京都には何があるか。
うん、全部正解だ。全部歴史があって素晴らしい。
じゃあ今回はもう1つ、知ってて得する歴史があって素晴らしいスポットをあなたに紹介しよう。
「ドライブインダルマ」だ。
1971年創業だ。
…いや、そりゃ金閣寺に比べれば"今は"歴史が浅いけどな。
だが、覚えておけよ。今のうちに子孫に語り継げよ。
300年後にはここも世界遺産になっているんだから、情報先取りに喜んでいただきたい。
なにせここには超激レアの麺類自販機があるのだから!
国内唯一、川鉄自販機が3つ並ぶ圧巻の光景を刮目せよ!
西日本に2つ、ハンバーガー自販機!
ドライブインダルマ。
昭和後期くらいの雰囲気を色濃く残す、今や貴重なドライブインである。
その最大の特徴は、麺類やハンバーガーなどの食品自動販売機があるということだ。
それも1970年代くらいの、もはやアンティークに分類されるような機械が未だに現役で稼働しているのだ。
僕も複数回ここを訪問している。
そのときのことをうまくマージして執筆していきたい。
このドキドキがあなたに伝わるか?
僕はこのドライブインの外観の、やたら疾走感のある"ダルマ"のロゴを写真で見ただけで脈拍上がるわ。
また行きたい。
ハンバーグ編
さて、2回目に僕がここを訪問したときのことを少し話そう。
実はこの1ヶ月前にも来ているが、自販機で購入するのはこれが初回だ。
それは朝の6時ちょっと過ぎのことであった。
なかなかに早い時間帯だ。
お店のドアは開いていたので中に入ってみたが、なんか真っ暗で誰もいなかった。
きっと準備中だったのだ。
30分ほど外の車の中で待機し、お店に電気がついたのを確認して再突撃した。
ハンバーガー自販機である。西日本にはこれ1つしか存在しない。
ちなみにトースト自販機は西日本に1つしかなく、それも高知だ。
西日本はパンに弱いと感じた。
結論から言うとこの機種は2021年現在もうドライブインダルマには無いが、当時を回顧しながら思い出を書く。
メニューは3種類だ。
ホットドッグレタス・ホットドッグハム・ホットドッグハンバーグ。
価格はどれも150円。
ボタンを押す前に、「ちょっと待てよ」と僕は考える。
ディスプレイのイメージはどう見てもハンバーガーなのだ。
ハンバーガーに挟まっているのはパティ(≒ハンバーグ)だ。
ホットドッグハンバーグは、僕らのイメージするオーソドックスなハンバーガー?
であれば、ホットドッグハムはもしかしたらパティの代わりにハム?
ホットドッグレタスは?まさかレタスパンじゃないよな??
…ビビリの僕は無難にハンバーグを選択した。
ボタンを押すと、内部で数10秒加熱される。
昔のこたつの中みたいな、力強い赤いランプが点滅する。
このランプ、見方を少し工夫すると、パネルに表示されているじいさんの心臓がドクドクと…。違うか、心臓右になっちゃうし。
どうでもいいが、じいさんの持っているプレートが「デブの見た夢」みたいになっているな。
なんでもかんでも全部盛りで、テンション上がりっぱなしで成層圏行くヤツだ。
そうこうしているうちに、コロンと箱が登場だ。
箱ごとアツアツだ。
箱の中からは、白い紙に包装された小さなハンバーガーの登場である。
この小ささは大体どこのレトロ自販機でも共通なので、僕は驚かない。
おっと、なんだか外から見る限りでは中身の主張が控えめだが、どう出るか…?
ドキドキしながら上のバンズを取ってみる。
工夫ーーーーーッ!!
そうきましたか!僕は膝を打った。
ハンバーガーを四つ切りにし、うち2枚をうまく挟んでいるのだ。
これで1枚のハンバーグで2つのハンバーガーが作れる。天才的な発想だ。
そして、ホットドッグかどうかはわからんが、ハンバーグは確かに挟まっていて安心。
あとはわずかなマヨネーズとケチャップソースだ。
フニフニっとした、コッペパンを加熱しすぎたような食感。
シンプルとしか言いようのない味。
これですよ。これがいいんですよ。
フニフニを味わい、1日のドライブが幕を開ける!
レタス編
また来たぞ、ダルマー!
2年後のことだった。再び僕はダルマを訪問した。
さてさて、例のハンバーガー自販機のパネルのじいさんはお元気かな…?
じいさん自販機、リストラされていた。
スタイリッシュなタイプになっていた。じいさんどこいった?
…とはいっても、これもレトロ自販機だ。
たぶん40年ほどの前のものであろう。
そして、ハンバーガーは150円から200円にガツンと値上げされていた。
メニューは、左からレタスバーガー・ホットドッグ(?)・ホットドッグ(?)・レタスバーガー・ホットドックロースハム・ホットドックハンバーグ。
うわぁ、チグハグだ。
バーガーが混じっているし、ホットドッグとホットドックも入り乱れている。
「複数名のバイトたちの連帯感が無いのか?」とか思ってしまう。
しかも左から2番目と3番目は、ホットドッグに続いて何か2行目が書いてあるのだ。
しかしネームプレートが地盤沈下でバーガーボックスに沈んでいる。メチャクチャ内容知りたい。
今回はレタスバーガーにした。
かつてのホットドッグレタスではないのだ。バーガーであれば、確実に肉が挟まっているハズ。レタスパンではないハズ。
はいはいはいー、出てきましたよー。
まだ中身は見えない。吉と出るか凶と出るか!
肉キター!
お馴染みのハーフサイズ!知ってる!お久しぶり!
そしてレタス!
メニュー名にしていいほどの量かどうかは微妙だが、せっかくなので大声で言うぞ「レタス」!!
味の感想は省略しよう。
前回とほぼ同じで、レタスが1枚挟まっただけだからだ。
マクドナルドなどと比べるとコストパフォーマンスは悪かろう。
しかし、ドライブインのオーナーさんが毎日作って補充しているし、自販機自体の管理もとても大変なのだ。
この自販機から出てきたものを食べられる。
それだけで大変な価値があるのだ。フニフニパン、ごちそうさま!
日本で2箇所、川鉄自販機!
冒頭で「川鉄自販機を刮目せよ!」とか言っておいて、遅くなってしまった。
ドライブインダルマの名物は川鉄の麺類自販機だ。
これが圧巻であり、代名詞ともなっている。
いよいよそれをご紹介したい。
天ぷらうどん編
まずはこの光景を見てほしい。
川鉄自販機だ。
すごい。3つも並んでいる。
「三十三間堂」に入ったときはその厳かな雰囲気に息を飲んだが、この川鉄自販機の三並びにも息を飲む。
メチャクチャにレアな自販機なのだ、これ。
山形県の「ドライブインアメヤ」にあったり四国のとある路上にポツンとあったりしたが、2つとも故障してさ、あわやここ1箇所のみになりそうだったこともある。
ドライブインアメヤについて知りたい方は、上記リンクを辿ってほしい。
2021年現在は神奈川県相模原市や埼玉県にて稼働している川鉄自販機があるが、それでも国内数基だけの非常に貴重なものだ。
1980年ごろにはもう生産中止されているそうだから、最低でも41年前のものだ。
とんでもねぇ歴史遺産。
ザ・昭和って感じのオレンジ。
天ぷらうどんを食べよう。
ボタンなどはない。250円を入れると自動的に作り始めてくれる。
はい、そんで20数秒で出てきた。
天ぷらうどんが「おはよう」って感じの顔して出てきた。かわいすぎる。
小エビの天ぷらに、カマボコとネギ。
ダシは関西だけあってやや薄めのあっさりテイストだ。うまい。
以前に朝6時にここに来たときには、麺類自販機は準備中のためか食べることが出来なかったのだ。
今回初めて麺類を食べることができ、感無量だ。
きつねうどん&ラーメン編
夕暮れ時に訪問したこともある。
川鉄自販機は日本中でここ1箇所だった時期であったと記憶している。
麺類自販機は3台だ。
前回は天ぷらうどんであった。まだきつねうどんとラーメンがある。
全部食べねばなるまい。
それで初めて、3つある川鉄自販機全てを使ったこととなる。
川鉄自販機は、まるで壁にあるドアのようだ。
厚みが全く無いのだ。
なぜかというと、壁に自販機が埋め込まれているから。
川鉄自販機に合わせて壁を造ったのだろう。それだけ大事な自販機。このドライブインの顔なのだ。
そんな自販機が3台とも稼働していてうれしいよ。
40年前のものだから、壊れたらもう交換部品の調達も困難だし、修理できる業者さんもわずか。
修理出来ずになくなく営業終了してしまうケースも多いのだ。
だからレトロ自販機のお店はどんどん減少していっている。
はい、できた。
ここまでの過程は前項の天ぷらうどんと一緒だ。
お揚げ・かまぼこ・ネギ。
プルプルのうどんとあっさりしたダシが絶品である。
次はラーメンだ。
楽しみ過ぎて待ちきれない。
むしろこちらから迎えに行くぞという意気込みで取り出し口の中を覗いた。
容器がとんでもない角度になっている。
これは何をしているのかと言うと、陽気にお湯を注いだ後に斜めにして湯切りをしているのだ。
これを2・3回繰り返して麺を温めた後、ダシなりラーメンスープなりを注いで完成となるのだ。
機種によって斜めにして湯切りしたり、蓋をしてからスピンさせて遠心力でお湯を吹っ飛ばしたりと様々だ。興味があれば調べてみると面白い。
ラーメンお待ちー!
醤油のいいにおいが香ってくる。
チャーシュー・モヤシ・ネギだ。
テンションをチャーシューに全振りしているので、モヤシとネギはいささか元気無さそうだ。
しかしチャーシュー素晴らしいな。今すぐに噛みつきたい。
誰もが思い描くことができる、シンプルで安心できる味だ。
とても満足だ。
転んでも立ち上がれ、これからも。
最後の項目では、その他の施設内の自販機等をご紹介しながら、このドライブダルマの歴史について語りたい。
冒頭で記載した通り、1971年創業のドライブインダルマ。
50年も昔のことだ。
現在80歳近いオーナーさんご夫妻が、食堂としてオープンしたのがここの始まりだ。
転んでも立ち上がれるように、ダルマという名前にしたそうだ。
その後すぐにこれら川鉄自販機を設置し、24時間の年中無休での営業となった。
当時はコンビニもないので、トラック運転手や釣り人たちの憩いの場だった。
深夜にご飯を食べたり、暖かいドリンクを飲むのって、当時はなかなか困難だったのだ。
これらの食品自販機の中身は、オーナーさんご夫妻とご家族にて基本的に手造りをしているのだそうだからすごい。
ハンバーガーとか、まんま外注している店舗も多いと聞いているが。
ここはかき揚げから油揚げやチャーシューまで、ちゃんと仕込んでいるのだとニュースで見た。
多い日は300杯ほどの麺類を仕込むという。
そりゃ大変だろうよ。古い機械のメンテナンスや電気代等もあるし、この価格で昭和レトロを楽しめるのはとても貴重だよ。
ヘタすりゃ博物館に展示され、触れることすら許されない存在であってもおかしくはないのだ。
それをこうして実際に使わせてもらっているのだ。感謝しかない。
2004年のときの台風では、1m以上も浸水して自販機が壊れ、復旧不可能となるギリギリのところだったそうだ。
それでもダルマ、転んでも立ち上がった。
当時の奇跡の復活劇がなければ、僕はここの川鉄自販機に出会うことすらなかったろう。
どんどん衰退していくドライブイン。
どんどん壊れていく、ちまたのレトロ自販機。
そんな中で幻の川鉄自販機が永年3台並んでいる光景がいかに貴重か。
京都の歴史的仏閣も素晴らしいが、こっちもこっちで本当にすごいのだ。
ちゃんと守らなければいけない日本の歴史の1ページであることは事実なのだ。
しかしレトロ自販機の歴史は、風前の灯火。
せめて僕は何度も訪れ、全てを味わい、記憶と記録にそれを記したい。
そう思ったのだ。
目ざとい方は気付いたかな?
全てを食べたいと言っておきながら、僕はまだハムの挟まったバーガーを食べていない。
食べようと思ったら売り切れだったりしたのだ。
コンプリートは果たせなかった。
しかし、だから良いのだ。
なぜならもう一度僕がドライブインダルマを目指す理由があるから。
外に出ると夜の帳が下りていた。
「また来るよ」と、僕はアクセルを踏む。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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