するレベルだ。

 

いきなり数日で1300㎞くらいは走ったからなぁ。老体がビックリして壊れたか?

20年間自宅に引きこもっていたおじさんを、いきなりウルトラマラソンにエントリーさせてしまったような仕打ちだよね。すまないね、新しいオーナーが暴君で。

 

心の中で謝罪したら、エンジンかかった。

あ、よかった。

JAFにキャンセルの電話をしてお詫びをし、僕は再び剣山を上る。

 

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山道4

うわー、仙人いるよ、ここ。仙人、あの山の中できっと霞を食っているよ。

もしくは、タヌキと一緒に自然薯をすっているよ。

 

剣山にぶつかったところで国道438号はゴールを迎え、これで晴れて良好な道になるかと思いきや、ここからは国道439号だ。

いや、酷道439(ヨサク)と言ったほうが知名度が高いだろう。

日本三大酷道の1つ、泣く子も黙るヨサクだ。

 

とにかく狭い道をクネクネと、永久に感じられるほど進む。

そんな先に、野猿がある。

 

 

人力ロープウェイ、野猿に乗る

 

僕は景勝地「奥祖谷二重かずら橋」に到着した。実は野猿は、この奥祖谷二重かずら橋を渡るための有料エリア内にあるのだ。

あ、ちなみに「祖谷のかずら橋」ではないぞ。有名なのはそっちのほうだが、僕が今いるのは、もっと深部にあるほうのかずら橋だ。

 

時系列的には、ここで先に二重かずら橋を渡ったのだが、ひとまずその話はまたいずれかの機会に話そう。今回はさっそく、本題である野猿の話だ。

 

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野猿1

これが人力ロープウェイ、野猿

 

間違っても犬小屋とか言っちゃダメだ。確かに令和の人間であれば、ここに豆柴の1匹や2匹を住まわせたくなるかもしれないが、デザインのベースは"輿"とか"籠"なんだろうな、これ。

そして名前の由来は、蔓を伝って谷を渡るサルから来ていると聞く。

 

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野猿2

一足先にここに到着したレディ3人組が、キャッキャしながら野猿に乗っている。

1人ずつ対岸を目指している。

 

しかしこの人力ロープウェイ、自身の腕力だけで動かさないといけない。

どうしても張られたロープって真ん中がたわむから、前半はゆるい下りなんだけど、後半は登り。そこを自分でロープを手繰って這い上がるのだ。

 

レディはちょっとそれがシンドいらしく、ゴール側に先に到着したメンバーにロープを引っ張ってもらったりして、なんとかゴール。

 

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野猿3

レディたちが谷を往復して、こちら側に戻ってきたのを見届けた。

さて、次は僕の番だ。

 

実は僕、かつて日本3周目を走っていた頃もここに立ち寄っている。

しかし、そのときはこれには乗らなかった。撮影しただけで終えた。

なぜなら、ちょっと混雑していてね。そんで、1人旅だとそこに並ぶのも少々気が引けてね…。要するに心が弱かった。

 

しかし、今回は乗ると心に決めてここに来た。

幸い天気もよろしくなく、前述のレディと僕しか観光客もいない。もう僕を阻むものはいない。

 

「すみません、お待たせしましたー!」と明るいレディたち。

入れ替わりで僕は野猿に乗り込む。

 

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野猿4

前述の通り、ロープは真ん中が少しだけだがたわんでいる。

動力もブレーキもない野猿は、手を離すとルートの真ん中、まさに谷のド真ん中で止まってしまうのだ。

それを見越したレディたちが、僕が乗り込む際にロープを後ろから抑えてくれた。

 

「乗れました??じゃあ手を放しますよ!せーのっ!!」」

 

って声に見送られ、野猿は発進した。

 

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野猿5

これが野猿のコックピットからの眺めだ。

大人2人でギリッギリのサイズだな。2人の場合、ソーシャルディスタンスは確保できぬ。

 

中央下に映っているループを手繰り寄せて対岸との距離を縮めていく。

楽しいなー、これ。 緑の渓谷を、むき出しの野猿がスイスイ進む。

 

しかしやはり僕も、真ん中から先の緩い上りでてこずった。

ちょっとずつ着実にロープを引っ張って上る。仮に手を放してしまうと、またズルズルと中間地点まで引き戻されてしまうからな。

 

普段運動なんて一切していないけど、こう見えても僕は、野球強豪校の帰宅部だったこともあるし、夢の中であればシュワルツェネッガーさんにアームレスリングで勝ったことすらある。その経験をここで生かす! 

 

こうして無事30mほどの空中散歩を終え、対岸にたどり着いた。

楽しかったー。

 

 

野猿プチ情報

 

改めて、野猿の全景を振り返ろう。

日本3周目で撮影した写真がいい感じだったので、掘り起こす。

 

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野猿6

 

その構造

 

Webサイトをいろいろ見てみたが、その構造について詳細を解説しているページは存在しなかった。どうなっているんだ、これ?

 

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野猿7
  •  青いロープ:太い2本のワイヤー。野猿に取り付けられたループを介して両岸を繋いでいる。つまり、野猿を宙に吊るしているのはこのロープ。
  • 黄色いロープ:やや太い紐。野猿の中央を通過しているだけで、全く固定されていない。これを引っ張ることで、野猿が前に進む。つまり、腕力を機動力変換するためのロープ。
  • 赤いロープ:やや太い紐。野猿の床に固定されている唯一のロープ。つまり、野猿が谷の真ん中で止まってしまったりした際、岸から引っ張ることのできる唯一の手段。遠隔操作用のロープ。

さらに、黄色いロープと赤いロープは、対岸で滑車を通して折り返されていて、すごく大きな輪になっている。

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野猿8

…僕はこう分析した。間違っていたならすいません。

 

 

野猿Q&A

 

Q:ここ以外にどこにあるの?

A:奈良県十津川村に2つあると聞いている。これで合計3つ。

 

Q:何のためのものなの?

A:昔は谷の反対側に行く手段がこれしかなかったりした。観光用ではなく、生活のための乗り物だったそうだ。

 

Q:腕力がない人でも乗れる?

A:大人だったら、よっぽど出歩くのすら懸念あるような虚弱体質の人でなければ大丈夫と判断。小さい子供だけだと心配。

 

Q:落ちたりしない?

A:360度に低い柵があるので、座っている限りは転げ落ちることはないだろう。ハメを外して大暴れしない限り。

 

 

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山道5

 

僕は再び、酷道ヨサクを走りだす。

次なる目的地を目指して。

 

途中で愛車を買った販売店に電話をした。

「バッテリーのボルトの締めをあえて緩くしておいたので、振動で接触不良になってしまったのかも」とか言われたので、ボンネットを開けて適当に締めておいた。

でも、あんまり強く締めると割れて使い物にならなくなるらしい。

 

ちなみに、この日はあと2回ほど車が動かなくなり、ボンネット開けて悪戦苦闘した。20分近くかかった。

さらに次の日も同様で、スリリングな旅路だったよ。

 

 

21世紀は、なんでも機械化されている。すごく便利で、すごく強力だ。

 

しかし僕らは知っている。

ひとたび東日本大震災のような大災害が発生すると、人の暮らしはその機能を失うことを。

 

さらに僕は知っている。

ひとたび車のエンジンがかからなくなっただけで、自分がどれだけうろたえるかを。

 

 

ハイテクがいいとか、アナログがいいとか、そういうのではなくって。

忘れないほうがいい文明・文化・技術もあるのではないかと、そう思った。

じんわりと腕に残る疲労が、心地よかった。

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。


 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 野猿(やえん)
  • 住所: 徳島県三好市東祖谷菅生620
  • 料金: 550円(奥祖谷二重かずら橋の施設内立ち入りのため)
  • 駐車場: あり
  • 時間: 8:00~17:00。ただし季節によってやや変動。営業日は4/1~11/30。

 

No:015【高知県】天空を指し示す驚異の道路!それは日本で13箇所しかない「跳開橋」だ!

その車道は、僕の眼前で天空を指さした。

 

大空に繋がった車道を見上げ、僕は問うた。

「この道は、我を何処に導かん。」

神はこう答えた。

「汝、此の道を辿り、蒼天を目指せ。その険しき道の果てに、光あり。その光の中で、我は汝を待つ。」

 

…いや、知らんけど。

とにかく、ちょっと現実離れした光景に呆然としてしまったのは事実。

だってさ、日常であんまし見ない光景だよね、この角度の道。

 

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手結港可動橋1

では今回は、なんで車道が聖剣エクスカリバーみたいに地球にブッ刺さっちまったのか、そこんところを説明しよう。

 

 

 

橋と謎の遮断器

 

9:56。僕は「手結(てい)港」に1台の水色のレトロカーで登場した。

「時は満ちた」とか、中二病っぽいことを言いそうだったけど、かろうじて飲み込んだ。

 

この時間を待っていたんだ。すぐそこにある「道の駅やす」で僕は待機していたんだ。そして10時になる直前を待ってここに現れた。

 

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手結港可動橋2

僕はそのまま、港に架かる橋を車でスイーッと通過した。

その橋の直前で撮影した写真が上記だ。

 

どこかおかしいとは感じないか?普通の橋には無いものが映り込んでいる。

 

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手結港可動橋3

これだ。踏切などにある遮断器だ。

唐突に夕方になったし遮断器がボロくなってしまって申し訳ないが、以前日本5周目を走っていた頃の写真も混ざってしまっているのでご容赦願いたい。

 

なぜ遮断器が?写真に見える範囲には線路なんて無いのに。

 

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手結港可動橋4

「可動橋注意」

この踏切が守るのは、線路でも電車でもない。

 

今通過した可動橋と呼ばれる橋に、車や歩行者が侵入しないよう守るのだ。

そうすることで、橋の下を船が安心して航行できる。

すなわちこれは、船用に設置された踏切である。

 

ちょっと構造が良くわからないかと思うので、一歩引いた写真を掲載しよう。

僕は橋の反対側で車を降り、小走りでまた踏切の近くへと戻ってきた。

 

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手結港可動橋5

これが全景だ。橋のたもとの、あっちとこっちに遮断器がある。

船は当然、その両方の遮断器の間、つまりは川を通過する。

 

ただし、橋桁をよく見てほしい。「桁下2.0m」と書いてある。心配性の人や身長2m以上の人、及びその友人知人は、「これでは橋の下を通過するときにぶつかってしまうのでは?」と不安になることと推測する。

 

心配無用である。

それを解消するためのギミックがこの橋にはあり、それをサポートするのがこの両遮断器なのだ。

 

 

歴史ある手結港 

 

9:58。まだ間に合うな…。腕時計をチラリと見たあと、僕はそう判断した。

足早に手結港を紹介しよう。

 

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手結港1

手結港は1650年に築港に着手し、1657年に竣工したという。

つまり、今から350年以上も昔の話。

 

ここは南側が半島だし、そして西に口を開けた湾状になっているしで、高波から船とかを守るにうってつけの港となる立地だったんだって。

 

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手結港2

湾を見渡すと石垣が残っているんだけど、これはその350年前とかのものもあるらしいよ。下の石ほど、古いらしい。

 

この石垣の厚さが、そのまま歴史の厚みよ。

四国の太平洋側といえば台風銀座だけども、その風雨や高波に350年間耐えてきたのよ、きっと。

 

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手結港3

あ、湾の中に突き出た半島的なところに、常夜灯もある。

もちろん今は使われててはいないだろうが、僕はなぜか常夜灯が好きだ。いつのものかは知らないが、これも撮影しておく。

 

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手結港4

 

跳ね橋が動き出す

 

10:00

カンカンカンカン…!

 

踏切が鳴り出した。警報灯が交互に赤く点滅する。

来たーー!!

 

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手結港可動橋6

さぁさぁさぁさぁ!!

僕はどっちで待機する!?此岸?彼岸?

 

実はこっちと向こうとでは、見えるギミックが違うのだ。しかし選択できるのは1回につき1つだけ。

よし、僕は南側を選ぶぞ。

 

遮断器が下がる。僕は橋にカメラを向けてスタンバイする。

 

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手結港可動橋7

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手結港可動橋8

 

ズオォォォォ…!!

 

そんな効果音を感じさせながら、僕の目の前で突然道路が持ち上がった。

手結港可動橋は、そのネーミング通りに可動する。橋の片方が大きく空へと持ち上がるタイプの跳ね橋なのだ。

 

普通動いちゃいけない道路。生活上、土台として一番しっかりしていなきゃいけない地面。それが持ち上がる不安感と非日常感が僕の中で入り交じり、アドレナリンとなって放出される!

なんかもう、おなかがフワッとしてしまう気分!

 

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手結港可動橋9

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手結港可動橋10

素早く横方向に回り込む。

うおぉ、かっこいいぜ!

「あのくらいならまだ僕は、自転車で坂を下れる!!…あ、もう無理!ブレーキ効かない!!ダメこれ!!」などと妄想する。

 

そうこうしているうちに、その橋は裏面を僕に晒す。

 

ゴオォォォォ…!!

って持ち上がる。

 

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手結港可動橋11

…ド迫力!!

 

手結港可動橋の長さは32m。いったいどれだけの重量があるのだろうか?

それが地球の引力に逆らい、ゆっくりと6分をかけて上を向く。

 

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手結港可動橋12

このタイミングで、僕は橋の向こう側に回り込むことにした。

 

もちろん橋は現在空を向いているので直接渡ることはできないが、そもそも手結港はそんなに小さな港ではない。

港沿いにグルッと回り込んで反対側に行けばいいのだ。そのルートは事前に確認してある。

 

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手結港可動橋13

手結港の外側は、昔ながらののどかな民家で囲まれている。

その路地を若干ハァハァしながら僕がやってきましたよ。

 

自宅の前の木の下にイスを出してノンビリと港を眺めているじいちゃんの前で、再び僕は橋に向かってシャッターを切る。

 

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手結港可動橋14

マジでかっこいいーー!!

この光景は大好きだ。

ほのぼのノンビリの港の風景と、その奥でのただならぬ事態。日常と非日常のコラボレーション!

 

ところで橋、これで上がりきったよね。

可動橋が動く理由は、その下を船が通るため。逆に言えば船が安全に通れる角度まで橋が持ち上がれば要件は満たすのだ。

 

この橋、そう考えると必要以上に持ち上がってくれている。

本来の趣旨を超越し、オーディエンスを盛り上げにかかってくれている。サービス精神が旺盛だ。
 

さて、この橋はいったいいつまで上を向いているのか。

それは、橋のたもとにちゃんと時刻表があるので紹介しよう。

 

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手結港可動橋15

下の方、ちょっと文字小さいけども読めるかな?

だいたい1時間おきに、橋は開いたり閉まったり。

 

ちなみに夜間は橋は開きっぱなしで、船は門限とか無しにフラッと出かけちゃたり、そうやって深夜に非行に走っちゃって家族に心配されたりとか、そんな仕様。

 

逆に言うと、橋を車が通行できるのは日中帯の7時間だけなのだ。

さらに言うと、毎回ここで「あー、また橋が開くまで時間かかるやー。またいつか高知に来た時に見ればいっか。」ってなって空振りしていた僕の不幸レベルは、それなりの評価をもらっていいレベルだ。

 

 

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手結港可動橋16

橋の反対側までやってきた。

 

…壁。

道路でできた壁。

 

それ以外の感想が即座には思い浮かばなかった。

 

ただ、普段は見下し、足とタイヤで踏みつけている道路に逆に見下されている光景。普段と逆の立場。それに恐れおののいた。

 

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手結港可動橋17

あるわー。僕ってば精神が割と子供だから、こういう悪夢を見そうだわー。

 

そんでさんざん道路をタイヤで踏みにじってきたから、きっと死んだらこういう地獄に落とされるわー。

 

道路様、いつもありがとう。

僕、いつか道祖神じゃなく道路神とか祀って供養するわ。

 

 

さぁ、聳える壁との記念撮影も済んだ。

愛車は向こう側だから、また港を回り込んで戻ろう。

 

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手結港可動橋18

残念ながら船が橋の下を通る光景は見れなかったが、日本で数少ない可動橋の動くさまを見れて大満足した。

橋マニアとして、感無量だ。

 

男の子はみんな変形ロボットとか好きだからさ、これも同類。

オトナになってもワクワクが止まらない。

 

 

可動橋とは?

 

ホント可動橋って、かっこいいよな。

そのうち他のタイプのものもこのブログ内で紹介する予定だが、この機会にちょっと整理をしておこう。

 

ja.wikipedia.org

 

可動橋は、基本として橋の下を船が通る際に、橋がジャマにならないように動かせるようになっているもの。

 

どんな風に動いて、船の通るルートを確保するのか。

いくつか種類がある。

 

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すごいよね。旋回するタイプのヤツとか、見てみたいなー。

 

では、日本国内には可動橋はいくつあるのか。

既に動かなくなっちゃっているものを除くと31箇所なんだとか。

これは前述のWikipedia情報なので、興味がある方は実際にWikipediaにアクセスしてほしい。

 

次に、この手結港可動橋と同じ跳開(ちょうかい)橋はいくつなのか。

 

  1.  アーバンゲートブリッジ
  2.  御前浜橋
  3.  櫻橋
  4.  新大扇橋
  5.  末広橋梁
  6.  タカギ工場の可動橋
  7.  長浜大橋
  8.  ハウステンボス橋梁群
  9.  はねっこ橋
  10.  東高洲橋
  11.  ブルーウイング門司
  12.  臨港橋

 

上記の12箇所だった。この手結港可動橋を入れて、全国に13箇所。

全国に橋が無数にある中の、たったの13箇所。

 

ましてや、毎日何回もパカパカと開いたり閉まったりする橋はそう多くはない。

可動橋はいつも動いているわけではなく、本当に非常時の際にだけ動くタイプもあるので。だからこの出会いは貴重なのだ。

 

維持管理費もかかり、交通規制も多く発生する可動橋。この先どんどん造られるとはとても思えない。減っていく一方なのかもしれない。

 

だからこそ、大事にしていきたいね。

 

歴史は壊すのではなく、積み上げていくもの。 

手結港の石垣のように。 

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 手結港可動橋
  • 住所: 高知県香南市夜須町手結 手結港入口
  • 料金: 無料
  • 駐車場: なし。しかし付近に空き地等あり。
  • 時間: 可動橋運転時間については、文中の写真内を参照。

 

 

No:014【新潟県】里山に佇む「世界一神社」!暗黒の隧道を抜けた冒険者のみ到達可能!!

「世界一神社」。

それがその神社の名前だ。

 

なんという強気な名前だろうか。

神道を極めし者ってさ、もっと世の中を平等に見てたり、謙虚に振舞うものだと思っていた。

 

なのに世界一神社。

ゴリゴリに他者を意識し、その上で自分が1番に立とうと必死である。

「数多に溢れかえる神社より、ウチのほうがいいですよ。だからウチにいらっしゃい。」という凄まじい商売人根性を感じる。

 

…それが、その神社の名前を知ったときの第一印象だった。

 

僕は世界一神社を目指す。

…果たして本当に世界一なのか。それはあなたがこの記事を読む、あるいは実際にその足で訪問して決めてほしい。

 

ただし少なくとも、僕にとっては世界一神社への訪問は、一生記憶に残る強烈な思い出となったのだ…。

 

 

吉野屋集落から里山

 

身が引き締まるような冷気に包まれた、ある秋晴れの朝。

僕は三条市にある吉野屋集落というところにやってきた。

 

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吉野屋集落1

周囲は田んぼと山のみ。そんなシチュエーションに囲まれた、小さな集落。

集落内は車1台がギリギリで通行できるレベルの細い道なので、ご立派な体格の愛車は集落入口付近で留守番しておいてもらおう。

 

ところで、こののどかな集落に、縁もゆかりもない外部の者が訪問することがどれだけあるだろうか?ましてやこんな朝に。

 

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吉野屋集落2

僕は間違いなく珍客である。 

しかし自分に言い聞かせる。僕は神社に参拝に来ただけなのだ。神に祈りを捧げに。この神聖なる精神を持ってすれば、いかなる聖域にも入れようぞ。

すなわち、我は無敵である。

 

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吉野屋集落3

集落を東へ東へと歩く。

とにかく集落の深部へ。道さえ間違えていなければ、集落の深部から里山へと入ることができる。

 

とはいえ、カーナビもないし、僕の携帯電話では地図も見れない。なのでカンだけが頼りだ。

集落の内部は狭い道が入り組んでいる。ヘタすりゃタヌキに化かされて、日没までここいらをグルグルしちゃうかも。

 

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吉野屋集落4

…おぉ、秋の味覚が鈴なりに。

歩いてこそ満喫できる、季節の移り変わりよ。

今年の雪は、深くなるのかな…。

 

とか爺さんの散歩みたいな気分でいたら、だんだんと道の装いが変わってきた。

いつの間にか周囲から家は消え、そして代わりに緑が多くなる。ちょっとずつ道は荒れつつ上り坂に。 

 

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吉野屋集落5

これはビンゴだ。間違いなく里山に突入しつつある。

 

つまりは、世界一神社に行くための正解ルートに乗ったのだ。緊張が高まる。武者震いがする。

だってさ、世界一神社に行くための関門が、この先に待ち受けているんだもん。ドキドキしちゃうわ。

 

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吉野屋集落6

ただただ1人、息を切らせて斜面を登る。

集落入口にて歩き始めてから、約25分が立とうとしていた。

 

そのとき、僕の前方に「ヤツ」が姿を現したのだ。

漆黒の闇を抱く、その関門が。

 

 

国内最長クラスの手掘り隧道、「旭隧道」

 

世界一神社を語る際に、切っても切り離せないのがこの隧道だ。 

 

…というより、ある意味こちらの方がスポットが当たってたりする。

ロンダルキア」よりも、ロンダルキアへの洞窟」のほうがヤベーように。あれは鬼畜の極みであり、「二度と行きたくないダンジョン」のアンケートでブッチギリ1位を取得しているからな。

 

さぁ、今回のダンジョンとのご対面だ。

 

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旭隧道1

ブレた。ビビりすぎて手ブレした。

墨で塗り潰したかのような一編の光もない開口部に対し、僕の本能が警鐘を鳴らしている。

 

これが、「旭隧道」。長さ762mの手掘りのトンネルだ。現役で使用されている手掘りの隧道としては、日本2番目の長さだと聞いている。

 

トンネルの上のほうに滝が流れているのがわかるだろうか?

これ、そのままジャバジャバとトンネル内に吸い込まれているからね。なんてこった。それじゃあトンネルというより、排水管じゃないか。中はどうなるよ。

 

そして、トンネル入口右側にコケに覆われた看板が見えるだろうか。

これには下記のように書いてある。

 

「落盤危険のため車両・歩行者の通行を禁止する」

 

デンジャラス!

しかし「どうぞお通りくださいな」といわんばかりに横に設置してある看板。

実は行政としては事故があると困るから、あんまりここに人を通したくないんだけど、この先には世界一神社の神主さんが住んでいるし、参拝者もわずかながらいるから、建前上は「禁止」とはしているけども、おとがめなしなのだそうだ。 

 

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旭隧道2

では、中に入ってみよう。

幅がすんごい狭い。2.5mほどと見た。これ、歩行者専用じゃない?ってレベル。ちなみにトンネルの中央付近はさらにずっと狭まると聞いている。

 

しかし、神主さんは軽自動車でここを通過できるのだそうだ。

ミラー畳んで、ときどき壁にこすりながらのギリギリらしい。

ここで、世界一神社の公式サイト掲載のアクセス方法を以下に転記しよう。

 

途中、旭隧道(手掘りトンネル、長さ約760m)をくぐり、山道約1.2km。

旭隧道は途中が狭いため軽自動車のみ走行可能です。
(途中で屋根がぶつかります)

 

また、山道は険しい坂道のため、四輪駆動車である必要があります。

結果、世界一神社まで辿り着けるのは四駆の軽自動車となりますが、吉野屋集落より徒歩でおいでいただくのが無難です。

 

※なお、林道経由の山道もありますが、2011年7月30日の大雨により一部崩落し通行止めです。

 (引用元:世界一神社Webサイト)

 

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旭隧道3

最初のカーブを抜けると、進行方向に小さな白い点が見える。

あれがおよそ750m先のゴールだ。あそこまで生きて到達できるかな?

 

中は照明など無し。暗黒空間だ。従い、懐中電灯は絶対に必要。僕も持参したハロゲンライトとヘッドライトにスイッチを入れた。

なんか壁面にブキミな緑の球体が無数にある。

 

ちなみにこれらの写真、全部フラッシュ撮影しているからね。実際は自分の手すら見えないほどの漆黒の闇よ。

 

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旭隧道4

…なんか、きったねぇモンが壁から生まれ出てきているぞ。どこのクリーチャーだこれ? 

 

そして壁面近くは水でグチャグチャ。僕は徒歩だからそれを避けて歩けるが、車であれば確実にタイヤがここに突っ込むほどの狭さである。

なにせここ、僕が両手を広げたよりもわずかに広いほどの幅だから。

 

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旭隧道5

明度とコントラストをメッチャ上げてみた。

床面を見てほしい。これ全部、水だよ。そして、壁面を鏡のように映し出している。そう、水没しているのさ。

 

僕は、これに当たり靴を一足犠牲にするカクゴでここに来ている。

 

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旭隧道6

僕のスネ毛を高解像度で見せてもアレなので控えめなサイズとしておくが、これでジャバジャバ歩くぞ。

本来であれば長靴などがあればよいのだが、そういうの持っていないし。わざわざ買うのもイヤだし。だから靴も靴下も2足用意した。

 

ところで水がすさまじく冷たい。風邪を引きそうなのだが。

 

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旭隧道7

手掘り区間、来たーー!!

ここはもう幅は2mを切っている!手を伸ばせば両方の壁に届く!

そして足首まで浸水!! 

頭だって、壁際をあるけば天井にぶつけそうだ!

 

 僕!!今!!てんやわんやです!!

 

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旭隧道8

ところでね、数分前から不思議に思っていることがあるのだ。

 

僕の歩いているこの隧道の進行方向の遥か彼方から、「アハハ…」・「キャハ…」みたいな、楽しそうな笑い声が聞こえてきている。

 

「おや、僕以外にも誰かこの隧道を歩いているのかな?これは隧道マニアの女子との奇跡の出会いかな?」って一瞬期待をする。

しかしおかしい。

懐中電灯の光が見えないのだ。この真っ暗闇を懐中電灯なしで歩くのはありえない。

 

だとするなら、あの笑っているのは本当に実在の「人」なのか、それとも…。

 

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旭隧道9

歩くにつれ、「アハハ…」の声は近づいてくる。

しかしこちらからハロゲンライトで照らしても、声の主は見えない。

 

そしていろいろ声が間近に迫ったところで気づいたんだけど、やっぱ声の主は人間ではなかった。

隧道内を滴り落ちる水滴が、複雑に反響して笑い声のように聞こえてきただけだった。なんだ、ビックリしたー…。

 

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旭隧道10

隧道もやや終盤。

足首までの浸水はもうないが、壁面近くは川だ。普通にせせらぎだ。

 

グッチャグッチャと隧道内を歩き続けて15分…。

ようやくダンジョンを抜ける…!

 

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旭隧道11

日の差し込む山間部。鳥のさえずり。

さぁ、世界一神社まで山道をあと1.2㎞。 

 

 

山道をゆく

 

760mの暗黒隧道を抜け、僕はその開口部を振り返る。

ふぅ…、ひと仕事終えたぜ。まだまだ神社は先だけどな。そして、帰りもまたこの隧道を通らないといけないけどな。

 

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山道1

ここから先は、世界一神社の公式Webサイトで「四駆じゃないと無理」と書かれていた山道となる。

 

舗装はされていないし狭いし、結構な上り坂。

それにボコボコで水たまりだらけだ。

 

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山道2

グチャグチャでほとんど逃げ場がない。

もういいや、どうせ靴も靴下も濡れているから、このまま中央突破だ。

 

こんな汚れたカッコで参拝に行くだなんて、神への冒涜だよな。

 

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山道3

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山道4

ここで世界一神社の公式Webサイトからの注意文をさらにご紹介する。

 

一本道ですので迷子にはなりませんが、携帯電話が通じませんのでご注意ください。

熊、鹿といった大型動物はいません。

キツネ、タヌキ、リス、ウサギ、ハクビシン、ムササビ、キジを時々見ることが出来ます。

(引用元:世界一神社Webサイト)

 

動物園か。

もうほとんどハイキング気分。しかし、山道と並行して電線が走っていることが、この先の文明を証明してくれている。

 

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山道5

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山道6


ヘビだー!2mくらいのヤツーー!

久々に見たぞ。なんかテンション上がる。

 

隧道の出口から17・8分歩いたところで、急に視界が開けた。

そして、建物だ!!

…神社か…?いや、家か…??

 

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山道7

隧道を抜けた先に住んでいるのは、世界一神社の神主さん一家のみ。

つまり、もう神社は近いと見た。この家の発見は、僕に大きな勇気を与えてくれた。

 

もうひと踏ん張り、山を登ろう!

 

 

世界一神社を参拝

 

茂みの中に、石造りの鳥居が見えた。目指す世界一神社、ついに到達だ。

吉野屋集落の入口に車を停めてからここまで1時間。準備に手間取ったり、隧道の真ん中で三脚を立てて記念撮影したりと時間を食ったが、それでもなかなかの距離と時間であったな。

 

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世界一神社1

鳥居の真ん中には、「世界一」の文字が誇らしげに掲げられている。

いいね。ここまでの道のりを思うと、この文字は一層に感慨深い。

 

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世界一神社2

一歩一歩、木々に囲まれた石段踏みしめながら、僕は登る。

 

世界一神社。

公式Webサイトには、『世界で唯一の存在であるあなたをお守りする神社』 と書かれている。

 

第2次世界大戦後、日本は焼け野原になって、みんなのテンションは下がっていた。

そのとき、この神社が立ち上がった。

 

「日本人は世界一すっげぇと思うのよ。だから今は大変だけど、元気出そうぜ。」

「それに、みんな世界一だって。自分が世界一だと思って頑張ろうぜ。」

…これが名前の由来だと聞いている。

 

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世界一神社3

石段の先に見えてきた拝殿は、簡素である。

 

しかし、前述の通り「世界一」なのは我々だ。神社が世界一なのではない。

従って、ここは「アンコール・ワット」や「サグラダ・ファミリア」 のように寺院の建造物そのものがパワフルである必要はないのだ。

大事なのは、気持ちね。はい。

 

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世界一神社4

アルミサッシの入口をガラガラッと開ける。

そして参拝をする。…健康祈願かな?寒かったし、濡れたし。風邪を引かないように。

 

ここまでとしよう。ここが僕のゴールだ。

足元はズブ濡れなので、拝殿の中に上がり込むのは控える。

 

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世界一神社5



人生の中には、暗く長いトンネルもあろう。

そして、そのトンネルを抜けた先に必ずしも光明が待っているとも限らないだろう。

 

しかし、あなたは世界で1人。人生は1度きり。

そんな1日1日を、わずかでもいいからトキメキを感じながら、精一杯生きようじゃないか。

 

 

…そんなあなたに朗報だ。

当ブログ、【週末大冒険】がおよそ1か月間の準備期間を経て、2020年6月28日の本日、正式リリースとなる。

 

日々のルーチンにスパイスを加えるような存在になれればと思っている。

そしてあわよくば、あなた自身をこちら側の人間に引き込もうと、僕は企んでいる。

 

あなたにこのメッセージを届けたい。

 

 

ちょっと出かけてみないか。

忘れていた、ワクワクを探しに。

 

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 世界一神社
  • 住所: 新潟県三条市吉野屋乙2214
  • 料金: 無料
  • 駐車場: なし。公式Webサイトでは、「吉野屋フォーラム」に駐車した上で徒歩40分が正式なアクセスだと記載あり。
  • 時間: 特になし

 


 

No:013【秋田県】超㊙情報!!日本で唯一!?岩盤の穴を貫通する滝を裏から見られるぞ!

ほとんど知名度がないにも関わらず、1度見たら一生忘れないようなビジュアルの滝が、秋田県男鹿半島の深部にある。

 

その滝は、「男鹿大滝」と呼ばれることが多い。

なので、このブログでもその呼び名で統一しようと思う。

 

なぜこの滝がすごいのか。

  1. 滝を裏から見ることができる
  2. 滝が岩盤に空いた穴を通過しながら流れ落ちる

 この2つの特異な要素を同時に満たすからだ。どちらか1つだけでも非常にレアなのに。

 

これは例えると、将棋のタイトルを獲得しつつも、余暇にエベレストに登頂するくらいにすごいことだ。

(藤井七段、ダブルタイトル戦がんばれ。ついでにエベレスト、登っちまえ。)

 

それでは、この奇跡の滝を、今宵あなたに紹介しよう。

 

 

男鹿半島の奥地へ

 

ホントに、無知ほど恐ろしいものはこの世にない。

 

僕は既にドライブの旅も日本6周目に入っている。男鹿半島も何度も走っている。

 

にもかかわらず、近年までこの滝の存在を知らなかったのだ。恥ずかしい限りだ。ドライブも人生もベテランの域に入ってきているつもりだったのに、こんな素晴らしいスポットを知らなかったとは。

今回、しっかり夏になるのを待ってからの、満を持しての訪問だ。

 

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男鹿半島1

男鹿大滝は、上の写真のように「大爆(おおたき)」と呼ばれることもある。

ちなみに男鹿半島には「門前大滝」というのもあって、それは「大滝(おおたき)」と略されたりする。

なにがなんだかわからない。悪意すら感じるネーミングだ。

 

とりあえず、行く際には間違えないように注意だ。

地元の人に「おおたきって、どこですか?」とか聞くのは相当なリスクが伴うぞ。

 

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男鹿半島2

ウハハ、道が結構狭い。

しかし今回は軽自動車をレンタルしてきちゃったので狭くても大丈夫。自家用車は諸事情あり、レンタカー屋に預けて来ちゃった。

 

しかし軽自動車であっても、もし対向車が来たら絶対にすれ違うことは不可能。

まぁそのときはそのときで考えるわ。

 

…そのくらい、心がおおらかになる天気。

青空と緑。気持ちがいいことこの上ない。

 

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男鹿半島3

360度草原のようなこの地に、僕以外の人間は一切いない。

あまりの気持ちよさに、こうしてところどころで車を停めて写真撮影をしてしまう。夏は日が長い。ゆっくりゆっくり、楽しもうじゃないか。

 

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男鹿半島4

…って思っていたら、なにこのジメッとした展開は。

 

ポカポカニコニコのピクニックからいきなりの、「ブレアウィッチ・プロジェクト」みたいな暗転。なにこの叩き落された感。

「怖いな~、怖いな~、なんか嫌だな~」とつぶやきながらハンドルを握る手にも力が入る。

 

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男鹿半島5

道の行き止まりまで来た。

そこがどうやら男鹿大滝の駐車場となっているようだ。

 

意外なことに、僕の他にもう1台車がいた!

「これで仄暗い森の中を1人で徘徊しなくて済むぞ」ってちょっとホッとした矢先、僕が駐車場でガサゴソ準備をしている間にその車の人、戻ってきてしまった。

 

はい、1人。1人で男鹿大滝攻略に行きますよっと。

ここで必要なのは、サンダルとタオルと…、

 

ひとカケラの勇気だ  (←左胸をこぶしで叩きながら)。

 

理由は後述。ではGo!!

 

 

滝までの沢歩き

 

駐車場から滝までは徒歩で15分ほど。

それは別にいいんだけど、特徴的なのは、滝までの間に川を9回ジャブジャブ横断する必要があるということだ。

ちょっと専門的な言葉を使うのであれば「渡渉」ね。

 

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渡渉1

こんな感じだ。どこぞのアマゾンの奥深く、みたいな雰囲気だ。

道がどこにあるのか、あいまいだ。

 

しかし正解は、倒れている丸太の進行方向に沿って川に入り、対岸のベッチャリとした泥の大地に上陸するルートなのだ。

 

ここで僕は靴と靴下を脱ぐ。そしてそれらをスーパーのビニール袋に入れる。入れ違いでそのビニール袋から出てきたサンダルに足を通す。

そしてレッツ・入水。

 

あー、気持ちいい。夏だから渓流が冷たくて 清涼感この上なし。

ジャバジャバ歩いて楽しみ、対岸に上がったらタオルで足を拭き、靴下と靴を履く。

 

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渡渉2

…1分後、また川渡り。

これは画面左のゴツゴツした河原に上陸後、左奥に向けて「サラダ菜の王国」みたいな部分を踏みつぶしながら行くのが正解だ。

 

また靴と靴下を脱ぐ。

そんで対岸に渡ったら足をタオルで拭く。

 

…面倒だ…。

しかし、僕って人一倍皮膚が弱くってさ。濡れた足のままサンダル履いて歩くと、その摩擦で足の皮がベロンと剥がれる系の人種。

キチンと足を拭かずにハダシのままスニーカーを履いても、たぶん靴擦れする。だから1回1回足を丁寧に拭いて、そして靴下も履くの。

 

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渡渉3

ウェーイ。また川だ。

9回もこういう渡渉をしなければならないのだ。冒頭で書いた通り、滝まで徒歩15分。ってことは、「15分÷9回」で、平均1分40秒ごとに川を渡らないといけない。

 

その度に脱いだり履いたり、やってられっか。

だんだん気持ちが荒ぶってきたぞ、僕。

 

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渡渉4

あー、もう道がどこだかわからない。なにがなんだかわからない。

しかし、ここは滝の下流の渓流だ。

道なんてわからなくっても、この水流を遡って行けば確実に滝なのだ。

 

だから、こんな山奥のジャングルみたいなところに1人っきりだけど、森の中で奇妙な鳥が鳴いているけど、うろたえるほどの不安は感じない。

 

 

ちなみに、後半はもういちいち靴をチェンジするの辞めた。

もういいや、足の皮くらい剥がれたって。

 

そしてサンダルで砂利道をザクザクと歩いていると、 土踏まずが異様に痛い。サンダルと足の間に小石でも入ったのか?

足を浮かせ気味に歩き、挟まった小石がどっかにフェードアウトしてくれることを期待したが、小石は頑なに土踏まずの同じ位置を刺激してくる。非常に痛い。

 

「なんなんだよ!」と思って足を見てみると、サンダルの底から石が貫通して、土踏まずに接触していた。

 

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渡渉5

マジか。これは痛いハズだ。

ひとまず石を引き抜いておいた。

このサンダル、これでサヨナラだな。確か数100円の安物だからいっか。この冒険が終わったら、安らかに眠れ。

 

てゆーか、ちゃんと足首やカカトまでホールドしてくれるお気に入りのサンダルがあったのに、なんでこんなツッカケみたいなサンダル持ってきちゃったんだろう…?

 

そんなこんなで歩くこと10数分、前方に見えてきたぞ、男鹿大滝が。

 

 

奇跡の滝との邂逅

 

男鹿大滝と、ついに対面。

こぶりだが他の滝にはない、強烈なアイデンティティを秘めているその滝。それが静かに僕の前に姿を現した。

 

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男鹿大滝1

大滝という名前ではあるが、正直そこまで大きい印象はない。

見えている部分だけで、落差10mほどだろうか?

見えている部分については、とりたてすごい特徴があるわけでもない。

 

そう、この滝の最大の特徴は、ここから見えない部分であり、そしてここから見えない理由である。

 

もしもあなたが、上の写真の位置まで到達し、この写真を撮ったところで引き返してしまうのだとしたら、それは物事の本質を見れていないことになる。

例えるのであれば、鍋を食って、残った汁を捨ててしまったようなものだ。

 

違うだろ。残った汁で雑炊を作ってこその、鍋の神髄だろう。ダシの旨味と具材からのエキスの織り成すハーモニーは、まさにこの世の森羅万象だろうが。

そういうこと、言いたい。

あと、鍋の季節じゃないのに鍋を語って誠にすみませんでした。

 

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男鹿大滝2

いいか!?最初に僕は9回の渡渉があると書いた。

ここまでは、まだ8回だ!

 

もうここまで来たら、8回も9回も一緒でしょ?

最後の1回を踏み出した者だけが見れる光景が、これだ!!

 

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男鹿大滝3

 

 

  穴。
 

 

 

滝が天井のような岩盤にポッカリと空いた穴を通過して流れ落ちている。

これだ、これを見たかったのだよ。

 

いったいこの滝はどこから生まれているのか。どこから流れ落ちていて、本当の落差は何mなのか。それはここからは伺い知ることはできない。

 

しかし、僕の目の届かない天上界を突き破って落ちてくる、この水流。否、水龍。魂が震える光景じゃないか。

 

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男鹿大滝4

穴越しに見える、向こうの世界は輝いている。

あっちは極楽か、って感じに。

 

さぁ、ちょっと頑張った人でもここいらで引き返しかねないが、僕はもう少し滝に接近しようと思う。

タイトルで書いたが、この滝は裏から見ることができるのだ。

そんな情報を入手したからには、何が何でも裏から見てやろうと思うのだ。

 

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男鹿大滝5

わかりやすくするため、写真の明るさを調整してみた。

矢印の通り、これから滝の横の急斜面をよじ登って、滝の裏に入る。

 

斜面はなかなかに暴力的な角度。しかも飛沫でビショビショに濡れているし、強度がもろくてボロボロ崩れるし、そしてこっちは安物のサンダル。

両手足を使ってなんとかよじ登る。

 

次は、滝の背面に向かっての水平移動。

頭上からの飛沫がすんごい。しかも、ちょっとでも足を滑らせたら、滝つぼにドボンですよ。気を付けながら、カニ歩きだ。

 

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男鹿大滝6

 

うわー!!降ってくるーー!!

 

すっごい迫力。僕の耳にはもう「ドドドドドドドドド!!!」っていう音しか聞こえていない。地球の鼓動だ。

見とれてしまうが、あまりに見とれすぎると足元がおろそかになるので注意だ。

 

あともうちょっとだけ、滝の裏側に入り込もう…。

 

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男鹿大滝7

天国からのシャワーかよ、これは。

 

この水を、この黄金色の光の中の浴びたらさ、あらゆる煩悩が浄化されるのではないだろうかね?神々しい。そのひとことだ。

 

完全にピッタリ滝の裏での写真ではないが、この時間帯はこの位置が一番滝が映えると判断した。

僕はビシャビシャにに濡れた眼鏡の奥で、ニッコリと笑った。

 

 

その類い稀なる造形

 

日本は国土面積に対し、山岳地帯が多い。

ということは、その複雑な地形に伴い川も多く、そして滝も多い。

 

日本には、いったいいくつの滝があるのだろう?

Wikipediaによると、諸説あるが2500~15000ほどという。

すげーブレ幅だ。

まぁ、それだけ未知の部分の多い、掘り起こし甲斐のある業界ということで。

 

そんな数多くの滝の中で、冒頭に記載した通りに以下の2つを併せ持つことが、この滝の特徴だ。

  1. 滝を裏から見ることができる
  2. 滝が岩盤に空いた穴を通過しながら流れ落ちる

それぞれのレア度を少しだけ調べてみることにした。

 

裏見の滝

 

裏から見ることのできる滝を、裏見の滝という。

裏見の滝は、国内にいくつあるのだろうか?

 

ja.wikipedia.org

 

まとめサイトとかなんやかんやを見てみると、8選・10選・14選など出てきたが、一番網羅性が高いのが、Wikipediaな気がする。

 

Wikipediaに記載の国内の裏見の滝は20箇所。しかし近年崩れて裏側が喪失してしまったり、裏に回り込む遊歩道が危険で通行止めになっていたりで、現時点で到達可能なのが17箇所

 

だけども、この17箇所の中の男鹿大滝が含まれていない。

これを加えて18箇所。数1000はあろう国内の滝で、裏見の滝とはこれだけレアなのだ。

 

ただし僕は考える。

なぜWikipediaに男鹿大滝が掲載されていないのか。

理由は2つあると推測した。

1つは、男鹿大滝があまりに知名度が低いため。これは大きな要因の1つであろう。

 

2つ目は、「裏見の滝」の概念について。

「滝を裏から見ることができる」とは、論理的には瀑布の裏に人1人が立てるスペースがあればよい。

 

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男鹿大滝は、観光面から言えば向かって右側の「無理矢理…」側にあたるのではないかと思う。

そもそも滝に行くための遊歩道すら脆弱だし、滝の裏に行くためのルートはもはや「道」ではない。

 

もしかしたら「滝の裏に若干の空間はありますよ。そして自己責任で滝を裏から見たいのであれば、その難易度はそこまでは高くないですよ。」という状態なのかもしれない。

 

結論を言うと、裏見の滝の概念は「瀑布の裏に人が立てる」ではなく、「瀑布の裏に人が立てるような配慮を行政がしている」だと思う。

 

 

しかし、滝の造形面から言えば、左の「一般的な…」になると思うのだ。

左右の大きな違いは、瀑布の裏側が大きくえぐれているかどうか。男鹿大滝は、このえぐれを確かに持っている。

 

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男鹿大滝8

立体感のない写真で申し訳ないが、赤く囲った部分は柔らかい地層だ。

もう写真で見た時点でわかる。赤くてボロボロの地層。右下部分は草に覆われてわかりづらいが、僕自身が両手両足で這い上がる際に身をもって確認した。ボロボロだった。

反して青く囲った部分は固い地層だ。もう写真で見ても黒光りしている。

 

ここで、一般的な浦見の滝のライフサイクルについて説明したい。

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柔らかい地層の上に固い地層がある場合、その滝の成り立ちは上記のような感じだ。滝の、そのほとばしるエナジーで下半分がえぐり取られ、「③」の段階で裏見の滝となる。

 

こういう地層は少なくはないと思う。にもかかわらず裏見の滝が18箇所しか存在しないのは、安全面(観光客を受け入れるかどうか)によるところが大きいのではないかと思うのだ。

 

 

貫通滝

 

岩盤の穴を通過して流れ落ちる滝について、Web検索しても明確な名称が見つからない。なのでここでは「貫通滝」と呼ばせてもらう。

 

貫通滝は全国にいくつ存在するのか…。

決まった呼び名がないので検索に手間取り、正確性にも自信がないが、片っ端から検索して6つだけ見つけた。

 

  1. 二段滝(兵庫県豊岡市
  2. フイゴ滝(徳島県上勝町
  3. 岩屋の滝(高知県香美市
  4. くぐり滝(山形県南陽市
  5. 桶滝(石川県輪島市
  6. 嫁穴の滝(三重県南伊勢町

 

…男鹿大滝を入れても、たったの7箇所!?

前述の裏見の滝よりも定義がはっきりしているにもかかわらず、この程度しか存在しないのか…。

ちなみに、裏見の滝かつ貫通滝は、男鹿大滝以外には見つからなかった。日本で唯一の、双方の特性を持つ滝なのかもしれない。

 

ところで、貫通滝はどうやって作られるのだろうか?

Webで調べても見つからなかったので、勝手に想像する。

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あー、これはダメだー。

貫通するということは、滝の水流がダイレクトに柔らかい地層に当たるのかなって考えて上記をイメージしてみたが、ただの2段滝になっちゃった。

 

穴を開けるということは、圧力のかかり方が一点集中じゃないとダメだよね?

 

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「食欲の失せる日の丸弁当でグランプリを取得」みたいな絵を描いてしまって恐縮なのだが、これは岩盤と水流を上から見た図なので堪忍してほしい。

結論からいうと、岩盤に穴を開けるのは斜面を流れる水ではなく、上から落ちてくる水だと判断した。(甌穴のような例外もあるだろうが、それは置いといて)

 

滝が岩盤を直撃し、長い年月でそこに穴を開ける…。

でも、穴が開く前は?

中空に浮かぶ岩盤に滝が直撃する。その岩盤を水流が流れ落ちる…。

つまりは、2段滝??

 

ここで、僕は少し前に書いた内容を思い出した。

全国の貫通滝を洗い出した際に、「1. 二段滝(兵庫県豊岡市)」と書いた。

ちょっと気になって詳細を調べてみた。

 

するとこの滝、近年(少なくとも二段滝とネーミングされた際)は、名前の通り2段の滝だったのだ。それが、岩盤を貫通することで最近に貫通滝となった。

これだ!

 

ここから、男鹿大滝の成り立ちも想像できるんじゃないだろうか?

 

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…こう考えたらどうだろうか?

他にも可能性があるのだろうが、こうやって自分で推理するのは面白い。

 

最後にもう一度、これを踏まえて男鹿大滝の全景を見てほしい。

 

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男鹿大滝9

 

同じ穴とはいえ、僕の安物のサンダルとは比べるべくもない。

きっと気の遠くなるほどの歳月をかけて、奇跡的に実現した、日本で唯一の裏見貫通滝

 

それは人知れず、男鹿半島の深部で歴史を刻む。

僕らが今見ているのは、その過去から未来までの果てしないストーリーの、ほんの1コマなのだろう。

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 男鹿大滝
  • 住所: 秋田県男鹿市北浦西水口大滝沢
  • 料金: 無料
  • 駐車場: あり。しかし滝まで徒歩15分。渡渉箇所が多いため、季節・直前の雨量・装備に充分注意のこと。
  • 時間: 特になし。しかし暗い時間は自殺行為。

 

 

No:012【福井県】1300年前のインド人が他人の民家にソテツを植えた ⇒ 天然記念物に!!

若狭湾に突き出た、常神半島。

正直、お世辞にもアクセスがいいとは言えない。ましてや、観光客が気軽に立ち寄って観光したりグルメを楽しんだり…には少々ハードルが高い。

今回は、そんな常神半島の突端からのリポートである。 

 

そもそもなぜ僕がそんな半島の突端にいるのか。理由は2つある。

  1.  端っこを目指すのが生きがいだから
  2.  そこに大きなソテツの木があるから

常神半島のアイデンティティに敬意を払うのであれば、上記の「2」を心持ち大きめの声で宣言することとなろう。

 

ここに寄ることによる時間のロスは大きいが、わざわざ足を運んだからこその体験ができるのもまた事実。

ここには、自生するソテツとしては日本海側最北に位置するソテツの木があるのだ。

北陸地方とソテツ。ちょっとミスマッチな気がするが、それがまた良い。

 

では、過去2回僕が「常神のソテツ」を訪問した写真を散りばめてご紹介しよう。

 

 

 

民家の隙間からこんにちは(第2回目の訪問編)

 

常神半島最突端、正に道の突き当りとなる常神集落が見えてきた。

国道からここまでは海岸沿いの狭いグニャグニャした道を30分弱。なかなかに長い道のりだったぜ。

 

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常神集落1

集落の端には「常神岬」を示す石碑も立っている。

正確には岬の先端はまだもう少し先なのだが、いかんせんまともな道は無いと聞いている。なので実質ここが半島の先端だ。

 

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常神集落2

常神集落は、小さな漁港の集落。

僕は日本3周目で訪問した際の記憶をたどりつつ、前回と同じと思われる場所に愛車のパジェロ・イオを駐車した。

 

目指す常神のソテツには駐車場がない。

従い、ちょっと手前で駐車してから歩いていくのだ。

 

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常神集落3

…とある店舗の前までやってきた。

右手に映っている看板、「あたらしや」の文字が潮風で劣化して、もはや「うらめしや」みたいなテイストになっている。

 

さて、ここからソテツまでどうやって行くかというと…。

すでにその道筋は写真の中にある。しかも中央にドーンと。

 

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常神集落4

ちょっと突撃に気が引けそうな道だ。

しかし、ちゃんと「通路↓入口」と書いてある以上は、ここも天下の往来よ。胸を張って歩こうじゃないか。

 

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常神集落5

通路は建物を貫通して、裏手に出る。

裏手はすぐに険しい山になっていた。常神半島って、割と海岸ギリギリまで険しい山なのだ。日本有数のリアス式海岸だからね。

 

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常神集落6

そして、連なる建物の背中を眺めながら、山肌とのわずかな隙間をひたすら半島先端方面に向かって歩く。

 

道は狭いぞ。たぶん軽自動車1台が通れるかどうかの道幅だが、そもそも軽自動車がここまで入ってくる手段がないような気もするし、仮に入ってきたところで資材だとかいろいろ障害物も豊富。

完全に徒歩のみのための生活道路だろうかね。

 

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常神集落7

さぁさぁ、入り組んできたぞー!

もう道幅は1mあればいいほう、って感じだが、臆するなかれ。

 

伝説のソテツを求めし者、この試練を見事乗り越えて見せよ!

 

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常神集落8

…もはや道なのかどうかもわからない。

「隙間」って呼んでいいですか?

 

あと、念のため言っておくが、筆者はネコではないぞ。ネコ目線で記事を書いているわけではないぞ。ちゃんと、れっきとしたホモサピエンスだニャ。

 

しかし、上の写真の通り進行方向を聖なる光が包み込んでいる。

あぁ、あそこに伝説のソテツが。

とうとう僕はソテツに再び出会うことができるのだ…!

 

-*-*-*-*-

 

…ところで、前回来た時もこんな道だったっけ?前回を踏襲したつもりだったが、若干の違和感が…。

「通路↓入口」を見て、「あぁここで間違いない」と思ったのだが、「通路↓入口」は他にももう一箇所存在したのではなかろうか。

 

では、そこいらへんを明らかにするため、時を遡って日本3周目のYAMAさんにもリポートしてもらおう。

 

 

民家の隙間からこんにちは(第1回目の訪問編)

 

ここからは、日本3周目を走る過去のYAMAさんが執筆するぞ。

 

常神半島の車道を行けるところまで走り続けた僕。

最後の集落の行き止まり、そこには公園があった。狭いけれどもなんとか駐車ができそうなスペースがある。

僕はそこに愛車のbBを停めた。

 

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常神集落9

この公園は、常神潮風公園というらしい。ついでなので少し散歩をした。

誰もいないのね。まだ朝の7時台だからかな?

 

できて間もないと感じられる、きれいに整備された公園だった。遊具もちょろっとある。しかしそれ以外には特筆すべきものはない。

ただ、若狭湾の海の色は、この雲が多めの天気にも関わらず、とってもきれいだった。

 

さて、目指す常神のソテツは、ここから徒歩4分程度のようだ。

 

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常神集落10

 

「←徒歩2分」の看板があるので、左に顔を向けた。

ん?左に道なんてないぞ。海に面してビッチリと建物が並んでいるだけだ。隙間すらない。

 

いや、隙間…。すまない、よく見たら一箇所だけあったわ。

 

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常神集落11

「通路↓入口」という看板が頭上になければ、とても踏み込む勇気の持てない時空の狭間。ここに入れと申すか。

 

うん、行くけど。僕はこういう狭くて入り組んだ隙間が好きなのだ。

入口の看板をくぐり、奥へと歩みを進める。

 

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常神集落12

建物の裏側は、山が近くまでせり出していたものの、ギリギリまで敷地を有効活用し、ギッチリと民家が建てられている。

その民家をとりまく道路は、徒歩で移動できる必要最低限の幅だ。

 

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常神集落13

ときおり現れる、ソテツを示す小さな看板に従い、民家の路地裏をすり抜けていく。 

こんな先に観光名所があるだなんて、にわかには信じられんな…。

 

ところで、このスリリングな様子を言葉だけではなかなか表しにくい。

Googleマップ衛星写真を下に貼り付けるので、見てほしい。

 

 

ギッチギチでしょ。車、入れないでしょ。

建蔽率とか、えげつないことになっているでしょ。

 

山が海岸付近まで迫っている険しいリアス式海岸の地で、わずかな平地に潮風を避けつつ集落を作ったら、こういう結果になったのだろうか?

 

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常神集落14

もはや道ではない。

隣家との境目にある石垣の上だ。写真の左手も、誰かの家屋だ。

こんな場所を歩くのは、ネコくらいか?

ん?もしかして我輩はネコであるのか?

 

そう自問自答を進めていると、ついにソテツの木が現れた…。

 

 

はい、というわけで、日本3周目のYAMAさんのリポートはここまで。

改めて見返してみると、どうやら今回と前回とで、違う道でアプローチしたようだった。しかし、どちらも狭いことには変わりないようだ。

あなたはお好きなほうでどうぞ。

 

 

巨大ソテツ、現る!

 

さぁ、これが常神のソテツだ。とくとご覧あれ。

 

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ソテツ1

すごいよね。

幹は大きく8本に分岐し、高いものは6m、そして 全幹の周囲は5.2mにも及ぶそうだ。

庭に収まりきらないくらいにパッツパツ。

首都圏の建売一戸建てだったら、庭全てがソテツで埋まるよな。BBQも洗濯物も家庭菜園も、思い描いていたガーデンライフ全部、この化け物ソテツが飲み込んじゃう。

 

ソテツっていうか、ヤマタノオロチって感じだよね。ちょうど8本に分岐しているし。ちょっとしたゲームの中ボスクラスだわ、これ。

 

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ソテツ2

さらにはこのソテツ、1924年大正4年)に国の天然記念物に指定されている。

 

指定された以上、オーナーさんも気まぐれに伐採とかできない感じか?僕の持っているツーリングマップルにも掲載されているくらいだし。

だから、2階の窓や縁側に激突しそうなくらい成長しても、ここはガマンだ。

 

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ソテツ3

 

しかし、このソテツはいったいどこからやってきたのだろうか…。

ここで、ようやくタイトル記載の伏線を回収することになるのだが、1300年前にこの地に漂流してきたインド人が種を植えたらしいですぜ。

 

初めてこれを読んだときには「ブホッ」ってなった。そんなバカな。

そんないくつもさ、破壊力の高いワードを並べてくれるなと。脳みその情報処理が追い付かないからさ。…って思った。

 

 

インド人伝説について考える

 

「1300年前のインド人」以上の情報は伝承に残っていないし、これ以上の考察をしているサイトも見つからなかった。

なので僕が勝手に考察する。

 

インドから日本に来れるのか

 

僕はソテツに関しては素人だから見ただけで品種まではわからないが、常神のソテツは、"蘇鉄"と表記されることもある。

ちなみに"蘇鉄"は「学名:Cycas revoluta」であり、「ソテツ類」の特定の1品種をさすようだ。

 

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ソテツ4

では、「学名:Cycas revoluta」はどこに生えるのか。

日本の九州南端、南西諸島、台湾、中国大陸南部に分布する。

(引用元:Wikipedia

 

中国大陸ってどこだ?

アジア大陸(ユーラシア大陸東部)のうち、現代国家としての中国の領域に含まれると考えられる陸地を指す。

(引用元:Wikipedia) 

 

…まさかの、インド要素ナッシング。

情報はガセなのか…。

 

いや、まだ可能性はある。

インド人が、中国でソテツの種を入手し、それを日本に持ってくれば辻褄が合う。

 

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MAP1

今から1300年前。つまり、ザックリ奈良時代だ。

インドから日本に来ることが可能なのだろうか。

 

可能だ。

 

特に有名なのは、インド人の菩提僊那(ぼだいせんな)さん。

唐に滞在中に日本人遣唐使からの熱烈アピールをもらい、日本に渡ってきている。

そんで、奈良の「東大寺」に大仏ができたときの、開眼供養にも立ち会っているのだ。

 

さらに言えば、奈良時代聖武天皇のコレクションを集めた「正倉院」だって、ペルシャの食器とかモリモリある。

奈良時代の日本は、確かにインドを始めとした「西域」とつながっていた。

 

普通のルートであれば、唐を船で出発したら、まずは福岡の太宰府を目指すのだろうが、1300年前に漂流したインド人はどこからどこに向かっていたのか…。

 

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MAP2
太宰府を目指していた途中、対馬海流若狭湾まで運ばれた」とかかな?
京の都に直で行くために、京都北海岸を目指していた可能性も考えたが、この時代の海路は京に行くなら瀬戸内海経由じゃないかな?
 
対馬海流がどれだけのポテンシャルを秘めているのか、ちょっと調べてみた。
実際、上の地図で示した海岸にはハングル語で書かれた漂着物が多い。うち半分近くが福井県の海岸に漂着しているそうだ。
 
常神集落は若狭湾に突き出ており、かつ西向きに対馬海流を受け止めるようなポジショニングだ。
実際、唐から日本に向かう船が漂着し、そこにインド人も同乗していた可能性はあるのではないだろうか…。
 
 
なぜソテツを持っていたのか
 

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ソテツ5

そう、コイツだ。ソテツだ。

なんでインド人、ソテツの種なんて所持していたのだろうか?

 

これについては、漢方を少し調べてみた。

サイトによってやや表記揺れがあるのでどれが一番妥当なのかわかりかねるが、主に中国ではソテツの実は切り傷の治療に効能があるとされていた。

 

であれば、中国経由で日本にやって来たインド人が、ソテツの種を持っていても不思議ではない。

長くて困難の多い船旅。きっと不慮のケガも多いはず。そんなときには、レッツ・ソテツ、ビバ・ソテツだと中国人に教わったはず。

 

なぜソテツを植えたのか

 

そもそも人はなぜ、植物を植えるのか…。

  • 食料とするため
  • 酸素供給や空気の浄化のため
  • 心の安らぎのため
  • 記念のため

例のインド人については?

ソテツの特性や成長スピードを考えると、「記念」ではないだろうか。記念植樹。

 

正直、銅像でも記念碑でもよかったのかもしれないが、生命を持つ植物だからこそ、未来への意思を込めやすい面もあったろう。

1000年先まで残るメッセージとしては、その選択は正しかった。この地にはない、ソテツを植えたのもまた良かった。

 

それから先、そのインド人はどうなったのか。

もしこの常神の地で暮らしたのであれば、それも伝承として残るはず。それがないということは、無事に旅立って行ったのかもしれないね。

 

後に残ったソテツだけが、伝説となった。

 

-*-*-*-*-

 

僕の壮大な妄想は、ここまで。

 

 

あくまで伝説。あくまで妄想。

しかし、1人のインド人と1粒のソテツの種が、もしかしたら時代を超えて壮大なロマンを生み出しているのかもしれない。

 

このソテツは、誰も知らない1300年前の冒険を知っている、唯一の生き証人なのかもしれない。

 

そう考えると、ワクワクするだろ?

 

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 常神のソテツ
  • 住所: 福井県三方上中郡若狭町常神1-58
  • 料金: 20円(清掃協力金)
  • 駐車場: なし。集落内の駐車場を利用。
  • 時間: 8:30~17:00 

 

 

No:011【群馬県】台風被害で閉鎖された湖畔に恐竜!大桁緑地公園はロストワールドだ!

妙義山の近くの山間部に、大桁湖という小さなダム湖がある。その湖畔では、恐竜が闊歩しているという。 

 

そんな情報を掴み、のほほんと恐竜でも見上げられればいいなって、そんな軽い思いで現地に向かった。

しかし実態は想像よりもちょっとばかりビターだった。人生と同じように。

 

果たして時期が悪かったのか、運が悪かったのか。

僕らが見たそれは、まさしくロストワールド(失われた世界)になりつつあったのだった。

 

 

大桁山の山間部にて

 

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妙義山1

冬枯れの群馬を、1台の車がひた走る。

その前方に姿を現したのは、僕が勝手にランキングした "荒々しさレベル" で日本トップクラスを誇る妙義山だ。ノコギリのようなギザギザな稜線が特徴だ。

 

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妙義山2

 

令和の時代にあんなワイルドな山が存在していいのだろうか。 

ああいう山が登場していいのは、映画「ジュラシックパーク」とかそんな世界観だけではなかろうか。

つくづくそう思う。

 

ちなみに恐竜好きな僕、「ジュラシックパーク」シリーズを好きな順に並べると、その栄えある最後尾にドッシリと鎮座してくれるのが「ロストワールド」だ。

なんなんだよ、あれ。特に終盤の展開。もうね…。

あ、話が反れてきてすみません。

 

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大桁山1

車は大桁山の狭いワインディングの道を上る。対向車が来たら擦れ違い困難なほどの道幅だ。

 

そんな道を僕が緊張しながらハンドル握っているのかといえば、そうではない。

 

今回は旅友FUGA君とのドライブ。車もFUGA君に出してもらった。

なので僕自身はフカフカの助手席シートに身を沈め、ときどき思い出したようにFUGA君を応援するという、簡単なお仕事。

 

もっとも、対向車は往復合わせてもたった1台しか見かけなかったが。

しかしね、その唯一の1台がすごかった。

 

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大桁山2

 

 

オート3輪。

 

 

 

ダイハツ・ミゼットだ。1972年には販売中止されたから、ザッと50年近くは経過している車だ。博物館や資料館に展示されるレベルの車。

日本6周をしている僕でも、生涯で走っているオート3輪はこれまで1回しか目撃したことがない。これが記念すべき2回目であった。

 

ところで、令和の時代に、昭和中期の車…。

僕はちょっと閃いたことがある。

 

これさ、僕の推測が正しいのであれば、この地域だけ時空が歪んでいるんだよ。 

恐竜のいるジュラ期、オート3輪の走る昭和中期…。

ね?山奥に向かうほどに時間を遡っている。僕らは今、時間旅行をしているのではないだろうか。

 

 …ま、恐竜の時代からしたら、「昭和と令和の違い」なんて誤差にもならないけど。

例えると、戦闘力2万だ3万だってレベルでキャッキャしていたところに、フリーザ様が出てきて「私の戦闘力は53万です」 と言われたときの、そのくらいの次元の違い。

 

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大桁山3

うわー…!

なんか行く手がゲートで遮られた!!

カーナビによれば、もう少しで目的地に到着だったのに!!

 

何かプレートが下がっているので読んでみよう。

 

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大桁山4

通 行 注 意

この先、台風災害により、路面に穴があいています。

関係者以外の車両の通行はお断りします。

 

じゃあ、「通行注意」じゃなくって「通行禁止」だろって思ったりもしたけど、理解した。とりあえず、もうダメだ。僕らの旅路はここまでだ。

 

…ところで、ここに記載の「台風災害」とは、2019年に関東近隣に壊滅的な被害をもたらした台風19号だ。

訪問時から2ヶ月半前の2019年10月に日本を襲い、86名の死者を出した台風。

 

「令和元年東日本台風」と名付けられたんだけど、台風名がつけられたのは42年ぶりなのだそうだ。それだけ甚大な被害があり、歴史に残さねばならない事象だったからなのだな。

台風としては歴史上初の激甚災害であり、大規模災害復興法の非常災害適用は史上2例目。東日本大震災を上回る過去最大の災害救助法適用自治体数であった。

 

※このあたりの知識はWIkipediaさんに教えてもらった。

 

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大桁山5

ゲートの200mほど手前に駐車場があったので、Uターンしてそこに車を停めた。

横には「湖城の館」という施設があったが、営業しておらず、中には入れない。付近の案内看板とかも周辺にはない。ここでは何も情報は掴めそうになかった。

 

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大桁山6

眼下には、おそらく台風の被害で崩壊しかけた公園のような広場。

詳細は敢えて書かないが、立ち入りはやめておいた方がいい状態。

 

ここがどこで、恐竜はどこなのか。スマホを取り出してみたもの、山奥すぎるからなのか、時空ジャンプしてしまったからなのか、圏外でWeb検索もできない。

 

でも、あそこをああ行って、こう行って…。

そんな感じでうまく深部に行けば、もしかしたらあの辺に恐竜いるんじゃないだろうか。なんとなく頭の中で仮説を立てた。

 

では、実際に歩いて行くのみよ!

 

 

恐竜に出会う

 

崩れかけた公園は、もしかしたら今まではピクニック広場的な場所だったのだろうか?

「危ないです」的なことを書かれた橋で渓流を渡り、広場を横切って奥へと進む。

 

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緑地公園1

 …グッチャグチャだな。

そしてすぐ脇は怖いくらいにギリギリまで溜まったダム湖。大桁湖だ。

 

大雨で水嵩が増えたら、大惨事になりそうだ。

そのせいもあり、台風19号で被災してしまったのだろうか?

 

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緑地公園2

前方には大桁ダムの堤防が見えてきた。

あそこまでが大桁湖と呼ばれるエリア。14haの小さな小さなダム湖なのだ。

 

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緑地公園3

堤防の向こうに聳えるのは妙義山。かっこいい!

 

この先、少し歩いたところで遊歩道左手にある丘に登れる階段を発見。

そこを登るとついに…!

 

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大桁緑地公園4

恐竜だ!!

これはティラノサウルスだ!

 

ここでようやく僕は、ここが大桁緑地公園で間違いがなかったことに気づいた。よかったよかった。ぶっちゃけ事前の調査不足だった。

 

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大桁緑地公園5

ディメトロドンもいるぞ!

 

いずれも遊具であり、中に入って口から外を覗けたりだとか、そういう構造になっている。…本来は。だけどもこの恐竜たち、劣化が進んでいるようで今は「使用禁止」の立て札あり。

 

…アレですね。

もうこの周辺もこの恐竜たちも、全部ひっくるめていろんな意味でロストワールドですな。

 

なにもかもが、失われすぎている。

 

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大桁緑地公園6

少し気付くのが遅れたが、奥のほうにはディプロドクスもいる。

写真の角度的にわかりづらくて申し訳ないが、しっぽが滑り台になっているのだ。使用中止でなければ、子供たちにとっては楽しい遊具だったのだろう。

 

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大桁緑地公園7

ディプロドクスは草を食む。なかなかにリアルな造形だ。 

 今は冬だから周辺の木々には葉がないが、葉が生い茂る時期であればいい感じにマッチしているのではなかろうか。

 

ちなみに、ティラノサウルス白亜紀

ディメトロドンはペルム紀。そしてディプロドクスはジュラ紀の恐竜だ。

同じ恐竜ではあるが、ティラノサウルスに対しディメトロドンは2億年分くらい先輩。恐竜の世界が年功序列であれば、ティラノサウルスディメトロドン先輩に頭が上がらない。

 

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大桁緑地公園8

小高い丘の上に東屋がある。

「恐竜の見えるが丘公園」みたいな立地。いい季節であれば、ここでお弁当食べたら気持ちよさそうではないか。

 

そして、うまく配置を調整すれば、ティラノサウルスに餌付けをしているような写真も撮れるかもよ。

もっとも、あなた自身が恐竜の餌になることも可能だ。

 

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大桁緑地公園9

そして僕らは湖城の家へと引き返す。

最後に、何かの参考になるよう、訪問当時の大桁緑地公園のMAPを以下に記載しておこう。

 

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大桁緑地公園10

 

 

そして復活へ…。

 

執筆中に取り掛かるまでの僕は、正直懸念をしていた。

2019年秋の台風19号での被災、そして2020年のシーズン前から現在も続く新型コロナウイルスの影響に伴う「新しい生活様式」…。

 

このレジャースポットが被った影響はあまりに大きい。

 

ただでさえ、アイデンティティの1つである恐竜の遊具で遊べないのだ。

さらに、大桁緑地公園は北側からしかアプローチできない、ドン詰まりのスポットなのだ。

一旦山間部に入ってしまえば、途中に立ち寄りスポットも店舗もない。「ついで」ではない、訪問のための強い魅力が必要だ。

 

これを機に、撤去・あるいは公園廃止の可能性もあるのではないだろうか。2011年の東日本大震災の折には、そうなってしまったスポットをいくつも見てきた。

そうなると、僕らはまともに恐竜と邂逅した、ほぼ最後の人物となってしまう。

 

 

政府が「都道府県をまたぐ移動を解禁」と発表したこ2020年6月18日のタイミングで、僕は怖々と大桁緑地公園に電話をしてみた。

建前上は、今週末に大桁緑地公園にドライブに行く人物とか、そんな感じで。

 

 

電話、つながった。

今週末、営業していることを確認できた。 

 

 

 

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大桁緑地公園11

 

復活した大桁緑地公園。

「使用禁止」と表示された恐竜たちは、きっと今もあの湖を見下ろす丘の上で、あなたの来訪を待っている。

 

しかし、明日もそうなのか、明後日もそうなのかといえば、それは誰にもわからない。

台風19号コロナウイルスの影響を、誰も正確に予知できないのと同じように。

ほんの少しの要素の違いが、その後の運命の大きな分岐になるのかもしれないのだから。

 

これも「カオス理論」、ですよね?マルコム博士。

 

 

願わくば、また恐竜たちの周囲や背中から、キャッキャとはしゃぐ子供たちの声が聞こえる日がやってきますように…。

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。 

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 大桁緑地公園
  • 住所: 群馬県富岡市妙義町菅原2836-1
  • 料金: 無料
  • 駐車場: あり。「湖城の館」の脇に停めてよいと思われる。
  • 時間: 特になし

 

 

 

No:010【広島県】日本最短120mの航路、音戸渡船!3分のクルージングを存分に楽しもう!

日本一短い航路が、広島県呉市にある。

 

本土と瀬戸内海の倉橋島との間の、「音戸の瀬戸」と言われる最短90mの区間をを結ぶ航路。

 

いざ出航!ってなってもわずかその3分後には航海が終わるという、日本一手軽なクルージングだ。

こっち側でカップ麺にお湯を入れ、そして食べれるのは対岸到着時。そういう設計。

 

とりあえず僕は、船に乗ると問答無用で興奮する人間だから、乗ってみるわ。インスタント・クルーズしてみるわ。

 

 

 

日招き広場から見下ろす

 

瀬戸内海に浮かぶ、倉橋島にやってきた。

ここは「日招き広場」という名前の、音戸の瀬戸を見下ろす展望スポットだ。まずは僕の偉大なる船出を、ここから俯瞰してやろう。

 

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音戸の瀬戸1

赤い橋が、第一音戸大橋。ちなみに今僕が立っているのが、それに並行して架かる第二音戸大橋のたもとだ。

 

僕のいる右側の陸地が倉橋島。左側が本州本土。その間の川みたいなのが、れっきとした瀬戸内海である音戸の瀬戸だ。この両者間の距離が最短区間で90m。

 

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音戸の瀬戸2

上の写真を拡大してみた。ほっそい桟橋の先に、ボロっちい小船がいる。

あの観光要素ゼロな釣り船みたいなのが、まさか…。

 

うん、そのまさか…なのだろうな、きっと。あれが「音戸の渡し」とか「音戸渡船」と呼ばれる、日本一短い航路なのだ。

 

音戸の瀬戸の最短区間は90mだけど、航路はそこをやや斜めに進むから、実際は120mの船旅らしいよ。

 

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音戸の瀬戸3

しばらく眺めていると、小船は対岸である本州側に移動した。なるほど、あんな感じで行ったり来たりね。

 

では、船着き場に移動してみますか…。

 

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音戸の瀬戸4

第一音戸大橋のグルグルしたループの下がパーキングだった。

昔ながらの、料金所のおじさんにお金を払うタイプの駐車場。

 

料金所に入って、中でストーブに当たっているおじさんに挨拶をする。

なんと駐車料金は1時間で120円だった。

 

安いー!破格の待遇!!

まさかこれ、音戸の瀬戸の120mとかけて…  、ませんね、すみません。

 

ついでにおじさんに、「今日は渡し船…、やってますよね?」って聞いてみた。

さっきのボロ船、可能性は低いけど渡し船ではなくって個人所有の船でさ、オーナーが趣味で行ったり来たりしているだけって可能性もあるもんね。その船に僕が勝手に乗り込んだら、変な目で見られますもんね。

 

おじさん:「やっているよ。ぜひ乗っていきな。」

あ、よかった。やっぱあのボロ船が渡し船だった。

 

おじさん:「そんで次は彼女を連れて来なさいな。」

ホイ、余計。

 

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音戸の瀬戸5

第一音戸大橋を見上げながら、船着き場に歩く。 

 

 

桟橋で船を呼ぶ

 

はい、歩いてすぐに船着き場にやってきましたよ。

ザ・昭和な感じの船着き場だよ。なんか今日の曇天も相まって、セピア色の昭和時代にタイムスリップしてしまったかのようだ。

 

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音戸渡船1

自販機さえなければ、昭和どころか大正時代にもなりかねないぜ、ここ。

あ、そして「渡場」っていうの、ここ?初めて聞く言葉だ。

 

建物の横には、レトロなポストもある。

そしてその傍らに、音戸渡船紹介の立て札が。

 

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音戸渡船2

音戸渡船は、江戸中期より、「音戸ノ瀬戸」の両岸を結んできた、幅約百二十メートルの日本一短い定期航路です。

「音戸ノ瀬戸」は多くの大型船が行き交い、潮も速い瀬戸内海随一の難所ですが、渡しの船長さんは巧みに舵を操ります。

ポンポンと懐かしい音を響かせ瀬戸を行き来する姿は音戸の貴重な風物詩のひとつ。橋が架かった今でも地元の人たちの大切な足として愛されています。

 

運行時間

午前5時30分~午後9時(随時出発します)

 

渡船の乗り方

時刻表はありません。桟橋に出て渡船に乗ってください。一人でも運航します。渡船が向こう側にいるときは桟橋に出ていれば、すぐに迎えに来てくれます。

 

 …とのことだ。

 

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音戸渡船3

セミオープンな船着き場の小屋の中に入ってみた。

雨は凌いても、風は凌がねーぜ、っていうスタンスの設計なのだな。師走の風が身に染みるわ。

そして受付はあるものの、無人である。

 

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音戸渡船4

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音戸渡船5

『料金は船でいただきます』だそうだ。

明記はされてないけど、裏を返すと『料金払えないヤツはその場で海に沈めます』ってことかな?

 

怖い怖い、って思いながら料金を見ると…。

 

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音戸渡船6

 

大人70円・子供40円・自転車90円・バイク110円。

安ッ!!駄菓子レベルだ。ニッコリ安心して払えるぜ。

 

そしてバイクも載せちゃうのか。すごいな。

バイクさ、うまく持って行かないと桟橋から瀬戸内海に転がり落ちるぜ、きっと。

 

今、渡し船は桟橋にはいない。向こう側にいる。

さぁ、この僕の存在に気付いてもらわねばなるまいぞ。

 

まずは桟橋に出る。ボロっちい桟橋が海の上でゆらゆらと揺れる。怖ぇぇーー。

 

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音戸渡船7

 

こんな感じでスタンバイした。これ、なかなかに恥ずかしいぞ。

 

年の瀬の迫った真冬の海。細い桟橋の先端に、何のとりえもなさそうな小男が1人で佇んでいる。

あー、これヤバいヤツ。人生に絶望した人だと思われかねない。早く気づいて、船頭さん。

 

…って思っていたら、ものの数10秒で僕の存在に気づいてくれた様子。

すげーな、120m向こうの船着き場から目ざとく見つけてくれたとは。

 

船にエンジンをかけると、第二音戸大橋をくぐりつつ、みるみるこちらに近づいてくる。

 

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音戸渡船8

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音戸渡船9

僕は存在を認めてもらえた感動で、打ち震えた。

さぁ、見てごらんなさいな。僕の存在が、今一艘の船を動かしているんだぜ。

恐縮の至り!!

 

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音戸渡船10

 

いざ、船出!日本一短い船旅へ!

 

来たー!渡し船が桟橋に横付けされた。

激渋だな、この船。曇天がよく似合うレトロっぷりよ。

 

船から出てきた船頭さんは、桟橋にロープを括り付けて係留する。

そしてロープを力いっぱい引っ張りながら踏んばったままの姿勢で、「では、抑えているから飛び乗って!」と言ってくる。

 

マジか。そういうスーパーマリオ的なアクションゲーム要素を求められるか。

僕は意を決してピヨ~ンと船に飛び乗った。

船頭さんに70円を支払い、さぁ出航だ!!

 

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音戸渡船11

「ボン・ヴォヤージュ!!」って心の中で叫びながらの船出。

 

僕の中でのイメージは、映画「タイタニック」の出航シーンみたいに見送りの人が桟橋にあふれ、そして僕はデッキで帽子を振りながら故郷に別れを告げる、みたいなテンション。うん、あくまでテンションだけは。

 

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音戸渡船12

吹きっさらしのデッキからこんにちは。

まずは、向かって後方の様子をリポートしよう。

木製のベンチが3つほどあり、10名くらいは座れる仕様。それ以外の目立った設備は…、バケツくらいかな。上の写真に映っているヤツ。

 

一緒に映っている緑のベンチが、唯一背もたれ付きのものである。

つまりはこの船のファーストクラスの座席とみた。恐れ多くて近づけねー。

 

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音戸渡船13

そして同じ位置から前方をリポート。

小屋の中に操縦席があるっぽい。船頭さんがたくみに舵をきっている。

 

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音戸渡船14

走行している間に、対岸の本州側に到着してしまった。マジに3分。

あっという間でまだ船頭さんともロクに打ち解けていない間柄なのに、もうサヨナラよ。

 

ところで、対岸に来たところでこっちには当然ながら愛車もないし、何もやるべきことがない。

とはいえ、船頭さんに「またすぐ戻るんで船を出してください」とか言ったら渋い顔をされないかな。

とりあえず、こっち側の船着き場付近を徘徊してみるか?

 

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音戸渡船15

本土側の船着き場のほうがちょっと綺麗で立派だ。しかも船着き場の前に3台分くらいの駐車場まであるぞ。ずるい。島と本土の格差だ。

 

そして、船着き場の名称が「音戸渡船」。向こう側は「音戸渡場」だったが、その違いは何だろうか。

 

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音戸渡船16

でも、料金表はメチャメチャ古そうだ。

色覚異常のテストをする絵みたいで、文字がすんごい見づらい。

 

船着き場付近をウロウロしていると、地元の方と思われるおばあちゃんがやってきた。そして当たり前のように渡し船に乗り込むと、対岸へと去っていった。

 

あー、船、いなくなっちゃったー。

僕は船が対岸へとたどり着くまで、ボンヤリと見ていた。

 

じゃあ、僕も向こう側に帰ろうかね。

桟橋へと移動する。

また船は対岸から僕に気づいてくれ、こっちに向かってきた。

 

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音戸渡船17

ちなみにね、上の写真には、この記事の冒頭で僕がこの渡し船を見下ろした展望台が右上に小さく映っているのだよ。

ちょっとズームしてみようか。

 

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音戸渡船18

あれだ。第二音戸大橋のたもとに設置された、歩道橋型の展望台。

通称第三音戸大橋っていうんだぜ。第一・第二と比べるとすごいミニサイズだ。

 

船に乗り込むと、船頭さんは「ちょっと待っててね、今炭を用意するから」と言って、おもむろに七輪をデッキにセット。

そして事前に用意していたであろう炭を七輪に入れてくれた。

 

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音戸渡船19

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音戸渡船20

なるほど、ちょっとボロい七輪だな。

悪役レスラーに貸し出したら、これで対戦相手の頭をぶん殴って壊されてしまった、そんな諸事情がありそうなボロボロの七輪だ。

 

走る船のデッキに置かれた七輪がどれだけ暖を発揮してくれるのか不明だが、七輪スタイルの音戸渡船、再び出航ー!! 

 

そんでまたすぐに到着ー!

倉橋島へと帰ってきた。

 

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音戸渡船21

船頭さんに別れを告げて、愛車を停めた駐車場へと歩き出す。

 

途中で、1本前の渡し船に乗り込んでいったおばあちゃんとすれ違った。手には、さっきまで持っていなかったトイレットペーパーのパッケージを持っていた。

そっか、渡し船で対岸の商店までトイレットペーパーを買いに来ていたのだね。

 

音戸渡船がまさに生活の足として、今も活躍しているさまをこの目で見れた。

 

 

朝の5:30から夜の21:00まで。

その船は、寒風の吹く真冬であっても、真っ暗な時間帯であっても、この瀬戸内海随一の難所を今日も越える。

 

そうだよね。江戸中期から市民の足として活躍してきたこの船に、観光要素などあろうはずもない。飾りっけのないこのボロい船体も、長年地域の方々を支えてきた勲章なのだ。

 

僕は、そんな長い長い歴史の中、そのほんのわずかな時間である6分だけ、お邪魔したにすぎないのだ。

 

歴史に参加させてくれてありがとう。

駐車場の料金所のおじさんにお礼を言い、ついでに「次はいつか2人で来るわ」と宣言して、愛車HUMMER_H3にエンジンをかけた。

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。 

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 音戸渡船
  • 住所: 広島県呉市警固屋~音戸町引地
  • 料金: 70円(乗船当時)
  • 駐車場: 警固屋側にはあり、引地側にはないため近隣コインパーキングを。
  • 時間: 5:30~21:00

 

 

No:009【宮崎県】ヘンテコな石像が700体!高鍋大師はおじいちゃんの40年間の夢の結晶!

高鍋町には、素人のおじいちゃんが手彫りでコツコツ40年以上かけて彫った石像が700体以上あるらしいぞ。

そして造形が相当にユニークらしいぞ。

 

なんだか気になる、すんごく気になる。

1人のおじいちゃんが半生かけて作ったワンダーランド。

拝見といこうじゃないか。

 

…というわけで、執筆している2020年6月は全世界に蔓延するコロナウイルスの影響でドライブなんぞできない状態なので、昨シーズンの冒険譚。

 

 

 

アプローチはすさまじい狭路

 

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アプローチ1

6:20、朝日が木立を越えようとしている。

ここは宮崎県、日向灘に面した高鍋町のとある場所。

僕は朝一で高鍋大師にアプローチすべく、ここで車中泊をしていた。朝日と共に起きるだなんて、なんてステキな旅の朝よ。

 

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アプローチ2

朝日を浴びながら、コーヒーの準備。

これから行く高鍋大師への経路を調べながらコーヒー飲む。相当にわかりづらく、そして狭い道の果てにあるらしいぜ。

朝からエキサイティングな体験できそうだ。

 

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アプローチ3

たぶんこっち。早速狭い。

僕の愛車はパオという軽自動車サイズの普通車だからいいものの、以前乗っていたHUMMER_H3とかだったら早速半泣きだったかも。

 

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アプローチ4

これが、僕のできるせいいっぱいのお節介だ。

国道10号を反れたあとは、赤線のルートが良いと思う。東側からの道も走ってみたが、こっちは迷いやすいと感じた。

 

あと、ラストの直線はメッチャ狭いからワクワクしとけよって感じで。

それ以上のことは、最後に掲載するGoogleマップを頼りに頑張ってほしい。

 

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アプローチ5

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アプローチ6

最後の直線。これが意外と長い。

対向車が来る可能性をあまり考えたくない道。

 

もっとも、高鍋大師は突き当りにあるので、対向車が来る可能性は「高鍋大師から帰る人」しかいないのだが、それでも鉢合わせになってしまったら、片方は延々バックすることになるかもしれない。

 

突き当りまで無事に行けたとしたら、おめでとう。

そこが高鍋大師という名の奇妙な楽園だ。 

 

 

石像王国・高鍋大師 

 

まず目に入るのは、こんもりと茂った緑の丘。

これは実は古墳。ここいらは持田古墳群に属しており、付近を走るといたるところに古墳がある。

それらの中でも、これはビッグクラスだった。

 

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古墳

古墳を回り込むように歩いていくと、天を刺すような無数のトーテムポールが見えて来た。

 

…いや、失礼。間違えた。あれはトーテムポールではないぞ…。

わかりづらいけども、小さな手が生えている。

あれこそが、高鍋大師の石像群だ…!

 

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高鍋大師1

なんか、倒れないように後ろから棒で支えてあるぜ。生活の知恵。

 

大きいものは6m以上だという、無数の石像群。

大きいものを中心に、何体か写真掲載しようと思う。

 

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高鍋大師2

「ようこそ!ここは、まかふしぎで、ゆる~いせかいだよ!」

 

…そんなテイストだな。小学生が描いた絵本の世界に迷い込んでしまったような、そんな奇妙な感覚だ。

まさに、「ぼくのかんがえた、さいきょうのロボット」みたいな世界観だ。 

 

ちなみに上の写真は風神・雷神だ。

 

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高鍋大師3

腕のチープ感がたまらない。

小さいし直線的だし、雷神の左腕がネコのようだニャー。

 

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高鍋大師4

おぉ、このおかたはバッキバキにお怒りのご様子。

子供を抱いており、右手には「火よけみまもり」と書いてあったであろう剣を握って…、いや待てよ、握っているのか?これ?

 

このおかたの名前は、不動明王--!!

 

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高鍋大師5

このニヤニヤ笑っているのは、天照大神だー!

日本神話の重鎮出たー!ネイティブアメリカンみたいな風貌でご登場ー!

 

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高鍋大師6

続いてはー、スサノオノミコトーー!

強そうだ!顔の周囲が旭日旗みたいになっている!

しかーし、豪快な顔面に反して、腕はずいぶん控えめだぞ。ヘンテコなことになっているぞ。腕組みしているのか、これ。

 

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高鍋大師7

正一いいない大神だー!

正一位稲荷大神って書きたかったのかな? アゴヒゲ豊かなおじさんだ。

トーテムポールレベルが高い。左に見切れているのが本堂なんだけど、それと比べるとすごく大きい。

 

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高鍋大師8

どう?高鍋大師のこと、だんだんわかってきた感じ?

ちなみに僕は、書いている張本人なのにもかかわらず、何が何だかわからなくなってきた感じ。

 

この人は十二めんやくしだ。腕だけ2Dだよね。テトリスでL字のヤツと棒ばっか落ちてきて、パニックになっちゃったときみたいな造形だよね。

 

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高鍋大師9

あと、顔に草木が絡まると、途端秘境感が増すことに気づいた。

インディ・ジョーンズとかで出てきそうなタイプだ。

 

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高鍋大師10

そして大本命!!十一めんくわんのんだーー!!

 

これね、ここ高鍋町の観光マスコットキャラクターになっているからね。

名前は「たか鍋大師くん」。ゆるキャラだよ。みんな検索してみてね。

ちょっとたか鍋大師くんの説明文だけ、引用しておくね。

 

高鍋大師」には、800体近くの石像があるため、たか鍋大使くんには800体の兄弟がいる。
沢山の手があるのは、たくさんの人と手をつなぎたいから。
沢山の顔があるのは、たくさんの人の笑顔が見たいから、気配りができるから。
性格は石でできているので、意思(石)が固い。

引用元:高鍋町観光協会

 

ホント、十一めんくわんのん素敵。ほれぼれする。

腕のカクカクっぷりから製作時の苦慮が窺えるが、大丈夫。僕なら100点つけちゃう。

 

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高鍋大師11

 

そして若き日のエディ・マーフィーのような素敵スマイル。

世の中の大抵の憂いは、この笑顔で解決できるんじゃないかな?

 

頭上に無造作に積み上げた顔・顔・顔!

アホ毛みたいにチョコンと草が生えているのもたまらない。

 

なんだここ、最高か。

狙ってできるものではないぞ。

作者は天才かつ天然である。そう確信した。

 

作者はいったいどんな人なのか。

 

 

おじいちゃんの想い 

 

冒頭にも書いたが、この世界を作り上げたのは1人の男である。40年以上かけて、これら700体以上の石像を掘ったのだ。

 

その人物の名は、岩岡保吉(1889~1977年)。

この高鍋大師を知るためには、この岩岡保吉さんを知ることが必須。

僕も現地の説明板等や、数々のWebから知識を得た。ちょっとだけそれを紹介させていただきたい。

 

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高鍋大師12

前述の通り、この土地の周辺は持田古墳群と呼ばれている。

 

岩岡保吉さんが40代の頃。

当時頻発していた持田古墳群での盗難事件に心を痛め、古墳に埋葬されている霊の魂を鎮めるため、そして人々の幸せを祈るため、石像を彫ることを決めた。

 

そして、伝説が始まる。

 

岩岡保吉さんは、古墳の近くのこの土地を購入すると、1人でせっせと石像を彫り始めたのだ。

 

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高鍋大師13

最初のうちは、88体にしようと考えていたらしい。

なぜなら岩岡保吉さんが若い頃にチャレンジした四国八十八箇所巡りをここに再現したかったからだ。

 

しかし岩岡保吉さん、一度火が付いたら止まらないタイプの男だった。

 

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高鍋大師14

彫る彫る彫る彫る…。

溢れ出る創作意欲を止められる者は誰もいない。

87歳で亡くなる直前まで、その創作活動は続いたという。

 

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高鍋大師15

おじいちゃんがかつて願った鎮魂と平和。今のこの地に実現されているだろうか?

 

いつの時代もいろいろ大変だけどさ、ここを訪れた人がこれらのゆる~い石像を眺め、そしてふっと表情が緩むのであれば、それはおじいちゃんが求めた平和につながるのだろうか?

おじいちゃんはそれを見て、雲の上から「してやったり」みたいな感じで、ニヤリと笑ってくれるのだろうか?

 

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高鍋大師15

 

高鍋町の、太陽が輝く丘の上。

今日も明日も、そしてきっと明後日も、トーテムポールのような不思議な石像群が町を見下ろす。

 

「今日も町が平和でありますように」と願いを込めて。

 

 

最後に僕も、この丘から町を見下ろした。おじいちゃんの祈りと少しでもシンクロできるように。

徐々に日が高くなり、熱気を帯びてくる朝の風が心地よかった。

 

さーて、今日も暑くなりそうだな。

ドライブ、楽しんで行くとしますか!笑顔で見送ってくれよ、石像たち!

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。 

 

 

住所・スポット情報

  • 名称: 高鍋大師
  • 住所: 宮崎県児湯郡高鍋町大字持田
  • 料金: 無料
  • 駐車場: あり
  • 時間: 特になし

 

No:008【青森県】ブサカワ犬「わさお」永眠!過去に一度だけ会った日を振り返ろう…!

あのブサカワ犬として有名な「わさお」が死んだ。

2020年6月9日、YahooのTOPニュースで報じられ、それを知った。昨日(6/8)の夕方、眠るように息を引き取ったとのことだ。

 

今年4月に老衰で足腰が立たなくなったと聞いて以来、カクゴはしていた。

しかし、とうとうこの日が来てしまったか…。

 

今回は、僕とわさおの最初で最後の出会いをご紹介したいと思う。

 

そもそも僕は有名人に会いたいと思ったことなんぞほぼないし、なんだったら芸能人の顔と名前すら一致しない。それは有名な動物・ペットであってもほぼ同様だ。

しかし、今まで全然興味のなかったわさおに、ふと会いたくなったことがあった。

 

 

 

粉雪舞う日に

 

あれは確か2年半前、2018年の正月明けのことだった。

肌を突き刺すような寒さの、東北地方日本海側。津軽を中心にドライブをしていた僕が、わさおの住む鰺ヶ沢の町に足を踏み入れた。

 

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鰺ヶ沢1

うん、すっごい寒い朝

なんかさっき天気予報を見たら、青森の積雪は昨年度は2cmだったところ、今年は39cmだとか言っている。ドカ雪か。

 

しかしここはまだ中で、除雪されているので走りやすいわ。

津軽半島北端付近のツルッツルぶりはヤバかった。スタッドレスタイヤなのに結構滑るし。北東北の冬、ヤバすぎる。

 

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鰺ヶ沢2

北風が「ヒャオォォォーー!!」と吹き荒れ、粉雪がアスファルトの上を舞い踊るんだよ。オーロラみたいにクネクネと地面の上を踊るんだよ。

うわっ。寒っ。

こっちは凍えるような寒さに踊るどころか委縮の極み。

 

日本海ギリギリのこの道路は、積雪がない。その理由はもしかして、この強風なのかな。

だが、もうすぐだ。あとちょっと走ったところにわさおがいるのだ。

 

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きくや商店1

着いたぞ。ここがわさおのいる場所、「きくや商店」だ。

このあたりってイカ漁が盛んであり、イカ焼きを商売にしている店もある。このきくや商店もそんなお店の1つだ。

 

…今日はまだ…営業前かな?朝だからかな? 

 

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きくや商店2

 画像が粗くて申し訳ないが、正面から撮った写真がなかったので、斜めの写真のアップ。

志村けんさんが来た店』という立て看板と、わさおと奥さんのつばきの顔はめパネルがある。顔はめ部分は…、これ、飼い主のおばあちゃんだ!!おばあちゃんになれる顔はめパネル!

 

※ …しかしね、この記事を執筆している2020年6月現在、わさおもつばきも、おばあちゃんも志村けんさんもこの世にいない。

志村けんさんは、新型コロナウイルスで3月29日にこの世を去った。くっそー、コロナウイルスめ。書いていて切なくなるぜ。

 

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きくや商店3

店舗の横に回ってみた。軽トラに乗ったわさおの顔はめパネルがあった。

そして、わさお一家がいるのは、この横にある犬小屋だ。

 

ちょうどお店の人が出てきたので、挨拶しつつわさお撮影の許可をもらい、犬小屋に足を運ぶ。

 

 

わさお一家に会う

 

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わさお1

わさおだー。

小屋には犬が3匹いる。その中で一番モフモフで貫禄があるのが、ブサカワ犬として一世を風靡したわさおだ。

 

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わさお2

わさおについて、Web等から学んだ知識を少し紹介させていただきたい。

 

わさおは秋田犬の長毛種だそうだ。なのでこんなにモッサモサ。

2007年夏ごろの誕生と言われており、その年の秋に捨てられているところを拾ったのが、飼い主となる「菊谷節子ばあちゃん」だ。 

 

2008年にはネットでブサカワ犬として有名となり、その年のうちにTVでも取り上げられるほどの人気者となる。2011年にはわさお自身が主演した映画「わさお」も公開された。

 

前述の志村けんさんのTV番組「志村どうぶつ園」にも出演していたそうで、志村けんさんとはそんなことから縁があった。

 

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わさお3

しかしわさお、テンションが控えめである。

朝だからなのかもしれないし、寒いからなのかもしれないけども。

 

でも、心当たりのある大きな要因がある。

飼い主のおばあちゃんがこの1ヶ月ほど前に亡くなったばかりなのだ。

わさおはおばあちゃんが大好きであり、おばあちゃんが入院したりして不在だと、ストレスで食欲不振になったり毛が抜けるほどであった。

 

おばあちゃんを亡くして意気消沈している、そんな時期での邂逅であった。

 

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わさお4

生前おばあちゃんは、自分がいなくなったときにわさおがヘコみすぎないように、先手を打っていた。

それが、上の写真右手に映っている奥さんのつばきだ。2014年に迎え入れられたらしい。

 

しかし2019年5月、つばきは突然の心臓発作で亡くなってしまったという。

わずか6歳だった。

 

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わさお5

尚、わさおには娘がいた。それが上の写真の左手、ちょめだ。この子も長毛種だね。テイストがわさおと一緒。

ちょめは2016年に迎え入れられた、わさおやつばきとは直接の血縁のない子犬。でも3匹仲良く暮らしていたそうだ。

 

僕は最後にわさおと記念撮影をし(1人なので自撮り)、そしてここ鰺ヶ沢の町を発った。

 

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わさお6

2020年6月時点で、わさおは推定13歳。人間でいうと90歳くらいだったそうだ。

 

志村けんさんの亡くなった直後の4月1日、高齢に伴い足腰が弱まって立ち上がれなくなり、そして6月8日の午後5時54分に息を引き取る。

 

www.kahoku.co.jp

 

ブサカワの走りであり、ブサカワの代名詞ともいえる存在。

彼は確実に、1つの時代を築いたのであろう。

今まで、本当に頑張った。大好きなおばあちゃんやつばきと、あっちで再会できるね。

 

 

 

最後に、わさおにも通じるように手向けの言葉を言おう。

 

 

 

ワンワン!ワンワンワン!ワオーン!!

… キューン … 。

 

 

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わさお7

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。 

 

 

住所・スポット情報

 

 

No:007【滋賀県】ご当地パンの「サラダパン」の中身は…?これ、サラダじゃねーだろ!!

滋賀県北東部のみに存在する、サラダパンというご当地パンがある。

 

さあ、あなたなりのサラダパンを脳内に思い浮かべてくれ。

そしたら次。そんなパンは記憶の奥底の箱にでも厳重にしまいこみ、封魔の札でも貼っておいてくれ。

 

そういうね、ありきたりな思考は今回いらないから。常識を持ち込まれても、きっと混乱するだけだから。

 

それでは、「パン屋さんにパンを買いに行く」という、子供のおつかいみたいな僕の物語を一緒に振り返ってほしい。

…ただし、あなどるなかれ。そのパンは…。

 

 

1度目の入手失敗(総本山)

 

ごはん派かパン派かで言えば、圧倒的にパン派。

僕はそういう人間だ。

 

この日もそうだった。滋賀県の琵琶湖を一周ドライブしており、おなかが減った。

パンを食べよう。ちょっと遅めのランチはパンだ。 

 

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つるやパン1

つるやパン。僕のターゲットである"サラダパン"を製造・販売している世界で唯一のパン屋だ。木之本駅から歩いて行ける距離の路地にあるぞ。

ちなみにこのパン屋、壁に巨大コッペパンがめり込むという、ワイルドな事件を演出している。知らんけど。

 

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つるやパン2

うふふ。さて、サラダパンを買うぞー。

ワクワクしながら店内に入ろうとする。

しかし、そこで僕の表情を一瞬で硬直させる、無情なプレートが目に入った。

 

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つるやパン3

「サラダパン 売切れました」

 

え?そういうことってある?

いやいや、ジョーダンでしょ。まったくもう。

 

信じられない気持ちで店内に入る。

しかし、"サラダパン"のコーナーには何もなかった。否、虚無がそこにあった。

 

バカな…。今までウキウキしていた僕がいた世界とこの世界は、果たして同一なのか。

どこかのパラレルワールドには、今頃おいしそうにサラダパンを食べている僕がいたりするのか。

そんなことを考えてしまうくらいにショックを受けた。

 

呆然と店頭に佇んでいると、ツーリングのグループが登場した。

そして僕と同じく、サラダパンが売り切れていることに愕然としていた。

チラッとその人たちの会話が耳に入ったんだけど、どうやら昼頃には売り切れていたらしい。なんという人気よ。恐ろしいパンよ。

 

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木之本地蔵院1

本筋から反れるけど、やさぐれた気持ちを癒すため、木之本地蔵院ってとこに入った。

 

ここはつるやパンのほぼ向かいにある。さっき車でウロウロしたときにハデな幕が気になったのでね。

やれパンだごはんだ、などという低俗な煩悩を退散させる。仏門に入って、悟りを開く。そういう覚悟。

 

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木之本地蔵院2

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木之本地蔵院3

あ、お地蔵さんデカい。

高さは6mあり、日本最大ともいわれているそうだ。そして日本三大地蔵の1つでもあるそうだ。なんかかっこいい肩書きだね。「我は四天王の1人…」みたいな。1人分足りないけど。

 

あと、日本一大きいお地蔵さんって、ほかでも何か所か見聞きしているけどな。

ま、いっか。僕はこの世の森羅万象全てを包み込むような、おおらかな精神を手に入れたいのだし。 そういう細かいことを気にしていたら悟りを開けぬ。

 

お参りをし、スッキリ爽やか、穢れが落ちた。

1つのパンに固執する人生とは、もうサヨナラよ。

さぁ前を向いて、ドライブ再開だ!

 

 

2度目の入手失敗(数々のスーパー)

 

つるやパンを出発してから数10分後…。

僕は悔しさから般若のような形相となっていた。

やっぱ無理。サラダパンを諦めきれない。てゆーか、腹減った。もう15:30だというのにランチ食べてないんだもん。どなたか、この哀れな小男にパンを恵んでくだされ。

 

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スーパー1

サラダパンは、地元のスーパーにも卸されいると聞いたことがある。

琵琶湖を南下しながらキョロキョロしていると、地元密着型っぽいスーパー発見。

 

…って、これなんて読むんだよ。字が汚いよ。二日酔いの人が書いたのかな?

valor(バロー)というらしい。東海地方を中心に出店しているスーパー。

ここであればサラダパンもあろうぞ。

 

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スーパー2

うん…、なかったよ。

パンコーナーの周りをグルグルと盆踊りみたいに何周もしたけど、なかったよ。

 

売り切れているのであれば、置かれていた痕跡(ポップもしくは空の商品棚など)があるはず。しかしそれすらない。つまりこのスーパーでは取り扱っていない。

 

非常に狭い範囲でしか購入できないパンとは聞いているが、まだここは木之本からそんなに離れていないぜ。

どれだけ幻なのだよ、サラダパン。都市伝説クラスか。UMAか。

 

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長浜駅1

長浜駅へとやってきた。ここまでの国道8号、クソ渋滞だった。

さらに長浜駅の東口に駐車しようとしたらどこも満車。しょうがないから線路を越えて西口までやってきたら、こっちも満車。

 

しばらく駐車場の前の車列に並び、空きが出るのを待つ。

なんでこんなことをしているのか、だって?

サラダパンよ。長浜駅ならサラダパンを売っているのではないかと思って来たのよ。

 

でも、この渋滞と駐車場混雑。

みんな僕と同じようにサラダパンを狙って滋賀県北東部に集っているのではあるまいな。疑心暗鬼に磨きがかかるぜ。

 

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長浜駅2

長浜駅、レトロなデザインだぜ。よく知らないけど、明治時代の初代駅舎のデザインを踏襲しているそうな。

 

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長浜駅3

長浜駅の西口には、長浜城も聳えている。こっちはもっとレトロだぜ。

もうね、これはレトロっていう表現をしていいかどうかも微妙だけど。

 

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長浜駅4

長浜駅東口にやってきた。

平和堂である。

 

平和堂は、滋賀県を中心に毎日の暮らしに必要なものを取り揃えた小型の生活便利店と、楽しく豊かな暮らしをお届けする大型ショッピングセンターを組み合わせて出店することで、より地域のお客様に密着した店舗展開を進める考え方をしています。

(引用元:平和堂ホームページ)

 

フフフ。ここならコンセプト的にも期待が持てるぞ。

僕もバカではございません。さっきバローでサラダパンが見つからなかった時点で、ネット調べた。平和堂においてあるケースが多いと書いてあった。

ならば琵琶湖東部のこの店舗であれば、絶対にあるはず。

 

 

  ない

 

 

あれー、おっかしいなー。なんでかなー。

この、頬を伝うものはいったいなんなのかなー。

 

 

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彦根1

彦根市の夕暮れ。

ここでまたもや平和堂を見つけた。

一縷の望み!最後は笑ってハッピーに!

 

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彦根2

…5分後。

僕は打ちひしがれて、駐車場から夕焼けを眺めていた。

「フヘヘヘ…、平和ってなんですかー?」って顔で。

 

ダメだ。四面楚歌。

新約聖書の、マタイによる福音書に以下のような文がある。

 

エスは答えて言われた、『人はパンだけで生きるものでは非ず』

(引用元:聖書 マタイによる福音書

 

でもさ、生きるためにパンほしいし。

神は我にパンを与えてはくれないのか。

 

夕焼けは、ただただ綺麗であった。

 

 

3度目の入手失敗(高速道路)

 

前項の1週間後。僕は再び動き出す。

今回は兵庫県竹田城だとか福井県若狭湾だとかを巡る1人旅をしていたのだが、その帰り道に期待を込めている。

 

北陸自動車道の賤ヶ岳SA。つまり高速道路だ。

僕は、サラダパンをがこの賤ヶ岳SAでも販売されているという事実を掴んでいた。

 

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賤ヶ岳1

 

多くの観光客の往来のある高速道路のSA。

普通に考えて、ここに大量にパンを卸しておかない理由がない。

 

ハッハッハ。今回は僕の勝ちですな。

ではでは、サラダパンをいただこう。ニコニコしながら売店に足を踏み入れる。

 

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賤ヶ岳2

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賤ヶ岳3

 …惨敗!

またしても空振りか。時間が遅かったのか。

サラダパンコーナーは、亡者のごとく群がる貧民によって根こそぎパンを奪われ、荒野と化していた。

 

ここで1つ豆知識。

上のパンコーナーの写真は、実はその時に撮影したものではない。その時はショックで写真すら撮れなかったから。

 

それがいったい何を意味するのか。

賢明なあなたならおわかりと思うが、僕がその後再び賤ヶ岳SAを訪れ、サラダパンを買おうと思って買えなかった。

そういうことだ。

かわいそうでしょ。

 

近くて遠いサラダパン。まだ見ぬパンに恋焦がれ。

 

パンがないなら、ケーキを食べればいいじゃない

引用元:ジャン=ジャック・ルソー「告白」

 

その発言がもし事実だとするならば、ちょっと滋賀県マリー・アントワネット連れてこい。そいつ、サラダパンを何もわかっていないから、僕が小一時間説教する。

 

 

4度目にて入手(総本山)

 

さらに前項から1週間が経過した。

これで3週間連続のサラダパン探訪の旅である。その執念たるや、恐るべし。

 

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つるやパン4

オラー、来たぞコラー!

木之本駅前の無料駐車場に、愛車のHUMMER_H3をドカンと停める。

 

よーし、これから総本山に殴り込みじゃあー!

そんな勢いで、鼻息も荒く、2週間ぶりのつるやパンを目指す。

 

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つるやパン5

 この日の僕には勝算があった。

つるやパンの開店時間は曜日によって違うものの、8時か9時。

そして現時刻は9:30。ちょっと遅れたけど、開店を狙ってやってきたのだ。

 

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つるやパン6

さあさあさあさあ!!

生涯初のサラダパンが我が前に姿を表すぞ!!

 

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サラダパン1

宝の山だーー!!

黄金色に輝くそれらは、まさに小判!ここはエルドラドか!!

 

1個140円。

10数個残っていたその中から2つを素早く購入した。

近年TVで紹介されたりして、爆発的人気のサラダパン。完全に需要が共有を上回っており、購入時も個数制限があるのだ。

なんにせよ、購入できてよかった。

 

クリスマスの日の子供のようにウッキウキで、商店街を走り、駐車場の愛車のもとへと帰って行った。

 

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サラダパン2

10数分後、「道の駅 塩津街道あぢかまの里」というところで車を停めた僕は、サラダパンを取り出した。

かわいい黄色と緑のパッケージよ。

 

ではでは、いただこうではないか。

パンを取り出す。フカフカコッペパンだ。さすがパン屋。

そして食べる前に、パンをパカッと開いてみた。

 

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サラダパン3

 

何も挟まれていなーい!!

 

 

ちょっと店のおばちゃん、サラダパンに具を入れるの忘れていますよ!!

何も入っていませんよ!!

 

…あなたがそう思ってしまったとしたら、それは間違いだ。

とりあえず落ち着いてほしい。なぜなら、これがフォーマルなサラダパンの在り方だ。

 

まずは、このサラダパンの内側の写真を思いっきり拡大してみよう。 

 

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サラダパン4

…おわかりいただけただろうか。

向かって左側、マヨネーズの中にわずかに見える"ソレ"が。
視力0.1とかの人であれば気付かないかもしれないが、確かにソレはソコにある。

 

正解は、たくあんだ。

サラダパンの正体は、たくあんをマヨネーズで和えてコッペパンに挟んでいる。

 

「たくあんなのになんでサラダパンっていうネーミングなんだよ…」と思われる方もいれないが、「たくあんは大根。大根は野菜。野菜だからサラダ。だからサラダパン。」と言われている。

体重3ケタのアメリカ人が「ピザにはいっぱいトマトソースが使わわれているから、ピザはサラダ。サラダだから健康。」という理屈でピザをバクバク食べているような強引さを感じるけどな。

 

尚、つるやパンの公式サイトを見ると、サラダパン誕生の経緯が詳しく書いてある。

 

  1. マヨネーズを使ったパンを作りたい
  2. マヨネーズはほとんど油だから、これだけでは胃に負担がかかる
  3. 胃の不調には、胃薬キャベジンが効く
  4. キャベジンの原料はキャベツ
  5. マヨネーズとキャベツをパンに挟めば最強!
  6. 売り出したものの、キャベツは日持ちがしない
  7. ネーミングを変えずに、キャベツの代用となるもの…
  8. 答え:たくあん

 

こうして1962年に現在のサラダパンとなったそうだ。長い歴史よ。

 

だから、サラダパンのパッケージの緑と黄色は、キャベツとマヨネーズの色から来ているのだそうだ。決して、「たくあんの黄色」ではない。

 

食べてみた。

たくあんのコリコリした食感と絶妙な塩味、それとマヨネーズがそれなりに合う。メッチャうまいっていうレベルではないが、また食べてみてもいいかなって感じ。

なにより忘れてはいけないのは、僕の目的は「うまいパンを食うこと」ではない。

「サラダパンを食うこと」だ。

 

僕は、琵琶湖のほうに向かってガッツポーズをした。

 

 

おまけ:サンドウィッチもあるよ

 

数ヶ月後…。

サラダパンを追い求めた初秋から季節は流れ、桜の時期となった。

 

能登半島桜前線を追いかけに行こうとしていたとき。

21:00近い賤ヶ岳SAにて、ふと売店を覗いてみた。

 

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賤ヶ岳4

サラダパン!!

こんな時間に出会えるとは!

 

そして、前回はサラダパンに夢中すぎてつるやパンの店内でも目がいかなかったが、"サンドウィッチ"もあるぞ。

実はこれ、何気につるやパンの中では人気No.1のメニューなんだとか。

サラダパンがNo.2。

 

よーし、両方食うぞ! 

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サラダパン5

福井県まで走ったのち、PAで夜食にすることに。

まずはサンドウィッチからいただこう。

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サンドウィッチ

円形のパンに魚肉ソーセージにマヨネーズ。ただそれだけ。

これもまた、50年以上の歴史を持つパンなんだとか。

 

味は想像通り。マヨネーズと魚肉ソーセージ。

だがこの安定感が、地元のリピーターを獲得し、一見さんに好まれるサラダパンを凌駕しているのだろうな。

 

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サラダパン

2度目のサラダパン。

1度目と感想はまったく同じであり、特筆すべき点はない。

 

しかし、春の雨の日の夜、車内でサラダパンを食べた思い出は忘れない。

 

ちょっとこの先さ、数年間は滋賀県ドライブは打ち止めになると予測している。

なのでこれが一旦の食べおさめ。

だが、いつの日かわからないけど、きっとまた戻ってくるよ、つるやパン。

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報 

  • 名称: つるやパン
  • 住所: 滋賀県長浜市木之本町木之本1105
  • 料金: サラダパン145円、サンドウィッチ145円
  • 駐車場: なし。木之本駅に停めて徒歩7分ほどが無難と思われる。
  • 時間: 月~土8:00~19:00、日・祝9:00~17:00

 

 

 

No:006【静岡県】7年に1回、数日だけ出現する幻の池!!僕が一握りの到達者になれたワケ

静岡県浜松市の内陸部、登山しないと到達できない山間部。

池の平とか、幻の池とか、そう呼ばれる「奇跡」がそこにある。

 

しかし、Webを検索しても出てくるのはありきたりなオフィシャル情報をまとめた記事ばかりだ。

 

 

ならば、僕が書く。

竜神が出現してどうだとか、無念の涙が湧き出てどうだとか、そんなのひとまず置いておいて、僕のアイデンティティである、幻の池にいかにして到達したのかという体験談を、しっかりあなたにお届けしたい。

 

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幻の池1

 

 

 

なぜ、Webには幻の池に到達した人の記録がないのか

 

とはいえ、幻の池に到達するための最低限の事前知識は知っていただきたい。

これを書かねば、カレーがどんなものか知らない人に対して、うまいカレーの作り方を説明するくらい難儀になってしまう。

 

この池は、7年おきに出現すると言われている。

1950年以降に発生した記録は、以下のとおりだ。

1954年

1961年(前回から7年後)

1968年(前回から7年後)

1975年(前回から7年後)

1982年(前回から7年後)

1989年(前回から7年後)

1998年(前回から9年後

2010年(前回から12年後

 

異常気象のために近年の出現パターンが変わってきていると言われているが、とにかくレアなことには変わりはない。

 

ちなみに2011年にも出現して2年連続となったというニュースもあるが、小規模かつごく短時間で消滅してしまったそうで、これを正式な出現と捉えていないサイトも多くあるように見受けられた。

とりあえず、その後は2020年現在までは出現していないっぽい。

どうしたんだ、幻の池。最近元気ねーぞ。

 

でも、元気かどうかはひとまず無視して、出現年から当時の文明を判断してほしい。

1989年は現在のようなインターネットそのものが存在していない。

1998年はインターネットはあるが、まだ黎明期であり、個人でサイトを持っていたりデジカメを所持している人も少数だし、携帯電話にカメラなんてついていない。

 

…ということは、だ。

2010年の出現時が、この幻の池にとっての「デジタル化・元年」となるわけだ。

 

そのビッグチャンスである2010年に何が起きたか…。

詳しくは後述するが、幻の池に行くための車道が土砂崩れで埋まり、完全に通れなくなるんだよね。誰も行けないよね。

 

そんなわけで、これがWeb界の幻の池が、一層に幻である所以である。

 Webで検索して出てくるのは、1998年以前にフィルムカメラで撮影して大事に保管して置いた人のものか、地元の第一発見者などプレスリリースに使われたものが大半であろう。

 

2010年、幻の池に行くために僕は考えた

 

あなたは何歳だろうか?

仮に現地の登山口まで車を運転し、そして元気に現地まで登山ができる年齢を、18歳~75歳と仮定しよう。

その元気な57年間の間に、幻の池が7年おきの出現であれば、8回の出現。

もし直近のようにヘンテコなスパンで12年おきとかになってしまったら、5回弱しか出現しない。

 

既にあなたは何回のチャンスを見逃してきた?

あなたのチャンスはあと何回ある?

出現してから消えるまでは、あっという間だ。3日とか、4日かもしれない。ボケッとしていていたら、計画しているうちに消滅してしまう。とにかく初動が大切なのだ。

 

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説明板1

僕もアワアワしていたので偉そうなことは言えないが、2010年に僕が何を考え、どういうアクションを取ったのかは、次に訪問するあなたの参考になるかもしれない。

そんな思いで、2010年7月の出現時に時を遡ろう。

 

浜松市天竜区水窪町の山中に出没し「遠州七不思議」の1つに数えられる幻の池が、12年ぶりに出現している。
 
池が現れると毎回多くの見物者でにぎわうが、今回は現地へ向かう林道は先週の大雨で落石があり通行禁止に。
地元の水窪観光協会は「安全確保のため見に行くのは見合わせてほしい。次の機会を待って」と自粛を呼びかけている。
 
同協会などによると、幻の池が現れるのは佐久間町境に近い標高880メートルの亀ノ甲山の中腹にある「池の平」と呼ばれるくぼ地。
ふもとの登山口から山道を約1時間半ほど歩いてようやくたどり着く。
スギやヒノキに囲まれた場所に、7年に1度ほどの周期で7~9月にかけて突如として池が現れ、数日から1週間ほどで消える。出現の謎は解明されていない。
 
今月20日昼すぎ、池の平を訪れた地元住民が池を発見した。旧水窪町の記録では、近年では1975年、82年、89年と周期通りに現れたが、前回は2年遅れて98年、今回は実に12年ぶりの出現となった。
 
池の広さは約70メートル×約40メートルで、水深は1.2メートルほど。
21日に行政職員が確認に訪れたところ、深さは約1メートルと水位は下がり始めていて、今週末には消えるかもしれないという。
引用元:中日新聞(2010.7.22)

 

この記事を、僕はリアルタイムでWebから読んだ。そして興味を持ち、すぐに調査を開始した。

 

林道が通行止めだと。それは具体的にどこだ?

手前に車を駐車し、徒歩で乗り越えたりはできないのか?

20日の昼過ぎに水深1.2mで、翌日の21日には1.0mということは、1日に最低20㎝は水位が下がっていると見ておこう。

記事が発表された今日は22日だから、既に水深80cmは切っているはず。ちゃんと"池"と呼べるサイズを保っているのは、水深40㎝となる24日がギリギリか?では、それまでに落石が撤去される可能性は?

 

ダメだ。調べれば調べるほど、絶望の渦に飲み込まれる。

落石の被害は甚大だ。猛烈な土砂崩れだ。被害状況を調べると、撤去に数ヶ月かかると判明。

そして、道なき山間部を突っ切っていくのも不可能。経験豊かなマタギとかじゃないと厳しいってさ。僕のようなインテリ眼鏡ボーイには無理な相談だ。

もう無理無理!

7年後か、運悪くまた12年後か、それまで幻の池には行けない!!

 

僕は諦めかけた。

だけども、もう一度ニュース記事を読んだ。疑問が浮かんだ。

なんで第一発見者や行政職員は現場に行けたの?

上記が、一筋の光明を見出すきっかけとなった。

 

第一発見者は、マタギレベルの山岳のプロかもしれない。

しかし、翌日に訪問した行政職員は、登山家ではないだろう。一般人に違いない。つまり、特殊能力がなくっても現場に行けるのではないか。

では、土砂崩れした道をどうやって乗り越えたのか…。

 

いや、その視点がそもそもおかしいのでは?乗り越えていないのだ。道は他にもあると考えたほうが良い。

ではなんで、記事には「行くのは見合わせてほしい」と書いてあるのだ?

きっとその道は脆弱なのだ。例えばアホみたいに狭路であり安全面に問題があるとか、アクセスが極端に悪いとか、駐車場がないとかだろう。そういう地理的な事情。

 

あるいは、政治的な事情からだ。

記事は水窪観光協会に対してのインタビューだ。幻の池も水窪観光協会も、天竜区水窪地区、つまり水窪町にある。

でも、幻の池は「佐久間町境に近い」と書いてある。

もしかしたら、水窪町としては仮に佐久間町側からアプローチできたとしても、あくまで水窪町としてのインタビューなのだから「水窪町からは)行けません」と回答したのでないだろうか。

 

じゃあそれに対し、仮に佐久間町側からアプローチできるのだとしたら、なぜ佐久間町は「こちらからは行けます」と言わないのか。

それは前述の地理的な事情、そして水窪町に位置する幻の池を隣町の佐久間町が宣伝できない葛藤があるのではなかろうか。

 

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地図1

 

まぁここまで全部推測。佐久間町からのアプローチルートが存在しないのであれば、この理屈は全く成り立たない。

現にWebで「幻の池_登山路」とか、「池の平_登山」とかいくら調べても、幻の池に行くルートは水窪の町からほど近い登山口を使うパターンのみ。佐久間町から行けるだなんて、どこにも書いてない。

 

再び僕はガックリうなだれたが、ふと案が浮かんだ。

亀ノ甲山の中腹880m地点に現場があるらしいが、亀ノ甲山への登山ルートは1つなの?

つまり、目的地を幻の池とするから惑わされるのだ。目的地を亀ノ甲山として考えれば、可能性が見えるかもしれない。

 

…うん、あったぜ、亀ノ甲山へのもう1つの登山ルート。

 

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地図2

それは東から行く水窪町からのルートに対し、南の佐久間町ルートであった。GoogleMAPには記載されていないが、Yahoo地図をガッツリ拡大すると発見できる。

 

※さらにいうと、GoogleMAPには「池の平はある・亀ノ甲山はない」、Yahoo地図には「池の平はない・亀ノ甲山はある」という状態で、すんごくわかりづらいが。

それだけマイナーなスポットなのだろう…。

 

ちなみに、西からのルートもあるけど、これたぶん無理。西側は廃道マニアの聖地なんだ。とても僕なんかは足を踏み入れられない。

 

南ルートは山間部の小さな集落の奥の奥から始まっていることを、併用している手元の地図から確認。(これな、2010年当時のYahoo地図には存在すら載っていなかったんだよ、確か。そして2020年現在も、集落名は書かれていない。)

 

どんなところか全くわからないが、これが唯一の希望。

亀ノ甲山の山頂付近を経由するので、水窪町からのルートよりは困難そうだが。

しかし、この希望を基に現地に行ってみるだけの価値はありそうだ。

 

現在の時刻、2010年7月23日23時。

急げ、おそらくチャンスは明日のみだ。僕はすぐに出発準備を整える。

 

…こうしてネタバラシをしてしまえば、「そんなこと誰だってわかるよ」と思われるかもしれない。

しかしね、じゃあここまで考えて実際に行動できた人が何人いたか。

1998年や1989年の幻の池の出現時には登山路が渋滞し、万単位の人が訪問したそうだが、僕が訪問した2010年はおそらくいても数10人~200人規模。

正しく行動を起こせた者は、ごく少数なのだ。

 

 

幻の池への1時間半の登山

 

2010年7月24日の朝7時。

僕は1人、今田集落という斜面に造られた、小さな集落の茶畑の中を歩いていた。

 

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アプローチ1

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アプローチ2

茶畑を育てている、斜面集落。

山肌に九十九折りに狭路が続き、とてもよそ者が車を停めるスペースなんてない。

一度車で集落内に入ってそう判断したのち、遥か彼方の県道沿いの空き地に愛車を停めて、徒歩で集落内に戻ってきた次第。

 

畑仕事をしている人や、集落内を歩いているじいちゃんばあちゃんは、みんな「おはようございます」と声をかけてきてくれる。あ、いい雰囲気。

集落の奥へと急な坂道を登ると、もう汗をかいてきた。まだ涼しい朝の7時なのに。

振り返ると、雄大な山々と、眼下に今登ってきた集落が。
 

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アプローチ3

下宮神社の鳥居が斜面に見えてきた。社はまるで掘っ立て小屋のようだ。

ここ、注意。この神社から北に向かって伸びる道から、さらに坂を上る。こうやって集落の北端を目指すのだ。

いや、合っている保証は無いので内心ドキドキだが、そう信じている。

 

…茶畑の脇の急坂の路地をヒーヒー言いながら登る。汗かくー。

ここでいいの?なんか普通の民家の庭の脇の道っぽい。幻の池だとか、亀ノ甲山を示す看板なんて一切ないよ。

 

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アプローチ4

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アプローチ5

集落内を歩き始めておよそ20分後。急坂の道が突然終わる。

結論、これが正解だ。ここから登山路に入る。あとはちゃんと山道を見失わないように、北へ北へと歩く。

 

しかし、目的地を示す看板は皆無。人もいない。ホントにこれ、亀ノ甲山とか幻の池に向かっているのかね?不安が募る。

だが、足元をよく見ると比較的新しい足跡がある。これに少し勇気をもらう。

 

左手はそそり立つ絶壁、右手は遥か下まで断崖、って感じの道が続く。

路面自体が右下がりなので歩きづらい。崩れかけている部分もあり、また不安になる。

 

登山路に入って30分ほどのところで、男性2人組を見つけた。

同じく幻の池を目指す人たちで、やっぱ僕と同様に不安らしく、必死に地図を見ていた。仲間がいて安心。

以降、この2人組とは抜きつ抜かれつ、池を目指すこととなる。

まぁ1度僕が道を間違えたので抜かれたんだけどな。

 

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アプローチ6

その、僕が道に迷ったのがここだ。鳥居があり、その近くに上の立て札。

今田集落から延々歩いて、初めて出てきた立て札。自分の歩いてきたルートが正しかったのだと、ここでようやく100%の確信を得られた。

 

でも、そこからだ。

立て札の裏側、道と思われるところを5分以上歩いたのだが、どこが道でどこが林だか、境界がわからん。何が何だか。

一度立て札に戻ろう。

 

そして気付く。

 

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アプローチ7

死角にもう1つ立て札あったぜ。

角度が違うということは、それぞれの行き先を示しているのだろう。メッチャわかりづらっ!

どうやら僕は亀ノ甲山方面を目指していたようだ。そしてどうやら幻の池へは、亀ノ甲山の山頂を経由しなくても行けるみたいだ。

 

目を凝らすと、確かに池の平を示す看板の先に道らしきものがある。

ここからは下り坂。先に行かれた2人組をもう一度抜かし…。

 

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アプローチ8

…着いた、のか…??

べろんべろんに崩壊した池の平の立て札。この後ろに幻の池が…

…  …

 

ない。

 

呆然とする僕。

後ろから来た2人組もガックリと肩を落とす。

遅かったのか…。

 

いや、希望はまだある。

「僕、探してきます」と2人組に告げて、林の中をガサガサとさらに下に行く。

標高の低い場所であれば、まだ残っている可能性がある。

 

奥から中年ご夫婦が登ってきた。僕の表情を見て全てを察したようだ。

「まだ残っているわよ!すぐそこよ、見ておいで!」

ニッコリと微笑まれた。

 

そしてついに幻の池とご対面。

視界がちょっと涙で霞んだよね。

 

「あったーー!!」

 

林の上にいる2人組に聞こえるよう、声を上げた。

 

 

幻の池と対面する

歩き始めて1時間20分。登山路に入ってからは1時間。

まぁ僕は普通の人より歩くの1.5倍~2倍は速いから、ゆっくり歩くと登山路だけで2時間くらい。

ようやく到達した。

 

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幻の池2

…こう来ましたか…!

僕の池の概念を超える池がそこに広がっていた。

 

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幻の池3

透き通った水。鏡のように林を映し出す水面。

絶妙な木漏れ日がその水面にスポットライトを当てている。

 

水の底には、堆積した枯れ葉やシダがキラキラと輝いている。

植物って雨に当たると一層みずみずしく、緑も濃くなるじゃないですか。水没しているのでより一層きれいに見える。

このシダと木漏れ日が、幻の池を演出するアクセント。

 

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幻の池4

なんていうのかな、実際に本物のフルーツが入ったゼリーって言えばわかる?

水が森をそんな感じで閉じ込めている。

水は森のショーウィンドウ。

 

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幻の池5

目測だが、池の水深は50cmくらい。かなりの遠浅なので手前側はもうほとんど水がないが。僕の予想よりも消滅は早かった。

明日のこの時間には、もうほとんど池はないのだろう。

 

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幻の池6 

池の裏側に回り込むと、それはそれでミステリアスでダーティな一面を見せてくれる。

 

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幻の池8

僕は40分ほど池のそばにいたが、例の2人組以外に新たな来訪者は来なかった。

では、帰る。2人組に挨拶をする。

この人生の中で、またいつかこの池を見れますように。

 

帰り道では、今田集落に至るまでに4組の人とすれ違った。

「あのどのくらいですか?」・「まだ池はありましたか?」

不安げなその人たちに、僕は笑顔で見てきた内容を答えた。

 

 

幻の池って、なんなのだろう?

 

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説明板2

僕は地理も気象も素人である。

素人ながらも考える。素人にだって考える権利がある。

 

森の中に水が出現するという事実。

普通に考えて、水がそこにある理由は、「溜まった」か「湧き出た」のいずれかであろう。前者であれば雨であり、後者であれば地下水だ。

 

池の平は盆地である。少なくとも溜まる条件は満たす。

佐久間町の過去の降水量を開示しているWebサイトがあった。非常に多くの雨が降った1・2週間後に幻の池が出現しているケースが複数回あった。

幻の池の出現は7~9月が大半であり、梅雨から台風シーズンの降水量が多い時期であった。

2010年も幻の池の池の出現1週間前に大雨洪水警報が発令されている。この大雨で、例の水窪の道路が崩壊したのだ。

 

森に降った水は一度染み込み、地下水脈に流れ込む。

そして土地の低いほうに行き、河川に合流する。

もしキャパオーバーになるくらいの降水量だったら?盆地に湧き出すということはないだろうか。

 

池の平の地層はどのようになっているのだろうか?

砂礫などではなく、泥岩で形成されているのであれば、なおさらその確率は上がるのではなかろうか。

 

いかんせんインターネットの歴史がまだそんなに古くは無いのでソースが少ないのだが、全ての記事が「消滅する」・「水深が下がる」という表現をしている。

「水がどんどん増えているよー、明日には池がもっと大きくなるよー」という記事は1つも見たことがない。

 

「約70m×40m、水深1.2m」の水量が、一瞬で出現するとは考えにくい。近くの河川の氾濫とかない限り。

とすれば、実は徐々に水が増えているだけど、「その様子をたまたま見た」という人がいないのだと考える。

それは夜か大雨だ。そんなシチュエーションでわざわざ登山はしない。

僕は「大雨」がその回答だと考える。

 

…としても、7年に1度という奇跡的なスパンはどのように説明するのか。

ここから先は、民俗学も絡んでくるのではないだろうか。

 

亀の甲山への登山記録は、Webを探しても非常に少ない。あまり人気はないみたいだ。

もっとも、林業の人とかは定期的に立ち入るのかもしれないが、普段はほとんど人がいない静かな山。

幻の池をたまたま発見するシーンは少ないと推測する。

 

7年に1度、幻の池が出現されると思われる年になると、地元の人が出現するか気になってちょくちょく池の平を見に行くようになる。

うまいこと大雨のちょっと後に見に行った際に、幻の池を見つける。

 

出現する年以外については?

…実はたまたま出現したのを見つけた年もあったんじゃないかな?

しかし伝承は「7年に1度」。インターネットがない時代であれば、地元の人が外部に漏らさない限り、出現の事実が広まることはない。

 

たまたま外部から来た一個人が池を発見し、新聞社やTV局に飛び込む確率は、現代のSNSに気軽に情報をUPし、それをニュースサイトが取り上げる確率よりも遥かに低い。

逆に言うとSNSが氾濫している現代は、幻の池が出現する確率が高い。2011年の出現もその例なのだと考える。

まぁ数10年前と比べると娯楽も多彩だから、逆にわざわざ亀の甲山や池の平に登山する人も少数になっているのかもしれないが。

 

 

エピローグ

 

…幻の池を見た僕は、再び山を下って今田集落に帰還した。

 

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アプローチ9

茶畑にいたおじさんに、「お疲れ様。池はどうだった?」って笑顔で聞かれた。

もちろん「すっげぇ良かったです!」って答えた。

 

集落を歩いていると、いろんな人に声をかけられた。

編み笠を被ったばあちゃんには、「実はあなたを朝早くに見かけてね。無事に池に行けたのか心配していたのよ。」と言われた。

フフフ。いろいろあったけど、ちゃんと大丈夫です。

 

ま、前項であーだーこーだと考察したけどさ、深く考えるのは僕の性に合わないよな。

 

幻の池は、あった。

幻ではなかった。

 

気温35℃に達する猛暑の中、僕は愛車のエンジンをかけ、今田集落を後にする。

さよなら、伝説よ。

 

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アプローチ10

 

…そして2020年6月を生きる同志よ。

幻の池が出現するのは、今年かもしれない。来月かもしれない。

願わくば、そのとき幻の池の前でガッチリ握手を交わそうぞ。

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 池の平_幻の池
  • 住所: 静岡県浜松市天竜区水窪町
  • 料金: 無料
  • 駐車場: 今田集落から行く場合、なし。集落付近で自力で駐車できる場所を探すこと。
  • 時間: 7年に1度、数日の出現。ただし確約はできない。

 

 

 

No:005【埼玉県】全国民、黙祷を!レトロ自販機の聖地、コロナウイルスの影響で本日閉店!

鉄剣タロー氏(てっけん・たろー = 昭和の食文化の1つであるレトロ自販機を令和の時代まで継続に貢献)が31日、コロナウイルスによる影響で死去。32歳だった。後日お別れの会を開く予定。

 

それは昨日、2020年5月30日の夜のことであった。

旅友からの速報を受け取った僕は、まどろみから一気に覚醒した。

握りしめたスマホには、ここ最近コロナウイルスに苦しめられていた鉄剣タロー氏の命がついに燃え尽きるであろう旨の文字が、無機質に表示されていた…。

 

 

レトロ自販機とは

 

さて、誤解を招いてしまったが、鉄剣タローとは人名ではなく、店名である。レトロ自販機を数多く有する貴重な店舗であり、一部マニアの間では非常に有名であった店だ。

 

…とそんなことを言われたところで、あなたのキョトンとした顔が手に取るように浮かぶ。そこでレトロ自販機とは何なのか、少し紹介させてもらおう。

 

もしあなたが「そんなことを知っているよ」という"こっち側"の人間なのであれば、それは失礼した。上の目次から次の項目に飛んでほしい。

 

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サンプル1

レトロ自販機ってのは、例えばこんな感じでうどんやラーメン、トーストなどがアツアツに出来上がった状態で購入できるもの。

 

昭和の中期以前って、まだまともにコンビニもなかったそうじゃないですか。

そんな折、旅行者や長距離トラックドライバーなどの貴重な休憩スポットだったのは、今よりずっと数多く存在していたドライブイン。 

 

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サンプル2

食堂の閉まっている夜間、こういう麺類自販機で安価で購入できる食べ物は、当時のトラックドライバーさんたちにとってとてもありがたいものだったようだ。

まさにドライブインは、トラックドライバーたちのオアシス。

 

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サンプル3

現代はコンビニが爆発的に普及し、24時間いつでも誰でもどこでも、手軽にカップ麺もお弁当も缶コーヒーも入手できるようになった。

必然的にドライブインは消滅していく。レトロ自販機もまたしかり。

 

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サンプル4

特にレトロ自販機は、メンテナンスしようにも、もう部品も業者もほぼ皆無。

デッドストックでなんとかやりくりしている店舗がほとんどだ。しかも麺類自販機なんて塩分を含んだ水を扱うからね。どんどん劣化する。

メンテナンスの手間、補充の手間、維持管理のコスト、どれをとってもコンビニのカップ麺などには太刀打ちできないだろう。

 

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サンプル5

しかも、これらレトロ自販機を有するドライブインや商店のオーナーが高齢化している。なんだったら店舗自体も高齢化している。もちろん自販機自体もボコボコになるほど高齢化。

 

もう、レトロ自販機の存在自体がギリギリなのだ。

どんどん遠くなる昭和の時代。

 

サラッと5枚のサンプル画像を掲載したが、この5枚だけでもなかなか価値のある写真なんだからな。

マニアだったら「うおぉー!」とか鼻息荒く、どれがどこの店舗なのか当てにくるのだろうな。

 

僕は、そんな消えゆく文明を追いかけている。

 

 

ありし日の鉄剣タロー

 

www.saitama-np.co.jp

 

本日(2020年5月31日)、Yahooのトップニュースにこれが取り上げられた。

鉄剣タロー、本日閉店。

新型コロナウイルスの影響で4月から営業停止していたが、24時間無人営業のスタイルでは、今後の「新しい生活様式」を実現できないと判断しての苦渋の決断だったらしい。

 

残念だ。

レトロ自販機の聖地が、その32年の歴史に幕を閉じようとしている。

 

営業中の店が「いついつ閉店」と宣言するのであれば最後に食べに行くことも可能だが、既に営業自粛中の状態。お別れもできやしない。

 

だからせめて、思い出を書かせてくれ。それを追悼とさせてくれ。

今、なんでもかんでもリモートが流行っているからさ、リモート追悼させてくれ。

 

…それでは、少しだけ過去の話をしよう。

 

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鉄剣タロー1

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鉄剣タロー2

埼玉県行田市鉄剣タロー前。


看板からして、もう格が違うよな。

年季の入った電話機マークはまだいいとして、その「鉄剣タロー」のフォントはいったいどういう精神状態で書いたんだよ。

昭和の番長とかが猛り狂って、筆で書いたような字体だ。

建物の中は薄暗く、やや入りづらい雰囲気。まぁでも好奇心が勝る。ズンズン入る。

 

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鉄剣タロー3

だだっ広いホールのようである。

向かって奥側半分は、本当に何もない。床のコンクリート打ちっぱなしな空間。

かつて隆盛を誇っていた頃は、あの奥半分のホールにも、ゲーム機なり飲食ブースなどがあったのだろうか。

 

そして、黒い天井と紫の壁もここの特徴の1つだ。ドライブインらしからぬ、このケガケバしい配色。夜になるとムーディーに、全体が紫色に染まるのだ。

なにそのエロい感じ。

 

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鉄剣タロー4

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鉄剣タロー5

では、順番に自販機を見ていこう。まずはこのレトロなアイス自販機だ。

残念ながら現在は稼働していない。

 

張り紙には『2012年初夏まで動いていましたが、冷却装置が壊れて冷凍できなくなったため、現在は動いていません。部品がないので直せる見込みはありません。』と書かれている。

 

僕はアイス自販機にはあまり興味を示さないタイプの人間だが、なんだか切ない気持ちになる。

わざわざ故障した年と、"初夏"というさらに詳細なシーズンまで書かれていること、そして故障原因や復旧見込みがないことまで丁寧に書かれていることに、オーナーさんの無念が垣間見える。

…そっか、アイスの本格シーズン直前で壊れてしまって残念だったろうな、って思ってしまう。

 

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鉄剣タロー6

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鉄剣タロー7

では、レトロ自販機の御三家と呼ばれるヤツを順番に見ていこう。

まずは麺類自販機だ。昭和製のものだろう。すんごい存在感。

 

ベタベタと貼られた掲示物も歴史を感じさせる。そして個性も感じる。

  • 天婦羅の種類・具材は仕入状況により変わることがあります。
  • 丼を持ち帰らないでください。ゴミを減らすため、再利用できる丼を使っています。まずが減ると困ります。
  • 丼に貼り付けてある唐辛子は、お湯などでテープがはがれてしまわないよう、テープがかなり長くつけてありますので袋を持って引っ張ると袋が破れることがあります。テープの右側からはがすとはがし易いようになっています。そのようにしてお使いください。
  • うどんの食べ方 よくまぜて食べてください

 …メッチャ丁寧!好感しか感じねー!

 

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鉄剣タロー8

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鉄剣タロー9

うどんの食べ方の詳細を記述した用紙。

そして、「うどんの丼をテーブルまで運ぶためのお盆」を示す貼り紙。

すっごいやさしい!

オーナーは聖人か。ちょっと拝ませろ。

 

24時間の無人ドライブイン無人だからこそ、オーナーさんがいないところでもお客さんが快適に過ごせるためのアレコレを考えていたのだと、感じ取れる。

 

では、うどんをいただこうではないか。

自販機にはそばのボタンもあるのだが、そばは仕入れていないそうなので、メニューはうどんのみ。

 

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鉄剣タロー10

料金300円を投入する。

天ぷらうどんのボタンを押すと、ニキシー管がカウントダウンを始め、調理完了を教えてくれる。20数秒でアツアツのうどんが下の取り出し口から出てくるぞ。

このワクワクは、何度やってもたまんねーもんあるぞ。初デートの待ち合わせみたいな気分だ。

 

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鉄剣タロー11

 貼り紙に書いてあった通り、唐辛子のパッケージが丼に貼りついたかたちで登場。

具は大きなかき揚げになると、そして小松菜みたいなヤツ。

うん、まぁまぁボリューミーではないか。店内の紫色の照明のせいで、ちょっと毒々しいビジュアルだけど。

そんでうまい。安心して食べられる味。だしはちょっと濃いめ。

 

これら麺類自販機の規格、代替通常のお店のうどんの8割くらいの分量と感じる。

まだもう少し食べられるぜ。

次は御三家の2つ目、トースト自販機にアタックしよう。

 

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鉄剣タロー12

これがトースト自販機とハンバーガー自販機だ。どちらも絶滅危惧種

トーストは右側。西日本にはもう1台しか残ってないくらいに貴重なのだ。

パネルの写真が何だか時代を感じさせるぞ。

 

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鉄剣タロー13

生きているボタンは1つ。

220円のハムサンドだ。ボタンに掲載されているイメージビジュアルは、あきらかにピザトーストっぽいけど気にしない。パンも変に焦げているイメージ写真だが、これも気にしない。

 

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鉄剣タロー14

硬貨を入れ、ボタンをゆっくり押す。

「トースト中」の電灯が点り、中でパンがゆっくり焼かれる。

あー、ワクワクするな、チクショウ。

 

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鉄剣タロー15

コトリと音がし、アホみたいにアツアツになったアルミに包まれたトーストが取り出し口に落ちてくる。

素手で触ると危ないケースもあるので、僕はいつもこのときはハンカチでつかむようにしている。

 

アルミをはがすと、いい具合に焼けたトーストが登場。

16枚切りみたいな、ちょっと普通じゃ見られないレベルのペラッペラのパン2枚にハムが挟まっている。

 

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鉄剣タロー16

あ、ハムだけじゃなかった。

写真では見づらいけど、トロトロに溶けたチーズも入っていた。

それから、食べてみたらマスタードがいい感じに効いていてうまかった。

 

では、最後だ。ハンバーガーも買うぞ。

さすがに結構腹いっぱいなので、ハンバーガーはここで食べずに持ち帰りにするけどな。

さっき掲載したハンバーガー自販機から購入する。

 

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鉄剣タロー17

メニューはチーズバーガー一択で220円。

ボタンを押すとこれも内部で60秒ほど温められたのち、紙箱に入った状態でゴロンと登場する。

これはこの日の夜に食べることになるのだが、その写真を下に紹介しよう。

 

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鉄剣タロー18

可もなく不可もなくの、安定品質。

フニフニのパンに、コロッとした小さめのハンバーグ。そしてちょびっととろけるチーズ。冷めていたけど、それなりにうまかった。

 

では、最後にトイレに続く大空間を紹介しよう。

 

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鉄剣タロー19

さぁ、これがトイレのエントランスだ。どうだい、落ち着かないだろう。

 

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鉄剣タロー20

その脇にはティッシュの自販機と両替機。

このレバーをグイッと下げて購入するタイプのティッシュ自販機、子供のころに駅で見たような記憶があるぞ。懐かしい。

こうして店内をひとしきり堪能した僕は、鉄剣タローを後にした。

 

 …

また訪問したかったなぁ。(できれば夜間のエロい照明が輝く時間帯に。)

そんでまたうどん、食べたかったなぁ。

 

ただね、唯一の希望が、前述の記事内の次の文章だ。

 

休業期間中、「いつ再開しますか」と利用者から問い合わせがあるたびに胸を痛ませていたが、御三家の自販機を世話になった同業者に譲り渡すことで、気持ちに踏ん切りをつけたという。

 

まだ自販機は生きている。昭和の魂は、まだ燃えている。

またどこかであの自販機に会えるかもしれない。

そうだったら、うれしいよね。

 

 

 

最後に、地元民でも常連でもないけど、言っていいかな?

 

 

 

「今までありがとうございました!!」

 

 

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 鉄剣タロー(閉店)
  • 住所: 埼玉県行田市下忍315
  • 料金: うどん300円、トースト220円、ハンバーガー220円、他
  • 駐車場: 無料
  • 時間: 24時間営業

 

 

 

No:004【宮城県】急げ!!絶滅秒読み!超激レアのUFO型信号機を見られるのは今だけ!

ちょっと正式な名称でいうなら、懸垂型信号機。

ガチな正式名称でいうならば、懸垂型交通信号灯器。

それは交差点の中央にフワリと浮かぶ、UFOのようなユニークな信号機。

 

近年は宮城県のみに残っていたのだが、2018年のニュースで信号マニアに戦慄が走った。

もう間もなく、この世からUFO型の信号機は消滅してしまうというニュース。もうお役御免で、次々と撤去するのだと。

 

マジかよ。

全米は涙しなかったけど、僕は1人泣きはらした。

しかし、ひとしきり泣いたあと、決意を固めて顔を上げ、グッと涙を手の甲で拭き取った。

…わずかだが、まだ時間はある。

些細だが、まだ僕にできることがある。

 

あなたにお届けしよう。

間もなく消える、UFO型信号機の最期の勇姿を。

あなたが仮にこの信号機に興味を持ってくれたのなら、まだこの信号があるうちに、別れを告げてほしい。

それを呼び掛けるのが、僕にできること

 

 

 

現地レポ:白石市のUFO型信号機

 

僕とこの懸垂型信号機との出会いをご紹介しよう。

あれは2018年の春先のこと。

福島県白石市の住宅地をドライブしていたところ、赤信号が出てきたのでブレーキを踏む。

 

しかし…、ん…??

僕は違和感を感じて、その信号機を二度見した。

 

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UFO型信号機1

こんな信号は初めて見た。

形状的には、上から見ると正方形。真ん中を四角くくり抜いた正方形。

外側の四面には車両用の信号。そして内側の四面には歩行者用の信号。

「え?内側に信号を付けたって見えなくね??」って思うかもしれない。

しかし、信号は高い位置にあるので歩行者は見上げることができる。なので自分と対角線上にある内側の信号は見えるのだ。

それに、下から見えやすいように内側は少し傾斜をつけてあるし。

 

ぶっちゃけ僕は今までかなりドライブをしてきた。

日本一周ドライブももう6回目だし、立ち寄りスポットも走行道路もどんどん新規開拓している。

にも関わらず、このタイプの信号機は初めて見た。

※もしかしたら、今まで青信号とかで気にも止めずにスルーしていたこともあったかもしれないが。

 

ひとまず僕は、信号待ちの短い時間で、その信号機の撮影をした。

ギリギリだった。パズーのお父さんがラピュタの撮影をしたときくらいにギリギリだったけど、なんとか記録に残せた。

やたらズームの効いた写真となってしまったが、これはそのときの僕の目には「信号以外の何も映っていなかった」という意味では正しい撮れ方だったと振り返る。

 

そして、帰宅後にいろいろ調べ、このUFO型信号機のことを知ったのだ。

 

 

白石市のUFO型信号機の場所

(2020年5月現在、撤去済み)

 

 

 

ここがすごいぞ、UFO型信号機

 

僕はUFO型信号機についていろいろ調べた。

そもそもなんでこんなかたちの信号機があるのだろうか。

 

道路脇の柱から交差点の中央へアームを伸ばし、交差点のどの方向からも見えるよう信号をつるしている。

1979~86年に設置された。

道路が狭く、複数の柱を設置するのが困難な交差点に付けるための工夫で、県警の担当者は「当時の先輩方にとって自慢の信号機だった」と振り返る。

製造した名古屋電機工業(愛知)によると、視察で渡欧した社員が、ワイヤでつるされた現地の信号機から着想を得て開発。

名古屋市仙台市などで導入された。

(引用元:日本経済新聞

 

なるほど。

交差点の中央にUFOを浮遊させることで、本来であれば交差点の角ごとに4つの信号機を設置しないといけないところ、場所もコストも抑えられたって感じかな。

さらに言えば、車用と歩行者用も合体しているもんな。すごい着想。

 

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UFO型信号機2

 

ただね、実際に僕も使用して思ったんだけど、欠点もある。

引用した記事内に「道路が狭く」というフレーズの部分。

道路が狭くて信号機が設置できないから、という意味だけではない。逆に「道路が狭くないとこの信号機は使い勝手が悪すぎる」というダブルミーニングになっていると考えるのだ。

 

では、実際にそれを体感してもらうため、2車線道路かつそれぞれに歩道のある交差点に、このUFO型信号機を設置したイメージを見てもらおう。

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UFO型信号機3

ひゃー!すごい交差する視線!

なんかの化学反応が起きそうだぜ!

 

…まぁ化学反応は別にいいとしても、特に歩行者の目線の角度を見てほしい。

限りなく45度になっていることに気づくと思う。

あなたは信号待ちをするとき、どこの信号を見るだろうか。おそらく正面に信号があるのが常識と思っているはず。

その位置が多少ずれているくらいであれば問題ないと思うが、45度はなかなかの急角度である。かなり違和感。

 

さらに、90度違う方向に行く人のための信号も、同じくらい良く見えるのだ。

どっちを信じていいのか一瞬混乱する。つまり、大きな交差点に設置しちゃうと、事故の危険性が高いと個人的には感じた。

 

 

ところでこの信号機、愛知の会社が作成したとのことで、名古屋に導入されたのはわかる。

既に全撤去されているようだが、愛知にもこのUFO型があったと聞いているし。

しかしその他の都道府県では宮城のみに導入されたのはなんでだろう。

これはWeb等を検索したがよくわからなかった。

 

ただ、他にいくつか追加情報は得られた。

  • このUFO型信号機は、現在の警察庁で定めた仕様には対応していない。
  • 信号機の寿命は30年くらい。

両方ヤバいじゃないか。

そりゃ撤去されるわ…。

 

2018年時点において、このUFO型信号機は宮城県内に22基残るのみ。

実際に探索するにおいて、宮城県石巻市にはUFO型信号機が2つあり、かつその2つの間は車で5分ほどしか離れていない立地であることを確認した。

石巻、すごいじゃないか。UFO飛び交う町、石巻

 

では、実際に僕が訪問し、撮影した写真をお見せしよう。

あ、ちなみに複数回訪問した写真をちりばめているので、写真ごとに天気だとかは違うかもしれないぞ。

 

 

現地レポ:石巻市のUFO型信号機①(石巻自動車免許センター内)

 

さぁ、いきなりハードル高いスポットだ。免許センター内の、練習コース上にこの信号機が設置されているというのだ。

まずは敷地の外からひょっこり覗いてみよう。

 

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UFO型信号機4

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UFO型信号機5

あった。UFOが薄曇りの空にプカプカ浮いている。

もっと近くで眺めたい。下から見上げたりしたい。

 

では、免許センター内にズンズン入っていこう。

 

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UFO型信号機6

係の人に「コースに入って信号機見ていいですか」と聞く。昼近かったからなのかどうだかはわからないが、現在コースは使用していないらしく、すんなり了承を得ることができた。

僕はコースに入る。

 

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UFO型信号機7

おぉぉー!じっくり見学できるー!

真下からも見学できるー!

なんだか真下に入るとUFOにアブダクションされそうな気分になるけども、それもUFO型の醍醐味よ。

 

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UFO型信号機8

唯一残念なのは、撮影時点で自動車講習が行われていないため、信号のスイッチが切られてしまっている点。全部無灯火なのだ。

 

まぁ実際に使われているシーンでこんな交差点のど真ん中に入ったら、僕は四方からの車の激突でボッコボコになるもんね。こればっかりは仕方ないよね。

 

 

石巻自動車免許センター内のUFO型信号機の場所

(2020年5月現在、存在確認済み

 


 

現地レポ:石巻市のUFO型信号機②(イオンモール石巻店近く)

 

お次は、石巻自動車免許センターから車で5分ほどの場所。

石巻の中心地にほど近い県道の、車通りのそんな多そうではない小さな交差点に、UFO発見!

 

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UFO型信号機9

 やったー!この信号はまさに稼働している!

交互に光る信号の3色の灯火。当たり前の動作なのに、なんだかすごくワクワクする。

多分僕が2歳とかそのくらいのときも、街中の信号をこんな気持ちで飽きずに見ていたのだろう。

そんな童心に帰りそうな気持だ。

 

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UFO型信号機10

…結論から言おう。

この信号機は執筆時点ではもう存在しない。

2020年の1月くらいに撤去されてしまったと思われる。跡地には、LEDの無機質な信号機が4基設置されていたよ。ごくごく普通の交差点になってしまった。

 

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UFO型信号機11

これは撤去後に再訪し、該当の交差点を撮影したものである。

UFO型信号機が設置されている状態での交差点の全景は撮影していなかったのだ。気になる方は、Googleマップの過去のストリートビューから見てほしい。

 

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UFO型信号機12

 

時代の流れ。まさにそうなのであろう。否定はしないが、心は寂しい。

失われた文明。UFO型信号機はロストテクノロジーとなってしまうのだろうか。

 

でも、UFOは地球を飛び立ったのだと考えよう。

遥か彼方の宇宙空間で、青・黄・赤に点滅しながらこの子が地球を見下ろしてくれていると考えよう。

 

 

長い間、交差点を見守ってくれて、ありがとな。

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

イオンモール石巻店近くのUFO型信号機の場所

(2020年5月現在、撤去済み)