週末大冒険

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ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No:014【新潟県】里山に佇む「世界一神社」!暗黒の隧道を抜けた冒険者のみ到達可能!!

「世界一神社」。

それがその神社の名前だ。

 

なんという強気な名前だろうか。

神道を極めし者ってさ、もっと世の中を平等に見てたり、謙虚に振舞うものだと思っていた。

 

なのに世界一神社。

ゴリゴリに他者を意識し、その上で自分が1番に立とうと必死である。

「数多に溢れかえる神社より、ウチのほうがいいですよ。だからウチにいらっしゃい。」という凄まじい商売人根性を感じる。

 

…それが、その神社の名前を知ったときの第一印象だった。

 

僕は世界一神社を目指す。

…果たして本当に世界一なのか。それはあなたがこの記事を読む、あるいは実際にその足で訪問して決めてほしい。

 

ただし少なくとも、僕にとっては世界一神社への訪問は、一生記憶に残る強烈な思い出となったのだ…。

 

 

吉野屋集落から里山

 

身が引き締まるような冷気に包まれた、ある秋晴れの朝。

僕は三条市にある吉野屋集落というところにやってきた。

 

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吉野屋集落1

周囲は田んぼと山のみ。そんなシチュエーションに囲まれた、小さな集落。

集落内は車1台がギリギリで通行できるレベルの細い道なので、ご立派な体格の愛車は集落入口付近で留守番しておいてもらおう。

 

ところで、こののどかな集落に、縁もゆかりもない外部の者が訪問することがどれだけあるだろうか?ましてやこんな朝に。

 

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吉野屋集落2

僕は間違いなく珍客である。 

しかし自分に言い聞かせる。僕は神社に参拝に来ただけなのだ。神に祈りを捧げに。この神聖なる精神を持ってすれば、いかなる聖域にも入れようぞ。

すなわち、我は無敵である。

 

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吉野屋集落3

集落を東へ東へと歩く。

とにかく集落の深部へ。道さえ間違えていなければ、集落の深部から里山へと入ることができる。

 

とはいえ、カーナビもないし、僕の携帯電話では地図も見れない。なのでカンだけが頼りだ。

集落の内部は狭い道が入り組んでいる。ヘタすりゃタヌキに化かされて、日没までここいらをグルグルしちゃうかも。

 

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吉野屋集落4

…おぉ、秋の味覚が鈴なりに。

歩いてこそ満喫できる、季節の移り変わりよ。

今年の雪は、深くなるのかな…。

 

とか爺さんの散歩みたいな気分でいたら、だんだんと道の装いが変わってきた。

いつの間にか周囲から家は消え、そして代わりに緑が多くなる。ちょっとずつ道は荒れつつ上り坂に。 

 

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吉野屋集落5

これはビンゴだ。間違いなく里山に突入しつつある。

 

つまりは、世界一神社に行くための正解ルートに乗ったのだ。緊張が高まる。武者震いがする。

だってさ、世界一神社に行くための関門が、この先に待ち受けているんだもん。ドキドキしちゃうわ。

 

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吉野屋集落6

ただただ1人、息を切らせて斜面を登る。

集落入口にて歩き始めてから、約25分が立とうとしていた。

 

そのとき、僕の前方に「ヤツ」が姿を現したのだ。

漆黒の闇を抱く、その関門が。

 

 

国内最長クラスの手掘り隧道、「旭隧道」

 

世界一神社を語る際に、切っても切り離せないのがこの隧道だ。 

 

…というより、ある意味こちらの方がスポットが当たってたりする。

ロンダルキア」よりも、ロンダルキアへの洞窟」のほうがヤベーように。あれは鬼畜の極みであり、「二度と行きたくないダンジョン」のアンケートでブッチギリ1位を取得しているからな。

 

さぁ、今回のダンジョンとのご対面だ。

 

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旭隧道1

ブレた。ビビりすぎて手ブレした。

墨で塗り潰したかのような一編の光もない開口部に対し、僕の本能が警鐘を鳴らしている。

 

これが、「旭隧道」。長さ762mの手掘りのトンネルだ。現役で使用されている手掘りの隧道としては、日本2番目の長さだと聞いている。

 

トンネルの上のほうに滝が流れているのがわかるだろうか?

これ、そのままジャバジャバとトンネル内に吸い込まれているからね。なんてこった。それじゃあトンネルというより、排水管じゃないか。中はどうなるよ。

 

そして、トンネル入口右側にコケに覆われた看板が見えるだろうか。

これには下記のように書いてある。

 

「落盤危険のため車両・歩行者の通行を禁止する」

 

デンジャラス!

しかし「どうぞお通りくださいな」といわんばかりに横に設置してある看板。

実は行政としては事故があると困るから、あんまりここに人を通したくないんだけど、この先には世界一神社の神主さんが住んでいるし、参拝者もわずかながらいるから、建前上は「禁止」とはしているけども、おとがめなしなのだそうだ。 

 

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旭隧道2

では、中に入ってみよう。

幅がすんごい狭い。2.5mほどと見た。これ、歩行者専用じゃない?ってレベル。ちなみにトンネルの中央付近はさらにずっと狭まると聞いている。

 

しかし、神主さんは軽自動車でここを通過できるのだそうだ。

ミラー畳んで、ときどき壁にこすりながらのギリギリらしい。

ここで、世界一神社の公式サイト掲載のアクセス方法を以下に転記しよう。

 

途中、旭隧道(手掘りトンネル、長さ約760m)をくぐり、山道約1.2km。

旭隧道は途中が狭いため軽自動車のみ走行可能です。
(途中で屋根がぶつかります)

 

また、山道は険しい坂道のため、四輪駆動車である必要があります。

結果、世界一神社まで辿り着けるのは四駆の軽自動車となりますが、吉野屋集落より徒歩でおいでいただくのが無難です。

 

※なお、林道経由の山道もありますが、2011年7月30日の大雨により一部崩落し通行止めです。

 (引用元:世界一神社Webサイト)

 

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旭隧道3

最初のカーブを抜けると、進行方向に小さな白い点が見える。

あれがおよそ750m先のゴールだ。あそこまで生きて到達できるかな?

 

中は照明など無し。暗黒空間だ。従い、懐中電灯は絶対に必要。僕も持参したハロゲンライトとヘッドライトにスイッチを入れた。

なんか壁面にブキミな緑の球体が無数にある。

 

ちなみにこれらの写真、全部フラッシュ撮影しているからね。実際は自分の手すら見えないほどの漆黒の闇よ。

 

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旭隧道4

…なんか、きったねぇモンが壁から生まれ出てきているぞ。どこのクリーチャーだこれ? 

 

そして壁面近くは水でグチャグチャ。僕は徒歩だからそれを避けて歩けるが、車であれば確実にタイヤがここに突っ込むほどの狭さである。

なにせここ、僕が両手を広げたよりもわずかに広いほどの幅だから。

 

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旭隧道5

明度とコントラストをメッチャ上げてみた。

床面を見てほしい。これ全部、水だよ。そして、壁面を鏡のように映し出している。そう、水没しているのさ。

 

僕は、これに当たり靴を一足犠牲にするカクゴでここに来ている。

 

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旭隧道6

僕のスネ毛を高解像度で見せてもアレなので控えめなサイズとしておくが、これでジャバジャバ歩くぞ。

本来であれば長靴などがあればよいのだが、そういうの持っていないし。わざわざ買うのもイヤだし。だから靴も靴下も2足用意した。

 

ところで水がすさまじく冷たい。風邪を引きそうなのだが。

 

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旭隧道7

手掘り区間、来たーー!!

ここはもう幅は2mを切っている!手を伸ばせば両方の壁に届く!

そして足首まで浸水!! 

頭だって、壁際をあるけば天井にぶつけそうだ!

 

 僕!!今!!てんやわんやです!!

 

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旭隧道8

ところでね、数分前から不思議に思っていることがあるのだ。

 

僕の歩いているこの隧道の進行方向の遥か彼方から、「アハハ…」・「キャハ…」みたいな、楽しそうな笑い声が聞こえてきている。

 

「おや、僕以外にも誰かこの隧道を歩いているのかな?これは隧道マニアの女子との奇跡の出会いかな?」って一瞬期待をする。

しかしおかしい。

懐中電灯の光が見えないのだ。この真っ暗闇を懐中電灯なしで歩くのはありえない。

 

だとするなら、あの笑っているのは本当に実在の「人」なのか、それとも…。

 

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旭隧道9

歩くにつれ、「アハハ…」の声は近づいてくる。

しかしこちらからハロゲンライトで照らしても、声の主は見えない。

 

そしていろいろ声が間近に迫ったところで気づいたんだけど、やっぱ声の主は人間ではなかった。

隧道内を滴り落ちる水滴が、複雑に反響して笑い声のように聞こえてきただけだった。なんだ、ビックリしたー…。

 

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旭隧道10

隧道もやや終盤。

足首までの浸水はもうないが、壁面近くは川だ。普通にせせらぎだ。

 

グッチャグッチャと隧道内を歩き続けて15分…。

ようやくダンジョンを抜ける…!

 

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旭隧道11

日の差し込む山間部。鳥のさえずり。

さぁ、世界一神社まで山道をあと1.2㎞。 

 

 

山道をゆく

 

760mの暗黒隧道を抜け、僕はその開口部を振り返る。

ふぅ…、ひと仕事終えたぜ。まだまだ神社は先だけどな。そして、帰りもまたこの隧道を通らないといけないけどな。

 

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山道1

ここから先は、世界一神社の公式Webサイトで「四駆じゃないと無理」と書かれていた山道となる。

 

舗装はされていないし狭いし、結構な上り坂。

それにボコボコで水たまりだらけだ。

 

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山道2

グチャグチャでほとんど逃げ場がない。

もういいや、どうせ靴も靴下も濡れているから、このまま中央突破だ。

 

こんな汚れたカッコで参拝に行くだなんて、神への冒涜だよな。

 

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山道3

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山道4

ここで世界一神社の公式Webサイトからの注意文をさらにご紹介する。

 

一本道ですので迷子にはなりませんが、携帯電話が通じませんのでご注意ください。

熊、鹿といった大型動物はいません。

キツネ、タヌキ、リス、ウサギ、ハクビシン、ムササビ、キジを時々見ることが出来ます。

(引用元:世界一神社Webサイト)

 

動物園か。

もうほとんどハイキング気分。しかし、山道と並行して電線が走っていることが、この先の文明を証明してくれている。

 

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山道5

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山道6


ヘビだー!2mくらいのヤツーー!

久々に見たぞ。なんかテンション上がる。

 

隧道の出口から17・8分歩いたところで、急に視界が開けた。

そして、建物だ!!

…神社か…?いや、家か…??

 

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山道7

隧道を抜けた先に住んでいるのは、世界一神社の神主さん一家のみ。

つまり、もう神社は近いと見た。この家の発見は、僕に大きな勇気を与えてくれた。

 

もうひと踏ん張り、山を登ろう!

 

 

世界一神社を参拝

 

茂みの中に、石造りの鳥居が見えた。目指す世界一神社、ついに到達だ。

吉野屋集落の入口に車を停めてからここまで1時間。準備に手間取ったり、隧道の真ん中で三脚を立てて記念撮影したりと時間を食ったが、それでもなかなかの距離と時間であったな。

 

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世界一神社1

鳥居の真ん中には、「世界一」の文字が誇らしげに掲げられている。

いいね。ここまでの道のりを思うと、この文字は一層に感慨深い。

 

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世界一神社2

一歩一歩、木々に囲まれた石段踏みしめながら、僕は登る。

 

世界一神社。

公式Webサイトには、『世界で唯一の存在であるあなたをお守りする神社』 と書かれている。

 

第2次世界大戦後、日本は焼け野原になって、みんなのテンションは下がっていた。

そのとき、この神社が立ち上がった。

 

「日本人は世界一すっげぇと思うのよ。だから今は大変だけど、元気出そうぜ。」

「それに、みんな世界一だって。自分が世界一だと思って頑張ろうぜ。」

…これが名前の由来だと聞いている。

 

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世界一神社3

石段の先に見えてきた拝殿は、簡素である。

 

しかし、前述の通り「世界一」なのは我々だ。神社が世界一なのではない。

従って、ここは「アンコール・ワット」や「サグラダ・ファミリア」 のように寺院の建造物そのものがパワフルである必要はないのだ。

大事なのは、気持ちね。はい。

 

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世界一神社4

アルミサッシの入口をガラガラッと開ける。

そして参拝をする。…健康祈願かな?寒かったし、濡れたし。風邪を引かないように。

 

ここまでとしよう。ここが僕のゴールだ。

足元はズブ濡れなので、拝殿の中に上がり込むのは控える。

 

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世界一神社5



人生の中には、暗く長いトンネルもあろう。

そして、そのトンネルを抜けた先に必ずしも光明が待っているとも限らないだろう。

 

しかし、あなたは世界で1人。人生は1度きり。

そんな1日1日を、わずかでもいいからトキメキを感じながら、精一杯生きようじゃないか。

 

 

…そんなあなたに朗報だ。

当ブログ、【週末大冒険】がおよそ1か月間の準備期間を経て、2020年6月28日の本日、正式リリースとなる。

 

日々のルーチンにスパイスを加えるような存在になれればと思っている。

そしてあわよくば、あなた自身をこちら側の人間に引き込もうと、僕は企んでいる。

 

あなたにこのメッセージを届けたい。

 

 

ちょっと出かけてみないか。

忘れていた、ワクワクを探しに。

 

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 世界一神社
  • 住所: 新潟県三条市吉野屋乙2214
  • 料金: 無料
  • 駐車場: なし。公式Webサイトでは、「吉野屋フォーラム」に駐車した上で徒歩40分が正式なアクセスだと記載あり。
  • 時間: 特になし