日本の本土の最北端、「宗谷岬」。
その岬の背後には緑いっぱいの、WindowsXPのデスクトップ画面みたいな丘が広がっているんだ。
その丘を「宗谷丘陵」という。
その一面が緑の宗谷丘陵にはね、一本の真っ白な道があるの。
白いホタテの貝殻を粉砕して敷き詰めた、おとぎ話のようなファンタスティックな道。
「宗谷丘陵 白い道」・「最北の白い道」・「シェルロード」…。
この道の呼び方は複数ある。
うーん、僕はこのブログ内ではなんて呼ぼうか。
あえて、今は少しマイナーになってしまったけども、最初期の呼び名である"最北の白い道"と呼んでみようか、ねぇBLUEayさん。
では、今回は真夏でも涼風の吹く日本最北の丘の話を、日本4周目から6周目の話をブレンドしつつ語りたいと思う。
アプローチ方法ご紹介
ここにあなたが向かう上で最初に突き当たる障壁。
それは「どこにあるのかわからない」という点であろう。
もちろんご存じの方も多いと思うし、コロナ禍で僕が自宅でウダウダしている間にわかりやすい標識だとかが作られたというウワサも耳にしている。
だが、まぁここは書かせていただきたい。立地を感覚で覚えてもらいたいし。
上の図、全部まとめて宗谷丘陵という広大な丘だと思ってもらっていい。
ガチに走り回りたい人以外は、宗谷岬訪問のついでに「宗谷岬公園」から眺めるのが一般的だ。
「最北の白い道は宗谷丘陵にある」と表現されることが多く、このことから宗谷岬から白い道を目指そうとする人も多い。
確かに目指せる。だけどもちょっと遠い。
それは上図を見ていただければおわかりだろう。
さらに言うと、国道238号と道道889号以外は全部擦れ違い困難な幅の未舗装路だ。
オフロードバイクで砂煙を巻き上げながらヒャッハーしたいのであれば、東から行ってもいいし北から行ってもいいだろう。
だが、そうでないなら最短ルートである西側アプローチがオススメだ。
ただ、ここいらの国道はとんでもなく走りやすいので、気をつけないと分岐をすごいスピードでスルーしてしまうだろう。
国道を反れるポイントについて、上にストリートビューから引用させていただいた。
ただ、国道からの分岐を見つけたところで、そのあとも2つほど小さな分岐がある。
これが少しだけわかりづらいのだ。
これが西側アプローチだ。
「宗谷郵便局」をまずは目指してほしい。
その背後にある四差路を間違えないようにするのだ。
ちなみにGoogleマップでは三叉路だ。衛星写真で見ないと、行き止まりの4本目は表示されない。
だから、「郵便局裏の分岐をとにかく左へ…!」と覚えておくと、行き止まりに吸い込まれるので注意だ。
左が行き止まりの道。右が最北の白い道への正解だ。
ぶっちゃけ、まともな神経であればどっちも入り込みたくないくらいに狭いし 激坂である。
せっかくなので、左の行き止まりの世界をご紹介しよう。
もうすんごい傾斜。
でも途中から舗装されているので、ちょっと希望が持てる。
あそこまでガンバレ、と。
…と思ったら、舗装ゾーンはたったの20mくらいで終わる。
なんなの!?
しかもその先は何かの施設があるだけで行き止まりなのだ。
なんなの!もう、バッカじゃないの!?
苦労して切り返した後、下界を見下ろした光景がこれだ。
右の方には拡大すれば宗谷郵便局が見えているし、写真右上に見切れているのが国道238号だ。
いいかい、こっちへ来てはダメだ。
四差路では左から2本目の道を登るのだ。
緑の丘の、白亜の道を走れ
さて、白い道への続きだ。
道はエキセントリックなレベルで狭いが、もう少しでホワイトゾーンが出てくるからしばらくの辛抱だ。
ちなみにHUMMER_H3で突入したときは、本当にドキドキだった。
もう対向車来たら終わる。対向車がバイクでも詰む。
どうでもいいけど、もう1回写真を掲載する。
ここまでの3枚の写真は、それぞれパジェロイオ・HUMMER_H3・パオでの走行シーンだ。 順番に日本4周目~6周目である。
毎回同じ場所で写真を撮っていることが、右手の2つの電柱からわかる。
僕は律儀だ。
そして始まる白亜の世界。
どうよ、モクモクの入道雲を背に高原を走っているぞ、僕の日産パオ。
我が愛車ながら、かわいすぎる。
「このまま車のCMに使えないか?」って思えるほどのロケーションだ。
もちろん、それは僕の日産パオだからではない。
あなたの愛車もきっとここに来れば最高に輝くであろう。
ただし白い道は舗装路ではない。
ゆっくりと走ってほしい。ゆっくり流れる車窓からの眺めもまたステキなのだ。
そもそもこの白い道の正式名称は、「稚内フットパス」。
フットパスとは、歩行用の道を指す。
つまりハイキングしている人もいるかもしれないのだ。見たことないけど。
なので気をつけて走ろう。
この白い道には駐車できるスペースがほとんどない。
僕の知る限りではあるが、駐車場として設けられている敷地は無い。
最初の坂を上がりきったところに、上の写真のようなちょっとした広場とベンチがある。
ギリギリ車道を避けたくらいの場所には、停まっている車をチラホラ見かける。
もちろんだが、草原の中を車で突撃して行ってはダメだ。
同じ場所だが、晴れるとさらにすごい。
個人的には、3kmの白い道の中で序盤のここが一番のロケーションである。
愛車と緑の丘と海、全部一度の撮影できる。
うまくアングルを工夫すれば海上の「利尻富士」もフレームに加えられるだろう。
車外で最北の風に当たる。
喧騒に包まれる宗谷岬よりも秘境感がある。
登山の途中、ちょっと景色のいいところで小休止をするかのような気分だ。こういうところでコーヒー飲みたい。
そして、外に出たからには足元をよーく見ていただきたい。
これ全部、ホタテの貝殻なのだ。
白い道の正体、それは砕いたホタテを敷き詰めたことによる白なのだ。
こんな道が3kmも続くんですぜ。
北海道はホタテが名産とは言え、この道を造り、そして維持する労力は甚大であろう。ありがたい限りだ。
そういえば、沖縄の「竹富島」の集落内は珊瑚を砕いて敷き詰めた白い道だったな。
これ結構あるあるなんだけど、日本の最北と最南は、意外と共通点が多いのだ。
閑話休題。
そして再び白い道を進む。
すごく大きな見どころは無いが、宗谷丘陵の緑の丘が流れていく様を堪能してほしい。
遠くには風力発電のプロペラが無数に回り、そして遥か彼方には宗谷岬のすぐ上の丘にある「アルメリア」という風車のレストランがかすかに見える。
人工物はこれくらいであり、日本ではないかのような絶景がずっと広がる。
走っていて景色が劇的に変化するわけではないし、この広大な眺めを文字でどのように表現すれば良いのかもわからない。だから表現に詰まる。
だけども退屈さは全くない。
ずっと眺めていられる景色なのだ。
ときどき「そろそろ戻ったほうがいいのではないだろうか?」と不安になる感覚もある。
大丈夫、これも秘境や林道に足を踏み入れる際によくある感覚だ。それも醍醐味。
3㎞先のゴールに何があるわけでもない。
適当に堪能したと思ったらUターンしてもよいだろう。もっとも、Uターンできる場所自体が少ないので、慎重にだ。
戻る際、最初に登って来た激坂を下ることになる。
この直前の光景、上の写真のように道がバサッと途切れていてその向こうに最北の海が見える。
なかなかいい眺めだから覚えておいてほしい。
僕らは初めての冒険をする
2021年現在は、そこそこ有名なこの白い道。
老いも若きも「白い道、白い道」と呟きながら宗谷の深淵に足を踏み入れる。
しかしこの道、歴史はそこまで深くは無いのだ。
2011年の5月、つまり本記事の執筆時からちょうど10年前に完成したのだ。
その翌年である、2012年夏の話をちょっとしよう。
旅友であるライダーの「katsu君」が以前に教えてくれた店、「ノシャップ岬」の「漁師の家」にて、僕はウニイクラ丼を食べている。
その対面に座るのは、BLUEayさんだ。
日産の180SXというゴチゴチのスポーツカーで、1人全国を旅してまわるスゲー人だ。
ちなみに初対面。
今朝の段階でBLUEayさんは小樽、僕は旭川近辺。
「お昼に会おう」ってなって設定された場所が、お互いの真ん中ではなくって日本最北の稚内市だ。距離ガバ。
で、ランチを食べながら「この後はどこに行きたい?宗谷岬と…。」と僕が訪ねた際に、BLUEayさんの口から出たのが最北の白い道であった。
なるほど、お目が高い。
これね、撮影したのは本記事執筆時だけど、そのときお店で僕が開いた実物だ。
「0円マップ」。
北の大地を走るライダーのバイブル。
現在は残念ながら廃刊となってしまったが、その最後の号だ。
内容は大体全部頭の中に入っている。
ここに最北の白い道が掲載されていたことも覚えている。
知名度はゼロで、どんなところか不明だ。
しかし、この時期に訪問したということが、後々のステータスになるかもしれない。
じゃあ行こうか。
って思うんだけど、0円マップの地図は縮尺が甘いし大雑把であることが特徴だ。
どこだか全然わからん。
併せてツーリングマップルを取り出し、慎重に照合する。
宗谷郵便局近くから始まるダート。これが白い道になったのではないか、と推測した。
そこからは冒頭の通り(行き止まりの件)である。
四差路に翻弄されつつも、僕らはそれぞれの車で最北の白い道に到達する。
BLUEayさんの180SXだ。
舗装路から白い道に切り替わって50mほどの地点。
後ろにはかすかに、先ほど3枚連続で掲載した特徴的な電柱が見えている。
当時の僕の愛車のパジェロイオである。
ダートを走ると喜ぶ子。一緒に数々の秘境・廃村などを探検している子。
最高の気分だったので、BLUEayさんに写真を撮ってもらう。
最高の理由はもう1つあって、雲の多い天候であったが左(北側)から青空が広がってきたという点だ。
バッチリだ。かっこよすぎる。
あの向こうはサハリンか?
この車で全国を旅しているということに驚愕。
しかしそれこそがアイデンティティ。僕も誰も使わないような車で日本一周してみたい。
僕も、そしてこの記事をお読みのあなたも、もう知っている。
後年、ここは少し整備されてベンチが置かれたり、駐車できるわずかなスペースができることを。
白い道のほぼゴール付近までやって来た。
ここも毎回車を停めている、お気に入りのスポットだ。
ところでさっきの0円マップの写真で気付く方は気付かれたと思うが、当初の白い道は2km区間であった。
2021年現在は3kmに伸びたようだ。
Uターンして戻る。
実はここに来る前に宗谷岬に立ち寄ったりしていたので、太陽は傾いてきた。
しかしすっかり晴れ間が戻ってきたようだ。
この後僕らは、本日2度目の宗谷岬に向かう。
後日談ではあるが、僕らがこの白い道を走った頃には、Web上で「白い道_宗谷」などと検索しても、情報は数件しか出て来なかった。
この後で僕が「最北の白い道を走った」とWeb記載したところ、一気にYahooの1ページ目に表示されたりしたものだ。
2012年。そのくらいの最初期のお話。
BLUEayさんとは、この後の宗谷岬で別れた。
ときどき情報交換はしているものの、2021年現在も再会はしていない。
しかし、インターネット時代かつコロナ禍の旅人は、Web上でも繋がれるよね。
BLUEayさんは僕がこの記事を書くことも知っているし、きっと読んでくれるだろう。
それだけでね、僕の魂は再び最北に戻ることができるのだ。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報
- 名称: 最北の白い道
- 住所: 北海道稚内市大字宗谷村字宗谷
- 料金: 無料
- 駐車場: ほぼなし。路肩などを利用。
- 時間: 特になし