日本の最北端。
このシンプルなひとことに、どれだけの旅人たちの感情が揺さぶられただろうか。
どれだけの旅人が、その最北の地を踏むために旅立っただろうか。
数ある「○○の最先端の岬」の中で、今回ご紹介する「宗谷岬」は究極であると僕は考える。
いろんな意味で「TOP of TOP」の岬。
その世界に到達したエピソードである。
北極星を象る最北端の碑
北海道・本州・四国・九州。
日本の本土と言われるこの4つの大きな島、それぞれの東西南北端がある。
詳しくは、僕の書いた以下の【特集】をご参照いただきたい。
その中でも最北。
北海道最北であり、日本最北の岬が宗谷岬である。
無数のツーリングライダー、旅ドライバー、チャリダー、ヒッチハイカー…、全ての旅人がこの一極を目指すといっても過言ではない。
僕も、2020年現在において7回か8回くらいは訪問しただろうか?
北の大地、北海道に上陸すると2回に1回くらいの頻度でここを目指す。
「北に行くなら、北の最果てまで」。
そう考えてしまうのだ。
そこはどんな岬なのだろうか?
いったい何があるのだろうか?
そこにあるには、日本最北端の碑だ。
三角形のとんがったモニュメントがあり、石板に「日本最北端の地」と書かれている。
これだ。
これがあるだけで、僕は狂喜乱舞だ。
僕だけではない。旅人・ライダー・観光客、入れ代わり立ち代わり、みんなこの碑の前で記念撮影をする。
宗谷岬の象徴であり、日本最北端の地をこの足で踏んだという証明だからだ。
少し拡大してみよう。
日本最北端の地
The Northernmost Point in Japan
英語でも、日本最北の地であることを書かれている。
よーく見ると、ちょっと後付けっぽくプレートが貼られている。
これ、実は2010年に訪問したときにはなかった。
2012年に訪問したときについていたから、きっとその間にインターナショナル化が進んだんだ、宗谷岬。
これが2010年。
比べてしまうと、ちょっとノッペリとしたデザインであった。
この特徴的な三角形が何なのかというと、北極星の一稜をかたどったデザインなのだそうだ。
最北だから北極星。
ところでボキャブラリーに乏しい僕は「一稜ってなんだよ?」って思うのだが、いろんなWebサイトで「北極星の一稜」とは書いてあるものの、それ以上の説明がない。
そもそも北極星自体に"稜"はない。
これさ、たぶんだけど…
…ってことじゃないの?って僕は推測した。
北極星というよりかは、デフォルメされた「おほしさま」。
違っていたらごめんなさい。
そして「そのくらいみんな知っているよ!」だったらごめんなさい。
三角の間に、アンテナみたいな造形物。
これは「N」を表している。North(北)の「N」。
ドライブ・ツーリングシーズンの日中だと、大体いつもこの周辺で多くの観光客が写真撮影をしている。
このモニュメントを無人の状態で撮影するには、その記念撮影の一瞬のスキをつかないといけなかったりする。
逆を言えば、1人旅であったとしても、カメラを持ってキョロキョロしていれば、親切な誰かが声をかけてくれてシャッターを押してくれる。
僕は、わりと現地で知り合った旅人と共に行くことも多い。
道北で出会う旅人は、大体宗谷岬を目指すか、宗谷岬から下ってきたか。
上の写真は、なんかすんごいスポーツカーで1人旅をしている女性と合流して宗谷岬を訪問したときの写真だ。
似たような写真ばかりをUPしているが、僕にとっては1枚1枚に壮大なドラマがある。
愛車と共に
記念すべき岬に到達したからには、自らの愛車と共に撮影をしたいと思う人も多いだろう。
結論から言うと、これがなかなか難しい。
駐車場の路面と、最北端の碑が立つ路面との間には、段差がある。
つまり、基本的には乗り入れ禁止であり、歩行者のみが立てる「歩道」に属する地だ。
従い、もしWeb上で碑の間近にバイクを置いている人がいたら、段差を乗り越えたのだろう。自転車を置いている人がいたら、ヒョイと持ち上げたのだろう。
…とか考えていた。
しかし、この記事を読んでくれた、敬愛する先輩旅人たちから有益な情報をいただいた。
『碑の右側から行くと段差ほぼなしなので、押していける。通常は「乗り入れ禁止」的な掲示物があるが、過去災害があった際や2020年のコロナ影響のように、観光客が極めて少ないときにはこの掲示物がないことも。』
なるほど!
二輪の人たちには希望が!
でも四輪はさすがにマネできない! !
では、四輪車がこの最北端の碑と一緒に撮影する方法は…。
なんとかかんとか、できなくもない。
まずは碑の目の前より少しずれた位置の駐車スペースを確保。
さらに隣に他の車がいないこと。
そして、背後の車道ギリギリ、あるいはさらに遠くまで下がってから目いっぱいのズーム。
車が混雑していることが多いから、今まで6・7回ここを訪問して、愛車との撮影が成功したのは上記の2回のみである。
余談だが、上の写真を撮った直後に愛車のHUMMER_H3の調子が悪くなった。
既に夕方で冷気が襲って来ているし、最北の岬も急に閑散となる中、愛車の不調は心底肝を冷やす。
後述する「日本最北端のガソリンスタンド」に飛び込んだものの「重大なトラブルかもしれません」と絶望的なコメントをもらったのは、今となってはいい思い出。
※結論、問題はなかったのだが。
間宮林蔵とサハリン
もう1つ、定番のショットをご紹介する。
「間宮林蔵」と日本最北端の碑の、コラボショット。
撮影方法には説明入らないだろう。上記の通りだ。
間宮林蔵は、僕の尊敬する探検家の1人だ。
北国を多く探検し、「サハリン」が島であることを発見したりした人。
【世界地図に名を残した唯一の日本人】探検家・間宮林蔵 | 歴人マガジン
彼の活躍は、例えば上記のリンク先などで確認してほしい。
「間宮海峡」という名前で、サハリンとロシア本土との隙間の海峡に名を残しているぞ。
ちょっと肖像画の顔が「バカ殿様」っぽくてアレだが、実績はすごい人だぞ。
上の2枚の間宮林蔵の写真、そのいずれも水平線にサハリンが見えているのをお気づきだろうか?
間宮林蔵は、遥かなるサハリンをこの地で眺め続けている。
サハリンは、日本から一番近いロシア。
その距離は43㎞である。
これが、僕が宗谷岬にて撮影した中でも、トップクラスにサハリンが良く映っている写真だ。
もっとも、一番無難かつ綺麗に撮影する方法は、「稚内空港」を飛行機で離着するときだと個人的に考えているが、飛行機からの写真は今回の趣旨とは異なるので割愛する。
拡大すると、建物らしきものも見えている。
これだけロシアが近いのだ。逆に言うと、宗谷岬がすんごく北なのだ。
日本はここで終着点だが、あの向こうには果てしない世界が広がっている。
あっちに渡ったときのことを想像するとドキドキとワクワクが同時に押し寄せてくるが、たぶん僕が世界を股にかけることはない。
日本という限られたエリア、狭く深く追求していきたいから。
まだまだ日本を追及しきれていないから。
…そんなことを言っているような、ちっぽけな僕。
だからこそ、開国前に早々に海外を意識している人間に敬意を表す。
彼にとってはここは「日本の終わりの地」ではなく、「世界の始まりの地」だったのかもしれない。
宗谷岬の楽しみ方
日本最北端の店
宗谷岬の駐車場の周囲には、食堂もあるしお土産物屋さんもある。
そんな中でも、日本最北端の店を名乗る 「柏屋」をご紹介しよう。
お菓子などの一般的なお土産も多く、僕も過去何度かここで友人や同僚へのお土産を購入している。
しかしそれ以上のアイデンティティが、「日本最北端到達証明書」を発行している点である。
100円で、日付と時間入りで証明書を発行してくれるのだ。
例えば2016年バージョンがこれだ。
7回ほど宗谷岬に通った中で、日本5周目と日本2周目だけ曇っていたが、上記の写真はその曇りの日本5周目である。
証明書の青空を見て、ちょっと気持ちを上向きにさせた。
日本1周目や2周目では嬉々として購入していたが、そのうち「何枚もあってもね…」と思って購入を辞めた。
だけどもこの日本5周目は特別な思いがあって訪問したので、久々に発行してもらったのだ。
お店には、デジタルの温度計もついている。
8月なのにだったり20℃だったり、9月なのに13℃だったり…。
どれだけここが寒冷な地か、ご理解いただけるかと思う。
日本最北端のガソリンスタンド
尚、柏屋のさらに後ろにはガソリンスタンドがある。
日本で最北のガソリンスタンド、「安田石油店」だ。
ここで満タン給油をすると、ちょっと素敵なプレゼントがある。
「日本最北端給油証明書」!
あなたは日本最北端の給油所で給油したことを証明致します。
この証明書と周辺MAP、そしてホタテの貝殻の交通安全アクセサリーを無料でもらえる。
ホタテのアクセサリーは手作りだろう。
こういう品は嬉しいね。大事にしたい。
この写真は2010年のものであるが、通年やっているのか、今もやっているのかは不明なので、詳細はご自身で確認してほしい。
ちなみに僕は過去2回ほどもらっている。
「愛車がヘンなんです!助けて下さい!」と泣きそうになりながら駆け込んだのは、過去1回だけである。そして願わくば、もう2度とやりたくない。
宗谷丘陵から
駐車場から国道を挟んだ丘を上がってみよう。
歩いても数分だが、車で行っても広々とした無料の駐車場があるぞ。
この丘の上からは、ここまでの項目でご紹介したポイントが軒並み見渡せる。
もちろんサハリンも。
わかりづらいが、手前の店舗群と駐車場との間を国道が走っている。
この岬が非常にゆるやかなカーブを描いていることがおわかりいただけると思う。
この写真は、パジェロイオで到達した、日本4周目のときのもの。
奥のすごいスポーツカーで関東からやってきた旅人の姉さんとは、2020年現在も未だに親交が続いている。
国境を示す灯台であり、宗谷岬とサハリンの間を航行する船にとっては、非常に大事な役目を持つ。
なんだかカクカクで、写真映えしないデザインかもしれないが、「日本の灯台50選」にもエントリーされている。
プチ情報だが、灯台が白黒あるいは紅白なのは、雪が降った時でも灯台が見やすいようにペイントしているためだ。
白黒と紅白の違いの理由は、ごめん知らないんだ。
もう4台も車が登場して恐縮だが、全部僕の愛車。
背後には灯台の他にも、さまざまなモニュメントがある。
これらを見ながら最北の丘の上を散歩するのも楽しい。
右手に見える男女カップルは「あけぼの像」だ。
K-1でヘンテコな負け方をして有名になった元おすもうさんのことではなく、この日本最北の地の、酪農の夜明けを表す像だ。
「祈りの塔」。
1983年にこの付近で勃発した大韓航空機撃墜事件にて、乗客乗員は全員死亡してしまった。
その慰霊碑である。
アルメリアが咲き乱れていたので、慰霊の想いを込めて一緒に撮影してみた。
これは「旧海軍望楼」である。この丘の上で、僕が最も好きなスポット。
日露戦争の時、「世界最強のバルチック艦隊、どっから侵攻してくる!?可能性のある海峡を全力で見張れ!!」ってなったときの宗谷岬の要所。
そんな場所だから眺めはバツグンだ。
上まで登って宗谷岬全域を見渡そう。本稿の冒頭の写真も、ここから撮影している。
「ゲストハウス アルメリア」は、丘の上に立つ風車が特徴的な建物。
宗谷岬の肉牛を食べれるレストランだ。
この背後の丘陵は肉牛たちの大牧場で、それをダイレクトにここで食べちゃう作戦。
ジンギスカンとか牛丼とかあるぞ。
僕も初めて宗谷岬に来た日本1周目のとき、ここでランチにした。
当時の写真である。宗谷黒牛の牛丼だ。
ピンボケしちゃっていて恥ずかしいな。まぁこれも思い出よ。
もし未達であれば、あなたも日本最北端の宗谷岬に立ってみてほしい。
そのとき果たしてあなたは、何を感じるだろうか?
旅人の数だけ思いはある。
2つとして全く同じものはないだろうが、達成感と笑顔は、そこにあるのではないかと考える。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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