僕:「ゆめりあ34!」
工事現場のおじさん:「ヌメ…?ヌメリア??なんだそれは?」
もういい。道を聞ければと思ったが、もういい。
こんなところでヌメヌメしている場合ではない。
僕が目指すのは日本の中心の1つである、「ゆめりあ34」。
この先の道はかなりシンドいだろうが、心を強くして突撃するのだ。
僕は工事現場のおじさんにお礼を言うと、山中を目指して愛車のアクセルを強く踏んだ。
なぜここが日本の中心か
今しがた僕は、『日本の中心の1つである「ゆめりあ34」』と記載した。
それを読んだあなたはどういうことかと思われたに違いない。
実は日本の中心というのは日本各地に無数にあるのだ。
ぶっちゃけ30箇所くらいある。
詳細については上記リンク先の【特集】をご覧いただきたい。
そしてこの無数の日本の中心を全部巡ってみたいと夢見ているのが、この僕だ。アホでしょ。
しかし普通に日本の中心と言うと、多くの人は本州の真ん中あたりをイメージするだろう。
僕だってそうだ。
ではなぜ日本の中心が四国の徳島県なんかにあるのか。
日本国内の陸地が存在する地において、緯度経度の下2桁が同じとなる地の北端は北海道常呂町(北緯44度・東経144度)。南端は沖縄県竹富島(北緯24度・東経124度)。
この2つの地点の真ん中、つまり北緯34度・東経134度の地点がここだ。
つまりここが日本の中心なのだ。
「日本列島中心点」と呼ばれている。
日本の中心の概念はさまざまある。だからこそ、30個近くも乱立している。
乱暴に言えば「言った者勝ち」。
あなたの想像力が、今後新たな日本の中心を産むかもしれない。
…そういうジャンルだ。
僕の目指すゆめりあ34も、2005年前後に日本の中心にエントリーされた、比較的若手だと聞いている。
さて、それでは本編の始まりだ。
日本3周目を走る若かりし頃の僕は、同時に各所の日本の中心も巡っていた。
日本の中心はシンドい立地の場所が多いが、ここもその例に違わず「また来たいとは思えないな」とヘロヘロになりながら振り返ったスポットだ。
山間部に突撃しよう
四国を流れる大河、「吉野川」に沿って僕はドライブをしていた。
この吉野川沿いのルートは好きで、これまでも日本1周目~3周目に至るまでに何度も走っている。半年前にも走ったばかりだ。
「道の駅 貞光ゆうゆう館」という吉野川にほど近い道の駅にやって来た。
ちょっと歩くと吉野川が見えるので、このあとの行程を考えながら少し散歩した。
ゆめりあ34と「奥祖谷二重かずら橋」、どっちを先に行こうかなとか考えていたんだけど、前者を取った。
あれは「美馬橋」だな。吉野川に架かる真っ赤な美しい橋。
橋好きの僕は、興奮して写真を撮った。
そして愛用のツーリングマップルを開いた。
目的地のゆめりあ34は、おそらく画面中央の「●」のあたりだ。
しかしどれだけ地図を凝視しても、目印になるようなものは無いし、道は複雑すぎて見ても無駄なくらいだし、極めつけに目的地に至る道は無い。
もうアドリブで行けってことだね、承知。
吉野川沿いをテクテク歩いているうちに汗をかいた。
このときは9月の朝だったのだが、早くも気温は30℃に迫ろうとしていたのだ。
汗をかくのは好きではないが、熱いのは好きだ。夏よ、去らないでって思う。
貞光ゆうゆう館に戻り、車に乗り込んで出発した。
ゆめりあ34を踏んでまたここに戻ってくるのに3時間半を要するのだが、このときの僕はまだそんなことを知らない。
吉野川沿いを少し西に走り、三加茂駅近くの県道44号から一気に山間部に入る。
このあとは携帯が余裕で圏外の、秘境中の秘境だぞ。気合入れてくぞ。
しばらくはちょっとした集落があったけれど、すぐに山道になった。
そしてバリバリ標高が上がっていく。すごい。
この山間部の序盤で、道路工事の誘導員のおじさんに声をかけられた。
工事現場のおじさん:「あんた、どこまで行くんだい。この先は行き止まりだよ。」
YAMA:「ゆめりあ34ってところまで行こうと考えているんですよ。」
工事現場のおじさん:「え?なんだって?」
僕:「ゆめりあ34!」
工事現場のおじさん:「ヌメ…?ヌメリア??なんだそれは?」
…えっとー。もういいや。
あわよくばゆめりあ34までの所要時間とか、詳細な所在地とか聞ければなぁと思ったんだけど、諦めた。
おじさんは「この先は道も狭いし時間がかかるから気をつけてね。」って送り出してく
れました。
了解、頑張ります!!
高原の中の狭路
もう対向車なんて当たり前のように1台も来ないし、人の気配すらゼロ。
クネクネとどこをどう走っているのかわからない山の中。
いやぁ、楽しいわ。
しかし気になるのが、ゆめりあ34の標識が1つも出てこないことだ。
この道で合っているんだろうな…??
合っていることを前提に要望なのだが、できればゆめりあ34までの距離を、百歩譲ってこの先にゆめりあ34がある旨の標識を作っていただたいのだが。
運転は楽しいが、心中は不安でならないわ。
もし道を間違えていたら行き止まりが出てくるまで永久に走り続けるよ、僕。
カーナビだって一応あるけど、そもそもゆめりあ34が登録されていないしさ。
「桟敷(さじき)峠」という峠にやって来た。標高は1021mとのことだ。
ここまで、三加茂駅の前を通過してから30分であった。
ようやくゆめりあ34を示す標識が出てきて一安心。ルートは間違ってはいなかった。
ゆめりあ34まではここから6kmあるそうだな。
「風呂塔キャンプ場」・「水の丸ふれあい公園」などと同じ進行方向であるが、それらはツーリングマップルに一切の表記がない。あまり参考にならない。
ツーリングマップルに書かれないほどの秘境にいるということだな。
桟敷峠にて県道44号を反れて水の丸方面に行く。
さらに道を進み、風呂塔キャンプ場へ行く道と分岐する。
ここまでは『風呂塔キャンプ場まであとちょっと!』みたいな励まし文句の立て札があってさ、僕もそこから勇気をお裾分けしてもらっていたんだけど、これで勇気の供給がストップされちゃったよ。寂しい。
路面がやや荒れてきた。
しかしちょっと頭上が開けてきた。
水の丸エリアは高原地帯であり、3つ前の写真にもチラッと記載されているのだが四国の軽井沢とも呼ばれているらしい。
つまり夏でも涼しいということだな。窓を開けると確かに涼しい風が入ってくる。
間もなく『←水の丸ふれあい公園』という看板が出てくた。
もちろのこのままスルーで直進だ。
さっき撮影した桟敷峠での標識の写真によると、ここからゆめりあ34まではあと3kmか。
長いな。こういう狭路の3kmって果てしなく長く感じるよな。
しかし眺めは最高であった。
どこまでも山の中。そんな山の斜面にポツンと集落があったりする。
「あんなところにも人々の生活があるんだなぁ…!」って思うのが、山間部ドライブの醍醐味だったりする。
さらに1km進んだところで「六地蔵峠」に出る。
ここ、ちょっとクセものだった。
僕自身の写真がないので、Googleマップのストリートビューをお借りする。
ここが六地蔵峠だ。
右も左も同じ程度の道幅。どっちもメインロードのように感じる。
そしてゆめりあ34を示す標識などは無し。
…どっちだ…??
僕、右を選んだ。結果、失敗だった。
1km少々頑張って進み、あまりの狭さと向かっている方向から「違うのでは?」と思っ
て引き返した。
車1台がギリギリの道がずっと続いているような場所なので、Uターンに5回くらい切り
替えしたよ。
変な汗がいっぱい出た。一歩間違えたら脱輪で帰れないもん。
ちなみにここ、Googleマップで見てみると分岐などないのだ。
しかし実際はあるから要注意だ。
まぁこのときの僕はGoogleマップも使わずにカンだけで突き進んでいたんだけどな。
六地蔵峠まで戻り、左のルートを選ぶ。
すると山の中にちょびっと開けた集落みたいのがあった。
ビニールハウスが点在してる。
しかし人の気配は相変わらず無い。なにも音の無い静寂な世界で、僕の車のエンジン
音だけが響いていた。
ゆめりあ34の標識があった!!よかった!!
たった1kmちょいだったけど、六地蔵峠からここまではドキドキだったよ。
集落前後である程度視界も開けるけど、逆に分岐が多くなってさ。
さらにゆめりあ34への標識は皆無だったからさ。
六地蔵峠で左を選んでよかったのかすらわからない状態だったから。
右が正解だったかもしれないなって思っていたから。
でも道を聞こうにも人がいないし。
ここまできてアプローチできなかった、とかはシャレにならない。かなりの時間と精神力を使っていますもん。
とりあえず分岐は全て道が太い方を選んだ。
微妙なところもあるけれど、そういうところは舗装面の色が分岐前と同じ方を選んだ。
こうして、ようやく上の標識の場所まで来れたのだ。
日本列島中心点の文字が全ての疲れを吹き飛ばしてくれた。
あと700mだ!
なお、後から確認したところ、この先はGoogleマップに道すらない。
矢印を信じて突き進め!
さらに道は細く、そしてさらに荒れてくるけど、もう分岐は無い。突き進むのみだ。
深い木立の中を突き進んで行く。
対向車来たら100%擦れ違い出来ない。
だが、序盤の工事現場のおじさん以降、人も車も全く見かけてないけどな。
でもここでシカがいてビックリした。かなりデカいヤツだった。わお。
日本列島中心点・ゆめりあ34
日本列島中心のモニュメント
着いたー!!
やっぱ疲れたわ。肩も凝った気がするし、精神的に疲れた。
だが爽快な気分だ。
三加茂駅から55分ほどだった。
六地蔵峠で迷わなければ45分くらいだったかな?
訪問当時にWeb上でわずかに発見できる情報では、駅からおよそ1時間と書いてあるところが多かった。
大体標準タイムだが、あなたももし行かれるのであれば初回は時間も精神力もゆとりを持っておくといいと思う。
砂利の駐車スペースには他の車は皆無。
のびのび出来ますなぁ!
外に出ると、標高が高いので空気が冷たく感じた。
駐車場に立っていた大きな立て札が、上のものだ。
ようこそ「ゆめりあ34」へ
さあ、あなたも日本列島のど真ん中に立ってみませんか。
そうすれば、あなたの夢はさらに広がることでしょう。
そして、夢の実現に向けての自信が湧いてくるかもわかりませんよ。
…と書かれている。
なんだかチープな自己啓発文のようだが、これはこれでいいんじゃないかと、優しい心になれる場所だ。
敷地内を歩いてみよう。
山の斜面に造られた公園が、ゆめりあ34だ。
何か特別な施設とかがあるわけじゃない。
傾斜にはアジサイやツツジが植えられていて、綺麗に管理されている雰囲気だ。
ま、どちらも今は季節じゃないので花は咲いていないけど。
傾斜に沿い、遊歩道の階段を下りていく。
眼前には深い谷とどこまでも続く山々。そしてその山肌の小さいな集落。
四国の山間部ってこんな感じだよね。
酷道439号とか、まさにこんな感じだよね。
こうい雰囲気の四国が好き。
さて、僕が目指すのはあそこだ。
敷地内のほぼ中央、ツツジの植え込みが日本列島の形に植えられている場所の中。
そこに銀のポールが三角形に組んである。
あれが日本列島中心点のモニュメントなのだ。あれだけを見るために、わざわざここまでやってきたのだ。
はい、到着。
ピカピカのポールが青空に映えるなぁ。
しばらく僕はここで景色を堪能し、達成感を噛みしめた。
高原に吹く風が最高だった。
たぶん二度と来ないからな、ここ。一生に一度の光景を五感に刻めよ。
このモニュメントの中央部分には、三角点と思われるものが埋め込まれていた。
三角点には"ゆめりあ34"と刻まれていた。
なかなかにかわいい。
そして傍らには、日本列島の中心を名乗る根拠の説明板が設置されていた。
内容は前述の通りなので、ここでは詳細は割愛しよう。
そしてアホな僕はここに来るまで気付かなかったのだが…。
前述の通り、ここは北緯34度・東経134度の公会点。
だからゆめりあ"34"っていうんだね。
説明板の右上を読めばわかるが、ここ日本の中心だとわかり、そして名称を公募し、ゆめりあ34と名付けられたのだ。
2005年前後にネーミングされた、新しいスポット名だったのだな。
絶景ブランチを堪能
誰もいない。全くいない。
たぶんここを目指す人ってほとんど存在しないと思われる。
辿ってきた県道44号自体、もっと進むと四国山地にぶつかって行き止まりだしさ。
地元の人がピクニックやレクレーションで来るかもしれないけど、そう頻繁に来れるようなところでもないだろう。
だからとても静かで空気が澄んでいて、最高だ。
では、車内でご飯でも作るか。ブランチだ。
メニューは時間と環境が整ったときにしか作らないお好み焼きにしよう。
あ”ーー、汚い車内で大変恐縮だが、薄眼で見てくれ。
長旅では、1日1回は車中自炊するようにしているので、今日はここで作ることとする。
食材は四国を走りながら地元のスーパーで買ってある。
肉は無いので少し寂しいな。でもいいや。
見た目はあまりよろしくないが、ちゃんと自宅で作ればそれなりに上手なんだよ、僕。
車中自炊では最低限のクオリティしか求めないし、器具も限られているのでこんなもんだ。
四国山間部の絶景の山々を眺めながら、僕は外でお好み焼きを食べた。
幸せだ。
うまいのはお好み焼きではない。この旅のシチュエーション全てがうまいのだ。
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ゴミは残さず、しっかり回収してゆめりあ34を後にする。
集落の中は、帰り道だと行きとはまた違った視点となり、迷いやすそうな分岐が4つほ
ど出現する。
行きのときに注意深く周囲や後方を見渡しながら来たのでルートを覚えており、無事にクリアできた。
僕は下界を目指す。
数ある日本の中心の1つである、ゆめりあ34。
数多くある1つでしかないが、他には無い思い出を作ってくれた。
僕は、ここから眺めた景色を永遠に忘れることは無いだろう。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報