週末大冒険

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ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No.333【兵庫県】のどかな山間部のドライブイン!!レトロ自販機のうどんが最高だった!

新緑が風にそよいで。暑くもなく寒くもなく爽やかで。山にはウグイスの鳴き声が響き渡り。それがBGM。

交通量は多くはないけど、ときおりブーンと走っていくトラックの排気ガスにおいがほんの少しだけ店内でも感じ取れるのが、これまたいい感じに旅情を刺激してくれて。

 

ドライブイン「コインスナックふじ」。

僕の心の中で「これぞ正しい峠の自販機コーナー」って感じの、絵に描いたようなお店がそこにあった。



 

昨年である2022年の春、ここにあるレトロ自販機のうどんを食べに行くお話。

季節は今とは真逆だけども、だからこそ強くあの日に思いを馳せることができる。

 

 

峠のオアシス発見

 

そこは兵庫県北部の山間部である。

僕は北部海岸線を走ることはよくあったのだが、正直山間部までは今まで走り切れていなかった。養父市の中心地付近は何度か訪問していたが、コインスナックふじを通る道は初めてかもしれない。

 

峠のオアシス、ふじ1

だから面白いのだ。

「今まで行けていなくてごめんね」・「全国走り回っているのに未訪問なのが恥ずかしい」・「でも常に新しい発見があってうれしい」、その全部の感情が入り混じっている。

 

ただ、人生はポジティブでありたい。僕は最後に書いた感情を大事にする。

日本を何周しようとも、走っていない道は無限にあるし、立ち寄っていないスポットもたくさんある。趣味嗜好も変化するから、都度新しい発見があり、同じ旅なんて2つとして無いのだ。

 

峠のオアシス、ふじ2

目的地まではまだ数10分あるが、すでに僕はウキウキ感を抑えられなかった。

こんなにも快適なシーズンの快晴のドライブの日に、コインスナックふじに行けるのだ。最高ではないか。

 

存在は昔から知っていはいたが、ついつい海岸線ドライブを優先してしまったり

近くまで来たのに失念してしまっていたりと訪問が遅れに遅れた。

日本6周目も終盤に差し掛かったこのタイミングでようやく初訪問だ。でももったいぶっただけの価値がありそうなシチュエーションだ。

 

峠のオアシス、ふじ3

到着。この少し手前にもハートを掴まれた峠のドライブインがあったのだが、グッと堪えた。

今回はここ。レトロ自販機の麺類がタッチの差で売り切れるなんてことがないよう、なるべく時間を無駄にせずにここに来たのだ。

 

24時間と看板に書いてある。うれしいね。昔はコンビニもなかったからこういう施設が長距離ドライバーの人にとって貴重だったのだ。

"コインスナック"という言葉ももはや死語だと思うが、ここには息づいている。自販機でちょっとした軽食を購入できることをアピールした単語であるが、これまた今やどこにでもコンビニがあるからあんまり必要性を感じなくなってきているみたい。

 

ちなみにこの看板、夜はエロい感じの紫色に光るらしいぜ。いつか見てみたい。

 

峠のオアシス、ふじ4

店舗はオレンジの屋根がかわいい。

数年前までは黄色と赤のストライプで、屋根にはデカデカと『うどん・コーヒー・パン・牛乳・たばこ』と書かれていたが、シンプルになったね。

昔のバージョンの方がエモかったような気もするが、これもこれで良い。

では、店内に入ろう。

 

 

レトロ自販のでうどん

 

店内に入った。ドアは開け放たれていたが、内部は少しヒンヤリとして外との温度差が心地よかった。

 

店内1

これが店内の飲食ブースだ。仄暗くって簡素なイメージだが、それがいいじゃないか。

特徴的なのは、椅子の一部は古い車や観光バスなどから外してきたものを流用している点。

リクライニング機能とか、生きているのかな?試してみたい気もするけども、万一にもこの文化遺産を破壊するわけにはいかないので試さない。

 

店内2

これは観光バスの椅子だろうかね?後ろからパカッとトレーを取り出したい気持ちになるが、もうこの後ろに座る必要もないので永久にこのまま使う人は現れないであろう。

 

2023年現在は、どうやらこれら車やバスの椅子が少なくなっている模様だ。

劣化して傷んでいるから交換したのだろうか?このお店のアイデンティティの1つなので、今後もみんなで大事に使って継続していってほしいな。

 

店内3

そんなテーブル席を取り囲むように配置されている自販機群。

普通のドリンク自販機・汎用自販機・カップ麺自販機などがあるが、僕のお目当ては一番左側に見えている富士電機のレトロ自販機なのである。

 

自販機うどん1

メニューは一種類のみで、きつねうどん300円。

売り切れてはいなかった。よしっ!レトロ自販機巡りは売り切れと故障が怖いもんね。食べられることのありがたみを神に感謝しよう。

 

300円を投入し、そして20秒ほど待つ。すると取り出し口からアツアツのうどんが登場する。それを注意してテーブル席まで運んだ。

 

自販機うどん2

おっと、全容を撮影する前に食べ始めてしまって失礼。

なのでちょっと写真にはおさめきれなかったのだが、小さな油揚げ・カマボコ・とろろ・きざみネギが入っていた。とろろ入りのレトロ自販機は僕の知る限りでは中国地方の2・3店舗のみで、とてもレアだと思う。

 

自販機うどん3

麺はかなり太めでモチモチ。ダシは薄めでスッキリした後味であった。

うまい。秒速で食べてしまった。

 

内容から察するにおそらく2015年のものだが、店内に新聞の切り抜きが掲示してあったのでご紹介しよう。

 

店内4

このドライブイン富士電機のレトロ自販機が設置されたのは1993年頃のこと。つまりはレトロ自販機が製造を終了した後のことだったのだ。

当時のオーナーさんに対し、兵庫県豊岡市の機械業者さんが「すでに販売停止されている珍しい自販機を入手したのだが、これをお店に置いてみないか?」と持ち掛けたらしい。

 

それ以来30年、今は息子さんがオンアートなり、この自販機はここで活躍しているのだ。

 

店内5

2014年まではそばも売られていたらしい。しかし仕入先がそばの製麺を辞めてしまったので、以降はうどん一本で続けている。

 

毎日10~15杯が売れ、1日2回点検と補充をしているそうだ。

ここ数年はレトロブームが来てレトロ自販機も注目されているので、もっと売れているかもしれないね。

 

 

今後も末永く…

 

もう販売されておらず、部品もなく、修理できる業者さんもほとんどいないレトロ自販機。メンテナンス・補充などに非常に労力がかかる上、往時から自販機麺を運営してきたオーナーさんはすでに高齢であるため、徐々に国内から姿を消していっている。

このお店も2020年にピンチが到来したそうだ。

 

店内6

自販機内部の冷蔵機能が故障してしまったそうなのだ。

このレトロ自販機、内部で麺や具を器に入った状態のまま冷やしておき、お客さんが購入ボタンを押すとお湯を数回かけて湯切りして温め、そしてダシを注いで提供する…という作業を20秒ほどで行っている。冷蔵機能が故障したら商品の管理ができなくなるのだ。

 

修理料金は65万ほどもかかるためにオーナーさんは自販機の廃止も考えたそうだが、全国のファンから「辞めないで!」という声が届いたためにクライドファンディングをしたところ、無事に目標額達成し、自販機も修理できて今日にいたる。

なるほど、僕はこの事態を今日まで知らなかったわ、ごめん。そしていろんな人の思いを乗せて今日のこの自販機があることに感謝。

 

峠のオアシス、ふじ5

ところでね、前項で取り上げらた通り2015年の新聞記事では自販機設置は1993年と書かれていた。

しかしクラウドファンディングについて記載された2020年の記事では『1976年に設置』・『40年以上休まず』と書かれていた。

どっちが本当なのかわからないが、より古い方が当時の記憶が鮮明なのだろうと思い、前者をベースとした記事を書かせていただいた。

 

まぁどっちでもいいけどね。どちらでも「永年自販機麺を提供してくれている」ことには変わりないもんね。ごちそうさまでした。

 

峠のオアシス、ふじ6

食後に僕がこれら掲示物を見ていると、ドライブしている親子がやってきて早速自販機うどんを購入していた。まだ中学生くらいと思われるお子さんが大人になったときにも、まだ日本にレトロ自販機が残っていればうれしいな。

 

今後も永らく、このお店が峠のオアシスであることを願う。

それでは、またいつか。

爽やかな空を眺めながら、僕は再びドライブを続ける。

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: コインスナックふじ
  • 住所: 兵庫県美方郡香美町村岡区長板1069
  • 料金: きつねうどん¥300
  • 駐車場: あり
  • 時間: とくになし