関西地区のライダーさんや車乗りの人たちの間で近年人気の絶景スポットがある。
SNSなどで多く広まっているから、知っている人も多いかもしれない。
春から夏は緑が目に眩しく、そして秋は赤く紅葉する並木道が美しい。
そして冬は…。
うおぉぉぉ、寒いな冬の高原は!!
絵に描いたような冬景色だ!!
こんな中、メタセコイア並木は一体どうなっているのだーー!
…というわけで今回は、有名なメタセコイア並木にあえて真冬に訪問したときの話をしたいと思うのだ。
雪原ドライブ
まずは「道の駅マキノ追坂峠」。
メタセコイア並木にほど近い道の駅だ。
越坂峠は"おっさかとうげ"と読む。なんだかカッコいいネーミングの道の駅である。
ここが気温マイナス5℃だと言ったら、あなたは信じてくれるだろうか?
信じてくれなかったら、僕の心の温度がもうちょっとマイナスになるので、ここは信じてほしい。
寒い。とりあえず寒い。
ここからメタセコイア並木に向かう。
もしかしたら関東だとかに住んでいる方は「えっ!滋賀県って雪が積もるの!?」って仰るかもしれないが、ドチャクソ積もる。
琵琶湖の東側にある「伊吹山」近辺とか、結構積もる。
11m82cmも積もって、世界一の記録となった。
さらに琵琶湖東岸の長浜町は、西日本で唯一の特別豪雪地帯だ。
そんなこんなで、琵琶湖北部は雪がすごいと覚えていただけると幸いだ。
高原というからには、高所にあるのだ。
そして高原っていうのは町から遠く離れているイメージがある。
ここからさらに標高が上がり、だだっ広いところに行って大丈夫なのか?
ただでさえ豪雪地帯なのに、さらにヤバくないか?さらに人家も少なそうなイメージだし。
前方から吹き付ける吹雪が答えてくれた。
「ナメるな」と。
僕は寒いのが大の苦手であり、そして冬が苦手である。
例えば東北が快適だと感じるのは7月中旬から9月中旬のみであり、それ以外の10ヶ月間は「寒い寒い、心が折れる」とグチるような人間である。
日本の北半分では心折れっぱなしの人間である。
そんな僕ではあるが、ホンキ出すとそこそこ強い。
旅や遊びであればかなり耐えることができるし、実は雪道や凍結道路の運転はそこそこ慣れている。
だから内心結構ウキウキしているの、この壮大な景色に。
今は朝だ。
まだ太陽が充分に照っていない時間では、木々の枝に霜が張り付いて真っ白になっている。
これを樹霧(じゅそう)という。
大阪や東京の都心部ではまず見れないこの現象。
それをこうやって眺められるのも、滋賀県北部のいいところだと思う。
白亜の絨毯。そしてその向こうの雪の山脈。
何気ない風景1つ1つが心に沁みる。
車道以外はほとんど雪に埋もれているので車を停めてゆっくり撮影できるようなロケーションは少ない。
だけども窓に流れるこれらを景色を見るだけでも、日常で心にこびりついた黒い何かが洗い流されて純白になる。
幸せである。
では、間もなくハイライトのメタセコイア並木である。
メタセコイアを走れ
メタセコイア、見えてきたー!
高原を北側からアプローチする僕の前に、メタセコイア並木が出現した。
周囲のあらゆるものよりも、ダントツで高い。
樹高は大体30mほどあるらしい。
このメタセコイアの並木道がここから直線で2.4km続いているのだ。
うむ。枯れている。知っている。
11月下旬から12月上旬は鮮やかに紅葉し、ここはオレンジ色のトンネルとなる。
観光客が押し寄せて、この並木道で思い思いの写真を撮るのだ。
だが僕は今回は、雪原のメタセコイアを見てみたかった。
白いキャンバスにまっすぐに聳えるこの姿もカッコいいだろう。
1月・2月のメタセコイア並木はこうなる。
上の写真と、さらにもう1枚上の写真との区別がつくだろうか?
間違い探しのようになってしまった。
僕、あとから気付いたのだ。
並木道の写真を真ん中から撮り続けていても全然変わり映えがしないのだと。
現地にいる僕は楽しくって「わー!わー!」とか言いながらハイテンションにシャッターを切っているのだが、帰宅してから見ると同じ写真の羅列だ。
こんな写真の連続をあなたにも見せていいものかを不安になっている矢先だ。
ま、見せるけどな。
他に見せるモンないし。
その代わりこのメタセコイア並木について、僕のつたない知識を少しだけ語らせていただこう。
このメタセコイア並木が誕生したのは、今から40年ほど前の1981年。
「マキノ土に学ぶ里」っていう学童農園の整備事業の1つとして、メタセコイアの木が植えられたのだ。
ちなみに2022年現在も「マキノ土に学ぶ里研修センター」が現存している。
僕らはまだまだ土から学ぶことが多いようだ。
その後、地域住民だとか町だとかも協力して、「もっと植えちゃう?もっと延ばしちゃう!?」みたいなテンションとなり、今の通り500本、2.4kmも続く壮大な並木道となった。
最高だな、メタセコイア・プロジェクト。
そもそもなんでメタセコイアを植えたのか。
それは防風林としての目的があったのだそうだ。
なるほど、高原に吹く風は強い。僕もさっき吹雪を食らったのでとても理解が早い。
こうして一列に並んだ木々で、風を食い止めようと考えたのだな。
メタセコイア並木の外側をちょっくら覗いてみた。
なるほど、一面の雪原だ。
こんな雪原(マキノ高原)を突っ切るように、この並木道が形成され、風を防いでいるのだ。
メタセコイアはヒョロっと長いイメージがあるが、よく見てほしい。
根元は相当太くてガッチリしている。
お相撲さんがガチで激突しても、きっと倒れはしない。
どうやらこの防風林というのが、メタセコイアを選んだ理由の1つでもあったそうだ。
実は最初の候補は桜並木だったらしい。
だけど、ここからほど近い琵琶湖の北端に「海津大崎の桜並木」っていう有名な桜並木があるのだ。
日本のさくら名所100選にも選ばれている。
だからこのマキノ高原に桜を植えたところで、格上のセンパイにケンカを売っているような構図になっちゃうので辞めたのだ。
上の写真を見てよ。
秋はこれが全部真っ赤になるのだよ。想像しただけでも鳥肌でしょ。
1994年に新・日本の街路樹百景に選ばれた。
2010年には日本紅葉の名所100選にも選ばれた。
他ではちょっと見れないようなこのダイナミックな並木道は、どんどん知名度を上げていった。
そして近年SNSブームの波に乗って、インスタグラム等で爆発的に人気となったのだ。
いやぁぶっちゃけね、僕も随分前から琵琶湖界隈は走っているし、冒頭の道の駅マキノ追坂峠も何度も立ち寄っている。
でもメタセコイア並木の存在を知ったのはここ数年だ。
ウカツだったなぁ…。
まだまだリサーチ力が不足していたよ、当時の僕は。
でも、こうして未踏のスポットを探し出すのがとても楽しい。
SNSで新しい人気スポットがどんどん生まれて、行きたい場所がどんどん増えて。
そんなドライブ人生を続けられたら最高だ。
冬、一番寒い時期に差し掛かろうとしている。
またコロナ感染者が増えて動きにくい世の中となってしまったが、冬には冬だけの素晴らしい世界がある。
機会があれば、あなたも厳冬の世界に一歩踏み出して見てほしい。
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愛車、日産パオはメタセコイア並木を駆け抜けた。
暖房をつけるとエンジン音がやたらと響くので、その音はマキノ高原に反響したかもしれない。
とある年の冬の寒い寒い朝の物語。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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