週末大冒険

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ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No.432【青森県】食うものは何もねぇ!マグロしかねぇ!!真冬の「津軽海峡亭」の思い出!

食堂に足を踏み込むと、その女将さんは僕に対して「もう全部売り切れだぁー!なんッもない!マグロしかないッ!!」って吐き捨てるように言った。

女将さんの中でのマグロはかわいそうなくらいに低位置なのかもしれないが、僕にとってのマグロはごちそうだ。心の中で「マグロあるじゃん。最高じゃん。」とつぶやいた。

 

そのお店の名前は「津軽海峡亭」。

津軽半島の最北端の「龍飛崎」のさらに北、橋で繋がった小さな小さな帯島という島にある食堂である。

2024年現在においては既に閉店してしまっているようで、僕が訪問したのはそのお店の営業の歴史の最終盤であった。

 

だからこの記事を読んでくれたとて、あなたがこのお店を訪問することはできなくって残念なんだけど、今回はただただ僕の思い出に付き合ってほしい…。

 

寒いぞ津軽!!

では、日本6周目の厳冬期の津軽にジャンプだ!

 

 

龍飛崎を経て帯島へ向かう

 

気分を盛り上げていくためにも、お店方面の少し前から振り返っていきたい。僕は単身、津軽半島の最北端を目指して愛車を走らせていた。

 

津軽半島を走る

気温が何度か知らないけど、そんなことを考えたくもなくなるほどに寒い。

そして青森市を過ぎてからは道路真っ白でコチコチなのである。僕は慎重にハンドルを握るのだが、2車線の道などではときおり大型車がすごい勢いで横を通り過ぎて行き「雪国テクニックはさすがだな…!」って思う。

僕だって雪道、凍結道路の運転は普通の人より遥かに経験があるのだが、それでも怖いもんは怖いもん。

 

龍飛崎1

龍飛崎は日本2周目から何度も何度も訪問している、おなじみのスポットだ。ひとまず丘の上の灯台までは登った。

ただ、龍飛崎の詳細についてはいつか個別の記事に書こうと思っているので、今回は多くは触れるつもりはない。

 

龍飛崎2

灯台近くの展望スポットからは、津軽海峡の向こう側の北海道最南端「白神岬」付近の雪山がよく見える。青函トンネルはここ龍飛崎のからあのあたりまで、海底を通っているのだ。

あっちは青森よりも寒いんだよね。さらに言うと北海道の中でもあの辺はまだぬるい方で、道東や道北まで行くと次元が違うんだよね?

僕は冬の北海道に行ったことはないのだが、そんな寒さに耐えきれる自信がない。青森だって、例えば宮城県あたりと比べればずっとずっと寒いのに。

 

帯島1

それはさておき、見てほしいのは海の向こうじゃないんだ。もうちょっと手前なのだ。上の写真に写っているのは帯島。龍飛崎から橋で繋がっている小さな島だ。

 

もっと左側まで写るように撮影すればよかったんだけどさ、写真の一番左が島の一番左で、そこから龍飛崎への橋が延びている。

つまりは帯島は、上の写真に写っているだけの本当に小さな島。たぶんだけども2024年現在は無人島。

 

このときの僕は、帯島内部にある青い屋根の建物に目を付けた。

 

帯島2

津軽海峡亭である。目を凝らすと島の中に食事処があるのが見えるのだ。

あぁ、そういえば過去来たときも「お店があるな」とは気づいていたな。ただ「腹減った、行こう」っていうご縁には恵まれいなかったな。

 

しかし今回は13:30。昼どきも終わりつつある時間であるが、僕はランチがまだなのだ。

厳冬期なので観光客向けのお店は休業しているケースも多い。営業中のお店を見つけたら突撃するのが得策だ。

じゃあ今回あそこ、行こうじゃないか。名前からしても立地からしても、おいしい海鮮を食べられるに違いない。

さっそく車に乗り込んだ。

 

階段国道339号

ところでまた話は脇道に反れるけど、龍飛崎側から帯島に渡る少し手前に「階段国道339号」の下側がある。

有名だから知っている人も多いと思うけども、全国で唯一の階段になっている国道だ。これは下側の写真だが。上側は龍飛崎の灯台近くだ。この時期は凍結のために閉鎖されていた。

ここについてもいつか別記事で書くね。

 

ミッキー食堂1

帯島に渡る橋のたもとに「ミッキー食堂」がある。ちょうど駐車している車でふさがれてしまってよく見えないが、お店の前面はベニヤ板で封印されてしまっている。つまりは結構な期間休業してしまっているのだ。

万が一ここが営業していたら、今向かっている津軽海峡亭とどちらに入るか小一時間悩んだろうな。

 

ミッキー食堂2

なぜならば、荒波と木枯らしの舞うこの突端の地でミッキー食堂というファンキーな名前。「大丈夫か?オリエンタルランドに捕まらないか?いや、オリエンタルランドもさすがにここまでは来ないのか…?」って思ってしまうからだ。

偶然意図せずに名前が被ることはあろうだろうが、看板を見るとクオリティが高すぎるミッキーとミニーが入り乱れているのだ。

これ、デザインした人の技術が高かったのか?それともプリントしちゃっているのか??

 

いつまで営業していたのか全く分からず、Webでも訪問した人の情報は皆無の謎のお店。あ、そっか。もしかしたらオリエンタルランドによって粛清され、存在自体抹消されたのか…?もしご存じの方がいたら連絡ほしい。

 

では、津軽海峡亭に行こう。もう橋の向こうすぐなんだからな。

 

 

マグロがあればいいじゃない

 

帯島の津軽海峡亭の前に到着した。

あぁちなみにだけど、冒頭の写真以外は雪が積もっていないのは、暖かいからではないよ。岬なので強風で雪が積もらないからだよ。

だから写真では伝わり切れないだろうけども、とんでもなく寒い。

 

津軽海峡亭1

よく見ると「民宿」・「釣り船」という文字もある。食堂営業と共に、民宿経営もしているし、釣り人には船も出してあげるという感じなのだろう。

外壁にはマグロの絵が描いてある。下北半島側でもマグロが特産物だもんな、ここも当然新鮮なマグロを多く取り扱っているのだろう。期待に胸が高まる。

 

津軽海峡亭2

小さくて見づらいが、「営業中」の札が出ている。

そしてガラス戸の向こうには「うまっ!ラーメン」・「まぐろ丼」の幟が見えている。店外に設置したら木枯らしでズタズタになるもんな、納得。

 

店内に入って「すみませーん!」と声をかけると、奥からおばあちゃんが出てきた。女将さんだ。

そんで「あーん!?誰か来たかー!?どうしたーー!??」と言われた。営業中の食堂に入って第一声が「どうしたー?」っていうのは僕も未知の経験で少々驚く。

だが普通に「ご飯食べたいのですが、食堂やってますか?」って素直に目的を述べた。

 

「やってっけどー、何食べたいん!?」という女将。

あ、よかった。営業中だし食べたいものを聞いてくれている。こちとら店内に足を踏み入れた直後の位置だしモコモコの上着も着たままなので、いきなりオーダーを聞かれるとは思ってなかったけどさ。

 

津軽海峡亭3

上の写真は画質最悪で申し訳ないんだけど、壁にはウニ丼・本まぐろ丼・ホタテ丼・さしみ定食・焼き魚定食・ラーメン・牛丼などのメニューが貼ってある。

しかしいきなり女将に問い詰められた僕にはゆっくり壁のメニューを吟味するだけの余裕を持つことは不可能で、ひとまず「なんか海鮮を食べられたらなって思っているんですけどー」って答えた。

 

そしたら女将、「無いよー!そんなもんは無い!もう全部売り切れだぁー!なんッもない!マグロしかないッ!!」って言ってきた。

マグロあるじゃん。マグロは海鮮じゃん。

あまりの内容に僕の脳では瞬時に理解はできなかったが、マグロをオーダーした。

 

マグロを食えればハッピーじゃない。確かマリー・アントワネットも『食べる物がないなら、マグロを食べればいいじゃない』って言ってたし。あの女将、マリー・アントワネットが転生したのかな?

ところでここまでの会話、実際は女将の津軽弁がなかなか聞き取りにくくって、ギリギリのコミュニケーションだったぜ…!

 

津軽海峡亭4

ご飯にありつけることが確定し、ホッとして座敷席に座る。

なんか照明がついていなくて薄暗い店内だけども、飾りっけのないこういう渋さが僕は好きだよ。ストーブがガンガンついていて暖かく、ありがたい。

 

4つほどある座卓の1つは、女将が事務処理かなんかをしている最中なのか、書類などで埋まっていた。

あと、1つの座卓には先客の男性がご飯を食べていた。見た感じ1人旅のようであった。前述のやり取りを一部始終見ていたその男性は、僕と目が合うと苦笑いしながら軽く会釈をした。

なるほどね、この男性も入店時に僕と同じような洗礼を受けたのだろう。無言でもわかったぜ。つまりは僕らは戦友だ。

 

マグロ丼定食1

ご飯が出てきた。

おぉ、「マグロしかない」って言われたからマジにマグロとご飯くらいしか出てこないことをカクゴしていたが、いろいろ小皿も付いているじゃないか。そうか、女将はツンデレであったか。好き。

 

壁に掲示してあるメニューでこれに該当するものは見つけられなかったが、"マグロ丼定食"とでも呼ばせてもらおうか。

 

マグロ丼定食2

「これでもか」って程に分厚く大きいマグロが乗せられた丼。

僕、実はマグロは大好物っていうわけではないのだが、ちゃんと本場のマグロって鉄臭くないし口当たりもマイルドで極上で、僕も「うまいうまい」と食べられるのだ。さすが青森県

お味噌汁も磯の香りがして、「龍飛崎からここに至る工程で、津軽海峡を五感で楽しんでいるな」って感じたよ。

 

ペロリとたいらげ、お礼を言ってお会計をした。

「ありがとねー!また来てね!」と言う女将の口角がちょっと上がっていたのを僕は見逃さなかった。

津軽海峡亭、またいつか!

 

 

無くなってしまった津軽海峡

 

津軽海峡亭がすでに閉店していることを知ったのは、遅ればせながら2024年も冬に差し掛かってからのことであった。

Webで調べたが、正確な閉店時期はわからなかった。でもたぶん2019年の春くらいだ。

そっか…、僕が訪問したのはかなり最後の最後に近い時期だったのだな…。

 

もう今は更地…

上はGoogleマップストリートビューからの映像だが、2023年時点では完全な更地になってしまっている。つまりは帯島に定住している人もいなくなってしまったのだろう。

 

コロナ禍の影響で閉店してしまったのか、それとも女将のおばあちゃんが体力的にシンドくなって引退されたのか…。

僕もコロナ以降は龍飛崎を訪問していなかったので、情報のキャッチが遅くなってしまったことが悔やまれる。

 

いつかの帯島1

願わくば、再訪してマグロ以外のメニューも食べてみたかったけどな。厳冬期以外にも訪問して見なかったけどな。

 

さらに昔の龍飛崎からの写真を見返すと、まだ僕が意識していなかった時代の津軽海峡亭が小さく写っていた。

あなたもコロナ以前に龍飛崎に行っているのであれば、写真を見てほしい。きっとあのお店が写っているから。

 

いつかの帯島2

あなたが意識していなくっても、確かにそこにあって写真に写っていたであろう津軽海峡亭。

そこでの小さなドラマを、僕は忘れない。あなたも、「あぁ、そんなお店があったんだぁー」と思ってくれれば幸いだ。

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報