週末大冒険

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ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No.307【北海道】年間1ヶ月しか開放されない幻の道路!「チョボチナイゲート」を目指せ!

北海道には、1年のうちにわずか1ヶ月しか通行ができない幻の道路が存在する。

9月中旬から10月中旬の1ヶ月だけだそうだ。

 

雪深い北海道の地において、10月中旬からゴールデンウィークくらいまで冬季通行止めになる道も珍しくはない。

しかし通行できるのが1ヶ月だけってのはあまりに短い。

なぜなんだ。どこにあるんだ。実際に走ってみたい。

 

 

2022年の秋、僕はこの幻の道路を目指してアクセルを踏む。

開通期間1ヶ月どころか、わずか10日ほどであわや閉鎖になりかけた、数奇な運命に見舞われた年の訪問記だ。

 

 

瀬戸際の攻防戦

 

北海道のほぼ真ん中、東川町。ピンと来ない方は旭川のすぐ近くくらいだと思っていただきたい。

そこを通る「道道1116号富良野上川線」という道路、その中でも「東川北7線ゲート」と「チョボチナイゲート」の間の12.6km区間が今回の冒険の舞台だ。

 

21世紀の森、日本1周目でキャンプしたな、懐かしい

ゲートとゲートを結ぶ区間ではあるのだが、ライダーさんたちや旅人たちはみんなここに行くことを「チョボチナイ、チョボチナイ」と連呼する。

「チョボチナイって言いたいだけだろ、オマエら」って思うんだけど、正直僕もだ。チョボチナイって今言わなければ一生口にしないであろう単語だから。

 

だから正式名称道道1116号富良野上川線ではあるが、ピンと来ないので当ブログではチョボチナイロードと記載しよう。

正式にはそんな道は無いし、一般的ではないけども、わかりやすいからな。広まればいいな。

 

大雪山系が前方に広がる

2022年9月22日の夕方。

簡単にはここまで来れなかったぜ。

 

2022年、チョボチナイロードが開通するのは9月8日11時~10月13日11時と発表されていた。これ、毎年変わるし直前の公表なので注意な。その理由は後述しよう。

僕はこの時期に合わせて北海道に上陸していた。もちろん滞在中にチョボチナイロードを走る予定でいた。

 

ところがだ。

 

令和4年台風第14号

9月の半ば、台風14号が日本列島を襲ったのだ。

暴風波浪高潮大雨特別警報が出され、「過去最強クラスの勢力」とも言われた。主に九州に甚大な被害をもたらしたのだが、9/19の北海道もてんやわんやだった。

 

その結果、土砂崩れの危険があるとのことでチョボチナイロードは閉鎖された。訪れたライダーさんたちがガッカリする様子をSNSで拝見した。

山間部の脆弱な道なので、今年の復旧は無理だろうと言われている。

まだ9月8日の開通から11日目だぜ。なんてこった。1ヶ月どころの騒ぎではなかった。

 

ここは611号方面へ

だが、9/22の昼下がりのことである。

大雪山の北側でまったりしている僕の耳に、チョボチナイロード復旧の知らせが飛び込んできた。

マジか!!工事の人に大感謝!!

 

しかし行くとしたら今日しかない。明日は明日で、僕は遥か道北を目指さないといけないのだ。サロベツ原野の「オトンルイ風力発電所」の最期を見届けないといけないのだ。

 

drive-ns.hatenablog.com

 

行くしかない!

今夜の宿のチェックインにギリギリかもしれないけど、ここから大雪山の反対側、チョボチナイロードを目指すのだ!日没までに!!

急げ!!果たしてチョボチれるのか、チョボチれないのか!!

 

日没までにチョボチれそうです

西日の傾く16時台、僕はチョボチナイロードの北側にあたる、東川北7線ゲート前に到着した。どうやらゲートは開いてそうだ。

ふぅ、ここからは貴重な貴重な体験だぜ。行くぞ、愛車のパオちゃん!

 

 

ハイライトの嶺雲橋へ

 

東川北7線ゲート前。ちゃんとゲートが空いていることに歓喜した。1年で1ヶ月だけの幻の道路に、これから足を踏み込むことができるのだ。

 

「開通」の文字が誇らしい

少し涼しくなった北国の夕方の風を取り入れながら、ゆっくりとチョボチナイロードを走る。

たった12kmちょいの区間なのだ。時速60kmでぶっ飛ばせば12分で終了してしまう。それではもったいないのだ。

 

交通量はほぼ皆無

車、全然いない。

北海道だからなのか、山間部だからなのか、みんなチョボチナイロードが開通していることを知らないからなのか。

 

まぁたぶん全部でしょうね。

北海道の山間部の道は、他の車を見かけることすら結構稀だったりするもんね。

 

山間部の静かな道

忖度せずに正直に言うと、少なくとも北ゲートからしばらくの間は普通すぎる道だ。

絶景が広がるわけでもない、何がすごい特徴があるわけではない。木立の中を淡々と走ることになる。

 

ちなみに道幅は充分であり、路面は綺麗。適度なカーブがあるので退屈しない。

だけどもそんな道は道内にいくらでもあるしな。

 

西日が眩しいな

それは別にディスっているのではない。

もともと観光道路でも何でもない道なのだ。ただただ東川町の奥地と、上川郡の山間部の「忠別湖」を繋いでいるだけの道路だ。

家もない、店もない、自販機も何もない。森と空が広がるだけの世界である。

 

それでも僕がウキウキしているのは、このチョボチナイロードの貴重さに他ならない。

 

山の高さを肌で感じる

もちろん、北海道のどこにでもあるような峠道であっても、気候のいい日に走るのはこの上ない幸せである。だから今運転していてすごく気持ちはいい。

よく見えないが、遥か右手の下の方には東川の町があったりするのだろう。表現は難しいが、何となく自分が標高の高いところにいるような感覚を、五感で感じ取っている。

 

さぁ、6・7分走ったところでチョボチナイロードのハイライトの「嶺雲(れいうん)橋」だ。

 

嶺雲橋に到着

チョボチナイロードで一番ロケーションの開けるポイント、嶺雲橋。

谷を渡る橋がゆるくカーブを描いていてとても絵になるのだ。その長さは406m。特段長くはないが、爽快感はなかなかだ。

 

弧を描く橋

みんな「チョボチナイに行く」と言えば、イコールこの橋を眺めて記念撮影をすることを指すくらいに、定番のスポットである。

なるべく映り込まないように工夫はしたが、ライダーさんやチャリダー、そして車の人もこの近辺に車を停めて橋と景色を眺めている。

 

西日を受ける日産パオ

1年で1ヶ月だけの景色。

それを眺められて、感動で震えた。

 

 

なぜ1ヶ月しか開放されないのか

 

なんでチョボチナイロードは1年のうち1ヶ月しか開放されないのだろうか。

チョボチナイロードの後半部分を走りながら、この道の辿った運命を最初期からご説明したい。

 

維持費は大丈夫なのかなぁ?

道道1116号富良野上川線。

文字通り富良野と上川町を結ぶ道路にしようという夢を持って建設が始まった。その計画は1983年、つまり今から40年も前から始まり、20億という大金をかけて森を切り開き、谷を崩して行われたのだ。

 

橋から眺める深い山

充分な広さの快適な道の工事が進んではいたのだが、2005年に転機が訪れる。

なんと国土交通省の再評価で「このままの工事を進めたらあと30年はかかるし、それにお金をかけるだけの価値も全然ないよ」ってなった。

 

わずかに見えた町

なんてこったよ。最初から言ってくれよって感じだよね。

これだけ苦労して道路を作ってきたのに、無駄だという無情のレッテル。

僕だったらショックでもう、夜しか眠れなくなるね。

 

ここまで丁寧に作った道路はこの先…

さぁ、「意味ないよ」って言われた道路工事はその後どうなったのか。

嶺雲橋より南、チョボチナイゲート方面に走り出してみよう。

 

1.5車線道路の登場

なんか狭くなった。

 

テンション下がってしまったのか、お財布事情が苦しくなったのか、その両方なのか、いきなり1.5車線の道になる。

これまでが快適すぎる道だったので、これはマジ注意だ。嶺雲橋を過ぎたら注意しよう。

 

まぁ1.5車線とは言っても都市部の町中よりかは広いし、四国の山間部なんかと比べれば天国なんだけど、それでも中央線が無いから怖いよね。

 

あからさまな予算難

そんなことがあってもがんばって工事を終わらせ、2012年9月に開通した。

おめでとう!おめでとう!!

…とはいっても、北海道の山間部の冬は長いので、翌月の10月には冬季閉鎖となる。

開通して1ヶ月で閉鎖。

 

でも、次の春になったらまた開通するよね。みんなそう思っていた。

…ところが!!

 

東川北7線ゲートからチョボチナイゲートまでのエリアで道路のひび割れが10数箇所も発見されたのだ。

ただ単に道路がひび割れたんじゃない。山を切り開いたときの影響で、地盤全体がズレつつある。つまりは地滑りだ。

大規模な修理と補修が必要になる!

 

どのくらいかかる?

2017年9月までかかる!

 

南側のゲート、チョボチナイゲート

こうして2017年9月、ようやく補修工事を終えてこの道はリリースされた。

ただしそれにはキツいキツい条件があるのだ。

 

そのうちの、東川北7線ゲートからチョボチナイゲートまでの部分は、

通行できるのは9月中旬~10月中旬の約1ヶ月だけ。

 

2012年から2017年まで5年もかけたのに、補修は終わらなかったのだろうか?

いや、補修は終わっている。

だけども春は大雪山系の雪解け水が大量であり、地下水ジャブジャブなのだ。そういう状況って地滑りの危険性が高い。

それが落ち着いてくるのが9月中旬。

 

1ヶ月の意味が理解できた

だから9月中旬に開通する。

地下水の状態によるから、毎年決まっているわけではないけど、大体このくらいの時期にオープンするのだ。

でも10月中旬には雪が降るので閉鎖だ。結果1ヶ月しか通行できない。

 

みんな大好き、チョボチナイ

いろんな意味で先細りとなった道が、こうして2017年秋に爆誕した。

普通に考えれば「ガッカリ」を極めすぎた道である。

 

 

マイナスをプラスにするアイデンティティ

 

1年のうち1ヶ月しか開通されない道。

そう、普通に考えれば「そんな道が存在している価値はあるの?」ってなる。

あまりに短い期間しか使えないし、山間部の道なので地元の人の生活道路にもほぼなりえない。

 

にもかかわらず、この響きにはなぜか惹きつけられるものがある。

 

希少性こそが魅力

「期間限定」・「今だけ」・「特別な」といったワードに弱いみなさん。僕もです。

そう聞くと訪れたくなってしまうのだ。

 

だからこの道には生活道路として使う人はいないかわりに、観光客が多く訪れる。

富良野のラベンダーや美瑛の丘や旭川の「旭山動物園」でルンルン遊ぶような人種ではなく、ちょっと物好き・旅好きの変わり者の人がよく口にする道路だ。

「チョボチナイに行ったんだぜ」って言うと、なんだか得意気になれる道路なのだ。

 

チョボチナイゲートの前にて

途中で何度か停車して写真撮影しながらでも、たった25分で終わった短いドライブ。12kmほどの道のりなのでこんなもんだ。

だけども僕も、チョボチナイゲートを振り返ってちょっと得意気な顔になったぜ。

 

さて、正式な情報ではないが、今後調査と対策が進めば、このチョボチナイロードはもっと長い期間開放できるようになるだろう、とのことだ。

今は1ヶ月だけだが、2ヶ月・3ヶ月と伸び、将来的には凍結や雪の期間だけ閉鎖される道路となるかもしれない。

 

特段用途の無い山間部

だがしかしだ。そうなったときに、チョボチナイロードは果たして魅力的なのだろうか?

ライダーさんや僕のようなもの好きが、こぞって行くような道であり続けるだろうか?

それとも誰もが普通にドライブがてらここを走り、嶺雲橋からの景色を眺めたりするだろうか?

 

…僕の個人の憶測では、それは「否」だ。

チョボチナイロードのアイデンティティはあくまでその開通期間の短さにある。

それが普通になってしまったら魅力は格段に落ちる。

景色が北海道の他の道に比べてズバ抜けているわけでもないと思うのだ。

 

そして美瑛のメジャースポットへ

わずか年間1ヶ月のために、高い維持費を使い続けるヘンテコな道であり続けるか。

それとも改良して開通期間を長くし、せっかくのアイデンティティを捨ててしまうか。

 

チョボチナイロードの明日は、一体どっちなのだろう?

 

夕やけフィナーレ

何が正解なのかよくわからないけど、道路はやっぱ走れる時期が長いに越したことはないから、後者の方がよいのだろう。

まぁいずれにしろ、僕らは「今」を楽しもう。

 

 

2023年チョボチナイ開通時期

 

そう、今。2023年のチョボチナイゲートがもうすぐ開くぞ。

開通時期、発表されたのだぞ。

 

2023年は、9月7日11:00〜10月12日11:00開通!!

 

1ヶ月を少し超える、大サービスでのご提供だな、ありがとう!

 


幻に手が届くまであと2日。

北海道に雪が降るまであと1ヶ月。

 

北の大地を走る人たちよ、健闘を祈る。

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: チョボチナイゲート
  • 住所: 北海道上川郡東川町806-43
  • 料金: 無料
  • 駐車場: なし
  • 時間: 24時間通行可能だが、開通時期は各自確認のこと