2024年、今年のオリンピックの舞台はフランスである。フランスと言えばパリであり、パリと言えば「エッフェル塔」なのである。
…ならば!2024年は僕もエッフェル塔の記事を執筆すべきであろう!そうに決まっている。
だが残念ながら僕はフランスには行ったことがない。
でも心配しなくていい。「佐賀のエッフェル塔」になら行ったことがあるので、それを書けばいいのだ。
うん、もうよくわかんない理屈だけど、突っ走ろう。だってオリンピックイヤーだもの!
田園の中のパリ
世界中の誰もが華のパリにあこがれる。昔も今もそうに違いない。
そして僕も例外ではない。パリではないけど、佐賀のエッフェル塔を目指してアクセルを踏んでいるのだから。
地平線まで続くかのような田園の中の道は、ちょっと僕のパリのイメージとは違うような気がするが、たぶんこれが佐賀の「シャンゼリゼ通り」。
だからもうすぐエッフェル塔が見えてくるに違いない。興奮してきた。
興奮しすぎて道を誤り、なんかえらく狭いところに吸い込まれたりもした。落ち着け落ち着け。
そしてなんだこの道路の文字は。逆側から見ているからということもあるが、なんて書いてあるのか皆目見当がつかない。フランス語かな?
で、これが佐賀のエッフェル塔だ。
唐突に到着してしまってすまない。実は地平線の向こうからこの尖塔が見えてきたときは興奮もひとしおだったんだけど、ドライブレコーダーからその映像を引っ張り出すのも面倒だなって思っているうちに画像保存期間が終わったからな。その光景は僕の心の中だけで再生するよ。
ほとんど同じ構図だ。うれしくって似たような写真を何枚も撮っていた。
現地の僕は有頂天だが、いざ冷静にブログ執筆する段階になると「もっと工夫して撮影できなかったのかよ」と過去の自分を責めたくなる。
でもいいや。さっきまでドロドロに曇ってのに青空が出てきただけで満足のいく光景だから。
そしてごらんなさい。塔の足元にはたくさんの車が停まっている。さすがエッフェル塔、観光客が続々と詰めかけている。
…のではない。「馬場ボデー」という車の板金工場だよ。ここの工場の社長さんがエッフェル塔を作ったんだよ。
きわめてのどかな田園の中の板金工場。その敷地にエッフェル塔。
仕上がってるな、このロケーション。最高。
手造りエッフェル塔
では、ドキドキしながらエッフェル塔に近づいてみよう。
てゆーか、馬場ボデーさんの敷地内に車を停めてしまったが大丈夫だったのかな?
板金するつもりはないのだが、観光目的で駐車してエッフェル塔の写真を撮っちゃって大丈夫なのかな?でも近くに駐車できるようなスペースもないし…。
しかしエッフェル塔の下には『写真撮影はどうぞ、ご自由に。ありがとうございます。』って書いてあったので大丈夫であろう。
「ありがとうございます。」って、なんて丁寧なんだ。お礼を言いたいのはこっちだよ。僕がここに来て写真を撮っても馬場ボデーさんにとっては1ミリも利益はないだろうに。
それでも気になってチラッと工場の方の様子を窺う。
あわよくば馬場社長にお会いしてエッフェル塔を作るに至った逸話とか聞ければなぁとか思うが、数人の人が忙しそうに働いていてとても声を掛けられる雰囲気ではない。
むしろ仕事に集中しているからこそ、わざわざ先ほどの看板に「写真撮影はどうぞ、ご自由に」って書いてあるのかもしれないな。
ではお言葉に甘えてエッフェル塔を見学しよう。
無骨なデザインがいいね。男子が好きなタイプのソリッドなデザインだ。
このブラウン一色で飾り気がないのにオシャレなたたずまい。三角形に空を一直線に刺すシルエット。
「東京タワー」はエッフェル塔をモチーフに作られたでしょ?東京タワーは今でこそ「東京スカイツリー」にちょっと勢力を握られちゃったけど、長らく日本のシンボルだったでしょ?
だから日本人、潜在的にエッフェル塔が好きだと思うのだ。ほら、富士山のかたちにも似ているしな。
塔の真ん中には階段が付いており、上の方に行くとハシゴになるのだが、ある程度の高さまでは登れる構造になっている。
もちろん勝手に登ったら怒られるだろうから僕は下から見上げるだけだが、もし登ったら景色はいいだろうなぁ。田園地帯が足元にどこまでも広がっているのだろうなぁ。
このエッフェル塔、高さは23mあるという。本場のエッフェル塔が320mであり、本場の15分の1ほどの高さ。
ただし周囲が田園なので相当なインパクトがある。23mといえば、ビルで6階か7階分くらいもあるもんな。なかなかのスケールだ。
なのにみんな普通にこのエッフェル塔の横を車でブーンって普通に通り過ぎているから、僕は「おいおいおいおい、みんなこの光景に違和感を感じないのかよ!」って思ってしまう。
逆に田んぼの脇でカメラを構えている僕自身が、ドライバーたちに不思議そうな目で見られているよ。違う違う不思議なのは僕じゃない、エッフェル塔だろ。気は確かか、お前ら。
なぜこれを作ったの?
なぜ馬場社長はこんなものを作ったのだろうか?実際にお話を伺うことはできなかったので、Web等から情報を収集させていただいた。
それによると、馬場社長は若いころにエッフェル塔を見て感動し、「自分でこれを作ってみよう」ってなったらしい。
板金工場をやっているので、鉄の加工は得意だったのだろう。それでも5年かかったそうだ。
ちなみに今回僕が訪問したのは2代目のエッフェル塔。初代より大きく、年数もかけて7年半使った大作なのだそうだ。
仕事の合間にコツコツ作ったらしい。
一個人が作れるもんなんだな、エッフェル塔って。しかも仕事の片手間に。
でもこの馬場社長、こういう加工技術はすさまじい腕をお持ちのようで、以前は零戦を精巧に作り上げ、それは映画「永遠のゼロ」にも使われたそうだよ。すごい。映画は見てないけど原作なら読んでいる。
さて、序盤からあなたが気になっているであろう、主塔のサイドにくっついている2つの小さな塔。
「あんな両翼の塔は本場のエッフェル塔には無いぜ。勝手にくっつけやがって。」とあなたが息巻いているのが画面越しに僕にも伝わる。いや、落ち着いてほしい。
実は本場のエッフェル塔ね、このようになる案もあったのだ。
もともとエッフェル塔は、1889年にパリで開催された「第4回万国博覧会」の目玉として建造された。
当時って世界一高い建物は240mとか260mとか、そのくらいでしのぎを削っていたので、それを大きく上回る300m超の建物を作ろうぜってなってできたのがエッフェル塔なのだ。
万博も無事に終わったので取り壊しの案も出たけど「いい感じだからもうちょっとこのままにしておこうか」ってなったり、10年くらいして「なんか新しいことやってみない?」ってなって両翼の小塔を作る案が出たのだが、資金が足りずに幻に終わった。
馬場社長がその話を知り、幻のリニューアルを実現させたのがこれだ。すごい。ある意味本場よりも先を行っている。リニューアル案を出したのに採用されなかったデザイナーがこれを見たら感動で泣くぞこれ。
…エッフェル塔は万国博覧会というイベントのアピールのために作られた。
それから13年経った今もフランス・パリのシンボルであり、2024年はそこを舞台にオリンピックが開催される。
かつてを彷彿させるイベントじゃないかな。
佐賀の田園地帯を眺めた。これは敷地の端からエッフェル塔とは反対側を眺めたときの写真だ。
確かにここは田園だし、エッフェル塔は本場よりはるかに小さい23mだ。
でも、珍スポットマニア垂涎もののスポットだし、地元でも有名だし、Googleマップにも”佐賀のエッフェル塔”として掲載されている。
2024年のオリンピックイヤー。あなたもこのエッフェル塔の下でパリを感じてみないか?僕は一足早く感じてきたぞ。最高だった。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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