10数年前から行きたかったイタリアンレストランが、海南市のとんでもない山奥にある。
なんで10数年前から行きたいのに行けなかったのかというと、理由は2つだ。
1つ目は、道が細すぎて大きめの車では行けないから。HUMMER_H3とかでは無理。
2つ目は、シャイな僕は1人ではイタリアンに行けないから。同行者がほしいが基本的に旅は1人だ。
この2つがようやく払拭したのが2024年である。
よしっ!行くしかねーだろ、「富夢想野(トムソーヤ)」!!
…ってゆーか、道がワイルドすぎやしませんか!??
最大の試練はそこまでの道のり
永年の夢が叶う日がやってきた。富夢想野に行く日だ。
天気はややドンヨリしているが、気持ちは高揚しているのでそんなの関係ない。むしろ心の中にはキラキラ光る太陽がある。
でも雨でなくってよかったね。雨だったらアプローチ難易度がさらにUPしていたかもしんねぇ。
イタリアンといえば、そこそこ特別感がありつつも背伸びしすぎないことから、初デートで人気のジャンルである。
しかしこの道の先のロケーションを想像すると、あなたもちょっとだけ眉をひそめるよね。漠然とした不安が胸に去来するよね。まぁハンドルを握っている僕も同じくだ。仲間。
山肌をグオォォッって勢いで登っていく。でもまだまだ序の口。だって対向車とすれ違いができるもんよ。
たぶんだけども、お店は左奥の山の中。先は険しいぞ。
最後の集落の途中には、「トムソーヤ 直進」の看板がある。もうちょっと行ってから左に反れるのだ。上り坂がエグいけども、もう少し上らねばならないのだ。
後ろからは、さっきから中型トラックがピッタリとつけてきている。
トラック、どこまで一緒の道のりなのだろうか?まさかこの先の分岐にもくっついてきたりはしないよね…。
運命の分岐。先ほどの道を反れ、ここから1kmばかり極狭路を進めば富夢想野。上の写真のように分かりやすい看板が出ている。
ここには停めやすそうな駐車場があるのだが、富夢想野の駐車場ではなく「願成寺」というお寺のものだから要注意だ。お寺に用がない人は停めないよう、注意看板も立っている。
運転初心者はここに停めて残り1kmを歩けばラクかもしれないけど、それはダメ。
楽しくなってまいりました。ご覧の通り擦れ違いは不可、そしてガードレールもなしだ。対向車が来たら詰む。
…とはいえ、この道はこの奥で突き当り。突き当りに富夢想野と月1回営業のギャラリーがある以外は民家もなさそうな気配。つまりはお店の人とそのお客さん以外はほぼ通らないであろう。
だからこそ、僕は11時ちょい過ぎにここに来れるように調整した。
富夢想野の営業開始時刻は11:00。この時間であれば食後の人とすれ違う可能性もないからだ。
太陽光パネル設置エリアかなんかの工事現場の下のトンネルをくぐる。ここの前後だけ道は立派だ。狭いけどね。トンネルは当然すれ違いできない。
山を駆け上っていく。雨がパラパラ降ってきた。不穏。だけどもお店まではあと500mほどのハズだ…。
あ、ちなみにだが道は荒れたアスファルトの部分も多い。なんでそういう写真がないのかというと、わざわざ停車して写真を撮るだけの余裕がないからだ。止まらずに勢いをつけて通過したいからだ。朝まで雨だったので、水たまりやぬかるみも多いからね。
看板は親切にいろんなところにある。途中で分岐も2・3箇所あるが、道に迷うことはないであろう。確実に目的地に近づいている安心感がとても大事。
あ、お店が見えた!
あなたにもわかるだろうか?画面のど真ん中にちょこっとだけ三角屋根が見えている。あそこが目的地だ。あと少しだと、自分を鼓舞する。
これまでにも増してガケっぷちギリギリのエリアが登場。
ホント、日本5周目のHUMMER_H3時代に来なくってよかった。でもあの頃は、「もし行くとしたら海南市の中心地でHUMMERをコインパーキングに停め、そして軽自動車をレンルして…」みたいな妄想もしていたんだよ。
軽自動車がオススメ。でも軽自動車でもすれ違いはできないから、対向車来たとき延々バックするカクゴは必要。
着いたー!写真右手のガケの上がお店。そして左側が駐車場。
最後、駐車時に油断してバックしすぎないようにね。すぐ後ろはガケだから、車ごと転がり落ちるぞ。
11時ちょっとすぎなのに、すでに先客が数組いるようだな。
それでは入店だ。ワクワク。
秘境に建つセルフビルドのイタリアン
一部は時系列が前後するが、この章ではロケーションやお店の建物について触れていこうと思う。
駐車場から店舗のあるエリアへの入口がこちら。右に見えているのは、車で登ってきた道だ。そこを横切って店舗に入っていく。
黄色い看板は元プロボクサーの「赤井英和さん」の自筆だそうだ。1つだけ『OPEN』の看板がネオンでギラついていて異質だよね。どうしてこうなった?
そして階段を登りながら店舗を見上げる図。
あれが、オーナーさんご夫妻が廃材を使って建てた週末だけのイタリアンレストランだ。
森の中で悠々自適な生活をしたいと1800坪の土地を入手したご夫婦が、最初はレストランなんてやるつもりはなかったけど、なんかかんやあってこんな感じにやり始め、人気になってしまったのだそうだ。
随所にちりばめられた小物がかわいい。1つ1つは少しチグハグ感があるような気もするものの、それらがすべてこの富夢想野という世界感にマッチしているように思える。
途中の東屋風の建物の中には、ピザ窯があった。今まさにピザが焼かれているのだろう、窯からはモクモクと煙が立ち上ってきている。
あぁ、僕もこのあとピザをオーダーするのだよ。すでに心に決めている。
これがお店の入口だ。ハンドメイド感があふれている。
ここから見ると洋風なのか和風なのかちょっと混乱するが、内部はログハウス風だよ。
時系列的にはもちろんこのまま入口に突撃するのだが、ちょっと店内滞在の工程をスキップし、食後に敷地内を軽く見て回ったときの話につなげるね。
店舗からさらに階段を登ったところ。柱には『貸山荘』・『露天風呂』などの文字が読み取れる。コテージ的なところで宿泊などができたのだろうか?
Webではちょっとそのような情報は出てこなかったし、これまでも聞いたことがない。すでに過去のサービスとなっているのか、それともオーナーに直談判なのか…。
炊事場の名残が見え隠れするゾーン。右端に見切れているのが店舗だよ。
こんなところで一泊したら、間違いなく非日常を満喫できるよな…。
高台から集落を見下ろす。深い山の中に点在する家。あのあたりから狭路に入り、ここまで登ってきたイメージなのかな…?
緑の生い茂る季節で晴れていれば、きっと最高の眺め。
それではいよいよ本題。店内&絶品のピザについて次章でご紹介するぞ。
ザクザク食感、絶品ピザに感動した
入口前のメニューボードからして、テンションが上がる。
シーフードたっぷりペスカトーレ・ナスとミートのパスタ・モッツァレラとトマトのピッツァ・石釜グラタン・サラダ…。
どれも惹かれる。満腹中枢がないのであれば、せっかくなので全部たべたい。
ペスカトーレとかもね、今回はオーダーしなかったけどもエビとか貝とか豪快に乗っていてすんごいのよ。グラタン類もすごい大きくてうまそうで、あと1品頼めるのだとしたら絶対にグラタンにしたかった。
入口に入るとかわいいモコモコのスリッパに履き替えるスタイル。
もうこの時点でリラックスできるお店なんだなって感じで頬が緩むよね。履き替えるということは中も清潔だしね。
ちなみにこれがその玄関脇のロケーション。情報量が多いな。
クラシカルな小物が所狭しと飾られている。僕、こういうの好きだぜ。アメリカンインテリアショップなどを巡るのが好きな僕は、似たにおいを感じた。
店内写真はスタッフさんに許可をいただいてから撮影させていただいた。
何が何だかわからないくらいに趣味の詰まった空間。
実は左端にはカウンターがあるのだが、ちょっとこの位置からでは見えなかったな。
正面の急階段はまるで日本の古民家のようだが、ご夫婦がセルフビルドで建てたと聞いているので、古民家リノベーションではないのだろう。しかしすごい位置にある階段。
窓際のテーブル席を案内された。そこから振り返った景色がこれ。
無骨なテーブルやイス。これらもオーナーさんたちの手造りなんだって。そして天井に渡っている柱はこれ、古い木製の電柱だよね?すごいぜ、テンション上がるぜ。
駐車場の車の数から推測した通り、店内には先客が5組ほど。
11:20くらいでそんな感じであり、12:00くらいには10組ほど座れる店内がほぼ満席となった。
こういうところって中高年の人が多いのかなって思っていたけど、わりと20代のデート的な雰囲気の人が多かったよ。冒頭で僕、『初めてのデートはイタリアン…』みたいなことを半分ジョークで書いたけど、海南市の人にとってはマジだったかもしれない。
"吊り橋効果"もあって効果てき面かもしんない。
さて、何をオーダーしようか…。ピッツァ・パスタ・グラタン・デザート…。
まずは窯焼きのピッツァは外せない。同行者と2人で来店しているので、1枚では物足りない。2枚食べたい。
他のメニューも気になるが、まずはピッツァ2枚で様子見だ。そしてコーヒー飲もう。
待ち時間は、店内に用意されている雑誌を読んですごした。
この店が取り上げられた雑誌がたくさん用意されているので、それを読んでいると一層これからのメニューに期待ができてしまうな。
ホットコーヒー。あえて最初に持ってきてもらった。
ボコボコしたデザインのコーヒーカップも、オーナーさんたちの手造りのもの。基本的に食器類はほぼすべて手造りなのだそうだよ。マドラーはなんと木の枝だ。かわいい。
苦味強めの好きなタイプのコーヒーでほっと一息ついていると、間もなく1枚目のピッツァが登場した。
モッツァレラとトマトのピッツァ。これはうまそうだ。
このお店のピッツァの特徴は、しっかりと生地を焼いている点だと感じた。パリッパリのザクザクって感じだ。そしてチーズがたぶん脂多めで濃厚。力強くて満足感を感じるぞ。コーヒーによく合う。
ガーリックとブラックオリーブのピッツァ。よりチーズ本来のうまみを味わえるぞ。このコラボレーション、最高。
余談だが、2人でピザ2枚で結構腹に溜まった。もう1品だとかデザートだとかもたくらんでいたが、無理。
このあと午後にちょいとスイーツタイムを設けたが、それを除けば特に空腹にも襲われることなく、23:00くらいの夕食まで持ったのだ。恐ろしいほどの腹持ち。
ほら、イタリアンタイプのピッツァって、最初の1枚はパリッとしていていい感じだけども、後半はヘニョヘニョで残念なことになっちゃうケースもあるじゃない。
その点、ここのピッツァは最後までパリパリだった。型崩れ、絶対しない。ある程度の厚みがある上、しっかりウェルダンだ。おおげさに例えてしまうとクラッカーに近い感じだ。
まったくヘタることない、強靭なピッツァ。
たぶんだけど、木製のピザ皿も水分を吸い取りやすいタイプであり、湯気でヘニョりにくい仕様なのだろう。
ザクザク感の片鱗をおわかりいただけるひとこま。
木のプレートについた線は、何度も何度もピザをカットした証。手造りプレートにお店の歴史が刻まれているのだなぁ。
午後に入ったばかりではあるが、この日のドライブの最大の目的を達成した。
むしろ10年以上訪問したかった地で食べたピッツァは、理想が暴走してしまったわけでもなく、ちゃんと理想と同じかその上を行ってくれるレベルであった。大満足。
そういえば、外の別棟にあるトイレの内装もかわいかったよ。
週末だけOPENする山奥の秘境イタリアン。
これからの季節はきっと最高だよね。バルコニー席もあるから春風が心地よいと思うし、ペット連れもOKだよ。
あなたもぜひチェックしておいてほしい。(←主にアプローチルートを)
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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