高鍋町には、素人のおじいちゃんが手彫りでコツコツ40年以上かけて彫った石像が700体以上あるらしいぞ。
そして造形が相当にユニークらしいぞ。
なんだか気になる、すんごく気になる。
1人のおじいちゃんが半生かけて作ったワンダーランド。
拝見といこうじゃないか。
…というわけで、執筆している2020年6月は全世界に蔓延するコロナウイルスの影響でドライブなんぞできない状態なので、昨シーズンの冒険譚。
アプローチはすさまじい狭路
6:20、朝日が木立を越えようとしている。
僕は朝一で高鍋大師にアプローチすべく、ここで車中泊をしていた。朝日と共に起きるだなんて、なんてステキな旅の朝よ。
朝日を浴びながら、コーヒーの準備。
これから行く高鍋大師への経路を調べながらコーヒー飲む。相当にわかりづらく、そして狭い道の果てにあるらしいぜ。
朝からエキサイティングな体験できそうだ。
たぶんこっち。早速狭い。
僕の愛車はパオという軽自動車サイズの普通車だからいいものの、以前乗っていたHUMMER_H3とかだったら早速半泣きだったかも。
これが、僕のできるせいいっぱいのお節介だ。
国道10号を反れたあとは、赤線のルートが良いと思う。東側からの道も走ってみたが、こっちは迷いやすいと感じた。
あと、ラストの直線はメッチャ狭いからワクワクしとけよって感じで。
それ以上のことは、最後に掲載するGoogleマップを頼りに頑張ってほしい。
最後の直線。これが意外と長い。
対向車が来る可能性をあまり考えたくない道。
もっとも、高鍋大師は突き当りにあるので、対向車が来る可能性は「高鍋大師から帰る人」しかいないのだが、それでも鉢合わせになってしまったら、片方は延々バックすることになるかもしれない。
突き当りまで無事に行けたとしたら、おめでとう。
そこが高鍋大師という名の奇妙な楽園だ。
石像王国・高鍋大師
まず目に入るのは、こんもりと茂った緑の丘。
これは実は古墳。ここいらは持田古墳群に属しており、付近を走るといたるところに古墳がある。
それらの中でも、これはビッグクラスだった。
古墳を回り込むように歩いていくと、天を刺すような無数のトーテムポールが見えて来た。
…いや、失礼。間違えた。あれはトーテムポールではないぞ…。
わかりづらいけども、小さな手が生えている。
あれこそが、高鍋大師の石像群だ…!
なんか、倒れないように後ろから棒で支えてあるぜ。生活の知恵。
大きいものは6m以上だという、無数の石像群。
大きいものを中心に、何体か写真掲載しようと思う。
「ようこそ!ここは、まかふしぎで、ゆる~いせかいだよ!」
…そんなテイストだな。小学生が描いた絵本の世界に迷い込んでしまったような、そんな奇妙な感覚だ。
まさに、「ぼくのかんがえた、さいきょうのロボット」みたいな世界観だ。
ちなみに上の写真は風神・雷神だ。
腕のチープ感がたまらない。
小さいし直線的だし、雷神の左腕がネコのようだニャー。
おぉ、このおかたはバッキバキにお怒りのご様子。
子供を抱いており、右手には「火よけみまもり」と書いてあったであろう剣を握って…、いや待てよ、握っているのか?これ?
このおかたの名前は、不動明王--!!
このニヤニヤ笑っているのは、天照大神だー!
日本神話の重鎮出たー!ネイティブアメリカンみたいな風貌でご登場ー!
続いてはー、スサノオノミコトーー!
強そうだ!顔の周囲が旭日旗みたいになっている!
しかーし、豪快な顔面に反して、腕はずいぶん控えめだぞ。ヘンテコなことになっているぞ。腕組みしているのか、これ。
正一いいない大神だー!
…正一位稲荷大神って書きたかったのかな? アゴヒゲ豊かなおじさんだ。
トーテムポールレベルが高い。左に見切れているのが本堂なんだけど、それと比べるとすごく大きい。
どう?高鍋大師のこと、だんだんわかってきた感じ?
ちなみに僕は、書いている張本人なのにもかかわらず、何が何だかわからなくなってきた感じ。
この人は十二めんやくしだ。腕だけ2Dだよね。テトリスでL字のヤツと棒ばっか落ちてきて、パニックになっちゃったときみたいな造形だよね。
あと、顔に草木が絡まると、途端秘境感が増すことに気づいた。
インディ・ジョーンズとかで出てきそうなタイプだ。
そして大本命!!十一めんくわんのんだーー!!
これね、ここ高鍋町の観光マスコットキャラクターになっているからね。
名前は「たか鍋大師くん」。ゆるキャラだよ。みんな検索してみてね。
ちょっとたか鍋大師くんの説明文だけ、引用しておくね。
「高鍋大師」には、800体近くの石像があるため、たか鍋大使くんには800体の兄弟がいる。
沢山の手があるのは、たくさんの人と手をつなぎたいから。
沢山の顔があるのは、たくさんの人の笑顔が見たいから、気配りができるから。
性格は石でできているので、意思(石)が固い。
ホント、十一めんくわんのん素敵。ほれぼれする。
腕のカクカクっぷりから製作時の苦慮が窺えるが、大丈夫。僕なら100点つけちゃう。
そして若き日のエディ・マーフィーのような素敵スマイル。
世の中の大抵の憂いは、この笑顔で解決できるんじゃないかな?
頭上に無造作に積み上げた顔・顔・顔!
アホ毛みたいにチョコンと草が生えているのもたまらない。
なんだここ、最高か。
狙ってできるものではないぞ。
作者は天才かつ天然である。そう確信した。
作者はいったいどんな人なのか。
おじいちゃんの想い
冒頭にも書いたが、この世界を作り上げたのは1人の男である。40年以上かけて、これら700体以上の石像を掘ったのだ。
その人物の名は、岩岡保吉(1889~1977年)。
この高鍋大師を知るためには、この岩岡保吉さんを知ることが必須。
僕も現地の説明板等や、数々のWebから知識を得た。ちょっとだけそれを紹介させていただきたい。
前述の通り、この土地の周辺は持田古墳群と呼ばれている。
岩岡保吉さんが40代の頃。
当時頻発していた持田古墳群での盗難事件に心を痛め、古墳に埋葬されている霊の魂を鎮めるため、そして人々の幸せを祈るため、石像を彫ることを決めた。
そして、伝説が始まる。
岩岡保吉さんは、古墳の近くのこの土地を購入すると、1人でせっせと石像を彫り始めたのだ。
最初のうちは、88体にしようと考えていたらしい。
なぜなら岩岡保吉さんが若い頃にチャレンジした四国八十八箇所巡りをここに再現したかったからだ。
しかし岩岡保吉さん、一度火が付いたら止まらないタイプの男だった。
彫る彫る彫る彫る…。
溢れ出る創作意欲を止められる者は誰もいない。
87歳で亡くなる直前まで、その創作活動は続いたという。
おじいちゃんがかつて願った鎮魂と平和。今のこの地に実現されているだろうか?
いつの時代もいろいろ大変だけどさ、ここを訪れた人がこれらのゆる~い石像を眺め、そしてふっと表情が緩むのであれば、それはおじいちゃんが求めた平和につながるのだろうか?
おじいちゃんはそれを見て、雲の上から「してやったり」みたいな感じで、ニヤリと笑ってくれるのだろうか?
高鍋町の、太陽が輝く丘の上。
今日も明日も、そしてきっと明後日も、トーテムポールのような不思議な石像群が町を見下ろす。
「今日も町が平和でありますように」と願いを込めて。
最後に僕も、この丘から町を見下ろした。おじいちゃんの祈りと少しでもシンクロできるように。
徐々に日が高くなり、熱気を帯びてくる朝の風が心地よかった。
さーて、今日も暑くなりそうだな。
ドライブ、楽しんで行くとしますか!笑顔で見送ってくれよ、石像たち!
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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