日本最北端といえば、「スコトン岬」だよね!!
…どうやらそう言われていた時代があった様子だ。
正直、物心つく前から日本最北端は「宗谷岬」の一択であると刷り込まれていた僕としては、少々驚いた。
おそらくそのように位置づけられていたのはそんなに長い年月ではないような気がするが、Webの各所から情報をかき集めた限りでは、事実のようだ。
今回は、その理由・宗谷岬との関係性、そして現在もスコトン岬に残る、日本最北端と呼ばれていた頃の名残についてご紹介したい。
真に北に位置する者
今回の記事は、日本の突端をいろいろご紹介する以下の【特集】の一環として執筆する。
本記事のみならず、どうぞ心行くまで突端を味わってほしい。
そして小難しい話で恐縮だが、まずはスコトン岬のご紹介の前に、最北端のご説明をさせていただきたい。
日本最北端。
この優勝争いにエントリーできそうな岬が3つある。
ちなみに宗谷岬のちょっと北に「弁天島」という無人島があるが、そのことはいったん忘れておいてほしい。
さて、ではこの3つの岬を地図で見比べてみよう。
はい、こうなった。
いつの日か択捉島をドライブやツーリングできるようになり、日本の真の最北のカムイワッカ岬を目指す旅人たちよ。
宗谷岬からたった2805m北に行くために、本州縦断するくらいのとんでもない距離を走ることになるから震えてほしい。
(それ、めっちゃ楽しそうだな)
…っていうのは余談でして、スコトン岬だ。
宗谷岬よりも6541m南にある。
正真正銘、現在日本人がちゃんと立てる日本最北は宗谷岬なのだ。
では、なぜスコトン岬も最北と呼ばれるのか。
それは、まだ測量技術の精度が現代ほどではなかった頃、「宗谷岬もスコトン岬も日本最北だよね」と、ゆるーくひとまとめにされていたからなのだそうだ。
そして、その中でも日本最北であることを売りにしていたのが、スコトン岬であったらしい。
だから冒頭の通り「日本最北端といえば、スコトン岬だよね!!」ってなっていた時代があったらしい。
しかし、キチンとした測量をできるようになったら、宗谷岬の方が北だった。
で、1974年の事件だ。
宗谷岬がスコトン岬にクレーム言って来た。
「ウチが最北なんだから、オマエは最北を名乗るなよ」と。
うわ、宗谷岬さんって意外と心が狭いなって、ちょっと僕はドン引きした。全然生まれていないけど。
スコトン岬さん、ちょっと困った。
そりゃ事実なんだけど、最北という観光の売り文句を手放すのはちょっと痛い。
そこで考えた。
最北限!!
日本最北限!!
最北端から最北限へと肩書を変更したのだ。
Webで検索しても、スコトン岬以外では使われないフレーズ、"最北限"の爆誕である。
スコトン岬は"かつての最北"ではあるが、突端岬の1つとしてこの項目で扱う。
だってさ、いずれカモイワッカ岬が真の最北端になっても、平成から令和初期のこの時代に"日本最北として"の宗谷岬を目指した僕らの思い出、消えないでしょ?消えてほしくないでしょ?
そうならないように、僕は過去にも敬意を払おう。
愛とロマンの始発点
ところで僕は、日本最北の有人等である礼文島のスコトン岬には3回行った。
3回とも雲が多めであった。
今回はあなたも雲の写真を堪能してほしい。
朝の7時過ぎ。
僕らは礼文島最北のスコトン岬でバスを降りた。
7月下旬なのに寒ッ!!
最高気温は18℃くらいまで行くそうだが、朝だし強風だしで、今の体感気温はきっと10℃ちょい。震える。
バス停から徒歩数分で日本最北限のスコトン岬展望台だ。
あの広場がスコトン岬の展望台。
実は礼文島の北にも島はある。すぐ海の向こうに見えている。
あれは「海驢島(とどしま)」という無人島だ。
僕らはあの広場に向かって階段を下る。
あ、「僕らは」って2回ほど書いたけど、別に旧来の友人ってワケではない。
昨日とか一昨日に出会った仲だ。大体みんな一人旅だ。
そして「桃岩荘」という日本TOP3に入るんじゃないかっていうクレイジーな宿に宿泊している。
そのイベントの一環で、今朝は4:30起きでここまでバスでやってきたのだ。
挨拶だとかはしてあるし、ここまでのバスで近くの席の人とは談笑したけど、まだギクシャクしている間柄だ。
さぁ、広場までやって来た。
『最北減の地 スコトン岬』の碑が立っている。
かつて最北端であった証がこれだ。
旅人がガンガン訪れてお土産屋もあって盛り上がる宗谷岬もいいけど、真夏なのに北風の沁みる曇天のスコトン岬もまたいいと思う。
北の果てって感じがするから。
もちろん僕らは記念撮影をする。
毎回必ず撮る。
まだ打ち解けない仲だけども、このあとの冒険で一生忘れられない仲間となるのだ。
その最初のひとコマがこれだ。
イベント名、愛とロマンの8時間コース。
昔から礼文島に伝わる、伝統のハイキングだ。
僕らの宿泊してる桃岩荘では、朝一に島の北端のここスコトン岬からスタートし、日没時間に宿まで徒歩で歩く。
島の道路は基本的に東側に1本しかないんだけど、島の西側が絶景なのだ。
高度0mから高山植物の咲き乱れ、礼文島が花の浮島と呼ばれている所以だ。
それらの絶景を繋ぎながら、8時間かけて歩くコースがこれだ。
コースの大半は山道で、店もほぼない。
みんな宿で作ってもらったお弁当を持ち、地図を確かめ、定期的に宿に連絡を入れながら島を縦断するのだ。
ちなみに桃岩荘の8間コースは、本来の8時間コースのさらにずっと先の宿まで戻らないといけないので、10時間くらいかかる。
ぶっちゃけクタクタになる。
しかし、それだからいいのだ。
秘境礼文島の、道路も集落もない絶景の中を、みんなとひたすら冒険する。
途中は危険な場所もあり、男子は女子に手を貸すことが推奨されていたりする。
そんで愛やロマンが芽生える。
そりゃね、付き合う人も結婚する人もいますわ。
そんな愛やロマンの出発点がここスコトン岬である。
冒険の始まりの地。
※ 近くには北の最果ての宿、「民宿スコトン岬」があるよ。
最北のトイレとお土産と
そして僕らはまたスコトン岬のバス停まで引き返すのだ。
ここに「スコトン岬観光おみやげ店」というお土産物屋とトイレがある。
お土産物屋ではペットボトルなど買うと良い。
水が無くなったらマジにこの先死にますので。
早朝から営業してくれていてありがたい。
あとね、こんなもの売っている。
日本最北限訪問記念証だ。
日本最北端や日本最南端のものを持っている人は多いだろうが、日本最北限は少しだけレアかもしれないな。
2つ折りのカードを開くとこんな感じ。
島固有の花であるレブンアツモリソウの写真が良いですな。
右側には当日の日付入りのスタンプを押してもらえた。
今でも大事に取ってある、旅の思い出だ。
さて、これが現場で撮影した写真だ。
後ろに気になるものが写っている。
『最北限のトイレ スコトン岬』と書いてある。
まさにトイレだ。公衆トイレだ。
最北の記念に入ってみても良いだろう。
というより、8時間コースを歩くのであればトイレは非常に少ないので、ここでしっかり寄っておくのが必須だろう。
北海道本土である宗谷岬近辺には、いろんな最北がある。
最北のガソリンスタンド・最北の食堂・最北の土産物屋・最北の温泉・最北のマクドナルド・最北の線路…。なんでもある。
しかし礼文島のスコトン岬は…、まぁ人工物はちょっと少なめだよな。
トイレ1本で勝負している。
でも潔くって好き。
そうこうしているうちに、宿の仲間が円陣を組んで「オーッ!!」とか言っている。
いや、僕が仲間外れにされたワケではないんだけど。
同じ宿だけど、別チームだ。
桃岩荘では、8時間コースの1グループのメンバー上限は大体15人ほど。
これに収まりきらないと、「桃組」と「アホ組」の2つに分けられる。
さらに多いと「岩組」が登場する。
なんで桃と岩の間に"アホ"が入るのかナゾだが、みんなこぞってアホ組に入りたがり、そして僕はアホ組であった。
円陣を組んでいたのは、桃組だ。そしてスタコラ歩いて愛とロマンをスタートさせていた。
なんか負けた気になったアホ組の僕ら。
「僕らはどうする?同じように円陣を組んでもねぇ…」と言い、なんか知らないけどトイレの前で記念撮影をした。
トイレの前で「イェーイ!」とか大声上げながら、怪しい集団だった。
そんなこんなで、冒険がスタートするのだ。
この曇天の空の下から。
また盛り上がれよ、花の浮島
2021年9月下旬、僕はこれを執筆した。
夏の間だけ営業していた桃岩荘が大団円を迎える時期だ。
2つ、言っておきたいことがある。
1つは、礼文島の景色の素晴らしさ。
灰色の写真ばかりであなたのテンションもそこまで上がっていないと思う。
僕もまさに現地ではそうだったかもしれない。
しかしだ、毎回必ず快晴になったのだ。
僕らの仲が打ち解けるのと比例するように。
どこまでも澄み渡る海を眺めながら、僕らは歩いた。
高台で座って、海を眺めながらのお弁当は最高だった。
お弁当自体はチープでアレなんだけど、人生でも至上のランチタイムであった。
2つめは、そんな冒険の舞台となった桃岩荘について。
このコロナ禍で2年連続で営業できていないのだ。
それが悲しい。
日本一周をする旅人が立ち寄り、そして居心地よすぎて沈没する確率の高かった宿。
この2年間で日本一周人が立ち寄ることができないのが、もったいなすぎる。
人生変わるレベルの宿なのに。
(個性的すぎるので、もちろん肌に合わない人も多くいる)
僕も、ここで知り合った仲間たちとは涙の別れをしたものの、結構な確率でどこかの旅先でまた再会している。
頻繁に連絡を取り合うメンバーもいる。
今では貴重な、昭和時代のユースホステルの文化を残す宿。
来年の2022年は復活し、伝統を後世に引き継げることを強く願う。
そして、これから宿を訪問するであろう人と、いつの日か思い出話をできることを、僕は夢見ている。
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最北限のスコトン岬から「ゴロタ岬」。
8時間コースの第1章だ。
「じゃ、行きますかね」。
一昨日知り合って共に行動してきた、同じアホ組のニュートン・ふじふじ・マリンバに声を掛けた。
長い長い、そして最高の1日がスコトン岬から始まる。
うん、やはり僕の思い出の中でも、最北といえばスコトン岬なのかもしれない。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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