週末大冒険

週末大冒険

ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No.342【奈良県】なんと美しい親子丼…!激渋「涌本食堂」で大将と語り飯を食った冬の日!

いつからだろう。昭和レトロな大衆食堂に興味を持つようになったのは。

日本1周目のころはグルメ自体に興味がなく、「コンビニのパン1つあれば2日は運転ができる」とかアホなことを言っていた。

その後はいっぱしにご当地グルメに目覚めたりもした。

 

今ももちろんご当地グルメは巡っているが、地元の人が昔から通い続ける食堂でご飯を食べ、お店のご主人と語らうっていうのもとても楽しいなって思うようになった。

 

あれも真冬の寒い日のことであった。

僕は「涌本(わくもと)食堂」という名前の激渋食堂を訪れたのだ。

 

後光がさす

うん、後光がさしていたね。

尊い。実に尊い体験ができた。その思い出を少しだけ語りたい。

 

 

北宇智駅よりトイレの方が大きい

 

五條市をドライブしていたら腹が減り、キョロキョロしていたら渋い食堂が目に入った。それが涌本食堂だ。

 

しかしまだ暖簾が出ていない。

ただいまの時刻は11時ピッタリ。食堂って大体11時からオープンするイメージがある。まだ開店前なのかな?それとも臨時休業なのかな?

 

ほんの少し時間をおいてから再訪してみたほうがいいかもしれない。

涌本食堂から200mほどの距離にある、小さな「北宇智(きたうち)駅」を訪問してみることにした。

 

北宇智駅付近にて1

「駅舎だ!」って思って撮影したけどすまん、これ右側に写っているのはトイレだ。ホントの駅舎は左奥。トイレの方が大きいような気配がする…と言ったらさらに失礼に当たってしまうかもしれないが、正直な話そう思った。

 

北宇智駅はJR和歌山線の駅で、2007年までこの駅に来た電車はスイッチバック方式でターンしていたんだってさ。それは珍しいな。

 

北宇智駅付近にて2

無人駅の駅舎。電車を待つ間の雨風をしのぐくらいの機能しかないのだろう。

スイッチバックの廃止と共にリニューアルしたというから、まだ15年ほどしか経過していない駅舎。かわいい。ちょっとしたログハウスのようでほっこりする。

 

11時を10分近くすぎた。涌本食堂に向かってみようと思うが、僕はチキン野郎でしょ?

再び行って暖簾が出てなかったらガッカリしてそのまま諦めてしまうかもしれない。ダメ元でドアを開ける勇気なんてないかもしれない。

現にそういう弱き心の持ち主だから北宇智駅に立ち寄っているのだから。

 

なので念のため電話した。

電話に出た人、第一声がすっごい慎重な名乗りで、僕が「今近くにいるんですけど営業していますか?」って聞いたら「え?あ…、はい…」って感じだった。

あれ?なんかマズかったのかな?招かざる客なのかな?まぁいいや、やっているなら行くさ。

 

北宇智駅付近にて3

ほんのちょっと先に進んでから適当なところでUターンしようとしたら、すんごい住宅地の狭路に入ってしまった。

ターンできそうな空き地もあったのだが、なんかちょうどケガ人がいて近所の人があるまり、救急車も来ていたのでターンどころではなく、さらに奥に行くしかなくなった。

 

北宇智駅付近にて4

そしたらやたら開けたけども農道みたいな感になり、相変わらずターンできるようなところはない。

しばらく枯草を眺めながらのドライブを楽しんでしまった。

 

ようやく無理やりターンし、救急車の脇をすり抜け、北宇智駅を「よしっ、トイレより小さい」と指さし確認し、涌本食堂の駐車場に愛車を停めた。

 

激渋食堂へ1

ゴチゴチにハードテイストな、涌本食堂の駐車場。

勢いあまって頭から入れてしまったので、これはきっと出るときに大変なんだけど、未来のことは未来のYAMAさんが考えてくれるだろうから、今の時間軸の僕はさほど気にしない。

さぁ、腹減ったな、メシだ!

 

 

そこで旅を愛する者が繋がる

 

よかった、今度は暖簾が出ている。

しっかし良いビジュアルだな。ここのお店の存在に気づいてよかったぜ。

 

激渋食堂へ2

緑と黄色の軒がなんだか酒屋さんのような商店のような味わいを見せている。そして2階にデカデカと掲げられた「涌本食堂」のパネルが存在感をアピールしている。

 

ガラス戸をガラリと開け、「いらっしゃい!」と迎えてくれた大将に、僕が先ほど電話した者である旨を打ち明けた。

「あぁー!そうなんだ。ウチは暖簾は11時に出しているけど、近所の人は朝から勝手に入ってきたりするからさ、あんな電話をもらってビックリしちゃったよ!」って言われた。

 

なるほど、そういう理屈か。つまりは地域にドップリ根差した食堂で、観光客はあまり来ないということかな。うってつけだ。

 

激渋食堂へ3

大将には、ブログ掲載することを前提に店内の写真を撮らせていただいた。

こういう老舗食堂って、カウンター周りにひさしがついていたり柱があったり、ちょっとした社みたいじゃない。それが好きなのだ。

 

「えぇ…??こんなどこにでもあるようなお店の写真なんて撮らないでくださいよ…」って最初は苦笑していた大将だが、僕が「渋いお店を巡るのが好きな旅人なもんでして…」とか言っていると、だんだんスイッチが入ってきた。

 

激渋食堂へ4

先代店主であるお母様をご紹介いただいたりもし、挨拶をした。

あぁ、このニコニコしている小さい体のおばあちゃんが、きっと長年このお店を守ってきたのだろう。

創業何年だか聞きそびれたが、地元の人に何10年も愛されてきたお店にハズレなしだぜ。

 

激渋食堂へ5

では何を食べようかな。どれも安くてお得感があるぞ。

僕は大体初めての食堂だとカツ丼か、もつ煮定食だ。ここにはそれらはない様子なので、親子丼にしよう。麺ではなく、ご飯を食べたい気持ちだ。

 

激渋食堂へ6

親子丼620円。これも良心的な価格だ。

 

待っている間、大将から「今回はどのような旅をしているの?」と聞かれた。

日本6周目の本土で残っている海岸線を塗りつぶす目的の旅だと答えた。でも残っている海岸線は愛知県と静岡県の西半分なのに、なぜか関西エリアをグルグル巡ってエンジョイしてしまっている旨を伝えた。そういうテキトー系な旅人。アドリブ大好きな旅人。

ちなみに昨日は「高野山」まで行ったけど、あっちは山間部なので雪ですごかったよ。

 

激渋食堂へ7

大将は「そうそう、旅人と言えばねぇ…。群馬県から何度もウチに通ってくれている人がいて。その人が手作りの旅行記を頻繁にウチに送付してくれるんだよ。」と言い出した。

「待っている間に見てみないかい?」と言われたので「喜んで」と返答した。

 

旅人の便り1

重厚な封筒がテーブルに置かれた。この群馬の旅人の名刺も見せていただいたのだが、個人jy方法だからここでは伏せるね。

心のこもった達筆な字。向かって右側は『わきもと食堂』になっているね、惜しい。僕も訪問後ときどき”わくもと”なのか”わきもと”なのか混乱したから、気持ちはわかる。

 

旅人の便り2

すんごい丁寧に製本された旅行記だ。しかもNo.16。このシリーズ、なかなかの長編ですぜ。

直近はコピー版だが、このころは原本が送られてきていたそうだ。魂を感じる。

 

現代はなんでもWebで調べられるし、スマホからでもPCからでも気軽に執筆できるし追記も修正も簡単だ。しかし20年ほど前は手書きでこうやって作っていた人も多かったろう。

 

旅人の便り3

ガイドブックを読み、パンフレットをコピーし、余白に思い出を連ねる。

苦労して作ったからこその味、手書きだからこその感情が見えるようだ。

 

遠い昔、小学生のころに僕も岩手に旅行に行き、奥州藤原氏について調査したことをこんな感じに夏休みの自由研究としてまとめたことがあったよね。まぁ文章考えたのはほとんど母親なんだけどさ。

それでも、そのときの旅行で源平合戦について興味を持ったし、「仏像かっこいいー!」ってなってずっと中尊寺金色堂の仏像群の写真を眺めていたのはよく覚えている。

うむ、余談でした。

 

旅人の便り4

この旅人はちょいとご年配の人だろうか?旅の先輩かな?

正直文字は達筆すぎてすべては読めないが、読むんじゃないんだ、感じるんだ。それに僕も行ったことのスポットもチラホラ出てきて感情移入。

あと、僕の親子丼まだですか?

 

 

トロトロ親子丼がうまかった

 

ようやく親子丼が運ばれてきた。

大将、「遅くなってすみません。ご飯が炊けていなかったもので…」と言っていた。なるほど、時間がかかった正体はそれか。しかしOK。待ち時間も楽しめたから。

 

親子丼1

なんかいいぞ。なんかエモいぞ、この写真。

窓から差し込む冬の低い日差しを受けて、丼がスポットライトを浴びた美術館の作品みたいになっている。

むしろこれ、骨董品のようだ。この番組が「開運!なんでも鑑定団」で、僕が鑑定士の「中島先生」だったら、「これは素晴らしい唐の時代の丼ですね」とか笑顔でほめたたえ、300万くらいの査定額を出しちゃう。

 

親子丼2

ふたを取った。黄色いじゅうたんのような玉子が現れた。プルプルツヤツヤでソフトなタイプだ。

誠に罪深い親子丼よ。このビジュアルでいったい何人の地元民を虜にしてきたのやら。

それではいただきます。

 

親子丼3

うめぇ。

「これは飲み物ですかな?」ってくらいにスイスイ入っていく親子丼。ダシがしっかり感じられ、かつジューシー。玉子部分だけ永久にすすっていられるな。風邪引いてても食えそうだし、遭難から何とか帰還して最初に食べるものとしても最適だと思う。

鶏肉もプリップリの弾力で、噛むごとに肉汁があふれる。ご飯も進むぞ。

 

冬の日差しを浴びたテーブル席で、1人ハフハフしながら親子丼を搔き込む。

大勢でワイワイとご当地グルメを食うのもいいけど、今のこのようなシチュエーションも狂おしいほど好きなんだよ、僕は。

一期一会かもしれないこの味、五感でしっかいr受け止めようぞ。

 

親子丼4

おぅ、すっげぇつゆだく。いいじゃないか。最後はもはや雑炊だ。丼の底にたまった汁には、この世の森羅万象が溶け込んでいる。この老舗食堂の歴史が溶け込んでいる。

アツアツのまま完食できた。至福だ。この人生に悔いなし。

 

少しだけ時をさかのぼるが、僕がご飯を食べていると常連と思わしきおじさんが入ってきた。

慣れた様子で新聞を広げ、早速お酒を飲み始めていた。

 

語らい1

常連のおじさんにも旅の話をし、そこに大将も交じって「これからどこに行くんだい?これまではどこを走っていたんだい?」みたいに聞かれた。

今夜は伊賀あたり、明日は名古屋とかかなぁ…。

 

おとといの夜に大阪中心地にいた話をしたら、「えべっさんをやっていたろ?行かなかったのか?」と聞かれた。ふむ、今までえべっさんとは何かすら知らなかったわ。

1月10日前後に行われる十日戎なのだね。「通天閣」の少し北の「今宮戎神社」もその舞台だったのだね。

僕、通展開までは行ったけどもそこまでは足を延ばさなかったわ。通天閣の南側をウロウロしていたわ。えべっさんはまた機会があたたら行くね。

 

語らい2

おじさんや大将には、いくつか大阪のおすすめスポットも教えてもらった。

「なかなかあそこまでは行けないんだけどな」って言ってた。だよね、ここは奈良県だしね。結構静かな町で、大阪の繁華街とは雰囲気全然違うしね。

 

話はまだまだ尽きなさそうだが、もうずいぶん長居をしてしまったのでそろそろ出発しよう。

おじさんと大将に「気を付けてこの後も旅を楽しんでな」って見送られ、お店を後にした。

 

語らい3

静かな町の小さな食堂。観光客の目をとりたて引くようなものでもないし、僕がした会話もたわいのないものだったろう。

それでもこうしてこのお店のことをブログに書きたいって思ったってことは、心に響いたってことだ。

 

語らい4

そういう”自分だけの旅”を見つけるのが、僕は好きだよ。

その魅力を言葉にしたり文章にするのはとても難しいんだけど、記憶が薄れる前にかたちに残しておきたいと思ったんだ。

 

「このお店は素晴らしい」とか「このお店はおススメだ」っていう表現はできない。そういうベクトルでは全然ないんだ。

でも、この体験が誰か1人にでも響いたら幸せだよ、僕。

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 涌本食堂
  • 住所: 奈良県五條市住川町 住川
  • 料金: 親子丼¥620他
  • 駐車場: あり
  • 時間: 不明