ドライブイン全盛期を知らない僕が言うのもアレだが、「長沢ガーデン」が最も僕の中において完成されたドライブインである。
レストラン・自販機・スナックコーナー・宿泊・お風呂などがそろっており、しかも続々とトラックやバイクがやってくるという賑わい。昭和のドライブイン全盛期ってこんな感じだったのだろうか…とか想像してしまう。
僕はレトロ自販機ハンターである。
この長沢ガーデンの存在も、今から10年以上前ではあるがレトロ自販機のあるスポットとして知ることになった。
さて、では僕の訪問記録を3回分ほど振り返ってみようか。
【日本4周目】不夜城との出会い
最初はいつだったかな?今から10年ちょっと前だったかな?
肌寒さが心地いいくらいの時期、夜にこの長沢ガーデンを目指して国道2号を突っ走っていたのだ。
僕の印象ではあるが、国道2号のこのあたりはポツポツと町はあるものの、町と町の間はひたすらに暗いバイパス的な直線道路で、少し不安になるほどだった。
その暗がりの向こうに、煌々と輝く建物が見えてきた。
あぁ、なんてあったかい…。
例えると、暗く寒い夜に家路を急ぎ、ランプの灯る我が家に入るとお母さんが温かいシチューを用意して待ってくれていたかのような、ホッと一安心できるスポットだなって感じた。
ワクワクするようなまぶしさ。
見たところ一番大きな建物には昔懐かしい雰囲気のレストランが入っていて、さらにはその裏側で同様の雰囲気のホテルとも合体しているドライブインのようだ。
そんな施設にもかかわらず、と言ってしまって誠に失礼なことは重々承知だが、ここはかなりの車で賑わっている。今までの経験上、こういう施設はガラガラで寂れていることがほとんどなのに、だ。
なんだなんだ、ここは最高かよ。
今回僕がここに立ち寄ったお目当ては、レトロ自販機なのである。
2011年にレトロ自販機というものがこの世にあると知り、それ以降は有名どころや興味を持った店舗から順々に訪問している。いずれは日本全国のレトロ自販機店を済めて立ち寄る所存よ。
屋外の飲食エリアにてそのレトロ自販機を発見した。
あぁ、いいなぁこの景観。少し寒いが、温かいうどんを食べるのだから、この屋外の
飲食エリアで大丈夫だ。いや、寒くたってここで食べたい。風情を感じたい。
富士電機の麺類自販機が仲良く2台並んでいる。
よく見るとそれぞれ、パネルの赤と黄色の配色の位置が違うのだ。右のタイプって、ここ以外では国内どこにもないよね?どうかな??
肉うどんをチョイス。280円だ。安くてありがたい。
肉うどんは関西の自販機麺では定番だが、関東では少ない。だから関西でなるべく肉うどんを食べておきたいと考えたのだ。
『お菓子の自販機におむすびがあります うふどんといっしょにいかがですか?』っていう貼り紙がある。
なんだろう、この書き方とイラスト、すごくハートにキュンキュン来る。食べたい衝動に駆られるけど、そこまで空腹ではないのでまたいつかね。
わずか20秒ほどでアツアツのうどんが出てきた。
なんかこの麺、すごく美しくない?まるで打ちたてのようだ。それが夜の光に照らされてツヤツヤと光っている。
ちなみに自販機内ので湯切りのときに落ちないように、具は麺の下に入っているんだよ。
写真撮影前に具を底から引っ張り出して上に乗せてみた。最高のビジュアルである。
ひと口食べてみた。
おいしー!アツアツ!冷え込んできた屋外で食べるから、なおさらおいしい!薄めの上品なダシ、コクのあるお肉!食べ応えのあるマッチョな麺!そのすべてが僕にとってありがたい!
これからもうしばらくハンドルを握る僕にとって、これはこの上ない栄養ですぞ。身も心も充実する。
実はこれ、隣のドライブインの板前さんが作っている本格派のうどんなんだ。
ありがたい夕食だ。
夜風に吹かれ、静かな屋外のテーブル席でツーリングマップルを広げながらすすった温かいうどん。旅っていうのはこういうことを指すのではなかろうか。最高。
【日本5周目】春の雨に打たれて
数年後、小雨の降る肌寒い春の日に再訪した。
近年はレトロ自販機にもスポットが当たり始めているそうだ。ここも関東をはじめとした全国からレトロ自販機ファンが来るほどの聖地となっているのだそうだ。
まぁそれだけ現代に残るレトロ自販機の数が少ないということもあるのだろう。ぜひこれからも長く続けてほしいな。
明るい時間には初めて見る長沢ガーデン。そびえたつ巨大な緑の看板に描かれたピクトグラムがインパクト絶大である。
近年の高速道路のSAやPAはメッチャ綺麗で最高だけどさ、このくらい尖がったコンセプトのSAやPAがあっても面白いと思うんだ。レトロブーム来ているから、刺さる人には刺さると思うぜ。
ちょっとメタ的な発言になってしまうが、そういう意味では僕のブログ内では三重県の「伊賀上野SA」の記事が安定して人気があるから、あなたがもしまだ未読だというのであればぜひ読んでくれよ。胃袋に響く記事になっているぜ。
2台の自販機は元気だ。おむすぎをおススメする貼り紙も相変わらずだ。
ちなみにこの自販機、前回訪問時に35・6年経過しているものだと聞いた。現時点ではもう40年近いのかな?
骨董品級だ。ファンタジー映画に出てくるような、古代のブリキのロボットのような存在だ。
現時点でのメニューは、肉うどん・きつねうどん・天ぷらうどんだ。全て290円。
前回から10円値上げされたね。時代の流れだ、しょうがない。むしろ10円程度の値上げで大丈夫かと心配になる。
前回は肉うどんだったので、今回は天ぷらうどんにしてみた。
おっ、なかなかに具沢山。特に刻みネギの多さが他では見られないレベルだ。
かき揚げも巨大で厚みがあるぞ。パワフルになれるボリュームだ。
前回同様に麺は極太でもちもち。ダシは上品な薄味。でもかき揚げのおかげで食べ応えは充分だ。
うん、うまいうまい。290円でこのクオリティよ。コストパフォーマンスも高いし、顔も知らない板前さんに感謝の気持ちしかない。
雨は降り続けているけど、元気が出た。引き続き山陽地方を走り続けるぞ。
日本5周目の山口編は、こうして進んでいった。
【日本6周目①】夕暮れはエモい
2022年、日本6周目でまた訪れた。3回目である。だから今回はちょっと趣向を変えて書こうじゃないか。
晴天のドライブイン。充分な広さの駐車場。17時を大きく回り既に西日だが、ツーリングライダーさんたちがひっきりなしに訪れている。
まるでここだけずっと時が止まっていたかのように、初回訪問時から同じ光景だ。
いや、きっとベテランの常連さんからしたら僕なんてヒヨッコすぎだよね。10年どころか数10年前から時間は止まっているのしれない。
駐車場から本館に向かう際に現れる、写真真ん中の立て札。
左に行くと一般浴場と旅館があるそうなのだ。そっちの方向には行ったことはなかったな。
話には以前から聞いているが、一般浴場も旅館もどこにあるのか知らない。1回目は夜だし2回目は雨だったので、あまり敷地内をウロウロしたことはなかったのだ。
小さな文字で日帰り温泉は400円、旅館は1泊3500からだと書いてある。安いじゃないか。いいじゃないか。機会があれば宿泊してみたいな。
今回の記事には写真はないけど、この長沢ガーデンって「長沢池」っていう大きな池に半島のように突き出した立地にあるのだ。オーシャンビューならぬレイクビューな部屋とかあるんじゃなかろうかね。昭和レトロな宿泊所でそんな朝を迎えてみたい。
これが旅館棟かな?ちょっと暗めな入口。簡素なガラス戸が見えている。
僕好みだ。落ち着いた夜を楽しめそうな雰囲気じゃないか。日本7周目で再度訪れいた際には宿泊してみようかな。
あ、仕出し部って書かれた看板ある。そしてドアが限りなく簡素。
仕出しもやっているのかな?その建物に通じるドアなのかな?いろいろやって大体賑わっている。改めていいドライブインだ。
「板さんの店 長沢ガーデン」とナイスなフォントで書かれたレストラン。板前さんが料理を作っている、長沢ガーデンのメイン施設だ。前章までに取り上げたレトロ自販機は、この建物の向かって右側を回り込んですぐのところにある。
今回ここで食事をする予定はないが、せっかくなのでちょっとディスプレイを眺めていこうぜ。
うむ、ドライブインの王道をしっかりと抑えてきているようなメニューだ。手ごろなものからちょっと贅沢したい気分にうってつけのものまで、うまく取り揃えてあるように感じる。
肉うどんは自販機で売られているヤツの、ちょっとゴージャス版なんだろうね。
僕、長沢ガーデンをレトロ自販機スポットとして知り、過去2回はレトロ自販機だけを利用してきた。
しかしまだまだ奥が深いのだ。これからやること、多いぞ。ワクワク。
【日本6周目②】ラスポテト
では、お馴染みのレトロ自販機を確認しに行こうね。
前回からさらに数年が経過したので、若干くたびれた雰囲気になってきたレトロ自販機。もう40年以上は確実に経っているもんな。風雨にさらされつつも頑張っているよ。
右側の自販機はパネルがかなり色あせた?それとも光の差し込み具合?自分の目で見ているハズだがちょっと記憶から抜け落ちてしまったわ。
そして麺類の値段は350円に。おむすびおススメの貼り紙は無くなっちゃったな。
まだ最後の1つであるきつねうどんを食べたことがないのだが、今回はレトロ自販機は使わない。
もう1つ、ある意味レトロ自販機よりもレアなものがここにはあるのだ。
「メリーランド」という名前の、敷地内の小さな売店。
たこ焼き・カレー・回転焼き・スフとクリームなどの軽食を店頭販売している。よくあるミニ売店であり、僕も今までスルーしていた。
だがうかつだった。ここにはラスポテトがある。ラスポテトがあるんだよ、ラスポテトが。
ラスポテトが何かというと、オランダ生まれのフライドポテトだ。ジャガイモをそのまま細切りしているのではなくって、粉にした後に整形して作られている。
どうやら昭和後期には模擬店や商業施設などで目にすることも多かったらしいが、時代と共に廃れてしまっているという。
Web情報なので正確性はわからないが、令和時代の現時点では沖縄ではそこそこ食べられるお店はあるものの、それ以外では4・5店舗しか提供店がないらしい。
マジか、激レアの絶滅寸前じゃあないか。
店舗の奥に控えめに「Ras オランダ生まれの… スーパーフライポテト」と書かれている。もうスーパーって付いた時点でレギュラーレベルではないってことだよね?特別ってことですよね?それすぐに僕に食わせろ。
売店がまだ営業していてよかったよ。店頭販売の小さな売店なので、17時で閉まっている可能性も考えていた。閉まっていたら僕、長沢池のほとりで夕日を見ながら泣いたでしょうね。
窓口の横の券売機に200円を入れてポテトのボタンを押すと、緑のカードが出てきた。なるほどこれが食券なのね、何も書いてないけど。ガチめな横浜家系ラーメンと同じシステムね。
窓口のおばちゃんに渡し、待つこと数分。ラスポテトを入手した。
うれしいな。おばちゃんちょっと無愛想気味なクールキャラだけど、僕はうれしすぎてニコニコ笑顔で受け取ったよ。
200円でこの量。ちょっとわかりづらいけどもマクドナルドのポテトのMサイズくらいのボリュームはあるのかな?なかなかコスパいいと思うよ。
そしてごらんなさい、西日に照らされてゴールデンに輝いておりますぜ。
あ、この写真の方がボリュームわかるかな?結構大きな袋。
家族4人で1つのラスポテトを囲み「今夜のディナーはこれだ」って感じの構図だが、実際これを食うのは僕1人だ。僕1人のものだ、1本たりとも他人には渡さん。
食べてみた。
ザクッ…!といい音がした後に、ほっくりモチモチした感じの噛み応え。そして油のジャンクな香りが口いっぱいに広がった。
なにこれ最高。僕の乏しい経験で例えると、コンビニやスーパーで普通に売られているポテロングってあるじゃない。あれが一番近い。
最初のザク感と、何とも言えないジャンクな味わいがアレに近い。でもラスポテトにはそれに続くモチモチ感もある。さらには絶妙な塩味。
これは止まらないな。いや、無理やり止めよう。そして残り半分は今夜の晩酌のおつまみにしよう。
しかしこれが絶滅寸前だって?冗談でしょ?全員好きだろこんなもん。
またここに来てラスポテトを食べねばな。
いや、他のラスポテト店を巡ってみるのも楽しいかもしれないな。
長沢ガーデン。山陽地方の瀬戸内海沿いを走る国道2号に面したドライブイン。
中国地方の大動脈の1つなので、目にする人も多いだろう。しかし今までスルーしていた人多いだろう。
今のうちに行っておいた方がいいぞ。昭和な要素がいくつもある。でもいつまで続くかわからない。
人は未来には行けるが過去には戻れないからな。未来へのお土産、経験しておくといいと思うのだ。だから僕はまた行くのであろう。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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